盈月の儀で八人目になったのですが、何故か英霊がいません   作:飽き性なSS作家

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評価ありがたや、ありがたや・・・


1日目 夜

「あー・・・やっと一息つける」

 

明日の米を炊くのに使う水がなくなっていたので、水を汲みに井戸に。私と一緒に夕餉を食べたアリアは、少し他愛ない会話をしてから眠りについた

 

・・・食事に眠り薬を入れて正解だった。おまけに味がおかしくならないように薬の量を調整するのは本当に大変だ。火薬庫で頭に蝋燭をさし、おまけに両手に持った松明から火種を落とさないように敦盛をするようなギリギリの作業を、風呂場からアリアが出てくるまでに仕上げなければならないのだから

 

とはいえ、眠っている彼女を野に投げるのは流石に良心が痛むので、布団をしいてあげた。その後、彼女が連れていた白い狐を風呂場に連れていき、体をよく洗った。最後に乾いた布で全身を拭いてあげると体毛の肌触りが更によくなり、狐も仕上がりに満足したのか、お礼だと言わんばかりに私の顔をなめまくり主がいる寝室に向かっていった

 

 

 

そして彼女が名乗った時に言った『タマモ』だが。昔の書物にその名があった。まさか安倍泰成が見破り、退治された妖『玉藻の前』だったとは。しかし、彼女のしっぽは一つしかないので、大方殺生石になる前に御霊を九つに分けたのだろう

 

玉藻の前が書かれた書物には安倍家がいかに陰陽師として優秀だったかを語っているが、やるなら徹底的にやらなければ。しらないぞ、力を蓄えた本体がいずれ石を割って出てきて、その時代を生きている人に厄災をふりまくったら

 

・・・あれ?じゃあなんで、彼女は今現れたんだ?そういえばあの痩せた人、令呪がどうとか言ってたけど。まさか

 

「アリアみたいな妖を使って、誰かが戦でもしてるのか?」

 

だとしたら、カヤちゃんの兄はその戦に巻き込まれてる身なのだろうか。だとしたら昨日の小火騒ぎもその一部なのかもしれない。もしそうなら

 

「犯人から損害賠償を請求できる・・・!」

 

長屋等を借りている人から見れば、ただの事故として判断し大工に頼んで直してもらうだけで済むが、貸している私には一銭の得にはならない。だが、破壊した犯人からは慰謝料を取ることができる。つまり、懐が多少潤うこと間違いなし!

 

「よし、明日から聞き込みだ。見つけるぞ犯人、待ってろ慰謝料!」トスッ「・・・トスッ?」

 

水をためた桶を持とうと屈むと突然頭があった位置から何かが刺さったような音がした。ゆっくり上を向くと柱に一つのクナイが・・・

 

「クナイ!?」

 

投げられたであろう方向を見ると忍装束を着た者達がいて、互いの目があってしまった。私は

 

「嘘でしょ?!」

 

私は桶をおもいっきり忍に向かってぶん投げた。幸運な事に投げた桶に入った水は三人の忍の顔面に直撃し、肝心の桶は壁にあたって落ちた

 

「八人目、その命頂戴する」

 

忍の長と思わしき者がそう言うと、全員が刀をこちらに向けて

 

「参る・・・!」

 

私に襲いかかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

「た、玉・・・」

 

しかし、忍はあまりにも()()()()()()。振るわれる刀を私はなんとか避けながら、無我夢中で拳を必死に振るうとそれが顎だったり、みぞおち、男として大事な所に偶然当たってしまった

 

投げられた暗器も壁に刺さったり、あろうことか味方に当たったりで・・・追加で来た忍もあっさり倒れた

 

「・・・アリア、いるなら出てきて」

 

「あら、気づかれてしまいました」

 

長屋の壁の影から、ひょっこりとアリアが出てきた。大きな狐も一緒に

 

「やっぱり。あまりにもできすぎているからおかしいと思っていたんだ。もしかして、私がアリアに眠り薬を仕込んだように、私に何かした?」

 

「いいえ、わたくしはただ水雪様の勇姿を近くで見ていただけですわ」

 

「嘘だー。本当は眠り薬盛った恨みと本当のご馳走を食べるためについてきてたんでしょ」

 

「ご馳走とはなんのことでしょうか?」

 

「人の血肉。だってアリアは九」

 

とぼけるアリアを私は追求しようとした時、真っ黒い巨大な何かが落ちてきた。そして舞っていた砂煙を切り裂くように何かが私に向かって飛んで

 

そして思った。あ、これ死んだ

 

「水雪さま!」

 

アリアの声が聞こえたときには着物の襟首部分が誰かに引っ張られていた。目を向けるとアリアの狐が私の襟首を咥えていて、さっきまで立っていた場所には何かで抉れた跡が残っており、おまけにその背後にあった木が音を立てながら滑るように落ちた

 

それを当たり前のように立ち振るう鎧武者は一体なんなんだ。あれを頻繁に振るうことができれば、相手が鬼だろうがぬえであろうとも一刀両断するだろう

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげぇ・・・」

 

それを受けそうになった私はその太刀筋に感動してしまう。今まで見てきた武士が振るう刀には、錆びのような濁りがあり、見るに堪えなかった。だが、目の前にいる武士(もののふ)はどうだ、禍々しい筈なのに雷のような鮮明な色が刀だけではなく全身に迸っている

 

まさに()()()()()()()()()を生きてきたような・・・はっ!そんな事より逃げ、残念回り込まれました。顔をあげると面頬の向こうから鋭い視線が。ヤバい、あまりにも冷たいのでか、カラダだけがウゴケナイ

 

「貴殿を八人目のマスターとお見受けする」

 

「ま、マスター?その言葉、昨日も少しだけ耳にしたよ。私が知らないだけで最近の流行り言葉なのか?」

 

「ならば話が早い。我が主のため、その命頂戴つかまつる。───お覚悟を」

 

「うわっ!ま、本気(マジ)?!」

 

勢いよく振られた刀を命からがら避けることができた。

 

 

・・・前髪がほん少し斬られたのと、右手の甲どころか斬られた所から、ボタボタと血が滴るほど右腕を深く傷つけられただけ

 

「ッ!」

 

「水雪さま!」

 

「来るな!」

 

駆け出し、懐から何かを取り出そうとするアリアを私は止めた。アリアが来ても、この偉丈夫は倒せない。というよりアリアと偉丈夫には、なにか決定的な違いがあるように思えてならない

 

「逸れのサーヴァント。・・・成る程、我が主から聞いてはいましたが本当にサーヴァントを召還していないようですね」

 

「昨日はマスターで、今度はサーヴァント・・・。お前ら、一体、なんなんだ・・・」

 

なんかいきなり寒くなったし、目もかすんできた。足も力、入らない

 

「主とは違い、たとえ相手が瀕死だとしても私は甘くありません。これで終いです」

 

「まて!我らの留守を狙い、また現れたかライダー!今度こそ決着を!」

 

「まて、セイバー!誰かが倒れている。戦うなら離れた場所で」

 

なんだろう。誰かはわからないが負傷者を労るどころか、戦うことしか考えて無さそうな気が・・・もう疲れたからいい・・・か

 

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