人理修復を成し遂げたマスターはありふれた世界じゃ最強に決まっている 作:アイリエッタ・ゼロス
立香side
「あーあ....」
俺は粉々に砕けて地面に落ちていくビー玉を見てそう呟いた。
「やったなお前。これで檜山のステータスは二度と戻らねぇぞ」
「何だと!?」
「当たり前だろ? 物が壊れちまったんだから。人質みたいなもの相手が持ってるならもうちょい
頭使えよ。じゃないとこうなるぞ」
「ふざけるな! よくも檜山のステータスを!」
「おいおい....八つ当たりかよ」
そう言いながら、俺は勇者の剣を指で止めた。
「なっ....!?」
「見た目に比べて軽い剣だな。振る速度は遅いしどこに振るかも簡単に読める。お前、本当に
訓練してたのか?」
「当たり前だ! アンタと一緒にするな!」
「俺だってテメェと一緒にされるのは嫌だわ」
そう言いながら俺は剣から指を離し距離を取った。
「というか、お前本当にバカだな。そいつが仲間? 冗談は寝てから言えよ。そいつは仲間でも
なんでもねぇだろ? ただの殺人未遂の犯罪者で女を道具としか思ってねぇクズだぞ?」
「勝手なことを言うな! 檜山はそんな奴じゃ....!」
「さっきの話聞いてまだそう言うのか? 本当におめでたい頭してるなお前」
「黙れ!」
勇者はそう叫びながら剣を振るってきたので俺は避けながら言葉を続けた。
「あんなクズは擁護するのに南雲は擁護しねぇ....お前にとって仲間ってのは自分を持ち上げて
くれる奴のことを言うんだな」
「そんな事はない!」
「言動が一致してねぇぞ? 事実、お前は南雲を非難しただろ? 自分が言っていることは
正しい、自分の意見に従わない人間は間違っている。ご都合解釈が凄いな。ここまで歪んで
いる人間はそうそう見ねぇよ」
「俺は歪んでいない! 俺は人として間違ったことを言ってなんか....!」
「それがご都合解釈だって言ってんだよ」
そう言って、俺は勇者の剣を踏んで動きを封じた。
「あの魔人族を殺すな? 敵は殺さないと被害が増える。もしもあの女が自爆技を持ってたら
何人が死んでた? 戦争に参加して人を救う? 敵も殺せない奴が何を救える? 南雲が
不真面目? 訓練のない時間は図書館に籠って勉強をしていた南雲が不真面目か? 白崎が
南雲と付き合うのがおかしい? 別に誰と付き合おうが白崎の勝手だろ? ....結局お前は、
自分の都合の良い妄想で喋ってるのにすぎねぇよ。行動と言動が不一致、自分の気に入らない
ことは目を背けて自分に取って都合の良い解釈をする。みっともねぇな....」
「黙れ黙れ黙れぇぇぇ!」
勇者はそう叫ぶと力づくで剣を引き上げた。
「"限界突破"!」
そう叫ぶと、勇者の身体は光り出した。
「相手の挑発に乗って必殺技使うのはナンセンスだな」
「うるさいうるさいうるさい!」
「はぁ....八重樫もこいつの尻拭いさせられて、流石に同情するな」
「俺がいつ雫に尻拭いを!」
「あの時の戦いがそうだろ? お前が魔人族を殺さないから代わりに八重樫が殺そうとした。
本当はお前がやらなきゃいけない事を八重樫がやろうとする。これのどこかが尻拭いじゃ
ねぇんだ? というかお前、俺と南雲に向かって女をコレクションだとか抜かしたよな?」
「本当の事だろう!」
「その言葉、ブーメランになってるって気づいてるか?」
「何だと!」
俺は再び剣を指で止めてそう言った。
「白崎や八重樫が自分の傍にいるのは当然とでも思ってるんだろ? ま、あいつ等美人だし他に
比べりゃ周りの目を引くもんな? 当然、そんなあいつ等は自分の様な特別な人間の傍に
いるのが当たり前だと思ってるんだろ? 自分は勇者だもんな。そして、ユエ達も相当な
美人だ。そんなあいつ等も俺や南雲みたいなクズよりも自分の傍にいるのが正しいと思ってる。
だからあんな言葉が出るんだよ。俺達の背景にどんな事情があろうと関係ない。だって俺は
勇者だ。正義の味方だ。俺以外の言葉は全部間違ってる。正しいのは俺だ....」
「勝手なことを言うなぁぁ!」
勇者はそう言って剣を振ろうとするが俺の指で止められているためびくとも動かなかった。
「結局、女をコレクションだと思ってるのはお前だよ。自分のステータスを上げるための
アクセサリー、装飾品だと思ってるんだよ」
「あぁぁぁぁぁ!」
勇者はもう言葉を発することはせず力づくで剣を動かそうとしていた。
「それともう一つ。勇者ってのはただの肩書だ。勇者だからって周りに良い女がいるわけじゃ
ねぇ。そいつの行動が素晴らしい、誰か思う心に惹かれるから周りに良い女が集まるんだよ。
お前はそもそもを勘違いしてんだよ自意識過剰人間。はぁ....そろそろ飽きてきたな」
そう呟いて、俺は剣から指を離し勇者を蹴り飛ばした。
「さてと....そろそろ終わらせようか。来いよ勇者様。テメェの本気、真っ向から潰してやるよ」
そう言って俺は指で挑発した。すると勇者は目を血走らせながら剣に魔力を込めた。
「水月立香ァァァァァァ!」
そして、勇者は魔力が込められた剣を俺に振り下ろした。
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八重樫side
「水月先生!」
光輝の必殺の一撃を、水月先生は何もすることなく受けた。そして水月先生のいる場所は
巨大な光と砂埃に包まれた。
「香織! 水月先生が!」
私は隣に座っている香織にそう叫んだ。
「....多分、大丈夫だよ雫ちゃん」
だが、香織は焦った様子を見せず砂煙の方を見ていた。
「でもっ! 今の一撃は....!」
「....雫ちゃん、あれ見て」
私の焦った言葉を聞きながら、香織は砂煙を指差した。そこに見えたのは....
「えっ....?」
謎の障壁を張って光輝の一撃を防いだ水月先生がいた。そして、光輝の持っていた剣は
粉々に砕け、光輝は驚いた表情をしていた。
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立香side
「そん、な....」
「....所詮、お前の覚悟はこの程度だ。キリシュタリアや、ドクターの様に覚悟も何もない
人間。理想だけを口にして現実を知ろうとしない....それがお前という人間の本質だ。ホント、
可哀想な男....」
俺は障壁を解除して地面に膝から崩れ落ちた勇者の首を掴んで持ち上げた。そして爪を立てて
勇者のステータスを吸収してビー玉に変えた。
「じゃ、テメェはもう寝てろ」
そう言って俺は絶望して地面に崩れ落ちてる檜山に向かって天之河を蹴り飛ばした。蹴った時に
天之河の骨の折れる音が聞こえ、檜山と天之河は壁に激突して血を吐いていた。
「はい、掃除終わり。メルド、アナウンス」
「あ、あぁ....決闘終了! この決闘、水月の勝ちだ!」
「(もうちょいハンデ増やすべきだったか....)」
そんな事を考えながら俺は客席に繋がる道に向かった。