断頭台…?せめて大司書って呼んでほしいじゃない。 作:システマチック発光ネズミ
今回はちょっと過去編。というかここからしばらく過去編と一級試験編を主に出していきます。
緑髪の旧、友……?
大司書のアウラは大魔族である。過去には“軍勢”の二つ名とともに魔王直下の組織“七崩賢”のリーダーとしても活動していた割と凄い魔族だ。
当然、その立場上いろんな魔族と交流がある。
魔王の右腕、
ものの見事にクセしかない連中である。まぁ魔族なんて強ければ強いほど独善的だから当たり前といえば当たり前だが。
とはいえ。アウラの交友関係(?)がこうなっているのには理由がある。
そも、魔王軍とは?簡単に言ってしまえば、魔王をトップとする複数の仲良しグループの集まりである。当然、魔王からの任務があればそのグループで動く。
では、そのグループの長たちが無理矢理
「んだテメェやんのかこら」「おう上等だンノヤロウ」「スぞテメェオラァ」「おうやってみろや雑魚が」「ぬかせ南方育ちが」「舐めんなよ辺境野郎」
…こうなる。魔族あるあるの一つ、上下関係がはっきりしてないやつにマウントを取ろうとするのだ。結局は魔力の大きいほうが勝つが、そういった意味でもアウラは異端だった。
『本日より七崩賢の一員となる、“軍勢”のアウラだ。そして、現時点を以て此奴を七崩賢のリーダーとする』
くそったれ宰相…もとい、全知のシュラハトによって下された辞令は当時の七崩賢を大きく揺るがした。新入社員がいきなり副社長に任命されたようなものである。当然その命令に納得がいかない者もいた…が。
『…この程度?案外温いのね、七崩賢って。私ってまだ100やそこらしか生きてきてないけど、全然勝てるじゃない』
反対意見は文字通り封殺された。哀しいかな、魔族社会とは魔力量こそ全てであり、アウラの魔力は
およそ二人ほど塵に還り場が落ち着いたあと、アウラはまず戦力と戦法の確認を始めた。“己を知り、敵を知れば百戦危うからず”。孫子の兵法にある通りに、指揮官として自身の兵力を知っておいて損はない。…ただし、それが魔族でなければ。
『…は?戦力を正確に把握していない?……論外、リストアップして出直して』
『戦力はこれ、基本戦術は…え、真正面からの平押し?マジで??…えぇ??なんでここまで生きてるの??』
『支援がメインの部隊ね。うん、特には…ちょっと待って、なにこれ?“世界を覆う呪い”?これ魔王には…言ってない?シュラハトで良いから言ってきなさい今すぐ!!』
『…え、これ貴方しか載ってないわよ?…間違いじゃないって?あー…シュラハトに誰かいないか聞いてきなさい、せめて肉壁は持っておいて損はないわ』
『シュラハト、将軍以上のリストは…あら、ありがと。どれどれ…ねぇ、この“クヴァール”とか“ソリテール”ってなんで七崩賢入ってないの?見る限り私以上でしょこれ』
…とまぁ、大雑把極まりない結果になる。
実際、この時の魔王軍は多少はあった勢いを失いかけていた。未来視ができるシュラハト等にとっては予定通りなのだろうが、そんなことは周囲の者たちが知る由もない。
今魔王を打倒し得る人間が
魔族の常識や誇りを悉く無視した戦法を提案・実践していくアウラには陳情という名のクーデターもありはしたが、しかしたった数年で大幅に勢力を回復させたアウラは七崩賢内の地位を盤石にしていった。
それが
勇者ヒンメルの誕生より、およそ200年前。
「…ほぉ、そうするか。フフ、魔族の誇りもあったものではないな」
「どちらかといえば人間の考えるそれに近いわね。いわゆる“死兵”のような…」
「……なんで貴方達が居るのかしら。結構固めの鍵掛けてたはずなのだけれど」
魔王城は七崩賢“軍勢”のアウラの執務室。本来ならば数々の作戦資料や規格化された魔法の魔導書、魔王軍全体の維持管理に用いられる書類の束が並び立つ事務室は、ある種場違いな二人によって“仲良しな奴が勉強しに来た自習室”のような様子になっていた。
「ああ、あれ?邪魔だったから壊しちゃったわ。…ねぇねぇ、それより。これってどうして思いついたの?」
「意外と脆かったのぅ、あの術式。中身も堅牢に組むべきだぞ?…ふむ、実に効率的な手段だな、この戦法は」
“無名の大魔族”ソリテールと、“腐敗の賢老”クヴァール。魔王と深い関わりのある二人は、あるいは自身の興味故かアウラに対して非常にフランクだった。特にソリテールは、暇があれば突撃してきては過去の戦闘詳報や調査報告を読み漁り、アウラ謹製“人をダメにするソファー”に座って
それに辟易しつつも何処かストレス解消になっていたアウラだが、それはそれとしてこのときばかりはキレたかった。
「…クヴァール。一つ聞きたいのだけれど」
「なんだ?…ほぉ、これは」
「貴方、魔王から前線に加わるよう指示されたわよね。なんでまだいるのかしら」
「あぁ、あれか。まぁ、数日遅れていても取り返しは付くだろうよ」
アウラは激怒した。必ず、このバカタレの大魔族を動かさねばならぬと決意した。アウラには魔族の感性がわからぬ。アウラは、七崩賢である。周囲の声を聞き、軍のためにより有効な戦術を提案実行してきた。ゆえに怠惰に対しては、人一倍に敏感であった。
「…今度の大規模戦闘、主目標はなんだか知ってるかしら」
「……なんだったか」
「勇者よ勇者!しかも過去最高の戦闘力を持つとされる夕焼けの勇者!!」
「ああ、そうだったな。しかしまだいいだろう?確かあと10日はあったはずだが…」
「その10日が命運を分けかねないのよ!前も言ったでしょう?敵戦力の漸減と支援ルートの寸断、その両方を完璧にこなせるのは現状貴方しかいないの。下手打ったらここ100年間の努力が水の泡になるのよ?」
「むぅ…」
言外に『
クヴァール自身、アウラの行動に納得こそすれ、反抗する気はなかった。アウラが必死になってあれこれ動いているのも、長きに渡るこの戦争を『人類と魔族の生存競争であり絶滅戦争である』と捉えている故に。事実、この戦争が真に終結するとすれば、それはどちらかの種族の実質的な絶滅か隷属になるだろう。
「…でも、流石に張り詰め過ぎじゃないかしら?」
「張り詰めなきゃやってられないわ。人類は不定期にバグ個体を生むし、女神とやらは人類に肩入れしてる。シュラハトに無理矢理加入させられたとはいえ、途中で仕事を投げ出せるほど無責任じゃないわよ。…というか、なんで貴方達はここにたむろするわけ?資料なら新設した資料館のほうがあるでしょうに」
「それはもちろん、貴女が見てて面白いからよ?」
アウラは異端である。ヒトに極めて近い感性を持ち、魔法使いとしての誇りなどなく、未知の原理を用いた手段を多く持っている。身体的特徴を除けば人間と同一と言って差し支えないそれは、人類を知りたい者にとっては好都合も良いところだった。
「貴女は私の見たどんな魔族よりも人に近い。生まれてからずーっと人間を“観察”しているけれど、貴女は人間に見紛うほどに人間らしい感情を表しているのだもの。見ていて参考になるわ」
「…そう。じゃあ今度は“感情を模倣する魔法”でも作ってみようかしら」
「“図書館計画”が始まればまとまった時間も取れるでしょうしね」
「なんで知ってるの?…あぁいや、読んだのね」
「ええ、読んじゃった。期待してるわ」
「あれ民間の封印魔法を複数混ぜて保管してたのだけど?自信消え失せるわよ…」
ヒンメルの死亡より、27年後。
「母さま、そろそろ定期観測の時期ですよ。それと、お客様のようです」
「あら、珍しいわね。ありがとうね、エル」
アウラは臆病である。ゆえに”強敵の見分け方”はよく知っている。
外に出て封魔鉱の効果範囲外に出たとたん、
「…まあ、図書館計画はバレているし、いつかは来るだろうと思っていたけれど」
それは魔族きっての変人、知られ得ぬ大魔族。魂の一欠片まで魔族でありながら、アウラを除き最も人間に近い魔族。
「久しぶりね、ソリテール」
「80年ぶりかしら。久しぶりね、アウラ」
「…あ、読者の皆さん、こんにちは。ゴーレム姉妹の
どーも、作者です。
最近はまだ6月だってのに30℃近くなっちゃってヤんなりますね。課外活動とやらで頻繁に外出るのでお金が溶ける溶ける。
はい、現実逃避も限界になったので、真面目にやりましょう。久しぶりに筆を取ったら意外にもサラサラ書けました。リフレッシュはやっぱり大事なんですね。
文字数は4,000字ないくらいと短めですが、頑張って戻していくのであったかい目で見ていただければ。