人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている 作:アイリエッタ・ゼロス
立香side
「来たか....」
防壁の上で待機して数時間後、まだ小さいが山の方角から魔物の大群が来るのが
目で見えた。
「敵は7~8といったところでしょうか。予想よりも少し増えましたね」
「あぁ。だが、全部合わさってもキリシュタリアには遠く及ばねぇ。いつも通りに
やれば大丈夫だ」
「(さて、問題の黒ローブの男だが....)」
俺はモルガンの言葉にそう返しながらルーン魔術で視力を強化して魔物の大群を見た。
「そこか....」
すると、空を飛んでる鳥型の魔物の上に黒いローブの男が見えた。
「南雲、空飛んでる鳥型の魔物の上に黒いローブの男がいる。場所はちょうど真ん中の
鳥の魔物だ。お前は鳥の魔物を狙撃、シアは落ちてきた魔物から黒いローブの男を回収しろ。
腕の一本や足の一本潰しても構わねぇから生け捕りにしろ。回収したら南雲、信号弾を撃て」
「「わかりました!」」
「三人は障壁を頼んだぞ」
「ん」
「わかりました!」
「承知したのじゃ」
「メルト、左翼側頼むぞ。俺は右翼側を潰す。で、二人は俺とメルトがある程度潰したら
宝具ぶちかましてくれ」
「えぇ」
「わかりました」
「頑張り、ます!」
「よしっ! じゃあさっさと終わらせるぞ!」
そう言って俺は指を鳴らした。すると、魔物がいた場所から様々な属性の攻撃が地面が
放たれた。
「行くぞメルト!」
「えぇ!」
そう言って、俺とメルトは防壁の上から飛び降りた。そして魔物の大群に向かって走り出した。
「クレス!」
『OKOK! トゥルルルルル! "8"!』
「っ! 最高だ!」
俺はクレスを呼ぶと、クレスのルーレットは8で止まった。クレスの姿は槍に変わり、俺は
魔力を乗せてクレスを魔物の大群に向かって投げた。すると、槍が落ちた場所で巨大な
衝撃波が放たれた。その衝撃波によって魔物の大群の一部は身体が粉々に吹き飛んだ。
そして、俺はクレスのもとまで走ると槍になったクレスを掴んで構えた。
「さぁ、ぶちかます!」
俺はそう叫ぶと魔物の大群に突っ込んでいった。
~~~~
? side
「バカな....!」
「(あれほどの魔物が、みるみるうちに減っていく....)」
空に浮かんだ私が見ている光景は想像していたものとは大きく違っていた。
「イレギュラー....やはりここで消しておく必要が....!」
そう呟き、私は翼をはためかせ銀色の羽を空中に浮かばせた。そしてイレギュラーに向かって
放とうとしたが....
「人の後輩に勝手に手出そうとしてんじゃないわよ」
突然どこからかそんな声が聞こえた。それと同時に、私が展開した銀の羽を全て地面に
叩き落とされた。
「っ!? 何者!」
私が周囲を見ると、地面に一人の眼鏡をかけた女がいた。その女の両手には剣が握られていた。
「へぇ....天使みたいな姿してるけどやってることは悪魔ね」
そう言うと、女は私に向かって剣を投げてきた。その剣は赤い何かを纏い、私に向かって
飛んできた。私は咄嗟に両手に持った大剣でガードしようとしたが、何故か剣は大剣を避けて
私の翼を切り落とした。
「なっ!?」
「まだ終わってないわよ」
そう言いながら女が腕を振るうと、空中を飛ぶ剣は私の持つ大剣に突っ込んできた。私は
簡単に防げると確信していたのだが、二つの剣は大剣にぶつかると急に回り始め、大剣を
えぐるように貫通して私の肩に突き刺さった。
「あぁぁぁ!?」
その一撃は私の身体のバランスを奪い、私は地面に落ちた。
「思ったより弱いわね....これなら私がやる必要ないじゃない」
女はそう言いながら私を見下ろしながらそう呟いた。
「(主の駒の分際で、真の神の使徒であるこの私に....!)」
「調子に乗るなぁぁぁ!」
私はそう叫びながら、女に向かって"劫火狼"を放った。女はその炎に包まれ、燃え尽きたのか
そこに姿はなかった。
「(次はあのイレギュラー....! ここで確実に息の根を!)」
そう考え、私はふらふらと立ち上がりながらイレギュラーのもとに向かおうとしたその時....
「えっ....?」
突然私の身体から力が抜け、私は地面に倒れ伏した。何故急に倒れ伏したのか。その理由は
私の両足が無くなっていたからだ。
「あぁ....あぁぁぁぁぁ!?」
「うるさいわね....叫ぶならもうちょっと静かに叫びなさいよ」
すると、突然私の頭の上から声が聞こえてきた。その声は死んだはずの女の声と同じだった。
私が上を見ると、そこには姿を変えた女がいた。
「貴様....!? なぜ生きて!」
「あの程度の炎で私を殺せると思ったら傲慢ね。せめて私を殺したいなら後輩ぐらいの力を
持ってからにすることね」
そう言いながら、女は踵を返して何処かに歩いて行った。
「待て! どこへ行く!」
「私の仕事は終わったから帰るだけよ。あ....一つ言っておいてあげるわ。あんたの命、
もう長くないわよ」
女はそう言うと光の粒子になってこの場から消えた。
「(くっ....! このままでは....せめて主にイレギュラー達の事を....!)」
そう思い動こうとしたのだが、私の頭の中に何かの情報が流れてきた。
「これは....!?」
その情報とは人間による悪意、殺意、怨念、害意、恨みといった負の感情だった。
「あぁ....あぁぁぁぁぁ!?」
私は分解でどうにか消そうとしたのだが、分解よりも早く負の感情は私を蝕んでいった。
「こんな、こんな所でこの私がぁぁぁぁぁ!」
~~~~
「ただの人形が、数千年生きた私の呪いをどうにかできるわけないのに。ま、私の知った事
じゃないか」
~~~~
南雲side
「....っ!」
「(そこだ!)」
防壁の上にいた僕はスナイパーライフルで黒いローブの男が乗っている鳥型の魔物の翼を
撃ちぬいた。鳥型の魔物は空中でバランスを崩し地面に向かって落ちていった。
「シア!」
「了解です!」
僕は防壁の下にいたシアにそう叫ぶとシアは落ちている魔物の方に向かって走り出した。
「(一先ず指示通りに動いたけど....水月先生とメルトリリスさんとんでもないな....)」
そう思いながら僕は魔物の大群の方を見た。魔物の大群の左右は二人の手によってみるみる
数を減らしていた。メルトリリスさんの方に至っては真ん中の方にいる魔物も倒しているのか
水月先生の方にいる魔物のよりも数が減っていた。
「これは....凄まじいというしかないのぉ....」
ティオさんは若干引きながらそう呟いていた。
「ん。敵じゃなくてよかった」
「本当だよね....」
香織とユエもそう呟きながら大群の方を見ていた。すると....
「ハジメさん! とっ捕まえてきました!」
シアが防壁の上に来て黒いローブの男を地面に置いた。黒いローブの男は気絶しており、
服にはドリュッケンの跡があった。
「ありがとうシア。香織、お願いしてもいい?」
「うん! "極光鎖"」
香織がそう呟くと、黒いローブの男は地面に縛られた。
「よし。あとは....」
僕はあらかじめ用意していた拳銃に信号弾をセットして上空に弾丸を撃った。弾丸は空を
飛びながら赤い煙を噴出させていた。
「(これで僕の仕事は終わりかな....)」
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立香side
「ん....?」
魔物を処理していると、空中に赤い煙が広がっているのが見えた。
「(捕獲したみたいだな....こっちも一万は潰した、メルトは俺の倍は潰しただろうな)」
「ここが引き時だな」
『メルト、首謀者らしき男は捕まえた。そろそろ引いてくれ』
『まだよ。まだまだ蹂躙したりないわ!』
「....」
「(しっかり加虐体質発動してんな....あとで怒られるけど仕方ないか....)」
『令呪をもって命ずる。メルトリリス、この戦場から撤退せよ』
俺はあまり使いたくなかったが令呪を発動させた。
『っ!? 立香! アナタ令呪使ったわね!』
『そうしないとメルト、全滅させるまで暴れるだろ?』
『....あとで覚えてなさいよ』
「(やっぱ怒った....)」
そう思いながら俺は防壁の方に撤退した。
~~~~
防壁の方まで戻ると、第3再臨姿のモルガンとティアマトが待機していた。そして、二人の
横には怒った表情のメルトがいた。
「ごめんてメルト」
「....ふん!」
「(こりゃしっかりご機嫌取らないとな....それより)」
「二人とも、あと頼めるか?」
「えぇ。任せておきなさい我が夫」
「お母さんに、任せて!」
「じゃあ頼む!」
俺は二人にそう言って急いで防壁の上に上った。
「先生!」
「仕事だ三人とも! 障壁頼むぞ!」
「はい!」
「「「"聖絶"!」」」
三人がそう言うと、防壁の前に巨大な障壁が出来た。そして、その障壁の前にはモルガンと
ティアマトが立っていた。
「それは絶えず見た滅びの夢──報いはなく、救いはない。最果てにありながら、鳥は明日を
歌うでしょう。どうか標に──」
「ネガ・ジェネシス、展開。毅き仔よ、創生の理に抗え」
二人は詠唱を始め、尋常じゃない程の魔力が二人のもとに集まっていった。そしてモルガンは
玉座に腰掛け、ティアマトは生命の海に沈み本来の姿になって地上に戻ってきた。そして....
「
「
その言葉を最後に、二人の宝具は発動した。モルガンの方は無数の槍が道を作るように空の
魔法陣から降り注ぎ、魔物達の足元から巨大な槍が現れ魔物達を粉砕した。ティアマトの方は
口から放たれた破壊光線によって地面をえぐりながら魔物の大群を焼き尽くした。俺達がいる
防壁の方にも攻撃の余波は凄く、三人が張った障壁は割れ、防壁も崩壊寸前だった。
「全員退避!」
俺はそう叫び、崩壊する防壁を跳び移りながら地面に着地した。
「相変わらずとんでもねぇ威力....」
俺は崩壊した防壁の向こうから見える景色を見てそう呟いた。防壁の向こうの景色は焦土と
化しており、所々燃えている場所もあった。
「お前等全員無事か?」
「「「な、何とか....」」」
「退避が遅れたら生き埋めだった....」
「妾、よく生きておれたの....」
五人はそれぞれそう言いながら砂埃は払っていた。
「ならいい」
「(メルトも無事。宝具使った二人もそこにいる。パイセンもどうせ生きてる。....でも、
何か忘れてるような)」
「どうかしたのリツカ?」
すると、考え込んでいる表情に気づいたユエがそう聞いてきた。
「いや....何か忘れてるような....」
「忘れて....?」
「あーーー!」
そう言うと、突然シアがそう叫んだ。
「黒いローブの男! 退避する時に持つの忘れました!」
「黒いローブの男....それだ!」
シアの言葉で俺は忘れていたものを思い出した。
「忘れたのそれだ! 完全にどうでもよくなってたな....お前等瓦礫どかして探すぞ!」
~その頃~
「まったく....この世界の敵は雑魚しかいないわね。まぁ楽でいいけど」
虞美人の手によってこの近くにいた魔人族は消されていた。