断頭台…?せめて大司書って呼んでほしいじゃない。   作:システマチック発光ネズミ

7 / 7
引っ越し作業が終わらないっ♪

ということで今回は雑めな後日談的なものです。
前話で書けなかった原作改変部分や、ちょっとしたわちゃわちゃを書こうかと。

ダンジョン探索は次回です。しっかり暴れさせますよ!


司書見習いと一級魔法使い試験 2日目

 

「第一次試験合格者は計6パーティー19名。現時点を以て第一次試験を終了とする」

 

第1パーティー、メトーデ トーン レンゲ

第2パーティー、フリーレン ラヴィーネ カンネ

第4パーティー、フェルン ラント ユーベル

第8パーティー、ヴィアベル シャルフ エーレ

第13パーティー、デンケン リヒター ラオフェン

第17パーティー、エーデル ブライ ドゥンスト レーヴ

 

「第二次試験は3日後だ。詳細については追って通達する。以上だ。解散」

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

「…うーん…夕方か…だらだらするのも悪くはないな…」

 

オイサーストの商業区。そこにある安宿の一室で、シュタルクは何もしていなかった。

依頼も受けず、鍛錬もせず。おそらく赤ん坊の頃以降無かったであろうぐだぐだっぷりを晒していた。

 

ここ最近は、シュタルクにとって天国かのような日々であった。

パーティーの女性三人は一級魔法使いの試験で出払っており、ここには自分一人だけ。夜更かしをしても、ジュースを飲んでも、適当な店でスイーツを食べても、誰も何も言わない。

 

ここにフェルンをはじめとした女性陣がいたら、拗ねて腹パンと往復ビンタを喰らうことが確定するほどの贅沢三昧である。

 

幸い、お金はまだ十分に余っているし、買った分のお金も依頼を受けてほぼ回収できている。証拠隠滅も完璧だ。現場を押さえられでもしない限り、まあ大丈夫だろうと思っていた。

 

しかし、まあ。

ウワサをすればなんとやら、というやつは良くあるもので。

 

<コンコン

 

「…ん、なんだ?」

 

<ゴンゴンゴン!

 

「んー…?」

 

<ドンドンドン!!

 

「はいはい、今開けますよー」

 

「……」

「…フェルン。一級魔法使いの試験に行ってたんじゃ…」

「第一次試験が終わって昨日の夜に帰ってきました。…シュタルク様。今、夕方ですよね」

 

ギクリ。ビビリなシュタルクの心は、これから来るだろうアレコレに竦み上がっていた。もうすでに涙も出そうである。

 

「寝てたでしょ?」

「……」

「夜更かししたの?」

「……はい」

「他には?」

「…夜中にジュースも飲みました…」

 

シュタルクはなんとかスイーツの件は言わなかった。下唇を噛んでなんとか我慢したのが功を奏したらしい。おそらく、これを言ってしまったが最後往復ビンタを喰らっていただろう。

 

とはいえ、フェルンの怒りが収まるわけでもなく。

 

「……!」ポコポコ

「ごめん!ごめんってば!」

「あーあ。怒らせちゃった。」

「フリーレン様もさっき起きたばっかりですよね?」

「飛び火した…」

 

とばっちりをもらってしまったフリーレンの表情がシオシオになる。そこでようやく、シュタルクはレーヴが居ないことに気が付いた。

 

「そういや、レーヴはどうしたんだ?全然見えないけど」

「試験のパーティーメンバーと一緒にご飯行ってくるってさ」

 

ぷりぷり、といった様子で街に出ていくフェルンを追いかけつつ、フリーレンはこれからの予定を考える。多分今日一日はフェルンのご機嫌取りに費やすとして、次の試験までおおよそ二日ほどしかないのだ。

 

レーヴに関しては放っておいても特に問題ないだろうが、フェルンの鍛錬の内容は考えなければならない。なにせ、試験官には“過去に合格者を出したことがない”なんて奴もいるのだから。試験内容もまだわからないとはいえ、なにかしらの訓練は付けさせるべきだろう。

 

…と。そこまで考えたところで、フリーレンは一つ思い出したことがあった。

 

『家宝の包丁を魔族から取り返していただき、ありがとうございます』

 

「(…そういえば、ここにはあの店があるんだっけ。)」

「なぁ、どうするつもりだよ?」

「ちょっと高いけど、前にヒンメル達と来たときにいい店を見つけたんだよね。」

「それ80年以上前のことだろ。まだあるのかよ…?というか金大丈夫なのか?」

「……」

「おい、フリーレン??」

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

時間は戻って、お昼時。

 

「なぁ、レーヴ」

「なに、エーデル」

 

目の前には、山のように積み重なった色とりどりのドーナツ。

 

「ここは何じゃ。天国か?」

「さぁねぇ。いちおうまだ現実世界だけど…気分的には天国かな」

 

机向こうには、莫大な量の甘味にやられ机に伏すおっさんが二人。

 

「それでは、儂はこの苺のやつを頂こう。はーむ…〜〜っ♪」

「私はこのチョコのやつを。はーむ…〜っ♪」

 

商業区、飲食店街のとあるスイーツ専門店にて。

“挑戦者求む!ドーナツ超盛り合わせ!賞金ライヒ金貨1枚!”なんて看板を下げている店に入ったレーヴ達は、目の前に出されたスイーツの山(天国)を満喫していた。ちなみにおっさんたちはドーナツ7個目あたりでダウンした。

 

「〜〜、っふう。こんなにドーナツを食べたのは初めてじゃな…〜っふまひ(うまい)っ!」

「私も誕生日に師匠が作ってくれた時以来かなぁ…〜っふま(うま)〜♪」

「…な、なぁ。二人共」

「…お腹は、大丈夫なのですか…?」

「「はんみはへふはら(甘味は別腹)」」

 

ドーナツを頬張りつつ、満面の笑みで言い切る若者二人。若いって良いな…なんて思いながら、おっさん二人は魔法を活用して体調をなんとか戻す。とはいえ、胃は変わらず限界なので手は伸ばさない。

 

食事を始めてから10分ほどで、既に山は四合目ほどにまですり減らされていた。おそらくこんな事態は考えていなかったのだろう、この店の店員は顔を青くして震えていたのだが…そんな些事を気にするはずもなく。

 

「もきゅもきゅ…む?最後の一つか」

「もきゅもきゅ…ありゃ、ラスイチ」

「どうする?半分こにするか?」

「いや、ここはジャンケンで決めよう。勝った人のものってことで」

「良かろう。ジャンケン…」

 

「「ポン!」」

 

…とうとう最後の一つも無くなった。哀れ、店員の顔色は蒼白を超えて紫になってしまったようだ。

 

「私はもう食べれませんな…早めに宿へ帰るとしましょう」

「俺も帰ることにする。甘味ばっかりじゃあ流石にキツい」

「そっか。バイバーイ」

「またのー」

 

なんとも軽い別れである。まぁ実際、次の試験になれば容易に会うことはできるだろうが、それにしたって軽い。甘味の魅力とは実に恐ろしいものである。

 

ともあれ、挑戦をクリアした二人はライヒ金貨を一枚手に入れた。クリアなんてされるわけないと高を括っていた店主は、顔は青褪め手は震え、さながらどこぞの外宇宙の神(アザ◯ース)でも見てしまったかのような様子だった。…なお実際は“店のお金ほとんど渡しちまったよ…やべえよやべえよ…給金払えねぇよ…どーすんだよこれ…”となっているだけなのだが。

 

「んー!食った食ったぁ!…さて、どこ行こうか」

「ん~…ふぅ。本当にどうしたものか…。案内役を兼ねて連れてきた二人は宿に戻ってしまったしのう」

 

レーヴは“老体には堪えます…”なんて幻聴が聞こえたが、無視して周囲を探索し始める。次の試験まではあと二日はあり、金に関しても先程手に入れたライヒ金貨でどうにかなる。フリーレン達が多少心配ではあるが、しっかり屋のフェルンも居るし大丈夫だろう。と考えて、エーデルと共に歩き回る事にした。

 

 

そして、日は落ちて。

 

「ブライ、ドゥンスト。そろそろ儂らは夕食を摂ろうと思うのじゃが…何処か良い店は知っておるか?」

「そうですな…あぁ、あそこが宜しいでしょうか。えぇと、飲食店街の外れにいったところに、この街で一番美味いと評判の店があるのです」

「あぁ、あの店か。話によると、かの天才料理人レッカーが営んでた場所らしいな」

「ほう、なるほど…して、二人共。まだ腹の調子は戻らぬのか?」

「「(もう食べたなんて言えないなぁ…)」」

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

デンケンが記憶を頼りに店を探し当てる、少し前。

 

「お、ここじゃな」

「おお、美味しそうな感じ…って、フリーレン?」

 

「あれ、レーヴ。」

 

店に入りたてのフリーレン達を見つけたレーヴとエーデルだが。目の前の光景は実に妙なものだった。

 

「……」ムッスー

「あ、あのー、フェルンさん?」

 

レーヴにとっては「フリーレンかシュタルクがやらかしたんだろうなぁ」で納得できる光景だったが、エーデルにとってはまさにカオスといった様相を呈していた。

 

フリーレンとフェルンは試験会場で見たことがあるだけに困惑するエーデルを他所に、レーヴは席を取りつつフェルンに話しかける。

 

「お疲れー、どっちがやらかしたの?」

「…シュタルク様です。夜更かしとジュースを飲んでいました」

「お金大丈夫だった?」

「はい。なんとか」

「これからたくさん食べるけどね。」

 

少し渋い顔をしながら、フリーレンは席につく。

テーブルの端に置かれたメニュー帳を取りつつ、およそ80年前の出来事を思い出す。

 

「(あのときのご飯は美味しかったな。味は変えない、なんて言ってたけど、どうなってるんだろう。)」

 

まだフリーレンがヒンメル達と旅をしていた頃。

交通の要衝としてのみ知られていたオイサーストを通る時、魔族の討伐依頼を受け報酬として振る舞われた料理を作ったのが、この店である。

 

『後世に残すといって味が変わった店は沢山ある』といったフリーレンに対して、『100年後も200年後も残す』とあの料理人は言っていた。未だに半信半疑ではあるが、せっかくの機会だ。食い貯めるために、前と同じステーキの盛り合わせを注文した。

 

「ほんとにデザートをいくらでも頼んでも良いんですか?」

「何にしよっかなー」

「私これにしよ、“南方諸国風ペペロンチーノ”ってやつ。トッピングで鷹の爪とか付けられるみたいだし」

「儂は…“特製メルクーアプリン”。これじゃな」

 

各々の注文が済み、料理がやってくる。

フリーレンの元にも、80年前と何も変わらない、皿に山盛りに乗ったステーキが来た。

 

まずは、一口。

 

「…なんだよ。あれだけ意気込んでおいて、味変わってるじゃん。」

 

「こんなに幸せでいいのでしょうか…はむ…♪」パァァ

「うまっ!?フリーレンこれめっちゃ美味いぞ!」

「…!かっっ…らいけど美味い!師匠のくらい美味い!」

「はーむ…うむ、この滑らかな口当たりに重厚感のある甘さ。しかしくどくない。流石は天才料理人レッカーの作った味じゃな…♪」

 

味は変えない、なんて言っておきながら、結局変えている。

まぁ、人間の時代の移り変わりは激しい。店主も料理人も変わっているだろうし、時代に流されたこともあったのかもしれない。

 

「でも、もっと美味しい味を探す手間は省けた。あのときよりも、ずっと美味しい。」

 

あの図書館で食べたアウラのご飯も確かに美味しかった。しかし、あれは“物珍しい美味しさ”だ。自身のよく知る“懐かしい美味しさ”ではない。フリーレンにとって、最も美味しいご飯は未だここにあった。

 

そして、何時の間にか入っていたデンケンたちや、ユーベル、ラントをも交えて、楽しい一時が過ぎる。

 

「美味しかったですね。フリーレン様」

「機嫌直って良かった。」

「…ところで、お金は大丈夫なのか?」

「ヘソクリなくなっちゃった…依頼頑張らないと。」

「また依頼かぁ…」

 

「またの、レーヴ。儂らはしばらくこの宿にいる故、いつでも来るがよい」

「え、いいの?じゃあまたスイーツめぐりしよ。私は向かいの宿だし、色々連絡取れるでしょ」

 

こうして、フリーレン達は日常に戻っていく。

…若干二人ほどが悲鳴を上げそうな提案もなされたが、まぁいつも通りだろう。

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

翌日。

レーヴは魔法の実験がてら、獅子猪(フレッサー)の討伐依頼を受けていた。同行するのは、先日の試験で合格した第8パーティーの面々…それと、なぜか連行されてきたシュタルク。

 

「…なんでシュタルクがここに?」

「いや、この人に連れられてきたの…」

「ちょうど良さそうな戦士を探してたらコイツがいてな、お仲間の許しも貰ったんで連れてきたんだ」

「そっかぁ…とりあえず行く?」

 

レーヴの一声で、バーティー全員が依頼先の農地に向かう。

その途中、一切無言で歩いていく状況に耐え切れず、レーヴはヴィアベルに話しかける。

 

「…ねぇ、ヴィアベルって言ったっけ」

「?おう」

「試験どうだった?」

「どうだった、というと」

「フェルン…紫髪の子のパーティーとやり合ったんでしょ?どうだった?」

 

ヴィアベルは一瞬思案する。

あれの名前を知っている、ということはおそらく仲間だろう。第二次、第三次試験のこともある。自身の手札は公開しないほうが良い、と考え。ある程度掻い摘んで話すことにした。

 

「そうだな…演技と力技が上手かった、だな。感想としては」

「へぇ、その心は?」

「もう一人のメンバーは速攻が得意なんだが、そいつの攻撃を全部防御魔法で防いだ上で一般攻撃魔法の掃射だけで押し切ったらしい。しかも、魔法学校で一番最初に使われるような教本に載ってるやり方で、だ」

「一般攻撃魔法の最初の教本って言ったら… “一般魔法概論”?統一規格(フォーマット)とか書かれてるやつ」

 

そういえばそんな名前だったかと思いつつ、エーレの話を思い出す。

 

エーレの使う魔法、石を弾丸に変える魔法(ドラガーテ)は対魔法使いにとっては極めて相性が良い。通常の防御魔法は対魔法が重視されており、物理攻撃に対する防御手段にはなりにくいからだ。それなりに硬い石を軌跡が見えるほどの速度で撃ち出す石を弾丸に変える魔法(ドラガーテ)なら、強力に組まれた防御魔法でなければ防げない…はずだった。

 

『防御されて弾かれた…というより逸らされた、とか受け流された、って表現の方が正しいと思うわ』

 

ヴィアベルがフェルンに騙されてからエーレの元に行ったからこそわかったことだが、魔法で飛ばした石礫が地面に埋まっていた。おそらくフェルンが立っていたのだろう一点から逸れるように。

 

放った魔法が防御魔法で防がれた際、全く違う方向に逸れることは良くある。それはいい。だがこれほどまでに綺麗に、まして魔法を使った物理攻撃を逸らせられるものなのか。

 

からくりはわからないが、仲間であるレーヴなら同じ方法を使うのかもしれない。淡い期待ではあるが、動向に注意するべきなのは変わらないだろう。

何より、“勝ち方”を知っているヴィアベルには、からくりが分かれば対応できるという自信があった。

 

「そのあと別の場所で戦っていた俺に奇襲してきてな、俺が“あいつはどうした”って聞いたら“もう殺した”って言ったんだ。声色も表情も殺気も本物だったが…見事に騙されたぜ」

「ほー、まあフェルンって冷酷な部分あるしね。っと、あれ依頼の獅子猪(フレッサー)じゃない?…群れじゃんね」

 

レーヴの目に映るのは、大きなものが4頭、小さいものが3頭の小規模の群れ*1

 

このパーティーの実質的なリーダーであるヴィアベルは、メイン火力となる戦士がシュタルク一人であることを鑑みて一匹ずつ確実に落とす方向に思考を向ける。しかし、足止め程度なら自身とシャルフで十分。よってレーヴには、比較的自由に暴れてもらうことにした。

 

「7頭か。そうだな…シャルフ、一番手はお前だ。俺と一緒に足止めをするぞ。レーヴ、お前は遊撃だ。撹乱しろ、倒しても構わん。シュタルクって言ったか、お前は足を止めたやつからとどめを刺せ…行くぞ」

 

「“花弁を鋼鉄に変える魔法(ジュベラード)”…!」

「よし来た!“空気を噴射する魔法(インエクチュオン)”!」

「えーっと、足止めたら倒すんだよな!?」

 

作戦は、驚くほどすんなり進んだ。

原因としては、シャルフの魔法の優れた汎用性とその運用能力。そして、レーヴがヴィアベルたちにとって完全に未知の魔法で空を飛び、逃げようとした個体を仕留めていったことにある。

 

シャルフのことについては、“花弁を鋼鉄に変える魔法(ジュベラード)”自体が汎用性の塊のような性能をしているために道理であるが、問題はレーヴである。

 

従来の_というか、世間一般的には未だこれしかないのだが_飛行魔法は、魔族の使用するものを一部改変し、人類用に調整された物しかなかった。しかし、レーヴはどうだ。“空気を噴射する魔法(インエクチュオン)”なる魔法を使って、明らかに飛んでいた。()()()()()ではない。()()()()()

 

これの意味するところとは。

 

つまり、人類魔法史における革命である。

 

プロセスが異なるものだとしても、人類の手のみで飛行できている。それだけで、十分革命たりうる。一級魔法使いだろうと目ではないほどの功績だ。

 

もちろん、傭兵として生きてきたとはいえそれがわからないヴィアベルではなく。

 

「…なぁ、レーヴ」

「どしたの?…あ、肉焼けてる」

「お前、あの魔法をどうやって創った?」

 

レーヴは首を傾げる。残念なことに、レーヴの師匠は“あの”アウラである。技術力も、魔法の研究も、もしかすれば文化でさえ最先端どころか云百年先を突っ走っている彼女の弟子なれば、空気を噴射する魔法(インエクチュオン)の特異性には気付かない。

 

それどころか、あの魔法に対し『入力に対して出力が見合ってない!ボツ!』という評価を下している有り様。

 

「あの飛行魔法だ。空気を噴射する魔法(インエクチュオン)とか言ったか」

「…え、あの“失敗作”?んー、師匠の作った原型があるんだけどね。それをどうにかスリム化できないかって色々弄った結果かな」

 

今回は原型より細身にはできたけど効率悪いし…などとぼやくレーヴ。しかし、ヴィアベルはその機動性に目を奪われていた。

 

事実、先の戦闘ではそれぞれ反対方向に逃げた2頭がいたが、レーヴは片方の首を落として即座に反転。まもなくもう片方も討伐した。恐らく全速力で逃げていた獅子猪(フレッサー)2頭を、だ。

 

それなり以上の戦士なら、なんとか追いつけるだろう。しかし、魔法使いにとっては絶望的な距離だ。ましてや接近して首を落とそうとするなら尚更。

 

「…なぁ、その魔法。どんなものなんだ」

 

シャルフも興味が出てきたらしい。…というか、先程まで驚きすぎて固まっていた(スタンしていた)というべきか。

レーヴは“こんな失敗作のどこが気になるんだろ”と思いつつ、魔法陣を手のひらに映し出し、分解しながら説明し始める。

 

「これは主に2つ…より細かく見たら4つの魔法によって構成されてるものだよ。まずはイオン風発生機構…まぁ風を起こす部分だね。これは円筒型の対物理結界に“性質を付与する魔法(エンデュホーン)”、“破滅の雷を放つ魔法(ジュドラジルム)”の要素をくっつけてる。これだけだとせいぜい、ちょっと強いかなくらいの風しか出ない」

 

ここまでノンブレス。そしてヴィアベル達は全く理解できていない。

 

なんで結界に性質付与して雷流したら風が起こるんだ??というか結界に性質を付与するってなんだ??そもそも一つの魔法に複数の魔法の要素なんていれられたのか??…うん、ハテナだらけである。

 

…詳しくは“プラズマアクチュエータ”で調べればわかる。説明しだしたら長くなるので勘弁願いたい。

 

「で、そこから。展開範囲や形状、その他諸々に縛りをかけて強化した“ベクトルを逸らす魔法”を後ろにポン付けして完成。でもこれ性能めっちゃ悪いよ?100入力しても良くて40程度しか出力されないし、そもそも動かすにも結構魔力いるし」

 

人類史上でも五指に入るだろう偉業をこれでもかと貶すレーヴ。混乱するヴィアベルの頭は、パンク寸前にあることを思いつく。

 

“一度使ってみよう”。飛行のプロセスなんてわからないが、魔法はイメージの世界。そういうモノとして扱えば問題ない…はずだ。幸いなことに、ヴィアベルは先の戦闘で消費した魔力は少なく、残った魔力量ならどうにかはなるだろうという目算があった。

 

「…それの魔導書とかはあるのか」

「本にはまとめてはあるよ。使ってみる?すぐ魔力切れになるだろうし、おすすめはできないけど」

 

手渡された魔導書を読み込む。…何やら自身の知る魔法とは違う体系のようだが、丁寧に書かれているため分かりやすい。そうして、およそ5分後。

 

「…こんな感じか?確かに大食らいだな、これは…“空気を噴射する魔法(インエクチュオン)”」

 

身体が浮く。飛行できている。

安定感は現行のものよりないが、恐らく瞬発力や速度ではこちらに軍配が上がるだろう。まさに革命を起こしうる、とんでもない代物だ。

 

と、思ったのもつかの間。

 

「…あ?」

 

先程まであった“身体が強制的に持ち上げられる感覚”が失せる。

身体が重い。まるで鎧でも着せられたかのような錯覚を覚える。

 

“魔力切れ”。ヴィアベルは、自身がそう呼ばれる状態に陥っていることにすぐ気付いた。同時に、帯に短し襷に長しと言えるような、ほぼどうにもならない状況に陥っていることにも。

 

先程まで発動していた魔法は思ったより燃費が悪かったらしい。おおよその目算だが、2,3メートルほどしか飛べていなかったのだ。そしていま、飛行するための魔力(リソース)が切れれば…

 

「イデッ」

 

もちろん、自由落下である。獅子猪(フレッサー)の死体がクッション代わりになったが、それなりに衝撃は受ける。

 

…思ったより燃費が悪い、なんてものじゃない。

 

ヴィアベルは、レーヴが“失敗作”と断定した理由を身を以て体験した。あれだけ…といっても、デンケンのような老獪な魔法使いには到底及ばないが、それでも魔法使いの平均をゆうに上回るだろう魔力量が一瞬で消費されたのだ。そこらの魔法使いでは発動すら困難だろうし、デンケンと同世代の一級魔法使いだとしてもすぐ魔力切れに陥ってしまうだろう。

 

「…失敗作の意味がよくわかった。これじゃまともに使えねぇだろうな」

「でしょ?また1から練り直しだよー。今度は何ヶ月かかるか」

「何ヶ月も掛かってるのか」

「師匠の作った原型が優秀すぎてね〜、改良点がさっぱり見つからない。さっきのだって、簡易化は出来たけど燃費はダメダメだし」

「そんなにか…アンタの師匠すげぇな、魔法の真髄ってやつか」

 

師匠を称賛され上機嫌なレーヴを見つつ、依頼の完了報告を届けに街に戻る。行きがけに鍛錬していたエーレを拾い、報酬の銀貨数枚を受け取ったあと。

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

「青い鳥…手紙か?」

 

青い鳥が、ヴィアベルが差し出した腕に留まる。

どうやら大陸魔法協会からの手紙のようで、内容は“第二次試験の場所と試験官の名前”だった。それを見るやいなや、ヴィアベルは顔を歪ませる。

 

「“第二次試験 試験官:一級魔法使い ゼンゼ”…まじかよ」

「ゼンゼって…合格者を出さないっていう、あの?最悪じゃない!」

「ゼンゼ…レルネンおじちゃんが平和主義者だって言ってた人か」

「レルネン…おじちゃん??」

「確かに死人はほとんど出てないらしいが」

 

それぞれが反応を返すが、(シュタルクを除き)見解が一致しているものが“合格者ゼロ”の事実。何としてでも北方に赴きたいレーヴには大きな障害だが、レルネンが“平和主義者”と言っていたことに頭を悩ませていた。

 

「(実戦形式の試験ならなぁ…秘密兵器含めてやりようはあるんだけど)」

「そういえば、会場ってどこなのよ」

「あー…“零落の王墓”。過去に無数の冒険者たちを葬ってきた、難攻不落のダンジョンだな」

「…ほほーぅ?()()が居るところか」ボソリ

「すげーな、そんなところに行くのか」

「ダンジョン攻略か、はたまた別の試験かはわからないが、食糧は補給しておくべきだろうな」

 

ヴィアベルからの情報に、皆は三者三様の反応を示す。堅実に足場を固めるべきと考えたり、そのネームバリューに多少圧されていたり。しかし、レーヴの反応だけは違った。

 

さながら、新しい玩具を貰う約束を取り付けた子どものような。あるいは、面白いイタズラを思いついた悪ガキのような。

 

…ところで。

アウラの図書館には人そっくりなゴーレムの司書が7人いるが、基本的に図書館にいる司書はアウラを除き4人しか居ない。では残りのゴーレム達はどこにいるのかと言うと。

 

おおよそは街に出て本を蒐集したり、海や山に出て食料を調達したりといったことをしているのだが、そのおかげか図書館には古今東西…特に、ここ百年ほどに制作された書物はすべて揃っているのだ。それがたとえ、()()()調()()()()()()()()()()

 

「(水鏡の悪魔(シュピーゲル)。迷宮に侵入した者と全く同じ複製体を作る魔物だっけ。師匠のおかげで魔物図鑑は大分埋まったと思ってたけど、アレだけは未だに空白のページなんだよね…)ふふ、楽しみだなぁ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ただし、そもそもとして獅子猪(フレッサー)自体の体躯が大きいので、大きいものだと全高4メートル、全長7メートル。小さくても、全高2メートル、全長3.5メートルほどはある




「土曜日に投稿するといったな」
「そ、そうだ投稿者!だから早く次話をっ!」
あれは嘘だ(遅れてごめんなさい)
「うわァァァァァァ…!」

遅れてごめんなさい(3週間遅刻)
オリジナルエピソードを入れようと思ったらめちゃ時間掛かりました。一次創作者様って凄い…
この先のお話は思いついてるけど今のお話が思いつかないんです…でもやっと書けた!結構ボロボロだと思うけど生暖かい目で見てくれれば幸いです。
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