青春ほど、死の翳を負ひ、死と背中合せな時期はない(旧タイトル:ヤニカスのアーカイブ)   作:夜叉音 鳳来

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堕落すべき時には、まっとうに、まっさかさまに堕ちねばならぬ。
坂口安吾『続堕落論』


EP.1『邂逅』

キンッと甲高い音を鳴らし火を灯し口に咥えた煙草に近づけ、吸い込むと口内へ苦い風味が広がり肺へと重い感覚が広がると同時にガス欠の車に燃料を満たすようなそんな感覚も広がる。

 

ため息と共に煙を吐き出すと共に煙が立ち込める。箱を確認すれば朝に開けたばかりの煙草はもう残り数本となっておりまたため息が出る。

 

健康的な面でも金銭的な面でも辞めた方が良いと分かってはいるのだがいかんせん吸わない時の方が逆に健康に悪い事をしているような感覚に陥り、また吸い続けてしまうのだ。

 

「……帰るか」

 

そう男は呟くと持っていた携帯灰皿に灰を落としながら帰路に付く

 

「……|Yankee Doodle went to town,a-riding on a ponyStuck《愚かなヤンキーがポニーに乗って街へ行ったよ》

a feather in his capand called it macaroni(帽子に羽刺してマカロニ気取ってやがる)

 

そう鼻歌を歌いながら砂漠の砂を踏みながら歩く彼の後ろには夥しい数の機械人形が倒れていた。

 

───────────────────

 

 

 

 

「"要注意人物?"」

 

連邦捜査部『S.C.H.A.L.E』

その顧問である『先生』がそう聞き返すと本日の当直であるミレニアムサイエンススクール2年『セミナー』所属『早瀬ユウカ』が頷き続きを言う

 

「はい。ここキヴォトスは治安が良いとは決して言える状況ではなく様々な部活や研究会を名乗ったテロリストや、先生が着任した日に出会った『災厄の狐』狐坂ワカモを初めとする矯正局を脱獄した『七囚人』などがおり、生徒ではあるのですが…その…あまり関わりを持たない方が得策ではありますね」

 

「"彼女達も生徒だからそれは出来ないかな"」

 

「まあ、先生ならそう言うと思ってましたけど……あ、そういえば指名手配はされてませんが、一人要注意人物が。先生と同じく男性です。」

 

「"そうなんだ。"」

「"どんな生徒なの?"」

 

「名前は庵徠寒(アンキョウカン)ハクト、『笑う者(スマイリー)』『煙の男(スモーキング)』等彼を指す2つ名が色々あります。」

 

「元ゲヘナ学園所属で今は退学処分を受けフリーの何でも屋を営んでおり、ブラックマーケット内にある廃ホテルを根城としているようです。」

 

「"……ゲヘナ学園を退学ってよく分からないけど相当な事なんじゃないの?"」

 

「ええ、テロリストで有名な『美食研究会』や『温泉開発部』でさえ退学にはなってませんから」

 

「"彼は何をしたの?"」

 

「簡単に言えばまあ、テロですね。先程の2つの部活とは規模が違いますが。」

 

「"規模?"」

 

「彼は当時風紀委員長でありながら

万魔殿(パンデモニウムソサエティー)』を壊滅、またその時最初に接敵したと思われる同議長が行方不明

事態の沈静化を図った『万魔殿』の羽沼マコト庶務(当時)と『風紀委員会』の切り込み隊長空崎ヒナが共闘し、撃退したのですがゲヘナの行政機関がほぼ壊滅状態になり『万魔殿』議長が行方不明、風紀委員は行政官は引責辞任し空崎ヒナ以外行動不能

それにより犯罪率が200%増加、退学処分となりました。尚、犯行動機は不明です」

 

「"さっき廃ホテルを根城にしてるって言ってたけど捕まえれないの?"」

 

「彼はそのホテルでの戦闘行為を一切禁ずると言い戦闘行動を取った者に必ず報復をすることからそのホテルはキヴォトスでも珍しい非戦闘区域と認識されており難しいのです。」

 

「"報復とはなんだか穏やかじゃないね"」

 

「穏やかじゃないですよ。それに彼は必ず報復をやり遂げます。どれだけ銃弾を浴びようが、どれだけ大怪我を負っていようが、相手が誰であろうが必ずです。それが生徒であろうが、ブラックマーケットの業者であろうが、たとえカイザーコーポレーションであろうが」

 

「"カイザーコーポレーション相手もって……"」

 

カイザーコーポレーションの事をざっくりとしか知らない先生ではあるが至るところでその名を目にし到底個人で相手取るには強大過ぎるというのをぼんやりとだが理解したため、いくら彼が強く、ヘイローを持ち頑丈な体をしてたとしても必ずいつか弾丸は尽きる。このままの生活であれば彼が早死してしまうことを確信していた

 

「……なんか疑ってる顔をしてますが実際2日ほど前にアビドス地区のカイザーPMCの基地が1つ彼によって全滅したという噂もあります。真偽の程は不明ですが彼ならやりかねないというのが正直な感想です。」

 

「"うーん"」

「"今から会いに行ってみようか"」

 

「そうですね……って、え!?私の話聞いていました!?先生!?ホントに行くんですか!?今から!?……ホントに行っちゃった」

 

 

───────────────────

 

『ブラックマーケット』

 

それはキヴォトスの中でも特に治安の悪い、放逐された者、捨てられた者、居心地の悪い者、必要とされなかった屑達──────

そんなもの総てが吹き溜まった、(神の最後の土地)

 

そこの一角にある廃ホテルの最奥の部屋の前に先生は来ていた

 

 

他の部屋と変わらない木製のドア

ネームプレートには『welcome.visitor!』の文字だけが掲げられていた

ノックを叩きドアを開けると部屋は薄暗く、壁一面の本とアンティークな古時計が飾られている。

そして部屋の中央には銃や新聞、酒瓶等が様々な物が乱雑に置かれた机と椅子に座った1人の青年がこちらを見て笑顔で立ち上がる。

 

「ようこそ先生!お待ちしてましたよ!」

 

彼は笑顔のままこちらに近づいてくる

近付いて来てようやく彼の姿が鮮明に分かる

身長は175cmある先生よりも少し高いくらいでおおよそ180cmかもう少し上なくらいの高身長であり体つきは筋肉質。

髪は横が刈り上げられ中央も短め

顔は彫りが深く年齢は20代後半とも言われても違和感の無い顔立ちだが老いてるというよりも大人びてるといった印象だ。そして何よりも目立つのは右の口の端から頬にかけての弧を書いた傷、恐らくこれが『笑う者(スマイリー)』と言う名の由来であろう。姿を見ての印象は学生というよりも軍人と言った方がしっくりとくる。

 

「"こんにちは。"」

「"君が庵狂寒ハクト?"」

「"アポを取るべきだったかな"」

 

「構いませんよ。俺と貴方の仲だ」

 

「"ありがとう"」

「"初対面だけどね"」

 

「ところでここに来たと言うことは何か仕事の依頼ですか?」

 

「"違うよ"」

「"ちょっと君をスカウトしに来た"」

 

「は?」

 

「"『S.C.H.A.L.E』に来ない?"」

 

その言葉を聞いた彼は眉間に皺を寄せながら懐から煙草を取り出し一本口に咥え火を付け、吸い込み煙を吐き出しながら一言

「断る」

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