人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている   作:アイリエッタ・ゼロス

54 / 78
閑話:帝国からの使者

「はぁ....マジで昨日最悪だった」

 そんな事を呟きながら俺は車を運転していた。二日前に酒を飲んで酔っ払ってパイセンと

 乱闘騒ぎを起こした俺は、昨日一日二日酔いで潰れていた。そのせいで昨日一日は

 何も出来ず一日中寝ていた。

 

「バカみたいに飲むからそうなるのよ」

「すんません....」

「はぁ....しばらくアルコール禁止よ」

「はい....」

 メルトに小言を言われた俺は大人しく返事をした。

 

「そういえばますたぁ、今はどこに向かっているのですか?」

「ホルアドって町だ。白崎が寄りたいらしくてな」

 そう言いながら、俺は車の運転を続けていた。

 

 ~今から数ヶ月前~

 鈴side

 

 ベヒモスをシズシズが倒した数日後、鈴達はハイリヒ王国に戻って来ていた。その理由は、

 ヘルシャー帝国という国の使者が鈴達勇者一行に会いに来たためである。正直、鈴自身は

 戻ってもよかったのだがシズシズだけはメルドさんに随分抗議をしていた。その理由は

 カオリンの無事を探したいという事がよく分かった。だが、メルドさんでもどうしようも

 ないためか渋々今回の帰還に同意していた。

 

「(シズシズ、随分変わっちゃったな....それもそうだよね....)」

 シズシズはカオリンが落ちる前と随分変わってしまった。今まではみんなの相談役として

 色々と裏で動いてくれていたが、今はそういった事をせず、常に単独行動で食事の時以外は

 剣を振るっていた。その姿は、言い方は悪いが鈴は怪物の様に見えた。そういった事もあって、

 シズシズと会話をする人間は誰もいなかった。鈴も話しかけようとしたが、どう声をかけて

 みればいいのか分からず、話しかけることができなかった。そんな中、お城の方に戻ってきた

 鈴達なのだが....

 

「おい勇者! 香織はまだ見つからんのか!」

 お城に着いた瞬間、ランデル王子が光輝君にそう叫んだ。何でもランデル王子はカオリンの事が

 好きだそうで色々アプローチをかけていたらしい。ただ、軽くあしらわれていたそうだが....

 

「残念ながら....しかし、探索は順調に進んで未踏破エリアである65階層を超えました。

 この調子なら迷宮全体を踏破するのもそう遠くないです」

「そんな話はどうでも良い! 迷宮を踏破しても香織が死んでいては意味がないのだ! 

 判ったのなら一刻も早く香織を....!」

「じゃあ呼び戻すんじゃないわよ。呼び戻されてる間に死んだら、アンタ責任取れるの?」

 ランデル王子がそう捲し立てようとすると、シズシズが低い声でそう言った。

 

「そんなに見つけたいなら自分で行けば? こっちも命かけてやってんのよ。城でのんきに

 生活してるアンタと違ってね。そもそも、アンタ達が私達を呼ばなきゃこんな事にはなって

 ないのよ。....本当に鬱陶しい。その腕一本落とせば少しは大人しくなる?」

 シズシズはブチギレたのか剣に手を置いて、刀身を少し抜いていた。

 

「ヒィィィ!?」

「雫! ....ランデルの非礼は私が詫びます。だから、どうか剣を納めてくれませんか?」

 ランデル王子がリリアーナ王女の背後に逃げると、リリアーナ王女がそう言ってシズシズに

 頭を下げていた。

 

「....」

 シズシズは少しの間止まったかと思うと、刀身を鞘に納めた。

 

「....メルド団長、私は先に部屋で休ませてもらいます」

 そしてメルド団長にそう言うと、シズシズは一人何処かに歩いて行った。

 

「(シズシズ怖っ....!? 下手なこと言ったら斬られてたかも....)」

 そう思いながら、鈴は歩いて行くシズシズの背中を見ていた。

 

 ~数日後~

 

 数日経って、遂に帝国の使者がやって来た。王国の人達やイシュタルさん、そして鈴達

 勇者一行は謁見の間にいた。帝国の使者の人達は五人で王様と話をしていた。

 

「使者殿、よく参られた。勇者方の至上の武勇、存分に確かめられるがよかろう」

「陛下、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝いたします。して、どなたが

 勇者様なのでしょう?」

「うむ、まずは紹介させて頂こうか。光輝殿、前へ出てくれるか?」

「はい」

 光輝君は名前を呼ばれると前に出て行った。そして、光輝君から順番に鈴達は紹介されて

 いった。

 

「ほぉ....貴方が勇者様ですか。随分とお若いですな。失礼ですが、本当に六十五層を

 突破したので? 確か、あそこにはベヒモスという化物が出ると記憶しておりますが....」

 帝国の使者の人は疑わしそうに光輝君を見ていた。

 

「そ、それは....」

 使者の人の言葉に、珍しく光輝君は動揺していた。それもそのはず。実は、ベヒモスを

 倒したのはシズシズ一人だからである。

 

「いや、ここは手っ取り早く進めましょう。私の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか? 

 それで勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」

 すると、困っている光輝君を見て使者の人がそう言った。

 

「えっと、俺は構いませんが....」

 光輝君がそう言ってイシュタルさんの方を見ると、イシュタルさんは首を縦に振った。

 

「構わんよ。光輝殿、その実力、存分に示されよ」

「決まりですな、では場所の用意をお願いします」

 こうして、急遽模擬戦が始まった。

 

 ~~~~

 

「それくらいにしましょうか。これ以上は模擬戦ではなく殺し合いになってしまいますのでな。

 ....ガハルド殿もお戯れが過ぎますぞ?」

「....チッ、バレていたか。相変わらず食えない爺さんだ」

 模擬戦は光輝君の負けで終わった。そして、光輝君が戦っていた相手は帝国の皇帝陛下だった。

 

「(ワイルドな感じだけど、あんまりタイプじゃないかなぁ....)」

 そんなのんきなことを考えていると、皇帝陛下はシズシズの方を見ていた。

 

「おい、そこの髪を結っている女! 良い眼と殺気をしているな! どうだ! 俺の愛人に

 なる気はないか!」

「....タイプじゃないんでお断りよ」

 皇帝陛下はそう言ったのだが、シズシズは心底興味がなさそうにそう言った。

 

「はっはっはっ! 俺に対してそんな言い方をするか! 益々気に入ったぞ! 気が変わったら

 いつでも来るがいい!」

 皇帝陛下は笑いながらそう言うとこの場から去っていった。皇帝陛下の姿が見えなくなると、

 シズシズは重いため息をついた。

 

「(シズシズ....苦労してばっかだな....)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。