人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている   作:アイリエッタ・ゼロス

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都合の良い頼み

 南雲と白崎は全身黒装束の男を見てそう言った。

 

「遠藤....?」

「(そういや、生徒にそんな名前がいたような....)」

 そう思っていると、全身黒装束の男、遠藤は辺りをキョロキョロ見渡した。

 

「南雲! 白崎! 何処だぁ! 生きてんなら出てきやがれぇ!」

「(うるさっ....)」

「遠藤くん? ちゃんと聞こえてるから大声で人の名前を連呼するのは止めてくれる?」

「くそっ! 声は聞こえるのに姿が見当たらねぇ! 幽霊か? 化けて出てきたのか!? 俺には

 姿が見えないってのか!?」

 遠藤は一度白崎の方を見たが、すぐに辺りを見渡した。

 

「いや、目の前にいるじゃん。いい加減落ち着いてよ。影の薄さランキング生涯世界1位」

「また声が!? ていうか、誰がコンビニの自動ドアすら反応してくれない影が薄いどころか

 存在自体が薄くて何時か消えそうな男だ! 自動ドアくらい三回に一回はちゃんと開くわ!」

「ハジメくんそこまで言ってないよ....あと、三回中二回は開かないんだね....」

 すると、白崎のその言葉で遠藤は目の前にいるのが白崎と南雲という事に気づいた。

 

「も、もしかして、お前が南雲で、そっちが白崎さんなのか....?」

「そうだよ。それに、そこに水月先生もいるじゃん」

 南雲はそう言うと、俺を指差した。

 

「す、水月先生!? 三人とも、生きてたのか!?」

 遠藤は俺に気づくとそう叫んだ。

 

「そうだが....」

「まぁかろうじて生きて帰って来れたって感じだけどね....」

「おかげで色々と変わったけどね....」

「そ、そういうものか? いや、でも、そうか....ホントに生きて....というか水月先生! 

 冒険者してたのか? しかも金て....」

「まぁな....で、それが何だ」

「なら頼む! 一緒に迷宮に潜ってくれ! 早くしないと皆死んじまう! 一人でも多くの戦力が

 必要なんだ! 健太郎も重吾も死んじまうかもしれないんだ! 頼むよ、水月先生!」

「え、嫌なんだが」

「そうだよな! 行ってくれ....嫌!?」

 遠藤の必死な言葉に対して俺がそう返すと、遠藤は驚いた様な声を上げた。

 

「そりゃそうだろ....めんどくさいし」

「な、何でだよ! 今にもみんな死んじまうかもしれないんだよ! それをめんどくさいって!」

「知らんがな....テメェ等自分の意思で戦争参加してんだろ? こっちは戦争不参加だっつうの。

 わざわざ無駄に戦場に向かうのはごめんだ」

「な、なら健太郎達が死んでも良いのかよ!」

「良い悪いっていうか....単純にお前等がどうなろうと興味がねぇんだよな....」

「なっ!? ア、アンタ....それでも教師かよ!」

「(別になりたくてなったわけじゃねぇんだけどな....)」

「悪いが、話の続きは奥でしてもらおうか。そっちは、俺の客らしいしな」

 そう思いながら首を搔いていると、突然遠藤の背後から男が現れた。

 

「....アンタは」

「ホルアド支部の支部長、ロア・バワビスだ。金ランク冒険者の水月立香だな」

「(面倒ごと増えた....)」はぁ

 

 ~~~~

 

「魔人族ねぇ....」

 応接室に案内された俺は事の次第を聞いた俺はそう呟いた。俺は特に興味がなかったのだが、

 ロアは随分深刻そうな顔をしていた。そして、少し重苦しい雰囲気になるかと思われた

 空間だが、南雲と俺の膝の上でお菓子を食べているジャックとミュウのおかげでどこか

 和らいだ空間になっていた。

 

「つぅか! 何なんだよ! その子等! 何で菓子食わしてんの!? 状況理解してんの!? 

 みんな、死ぬ....」

「子供に当たんなボケ」

 ジャックとミュウに怒鳴ろうとした遠藤に向かって、俺はルーンで氷のつららを飛ばした。

 つららは遠藤の頬をかすめ壁を貫通していた。

 

「次は当てるぞ」

「ひぃ!?」

 俺がそう睨むと、遠藤はソファの背後に隠れた。

 

「はぁ....さて水月。イルワからの手紙でお前の事は大体分かっている。随分と大暴れ

 したようだな?」

 遠藤がビビったのをため息をついて見ながら、ロアは俺にそう言ってきた。

 

「俺はほとんど何もしてねぇっての....やったのは俺の仲間がほとんどだ」

「手紙には、お前達の金ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって

 欲しいという内容が書かれていた。一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな....

 たった数人で八万近い魔物の殲滅、半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅....にわかには

 信じられんことばかりだが、イルワの奴が適当なことをわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは

 思えん....もう、お前が実は魔王だと言われても俺は不思議に思わんぞ」

「魔王ねぇ....そんなもんで済んだらどれだけ良かったか....」

「おかあさんビーストだもんね!」

 俺がそう呟くと、ジャックを俺を見てそう言ってきた。

 

「ジャック....あまりその事は言わないようにな」

「はーい!」

「魔王をそんなもん扱いか....随分な大言を吐くやつだ....だが、それが本当なら俺からの、

 冒険者ギルドホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」

「....勇者の救出か? さっきも言ったが面倒なんだが....」

 俺は半分呆れながらロアにそう言った。

 

「だ、だったら南雲! 白崎さん! 二人も奈落から自力で生還出来て金ランクなんだろ!

 俺達を助けてくれよ!」

 遠藤は俺の説得が無理だと思ったのか南雲と白崎にそう言った。だが....

 

「「....」」

 二人は黙って少し考え込んでいた。

 

「どうしたんだよ! 今、こうしている間にもアイツ等は死にかけているかもしれないんだぞ! 

 何を迷ってんだよ! 仲間だろ!」

「仲間、ね....」

「遠藤くん、それは随分都合が良すぎると思わない?」

 遠藤のその言葉に対して、白崎はそう言い返した。

 

「えっ....」

「ウルの街で先生から聞いたけど、私を除いて先生とハジメくんは既に死んだ者として

 切り捨てたんでしょ? それが凄く強くなって戻ってきたからって何食わぬ顔で仲間扱い、

 今までずっと無能だって蔑んだのに....あまりにも勝手だと思わない?」

「そ、それは....」

「ハジメくんは、あなた達の都合の良い道具じゃないんだけど」

「(おー怖....)」

 白崎は遠藤を睨みつけながらそう言った。そして、白崎の背後には般若が見えた。

 

「....それよりも、雫ちゃんはまだ無事?」

 すると、白崎は少し落ち着いた様子でそう言った。

 

「や、八重樫さん....? ぶ、無事だったはずだけど....八重樫さん、三人が落ちてから随分

 人が変わっちまって....単独行動も多くなって時間はある時は剣を振るって....天之河とも

 仲違いしちまって....ずっとピリピリしてて口調もキツくなっててさ....」

「そう....先生」

 遠藤の言葉を聞き、白崎は心配そうな表情で俺を見てきた。

 

「....好きにしていいぞ」

「ありがとうございます」

「ジャック、白崎について行ってやってくれ。敵は全部解体しても良いぞ」

「本当! やったー!」

「行くならさっさと行ってこい。間に合わなくなるぞ」

「分かりました! ハジメくん」

「うん。遠藤くん、今回は八重樫さんに免じて助けるよ。だから早く案内してくれる?」

「ほ、本当か! だったら今すぐ....!」

 そう言って遠藤が立ち上がった時、応接室の扉が勢いよく開けられた。

 

「し、支部長! 大変です!」

「どうした!」

「ま、魔物が! オルクス大迷宮から魔物達が町に出てきました!」

 

 

 

 

 

 

 

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