死滅回游の一般泳者   作:モチゴメ

3 / 9
相も変わらず亀進行。そして短い。



第3話 挨拶

 〔side 田村…?〕

 

 俺の名前は朱堅(しゅげん)

 藤氏直属の暗殺部隊、日月星進隊(じつげつせいしんたい)に所属していた過去の術師だ。

 

 今で言う平安時代にとある術師――羂索(けんじゃく)と契約を結び呪物化、現代で田村(たむら)正造(まさぞう)という男に受肉を果たした。ただし受肉による変身まではしておらず、あくまで中身(せいしん)を乗っ取るに止めている。仮に死に至るような攻撃を受けても、受肉による変身をすれば全回復できるだろう。俺は反転術式が使えない、何事も保険は必要だ。

 

 器の魂を沈めて無事表に出た俺は、器の記憶にあった羽場(はば)という近くに住む男の下へ赴いた。手っ取り早く点を取ろうと考えたのだ。もちろん現代の情報を聞き出した後にな。器の知識だけでは心許ない。

 

 田村正造を装っているのは最悪を想定しての事だ。

 襲うなら可能な限り不意打ちで仕留めたい。

 大抵のヤツが相手なら勝てるという自負こそあるが、これも保険だ。

 

 人は俺の事を臆病だと蔑むが、他の奴らが警戒しなさ過ぎなんだ。

 死なないために知恵を絞ってこその人間だろうに。

 

 だがしかし、件の羽場は羽生(はにゅう)という女を連れていた。

 これでは羽場を不意打ち出来ても、羽生に襲われる可能性がある。

 さらには、こいつらも泳者だというではないか。コガネを見せられた時には怒りを抑えるのに必死だった。

 なにせ現状で泳者として登録されているということは、即ちこいつらは術師だという事だ。

 

「(ふざけやがれ! どうして偶然目を付けた奴が術師で、しかも複数で行動してんだよ!)」

 

 術式というのは厄介だ。ゴミのようなものなら良いが、極稀だが一度の発動で盤面をひっくり返す理不尽なものが存在する。それこそこいつらみたく、ろくに呪力も練れてなかったくせに土壇場で戦況をひっくり返しやがった奴を俺は知っている。もし羽場や羽生がそのパターンだったなら最悪だ。

 

「(せめてこいつらの術式が分かれば!)」

 

 と業を煮やしているその時――

 ぴんぽーん、と気の抜けるようなインターホンの音が鳴った。

 つまり来客だ。

 

「(さらに人が増えやがった…!!)」

 

 羽場に顎で使われることに苛立ちを覚えながら、俺は玄関へと足を向ける。

 

「(全くいい加減にしてくれ。…もう疲れた、いっそ何も考えず皆殺しにしてやろうか――)」

 

 そう考えながら、俺は玄関の扉を開けた。

 ――今思えば、この時が運命の分かれ道ってやつだったんだと思う。

 

 


 

「はい、一体何の――」

 

 煮えたぎる内心とは裏腹に、あくまで田村を装ったまま朱堅は訪問者に対応しようと外に出た。

 すると――

 

「がぼっ!?」

 

 突如、化野と名乗った男の手が朱堅の口を覆い、口内へと大量の水が流し込まれる。

 

「(くそっ、この呪力…こいつも術師か! オンオフがしっかりしてやがる! 水の術式…溺死狙いか!)」

 

 ――術式解放「被我鉄鋼(ひがてっこう)」!!

 

 なりふり構わず即座に術式を解放して鋼鉄と化した腕を振るい牽制、化野が後ろへと跳躍し距離を取る。

 

「ごほっ、げほっ……っはぁ。クソッ、良くもやりやがったなてめぇ!!」

 

 後方で羽場たちが窓から逃げていくのを背中で感じながら、朱堅が化野へと吼える。

 朱堅の術式『被我鉄鋼(ひがてっこう)』は、自らの身体を鋼鉄へと変換する。

 単純な力押し特化型だが、呪力が『熱い』という特性によって時には殴り、時には焼き、数多の術師を蹂躙してきた。

 だが、こういう搦め手――特に水攻めの類いとは致命的に相性が悪い。

 いくら呪力が熱を持っていても、水を蒸発させるのは難しいのだ。

 そして術師といえども生物であることに変わりはなく、呼吸を潰されてしまえばまず死に至る。

 それこそ、高度の反転術式によって絶え間なく治癒し続けるしかないだろう。

 ちなみに蛇足だが、朱堅が臆病と蔑まれるほどに慎重になったのは、その経験からである。

 

「(水の術式使い…懐に入り殴――)」

「逆流させるか」

 

 瞬間、朱堅の身体の奥底から大量の水が上へと逆流し喉と肺へ行きついた。

 

「ごぼぼっ!?」

 

 呼吸ができず、口内に手指を突っ込むも液体である水を取り除けず無駄な足掻きに終わる。

 

「(息が出来ねぇ…! 肺にも水が…! くそっ、さっきの水攻めは本命でなくこれの布石か…!?)」

 

 先の一撃で仕留められれば僥倖。対応されても水の操作で窒息させる。

 そんな所だろうと当たりをつけた。

 この一連の攻めによって、並大抵の術師は殺られるだろう。

 

 そう、並大抵ならば。

 

「(だが!!)」

 

 意識が薄れるも、朱堅はこの状況で自らが取れる最善の一手を打つ。

 

――「領域展延(りょういきてんえん)」!!

 

 領域展延。

 それは呪術戦の極致たる領域展開(りょういきてんかい)の習得が必須条件という超高等技術。

 領域に術式を刻まず、空にすることで得たリソースを使い相手の術式を中和する。

 

「(この水はお前の術式だろう!? 展延で中和しちまえば対処は可能! 生前にも水攻めは受けたことがある。伊達に場数は踏んじゃいないんだよ青二才!)」

 

 そう考えながら展延を発動し続ける――が、朱堅は驚愕する。

 

「(いつまでたっても水が消えねぇ!? なぜだ!?)」

 

 先ほど口に流し込まれた水は化野の手から排出された。そのため自然に存在する水でないことは確か。つまりこの水は眼前に立つ男の術式だ。

 それが朱堅の出した解答だった。

 しかし、そんな推測と抵抗を嘲笑うかのように水はいつまでも消滅すること無く、そのまま朱堅の生命(いのち)を削り続ける。

 

 酸素が供給されず、ドンドンと薄れゆく意識の中で朱堅は一つの結論に行きつく。

 

「(この水、まさか()()()()()…)」

 

 ――呪力特性か…!!

 領域展延が中和するのは術式によって生じる効果。

 呪力そのもの、及び呪力への干渉を中和することは出来ない。

 朱堅は自らも並大抵の術師であったことを、死という重い対価を払い知るのだった。

 




田村正造朱堅(しゅげん)
_受肉型の泳者。言うまでもなくオリキャラ。
 平安時代に烏鷺(うろ)亨子(たかこ)(に受肉した術師)が率いていた日月星進隊(じつげつせいしんたい)の隊員。
 何気に受肉の変身というエリクサーの価値を理解していた聡明な男だが、それを使う間もなくリタイア。
 慎重になりすぎてドツボに嵌ったが、仮にも平安の猛者。何も考えず暴れまわっていたらどうしようもなかった化け物。
 最後の方は頭に酸素が回らずほぼ落ちかけてたため、ろくに思考ができていなかった。
 ちなみに呪力の出力を上げていたら水を蒸発できていた。

術式:被我鉄鋼(ひがてっこう)
_名前がほとんどBLEACHの狒牙絶咬(ひがぜっこう)だということに名付けてから気付いた。


ちょっと盛った設定に対して雑に処理してしまったかもしれない…
可能そうであれば書き直すかも。

未だに序盤ですがテストが近いのでしばらく更新が滞ります。
また、アンケートを追加しました。参考にしたいのでお手数ですがご協力を頂ければと。(あくまで参考としてであり、必ずそうなる訳ではないという事を予めご了承をば)

2/7追記。
各所を修正しました。
また、テストが終わったので近々再開する予定です。
が、恐らく時間がかかるのであと数日かかります。ユルシテ…。

7/25追記。
前書きを後書きへ移動、及び一部文章を修正。

2025/11/26追記。
一部文章、及び後書きの説明を一部修正。

話が短いけど短期間で出るのと、話が長いけど長期間かかるのとどっちが良い?

  • 短くても良いのでバンバン出してほしい
  • 長い方が良いので時間かけて書いてほしい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。