盈月の儀で八人目になったのですが、何故か英霊がいません 作:飽き性なSS作家
「よーし、今日は大漁大漁。大物は今夜の馳走にして、他は干物か、身を叩いて味噌とあえておこう」
カヤちゃんと別れたあと、すぐに釣竿と籠を背負い、海へ。結果は大漁。面白いぐらいに鰺と鱚。おまけに大物は黒鯛と舟を出さなければ捕れない赤鯛が背中の魚用の籠に入っている。
味噌はなんにでも合うし、多少の保存がきくから便利だ。ヤバい考えただけで涎出てきた
頭は夕餉のことでいっぱいになり、顔がにやけて仕方ない。昨日の事などなかったように、ウキウキしながら上野に到着
「さて、ネギはあるかな。叩いた身に味噌だけでもいいけど。刻みネギ入れると食感もいいし、少ないけど野菜も食べられるからね」
上野は久しぶりに来たので、野菜売りの店はまだあるのだろうかと思っていると何だか人だかりができていた。何か珍しい物でも売っているのかと思い、回り込んで見てみるとそこには
頭に狐?の耳を生やした少女がいて、一目見た私は身震いをしてしまった
少女は可憐なのに何故かって?あきらかに人ならざる者なのに、周りの人はその存在を疑うどころか、自らの家で囲おうとしている。それだけ妖力が強い妖なのだろう
あんなのに関わってはいけない。すぐに踵を返しその場を後に
「そこのお方?少しよろしいですか?」
「・・・」
する前に声をかけられた。かけられてしまった。おまけに皮膚からじわじわ感じる重たい気、これは選択しだいで完全に食い殺される末路になりかれない
「な、なんでございましょうか。可憐なお方」
振り返ると先程の少女がゆらゆらと体を揺らしながら、私の顔を見ていた。おまけに周りの人も残念そうな、悔しそうな、親の仇を前にしたような、それぞれ色んな顔をしていた。その羨ましい役をわたせと思うなら、ぜひ渡したい。なんなら、誰か前に出てきてくれ
「わたくしね。この世で、いっとう美しいものを探していますの」
「美しいもの?」
「はい。それで、あなた様が思う美しいものは、なんでございますか?」
「・・・」
どうしよう。美しいものと思うものなど、この人生で何一つ見たことがない。だが、この質問に答えられなければ・・・
「?」
おそらく俺の未来はない
「私が思うこの世で美しいものは愛・・・だと思う」
「愛・・・ですか?」
「ありきたりな言葉でがっかりした?でも、愛は本当に素晴らしいと思う。人の数ほど愛の解釈は違うけれども、他人を慈しむ事は簡単にできることではないからね」
「あなた様は誰かを愛したことはありましたか?」
「そ、それはもちろん」
あった・・・はずだよな
「そうですか・・・うふふっ」
「ッ!?」
なんだあの目は?!一瞬だったが少女の目は、まるで丸々太った獲物に狙いを定めた獣のような鋭い目をした。これは間違いない
「ねえ、あなた様の名前はなんと言いますの?」
「い、因幡
「・・・水雪さま。水雪さま。水雪さま。実はわたくし、寝床がありませんの。なので、水雪さまのお家に一晩泊めてくださいませんか?」
今日の天気は晴れ後、我が家で赤い雨が降るでしょう。なぜなら
「うふふふふっ」
今日、この少女に骨もろとも食われる