人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている 作:アイリエッタ・ゼロス
メルドside
「....」
「(参ったな....)」
様々な事が起きた次の日、俺は一人宿の外でそう考えていた。俺の悩みの種は明日に
行われる水月と光輝の決闘の事だった。ハッキリ言って、俺は光輝が水月に勝てる確率は
0だと思っていた。
「(魔人族を壊滅させる力にあの異常な殺気....何より単騎でベヒモスを倒すほどの腕....
力づくにでも決闘を止めるべきだった....!)」
「....何頭抱えてんだメルド」
すると、突然誰かに声をかけられた。声の方を見ると、そこには飲み物を持った水月がいた。
「水月!? こんな所で何を....!」
「ただの散歩だよ。そしたらお前が頭抱えてたから気になってな」
「そ、そうか....」
「で、悩みの種は俺か? それともあの勇者か?」
「....どっちもだ」
「あっそ。お前も貧乏くじ引かせられる立場だな。同情はする」
そう言いながら、水月は飲み物を飲んでいた。
「あぁそうだ。丁度いいから勇者に一つ伝えといてくれ」
「な、何をだ?」
「明日の決闘、お前だけじゃ勝負にならんだろうから仲間参加させても良いぞって。南雲を
落とした奴でも良いしいつも一緒にいる脳筋でも良いし。人数は何人でも良いぞ。ちなみに
こっちは俺一人でやるから。何人増やそうが一人だから無駄な心配はいらないって。じゃ、
伝えたからな」
「お、おい水月!」
水月はそれだけ言うと人混みの中に消えていった。そして、俺の悩みの種は再び増えて
しまった。
~その日の夜~
俺は全員を食堂に集めた。
「全員集まったか」
「メルドさん、急にどうしたんですか?」
「明日の決闘の事についてだ。今日の昼、水月から一つ伝言があった」
「伝言、ですか?」
「あぁ。明日の決闘、光輝以外も参加させても良いとのことだ。一人じゃ相手にならんからと。
何人増やしても良いし向こうは一人しか出さないと言っていた。....まぁ、俗に言うハンデと
言うやつだ」
「あの人は....! 俺をバカにしているのか!」
すると、光輝は机を叩きながらそう叫んだ。
「お、落ち着けよ天之河! 逆に考えてみろって! これはチャンスだぜ!」
すると、大介が光輝に落ち着かせるようにそう言った。
「檜山?」
「向こうが何人でも良いって言ってるなら数で押しきりゃ良いじゃねぇか! 勝ったら白崎達が
戻ってくるんだ! なら、ここは使えるものは何でも使おうぜ! 俺達も力貸すからよ!」
大介の言葉に、いつも一緒にいる三人も頷いていた。
「光輝、俺も手を貸すぜ。言われっぱなしってのもムカつくからな」
「龍太郎....あぁ! 絶対に勝って、香織達を取り戻そう!」
「....」
「(止めるべきか....いや、俺に止める資格はないな....)」
俺は複雑な感情を抱えながらこの状況を見ているしかなかった。
~次の日~
「はぁ....マジで来たのか。余程勝つ自信があるのか、それともただのアホか....」
次の日、この町の闘技場に向かうと既に水月がいた。
「ま、そんな事はどうでもいいか。で、誰がやるんだ?」
「俺達六人だ!」
「あっそ。じゃあ参加しねぇ奴等は客席の方に行け。パイセーン! ちょっと来てくれ!」
水月はそう言うと客席の方に向かってそう叫んだ。すると、客席の方から一人の眼鏡の女が
下りてきた。
「お、おい! そっちは一人じゃねぇのかよ!」
突然の増援に大介はそう叫んだ。
「一人に決まってるだろ。パイセンには頼みがあるから呼んだんだよ。黙って見とけ」
そう言うと、水月は来ている上の服を脱いだ。その服の下にある肌を見て、俺達は全員言葉を
失った。
「な、何だあの傷は....!?」
水月の肌は全身に深い傷が残っており、その傷の形は様々だった。
「(あれほどの傷を負えば普通は死んでいるぞ!? いやそれ以前に、何処であんな傷を....!)」
「じゃ、パイセン。頼みますよ」
「はいはい」
水月は女にそう言うと右腕を横に伸ばした。その伸ばした腕を、女は何処からか取り出した剣で
斬り落とした。
「なっ!?」
「はい、これで良いんでしょ?」
「ありがとなパイセン。さ、じゃあ始めるか」
水月は何事もなかったかのように服を着てこっちを見ていた。
「ま、待て水月! どうして腕を!」
「ハンデだよハンデ。これぐらいのハンデないと勝負にならんだろ」
「ハンデ....!? だからといって腕を落とす奴がどこにいる!」
「ここ」
「アンタは....! どこまで俺達を舐めているんだ!」
「舐めてるって....一方的な蹂躙していいのか?」
「舐めてんじゃねぇぞクソ教師が!」
「はいはい。そういうのは勝ってから聞いてやるよ」
「メルドさん! さっさと始めましょう! 一瞬で終わらせます!」
光輝達はそう叫ぶと、それぞれの武器を構えた。
「あ、あぁ....では、これより水月と選抜メンバーの決闘を始める! お互い、勝ったら何を
求める」
「香織達の解放と武器をこちらに渡してもらう!」
「別に俺は何もいらねぇが....強いて言うなら、こっちに変に絡んで来ないぐらいにしておくか」
「確かに聞き届けた。決闘はどちらかが降参、もしくは戦闘不能になった瞬間終了だ。決闘の
やり直しは行わん」
「はい!」
「あぁ」
「それでは、決闘開始!」
~~~~
八重樫side
「雫ちゃん、こっちだよ」
客席の方に行った私は香織に呼ばれて香織達の方の席にいた。
「香織、私こっちにいて良いの?」
「良いよ良いよ」
「いやでも....凄い場違い感が....」
私は斜め前に座っている水月先生の仲間の人達を見てそう言った。
「大丈夫だよ。何もしなきゃ手は出してこないから」
「おねえさん」
香織がそう言っていると、いつの間にか私の目の前に銀髪の女の子がいた。
「おねえさんは、おかあさんの敵?」
女の子はそう言いながら腰のナイフに手を置いていた。
「わ、私は....」
「ジャック、止めておきなさい。ここで解体したら立香に怒られるわよ」
すると、銀髪の女の子の背後にペンギンのパーカーを着た女の人がいた。その女の人は銀髪の
女の子を抱えた。
「メルトー! 離してよー!」
「ほら、大人しくしておきなさい。そろそろ始まるんだから」
そう言うと、女の子は女の人に連れて行かれた。
「ねぇ香織....今の女の人、この前はいなかったわよね」
「え? いたよ。黒い服に露出が凄くて膝に棘がある義足の人いたでしょ? あの人だよ」
「あの人!? 全然姿違うじゃない!」
「そうだよ。二つの姿あるらしいから」
「いや、そんな当たり前みたいに言われても....」
そう驚いていると、闘技場のステージにいる水月先生が服を脱いで右腕を斬り落とされるのが
見えた。
「うわー....痛そう....」
「痛そうってレベルじゃないでしょ!? 水月先生何やって....!」
「ハンデらしいよ。本気でやっても仕方ないらしいから」
そう言って、いつの間にか背後にいた南雲君がそう言った。
「南雲君!?」
「八重樫さんこっちに来たんだね。はい、これ飲み物。香織も」
「あ、ありがとう....」
「ありがとうハジメくん」
「というか、何でそんな二人は冷静なわけ!? 腕斬り落とされてるんだけど!? それにあの
身体の深い傷! どう考えても普通じゃないでしょ!」
「まぁ先生、普通じゃないから....」
「そうだね。それに水月先生の仲間の人なんて賭け事始めてるよ」
南雲君がそう言って水月先生の仲間の方を見ると、水月先生の仲間は会話をしていた。
「どう? 後輩何人殺すか賭けない?」
「良いわよ。私は0」
「二人ほどでしょうか....」
「0だな」
「えー....おかあさんなら全員解体できそうだよ!」
「ジャックの言う通りね。私も全員よ」
「なら、一番外した人には今日の晩御飯を奢ってもらおうかしら」
「ま、妥当なところだな」
「....ね? 僕達よりも冷静な人いるから。もうあれぐらいじゃ驚かなくなったよ....」
「(言っちゃ悪いけどイカレてるでしょ....)」
私はドン引きしながらそう思っていた。
「ま、戦い見たらもっと驚くと思うよ」
香織の言葉を最後にして、決闘の開始の宣言がされた。