人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている   作:アイリエッタ・ゼロス

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天と地ほどの戦力差

 雫side

 

「(ここまでか....)」

 私は今、ここで死ぬのだと悟っていた。迷宮の九十層に着いた私達は魔人族の襲撃にあった。

 本来なら九十層の異変に気付いた時に撤退すれば良かったのだが、光輝が余計なことを

 言ったせいで撤退が遅れ魔人族の襲撃にあってしまった。一度はその場で戦ったのだが、

 魔人族の戦力は私達の想像よりも多く、隙を見て撤退することにした。それと同時に私は

 遠藤君をここから撤退させた。その理由はメルドさんへの救援要請と、上手くいけば地上に

 いる冒険者達の救援も呼べると思ったからだ。だが、結果は甘くなかった。身を潜めていた

 私達に気づいた魔人族は私達が隠れていた場所を攻撃してきた為、私達は外にでなければ

 ならなくなった。その出た先にいたのは魔人族と魔人族の使役する魔物、そして四肢を砕かれ

 全身血まみれのメルドさんだった。そのメルドさんの姿を見た光輝は暴走して魔人族に突貫。

 一度は軽くあしらわれ敗北をしたのだが、突然のパワーアップをして魔人族を圧倒。そして、

 あと一手で殺せるというところで光輝は魔人族を殺すことに動揺して剣を下ろした。その隙を

 見逃さなかった魔人族は私達を攻撃してきた。その状況で私が出来る事は魔人族を殺すことだと

 思い魔人族に斬りかかったのだが、今の私ではまともに動けず、巨大な魔物の攻撃を受け私は

 地面に倒れていた。

 

「(身体も動かないしあの攻撃を避けるのは無理ね....ごめん香織)」

「....一度くらい、私を助けてくれる王子様と会いたかったな」

 そう呟き、私は魔物の攻撃を見ないために目を閉じた。だが、魔物の攻撃が来る前に、突然

 天井が崩れる音が聞こえてきた。何事かと思い目を開くと、私に攻撃しようとしてきた魔物が

 粉々に潰されていた。そして、魔物がいた場所には巨大な斧を肩に乗せた人がいた。

 

「(誰....?)」

「んー、丁度いい所に落ちれたな。んで、状況は....」

「(今の声....)」

 声からして、そこにいる人は男の人だった。そしてその男の人の声に、私は聞き覚えがあった。

 

「水月先生....?」

「....なるほど、大体想像がついた」

 そう言うと、男の人は私の方に歩いてきた。そして、男の人は私の前でしゃがんだ。

 

「....よく頑張ったな、八重樫。あとは任せとけ」

 私にそう言ってくれたのは、あの時奈落に落ちた筈の水月先生だった。

 

「水月、先生....!」

「そこ動くなよ。そろそろ....」

 水月先生がそう言うと、水月先生が落ちてきた穴から巨大な水の槍と白い鎖が落ちてきた。

 その白い鎖に乗っていたのは....

 

「雫ちゃん! 無事!?」

「香織....!?」

 あの時、南雲君を追いかけて奈落に落ちた香織だった。だが、以前とは少し姿が違っていた。

 

「ごめんね遅くなって....! 今治すから! "聖天"!」

 香織がそう言うと、私の傷は一瞬にして治った。

 

「良かった、間に合って....」

「香織....本当に、香織なの....?」

「うん。あの時ハジメくん追いかけて奈落に落ちた香織だよ。....ただいま、雫ちゃん」

「香織....香織!」

 私は目の前にいる人物が香織本人だと分かり抱き着いてしまった。そして、私は何故か涙が

 止まらなくなった。

 

「白崎、お前八重樫ちゃんと守っとけよ」

 そう言って、水月先生は魔人族の方に歩いて行った。

 

 ~~~~

 立香side

 

「さてと....テメェがこの魔物の統率者だな?」

 八重樫から離れ、俺は目の前にいる女に向かってそう聞いた。

 

「....だと言ったら」

「殺すだけだ」

 そう言って、俺は真横に向かって戦斧を振り下ろした。俺が振り下ろした先には、キメラが

 いた。

 

「見え見えのステルス奇襲なんざ意味ねぇぞ」

「立香、そろそろ暴れても良い?」

「あぁ」

 俺はそう聞いてきたメルトにそう返すと、メルトの姿は一瞬にして消え、巨大な亀の魔物を

 粉々に斬り裂いていた。

 

「なっ!?」

「よそ見してる暇あんのか」

 そう言いながら、俺はルーン魔術を飛ばした。飛ばしたルーンは様々な属性の魔法に変わり、

 魔物達を次々と殺していった。だが、魔人族は魔物を盾にしながらどうにか攻撃から身を

 守っていた。

 

「このっ....!?」

 魔人族は俺を睨むと、俺に向かって両手を向けた。すると、俺の頭上に魔法陣が現れた。

 頭上の魔法陣からは謎の煙が放出されたが、特にダメージの様な物を感じなかった。

 

「(見せかけの煙か?)」

 そんな事を思いながら俺は戦斧で煙を振り払い、頭上の魔法陣を破壊した。

 

「本当に....何なのさ....上級魔法が意味をなさないなんて、あんた、本当に人間?」

 魔人族は膝をつき、俺を見てそう言ってきた。

 

「半分は人間だ。もう半分は人間辞めたがな」

 俺はそう言いながら魔人族の方に歩いて行った。

 

「ま、テメェも運が悪かったな。さっさとこいつ等始末してりゃ死なずに済んだのにな」

「本当だよ....こっちの戦力が秒で消されるなんて....想定外も想定外だよ....」

 そう言った魔人族の首に向かって、俺は戦斧を向けた。

 

「そりゃそうだ。安心しろ、痛めつけて殺す趣味はないんでな。一瞬で首を落としてやるよ」

「....ま、拷問されて凌辱されるよりはマシだね」

 魔人族はそう言うと身体の力を抜いた。

 

「はぁ....いつか、あたしの恋人があんたを殺すよ」

「安心しろ。その恋人、お前のもとに送ってやるよ」

 そう言って俺が戦斧を振りかぶった瞬間....

 

「待て! 待つんだ、水月先生! 彼女はもう戦えないんだ! 殺す必要はないでしょ!」

 天之河が俺に向かってそう言ってきた。

 

「捕虜に、そうだ、捕虜にすればいい。無抵抗の人を殺すなんて、絶対ダメだ。俺は勇者だ。

 水月先生も仲間なんだから、ここは俺に免じて引いて....」

「....だとよ」

「冗談....生き恥晒すつもりは無いよ」

「....アンタ、名前は」

「....カトレア」

「そうか....その名前、覚えておこう」

 そう言って、俺はカトレアの首を戦斧で落とした。カトレアの首と胴体は綺麗に分かれ、

 痛みをほとんど与えることなくカトレアを殺すことができた。

 

「何故、何故殺したんだ....殺す必要があったんだ....」

「(まだ寝ぼけたこと抜かしてんだな....)」

 そんな事を思いながら、俺は戦斧を肩に乗せた。そして、カトレアの遺体を燃やそうとした時、

 頭上から何かが崩れる音が聞こえてきた。俺は咄嗟にその場から引くと、俺がさっきまでいた

 場所に大量の赤い剣が落ちてきた。そして、剣に続くように水色の炎の竜が降りてきた。

 

「....」

「(何やっとんだ二人とも....)」

 俺は目の前で起きている状況に頭痛を覚えながらそう思った。

 

 

 

 

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