断頭台…?せめて大司書って呼んでほしいじゃない。 作:システマチック発光ネズミ
ありがてぇ…ありがてぇよぉ……!!
原作のアウラ様も草葉の陰で喜んでくれてるよぉ(多分)…!!
今回は“司書見習いちゃん”のお話です。というかしばらくこれです。
タイトル詐欺して申し訳ねぇ…!
勇者ヒンメルの死から29年後。
魔法都市オイサースト。
大陸北部のキュール地方にある、魔法使いにとっての聖地。
__の、少し南。
グラナト伯爵領は最北端の辺境にて、灰銀の髪の少女が途方に暮れていた。
「…しまったなぁ。お金が尽きた」
「んじゃあ、その杖とかでも売ってみっかァ?俺達みてぇな盗賊が売っぱらってもよォ、二束三文にゃあなるだろォ」
「ダハハハハ、違いねぇ!」
「お頭、さすがの名案でさァ!」
“野蛮”と形容するに相応しい男達が、少女の後ろにある木々からぞろぞろと出てくる。すでに少女は半包囲されており、まさに絶体絶命というべき状況だが。
「ねぇおじさんたち、ちょこっとはお金持ってる?」
「あん?そりゃ持ってるとも、まぁ獲物にやるバカは…」
「じゃあいっか」
「…はァ?」
唐突な会話に盗賊たちは呆気にとられる。しかし、お頭と呼ばれた人物はなにかがマズイと感じたのか、手持ちの短剣を抜き、少女を脅そうとする…が。
「おいガキ、テメェ動いたらブッこ」
「“
盗賊たちの周囲を音もなく青白い光が包み…立っていたのは、少女だけだった。いや、存在していたのは、傷一つない少女と“盗賊たちの着ていた衣服のみ”だった。
「えーと、ひーふーみー…ん、これならご飯代は大丈夫かな!」
盗賊たちの持っていたポーチを漁り、多少の焦げ跡がついた銅貨を手に取る。ここにかの勇者ヒンメルや彼女の師匠でもいれば制止の一言でも掛けそうな行為だが、生憎そんなストッパーは居らず。
「さて、あと数日!頑張ろー!」
快活に叫んだ灰銀の少女は、魔法都市オイサーストに歩を進めていく。
「試験は一ヶ月後になります。また、一級魔法使いの試験は三年に一度となりますのでご注意ください」
「はいはい…あ、あった!二級の認定証!お姉さん登録お願いします!」
「…はい、確認しました。レーヴ二級魔法使いですね」
魔法都市オイサースト。
大陸北部最大規模の魔法都市にして、世界最古の魔法使いが居を構えるこの地に、“レーヴ”と呼ばれた灰銀の少女はいた。
彼女自体に目的は特には無いが、師匠からの“多少は世界を見てきなさい。…ついでに本も蒐集してもらえる?”という言葉を受け、世界一周の旅に出ている。そしていざ北部高原に行こうとすれば、一級魔法使いが居ないと通行できないというではないか。
ならば蒐集ついでに一級魔法使いの称号を取ってしまえ、というノリでオイサーストに来たのだが。
「…むう。いくら探してもおじちゃんいないなぁ」
“オイサーストに来たら歓迎するからおいで”と言っていた知り合いの好々爺がいくら経っても見つからないのだ。
知り合い自体は壮年の一級魔法使いなので、恐らく事務作業でもしてるだろうとアタリを付け、協会の建物内を捜し回っているのだが。すれ違いでもしているのだろうか。
遂にしびれを切らした少女が、師匠に整備してもらったこの
「ん?…もしかしてレーヴかい?」
「あー!“レルネンおじちゃん”!やっと見つけた!」
一級魔法使い、レルネン。
現在最古参の一級魔法使いにして、およそ30年前に一時失踪したゼーリエの捜索隊の一人。
…まぁつまり。アウラに突っかかって吹っ飛ばされた人である。*1
「ほっほっほ…いや、すまないね。試験のあれこれで忙しかったんだ」
「試験って…一級の試験?どんな感じになりそう?」
「うむ…まさに“粒揃い”、と言うべきだね。北部魔法隊の隊長、最年少で三級になった才媛、防御特化の一級魔法使いを斬り殺した問題児、精神系魔法の権威の娘さんに、名のある老獪な宮廷魔法使い。極めつけは“聖杖の証”を持ったエルフだ…今年はとんでもないことが起きるのかもしれん」
聖杖の証といえば。
およそ800年前に教会から分派した魔法管理団体における、最高級の“大魔法使い”に対して贈られる証である。
…つまり、最低でも800年以上生きたエルフがこの試験に参加する。
この事実は、レルネンをはじめとした協会の事務員を大いに困らせた。レルネンが忙しかったといったのも、大半がこのためである。一次試験の内容を鑑みれば、このエルフがとんでもないイレギュラーとなるのは目に見えていた。
「君も試験に?」
「うん、本の蒐集ついでにね。あとここで資格取らないと、北部高原に行けないんだ…三年も待つのは面倒だから、ちょっと本気で行くよ?」
「…そうか。頑張りなさい」
レーヴとレルネンは、さながら祖父と孫のような関係である。
レルネンが図書館に来ては“魔法を見て”とせがまれ。やれやれ、と言いつつ観察しては規格外の火力と精密さに驚かされた。…つまり、レーヴも今試験のイレギュラーなのである。
哀れレルネンの胃は爆発四散…とはいかないが、残りの一ヶ月で協会に通うタイミングが増えるのは確実であった。
魔法都市オイサーストは、中央から北部における流通の要所でもある。そのため多くの人がここを通り、多くの商人がここに拠点を持つ。“大市場”と言えるような様相を呈する商業区以外でも、このオイサーストは金回りがいい。つまり何が言いたいのかというと…
「お金が無い…。」
「おやつ抜きは確定ですね…」
「しばらくは節約生活かぁ…」
フリーレン達はピンチに陥っていた。金銭的に。
なんといってもここは物価が高いのだ。少し手前にあるグラナト伯爵領からその兆候は見え隠れしていたが、ここは特に高い。
例えるなら、他の街ではパンが銅貨2枚で買えるとしよう。しかしここでパンを買うならば、銅貨4枚が必要になる。通常の倍の価格ということは、購入できる物資量は半分となってしまう。
メタいことを言えば。
原作においては、グラナト伯爵領で“断頭台のアウラ”を筆頭とした魔族たちの討伐によって、フリーレン達は潤沢な資金を持って次の街へ進むことが出来た。だからシュタルクはジュースを買えたし、物価の高いオイサーストでも問題なく買い物が出来た。
しかし、この世界にそんな凶悪な魔族は存在しない。伯爵領では、当代の伯爵に謁見こそしたが、こなした依頼は民間の物が数件のみ。せいぜい銀貨一、二枚程度の稼ぎしかない。
残り一ヶ月の宿代を考えれば、食糧に回せる金なんてほんの少しだ*2。
「…本当にどうしようか。冒険者ギルドとかあるかな。」
「探してみましょう。このままでは本当に路銀が尽きてしまいます」
「ひもじいのは辛いしな。あと一ヶ月でなんとかしねぇと」
かくしてフリーレン達は依頼に奔走することとなる。おやつがかかっているフェルンは特に頑張った。
そして、とある依頼にて。
「この依頼は五級以上の資格がない場合、最低二人からとなっております」
「…そっか。他にこれを受けようとした人っている?」
「いえ、おりません。ですが、パーティメンバーをお探しならあちらの酒場が宜しいでしょう」
「わかった。ありがとね。」
フリーレンは困っていた。普通の依頼にしてはかなり実入りのいい依頼があったので、受けようとしたら“二人以上じゃないとダメ”という制限があったのだ。
コミュニケーション能力に自信がない訳では無いが、収入が半分になるというのは辛い。フェルンやシュタルクに手伝ってもらおうにも、彼らはすでに依頼をこなしている最中だ。
意を決して酒場に行こうとする時…少し、
「(なんだろう。どこか覚えのある魔力だ。)」
魔力探知を頼りに、気配をたどる。
ギルド内にはいない。外に出て、協会のある方向に向かう。
「こっちは協会か。てことは一級試験の受験者…え?」
「うわえっぐ…って、エルフ?」
「…そこの銀髪の子。」
見たところ魔力は極少量。体内の魔力の流れすら見えず、制限特有の魔力の揺らぎもない。しかし、周囲のどんな魔法使いより一際大きい存在感を放っている。
ヒンメルの言葉を借りるなら、「なんとなく一番強い気がする」というやつだろう。
「いい依頼があるんだけど、一緒にやる?」
その日の夜、オイサースト郊外の森。
フリーレン達が“森周辺の魔族・魔物の排除”という依頼を受けやってきたこの地には、不自然な深い霧に覆われていた。
「これは“
「アインザームっていうと…あぁ、あれか。了解。…“
レーヴの魔法によって周囲が明るくなる。が、夜とは言え深い霧に覆われているが故に、視界を2メートル程度確保するだけだった。だが、フリーレンはこの魔法に違和感を覚えた。
「その魔法…見たことない魔法だ。魔族の様式が混ざってるのかな。」
「あ、わかる?私の師匠が魔族なの。全然魔族らしく無いけどね。この魔法も師匠が作ったものなんだ。師匠は『グレンが作りたかったんだけど失敗しちゃったわ』とか言ってたけど、十分に凄い魔法だよ」
「師匠が魔族?…もしかしてその師匠、“軍勢”…じゃなかった。“大司書”のアウラ?」
恐らくフリーレンの言葉が的中したのだろう、少女は一瞬固まり。
「え、師匠の事知ってるの!?」
『あらレーヴ』
『フリーレン』
「邪魔!
タイミング悪く出てきた幻影をノータイムで消し飛ばした。
ついでに後ろの
「…今回はヒンメルだったな。」
「ね、師匠の事知ってるの!?白髪にエルフで魔力偽装もしてるってことは、もしかして勇者パーティの魔法使いフリーレン!?」
「…そうだよ。というかなんで魔力偽装の話が出てくるの?」
「え?だって師匠が『魔力を抑制してるやつを見かけたらまず間違いなくヤバイ奴よ。味方なら良いけど、絶対に敵に回さないこと。私が魔王軍やらされてたときは勇者パーティの“フリーレン”ってエルフがそれをしててね、もう散々な目に遭ってるから』って疲れた目で言ってたから」
フリーレンは「グラナト伯爵領のときは何もさせなかったくせに、よく言うよ。」とぼやきながら、レーヴに言葉を返していく。
「前に図書館に行ったんだよ。エング街道の外れあたりの。…そう言えば、アウラのご飯美味しかったな。」
「そうなんだ。インスタントのものなら師匠のスープとかあるけど、いる?」
「いる。あ、街に仲間いるから一緒に食べない?」
「いいね」
かくしてフリーレンとレーヴは打ち解け、フリーレン達と同じ宿で食事を共にするのだが。フェルンとレーヴの世間話で、衝撃の事実が発覚することとなる。
「魔力?あー、そう見えてるんだ。多分この
「筋肉なんかはシーエヌティー筋繊維?って言って、常人より遥かに強いパワー出せるし、骨とか神経なんかもミスリルとかで作った特殊合金に遮断合金でカバーかけてたりする。皮膚なんかも、表面は培養したものだし内側には単層炭素膜?とかいうので保護されてるし」
「魔力が変に見えるのって、遮断合金によるものじゃないかな。あれって魔力吸収して強度が変わるだけじゃなくて、文字通り“魔力的影響を遮断する”効果もあるから」
「生まれ?捨て子らしいよ。死にかけだった私を師匠が拾って、身体を改造することで延命を図ったんだってさ。でも赤ん坊の頃の記憶なんてないし、私にとっての親は師匠だよ。…お姉ちゃん達も妹達もいるしね」
「姉妹のこと?いや、全員ゴーレムだよ。7人ともね。ただし、全員に魂が宿ってて、完全自律行動できるタイプ。確か、エスエスナントカプラグとか言うやつで魂を定着させてるんだっけな…ごめん、工学系は得意じゃないの。どっちかというと文系だから…」
「…凄いですね。人間の身体を改造して延命…うん、よくわからないです。アウラ様が想像もできないほどのすごい技術を体得なされていること以外は」
「私も
「………」
「シュタルク様?…寝てる。」
壮絶…というよりほぼSFな内容に驚きつつ、美味いスープを啜る。金欠だったフリーレン達にとって、しばらく無かったまったりとした休息だった。
…まぁ、この話を聞いてから協会の図書館に籠もりきりとなったフリーレンの戦力を埋めるべく、一時的にレーヴがフリーレンのパーティに加わり、唯一の男であるシュタルクの肩身が若干狭くなったのだが…それはまた別の機会に。
−葬送のフリーレン 一級魔法使い試験編…開幕。−
「…なーんてCMでも出るのかしらね。ま、頑張りなさい。そして、世界の広さを実感してきなさい。…きっと、それは貴女の糧になるから。」
…はい、作者です。
ちょっと色々ありまして、投稿予定より11時間ほど過ぎてしまいました。もちっと計画的に進めればいいのに、行き当たりばったりでやるからこうなる。みんなは二の轍を踏まないように気をつけてくださいね。
と、ここで一つ。
お気に入り登録、評価など、いつも感謝します。前話を投稿した際には一時期日間総合一位にいたそうで、いやはやありがたい限り。これからも本作を宜しくお願いします。ちょっとスランプ気味になっても、温かい目で見て下さいな。