人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている 作:アイリエッタ・ゼロス
「....一応全員いるな。じゃ、とっとと外に出るか」
俺は背後に白崎が運んできたそう言った。そして、出口に向かってしばらく歩き、外に
出ると....
「な、何だこれは....」
背後を歩いていたメルドがそう呟いた。俺達の目の前に広がる光景はそれはまぁ酷かった。
入り口近くには大量の魔物と冒険者や門番の死体が転がっており、建物のいくつか倒壊して
いた。
「水月....これは一体....」
「魔物が遠藤を追っかけた結果だ。おかげで迷宮の魔物が地上に出たんだよ。で、迷宮の近くに
いた門番や冒険者は全滅。ま、この様子見る感じ、残していったメンツが全滅させたみたい
だけどな」
「残していった....?」
「おかあさーん!」
そう話していると、俺に気づいたジャックが走ってきた。
「ジャック」
「おかあさん! 沢山解体したんだよ! 褒めて褒めて!」
「あぁ。ありがとなジャック」
「す、水月先生....おかあさんってどういう....というか娘いたんですか!?」
すると、抱きかかえていた八重樫がそう叫んだ。
「マジの娘じゃねぇよ。この子も俺の仲間の一人だ。というか、そろそろ下ろすぞ」
俺はそう言って近くの座れそうな瓦礫に八重樫を下ろした。
「ジャック、南雲達はどうした」
「あそこ」
ジャックが指差した先には南雲達がいた。すると、南雲は俺に気づいたのかユエ達を連れて
こっち向かってきた。
「水月先生。全員無事だったんですね」
「ギリギリだったけどな。そっちは問題なく終わったか?」
「はい」
「そうか。というかティオ、お前も出てきてたのか」
「すまぬ。ミュウ殿が南雲殿を迎えに行くと行ってのぉ....」
「なるほど」
そう話していると、精鋭部隊とみられる連中をロアが連れてきた。
「水月! この状況は....」
「ロアか....見ての通り、全部片付いた跡だ。勇者は全員生きて回収、魔物も既に全滅だ」
「そ、そうか....本当にどうにかするとはな....ホルアドのギルド支部長として礼を
言わせてくれ。ありがとう」
「気にすんな。それよりも、怪我人や亡くなった奴等の対応してやれ」
「あぁ。報酬については後々ギルドの方で相談させてくれ」
「いらねぇよ。俺等に渡すぐらいなら町の復興に使え。こっちは幸い金に困ってねぇからな」
「い、良いのか!?」
俺の言葉にロアは驚いた表情に変わった。
「あぁ」
「な、何から何まで本当にすまない....この借りはいつか返させてくれ!」
そう言うと、ロアは精鋭部隊に指示を出して何処かに歩いて行った。
「さーて....やること終わったし、そろそろ....」
「水月、少し良いか」
俺達もそろそろ立ち去ろうと思った時、メルドが俺の名前を呼んだ。
「....何だよ」
「水月....助けてくれてありがとう。そしてすまなかった。またお前達に救われてしまったな....」
「別に礼は良いっての....というかメルド、お前こいつ等に人殺しの覚悟付けさせて
なかったのか?」
俺はさっきの状態を見て思った事を聞いた。
「あぁ....もう少し、あと少し、これをクリアしたら、そんな風に先延ばしにしていてな....」
「それでこのザマか....正直生きてたから良かったが、あまり笑えねぇぞ?」
「お前の言う通りだ....俺は教育者としては半端だな....」
「ま、次はこうならねぇようにしっかりやってくれよ? 一応、お前からの謝罪は受け取る」
「....あぁ」
「さて、じゃあ今度こそ....」
「南雲! お前一体香織に何をしたんだ!」
「....」はぁ
「(今度は何の騒ぎだ....)」
そう思いながら声の方を見ると、何故か傷が治って目が覚めた天之河が南雲を問い詰めていた。
「おい白崎、これ何の騒ぎだ」
「先生、実は....」
白崎にそう聞くと、事の経緯を話し始めた。何でも白崎が南雲とイチャついていたのを見た
八重樫が白崎に付き合っているのかと聞き、白崎が付き合っていると答えると天之河が騒ぎ
始めたらしい。天之河の傷が治っていたのは白崎が全員自分で動くことができるために迷宮内で
回復魔法を使ったかららしい。
「アホらし....」
そう呟きながら、俺は言い争いの現場に向かった。
「おい天之河。白崎が誰と付き合おうが勝手だろ。何でテメェが騒ぐ」
「協調性もやる気もない、オタクな南雲を香織が好きになるわけないじゃないか! 南雲が
何かして香織はそう言っているんだ!」
「ガキの癇癪か....白崎は単純に好きで南雲と付き合ってんだよ。普通に告白して普通に
付き合ってる。別に南雲は何もしてねぇよ」
「そんなはずが....!」
「あるんだよ。何なら南雲が何かしたってより白崎の方が南雲にしてる。この前も南雲の飯に
薬混ぜたよな白崎」
「な、何で知ってるんですか!?」
俺が白崎に向かってそう言うと、白崎は驚いた表情をした。
「ユエから聞いた」
「ユエちゃん!」
「あの、先生....薬って....」
「媚薬」
八重樫が薬の事を聞いてきたので俺はそう答えた。
「びやっ....!?」
「あぁ。その日の晩、コイツ等の部屋うるさかったし。お前等ちゃんと避妊はしてんだろうな?」
「「....」」
「....おい」
「だ、大丈夫です! 妊娠の前兆は今のところないので!」
「そういう問題じゃねぇわ....」はぁ
俺が呆れながらそう言うと、天之河は震えていた。
「南雲....! よくも香織を洗脳して!」
「今の会話のどこに洗脳の余地がある? お前アホか?」
「香織がそんな事する筈が....!」
「お前は白崎の何を知ってんだ....お前がやってんのはただの理想の押し付けだ。人に理想を
持つのは勝手だが、その理想を押し付けんじゃねぇよ」
「....立香、そろそろ行きましょ。私、くだらない妄言に付き合う気はないわよ」
すると、メルトが機嫌悪そうにそう言ってきた。
「分かってるよ。....お前等、そろそろ行くぞ。これ以上ここに用は無いからな」
そう言ってここから立ち去ろうとした時、天之河が俺の前に立ち塞がった。
「行かせないぞ! 香織、行ってはダメだ! これは、香織のために言っているんだ! 二人を
よく見るんだ。女の子を何人も侍らして、あんな小さな子まで....しかも兎人族の女の子は
奴隷の首輪まで付けさせられている。それに水月先生は義足の女の子と小さな子にあんな露出の
高い服を着せている。女の子に至っては自分の事をおかあさんと呼ばせている。二人は女性を
コレクションか何かと勘違いしている。最低だ。人だって簡単に殺せるし、強力な武器を持って
いるのに、仲間である俺達に協力しようともしない。香織、二人に付いて行っても不幸になる
だけだ。だから、ここに残った方がいい。いや、残るんだ。例え恨まれても、君のために俺は
君を止めるぞ。絶対に行かせはしない!」
「(話なげぇな....)」
「君達もだ。これ以上、その男の元にいるべきじゃない。俺と一緒に行こう! 君達程の実力なら
歓迎するよ。共に、人々を救うんだ。シア、だったかな? 安心してくれ。俺と共に来てくれる
なら直ぐに奴隷から解放する。ジャックもおかあさんなんて呼ばなくて良いし、メルトだっけ?
君ももう無理に戦わなくていいんだ!」
「(よし殺す)」
そう思って拳を握り締めた瞬間、誰かに腕を掴まれた。掴まれた腕を見ると、いつの間にか
背後に現れた巌窟王が俺の腕を掴んでいた。
「....落ち着け。守った町を焼け野原にする気か」
「どうだろうな」
「相も変わらずその女の事になるとIQが下がるな....」
そう話していると、今度はジャックが俺の服を引っ張ってきた。
「おかあさん」
「何だジャック」
「あの人、マーリンやアラフィフのおじちゃんより胡散臭い」
その言葉に、俺と巌窟王とメルトと清姫は目を丸くした。そして顔を合わせると笑いが
止まらなくなった。
「ククク....! アッハッハッハ! そうか! あいつ等より胡散臭いか!」
「うふふふ....これは相当なものですね」
「ジャック、アナタ最高よ!」
「あー、マジで笑いが止まんねぇ....!」
「何がそんなに面白い! 水月立香! 俺と決闘しろ! 武器を捨てて素手で勝負だ! 俺が
勝ったら、二度と彼女達には近寄らないでもらう! そして、香織とそこの彼女達も全員解放
してもらう! それと魔人族を倒した力も俺達に渡してもらうぞ!」
「お、おい光輝!」
「アッハッハッハ! 良いぜ、別に。ただ、今すぐやるのはごめんだ。お前、傷癒えてないだろ?
そんな状態でやって負けて文句言われるのは鬱陶しいからな。まぁ二日くれてやるよ。その後、
決闘でもなんでも相手してやるよ。メルド、丁度いいからお前が審判やれ。メルドが審判なら
お前も文句ないだろ?」
「良いだろう! なら二日後に決闘だ! 逃げるんじゃないぞ!」
「そっくり返してやるよ。行くぞお前等」
そう言って、俺は南雲達を連れてこの場から離れた。