TS転生奴隷ちゃんの剣闘生活   作:御魚天国

10 / 11
飛来物の脅威

 敵を倒し、剣を手に入れ、そこからしばらく。

 俺は森の中を歩き回っていた。

 

 始まってからどのくらい経ったのかわからないが、それなりに時間は経っているはずだ。

 だが他人の気配すら感じない。

 そもそも自分がどこにいるのかもわからない。

 

 

「地下迷宮だって言ってたしなぁ」

 

 

 迷うのも当然か、と思いつつ足を進める。

 

 背中に背負った剣はそれなりに重く、長い間歩いていると疲れてしまいそうだ。

 

 剣の重さは一応片手で持てるけど、両手で持った方が安定するサイズ感。

 太くはなく比較的細身であってそれなりに振りやすい。

 

 長さはさっき目視で測った通り、大体80~90cmぐらいで……まぁ、持ってみた感覚で言うとちょっと微妙だ。

 体格というのもあって重心が前に傾いてしまう。

 意識すれば大丈夫そうではあるが。

 

 

「戦う分には問題ない……と思いたいけど」

 

 

 剣を軽く抜き差しして重さを確かめる。

 これが片手で抜ける重さであるのが、数少ない救いか。

 

 

「……ん?」

 

 

 ふと、俺は足を止めて目の前に現れた壁を見る。

 

 壁はボロボロで蔦まみれ、草木や根が張っておりちょっと臭い。

 そして壁には黒ずんだものがびっしりと付いていた。

 

 ……時間は経っているものの、俺の猫の鼻はそれを確かに『血』だと認識する。

 

 歩いているとこういう遺跡がよく見つかるのだ、ここ。

 家屋だったり、ただの壁だったり、種類は豊富だが基本的に朽ちかけていて使いようがない。

 

 いや、休憩には使えるか、一応。

 

 

「あ、また看板だ」

 

 

 そしてもう一つ。

 この手の遺跡には何故か看板が立っていることがある。

 

 看板は比較的新しめで最近立てられたことがわかるのだが……文字を読むことができない。

 言葉は解るのにこういう書かれている文字となると、途端にわからなくなってしまう。

 

 だからいくら凝視してみても、それがなんと書いてあるのかさっぱりなのだ。

 矢印とか書いてあるのを見るに、何らかの案内なのだろうが。

 

 

「……むぅ、分からん。なんなんだこれは」

 

 

 そういえばこっちに来てから『文字を読む』という行為をしたことがなかったな。

 

 なんせ奴隷である以上、そう言ったことをする必要が一切なかったもので。

 学ぶ機会すらないわけで。

 

 

「……まぁ、矢印の方に行ったらなんかあるだろ」

 

 

 結局、看板に書かれていることはなにも分からないまま、俺は看板に書かれた矢印の方向へと進むことに。

 

 俺は後に、この選択を後悔することになる。

 もうちょっとちゃんと見ておくべきだったことに。

 

 

 

 

 

 さて、そんなこんなで矢印の方向に進むこと数分後。

 

 相変わらず木々は生い茂っており、敵の姿と気配はどこにもない。

 だが……そんな中で一つ、変わったことがある。

 

 それは霧が出始めたことだ。

 

 それも視界がほとんど奪われるほどに濃い霧が。

 

 

「ど、どうなってるんだ……?」

 

 

 あまりにも濃い霧に俺は手探りと嗅覚、後は尻尾の赴くままに進む以外の方法がない。

 

 ……しかしこの霧、何か妙な違和感を感じる。

 どうにもゾワゾワするような、嫌な気分になるような……そんな中で猫の感覚ってやつが、本能が、危険信号を出しているのだ。

 

 今すぐここから離れるべきだと。

 

 

「ッ……!? い、今の音は……!!?」

 

 

 俺の持つ猫の耳に一つの音が届く。

 木々が倒れ、木の棒が地面に叩きつけられたような音。

 

 そして一つ……いや、二つ。

 これは()()()()足音か? ……足音が聞こえてくる。

 

 間違いない。

 近くに誰かいるぞ。

 

 

「クソっ……遭遇するの早過ぎだろ……!」

 

 

 俺は完全に黙って周囲に視線を向ける。

 が、濃霧のせいで何も見えない。

 

 猫の本能や感覚に頼ろうとするも、さっきから感じるゾワゾワした何かに妨害されて、人の気配を感じることができない。

 

 棒切れの音、二人分の足音。

 それらは段々と大きくなって……間違いなく、近づいてきていた。

 

 俺は剣を抜き、辺りへの……と言っても、本当に俺の周囲へ警戒を向ける。

 近づいてきた瞬間にしか対応ができないが、何も対策しないよりはマシなはずだと考えて。

 

 

「……ん? なんの音だ、これ……?」

 

 

 その時、俺は耳に届いた一つの音に、強烈な違和感を抱いた。

 

 何かが放出されるような……飛び出すような、そんな音が耳に届く。

 だがこの地下、放出するようなものはない、本来ならば聞こえるはずのない音なのだ。

 

 ……しかし、俺の耳が聞き間違えなんてするはずがない。

 

 だとすれば。

 一体なんの音だというのだろうか。

 

 

「……これは……」

 

 

 濃い霧の中、目を凝らして音のする方を見る。

 

 すると遠くの方で一瞬、何かがキラリと輝いた。

 光の反射に近いに輝き方。

 

 だが光るものなど……と、考えていた、その時だった。

 俺の方を何かが掠めて飛んで行き、俺の背後で大きく弾けた。

 

 

「なッ……」

 

 

 ばしゃんっ! と言う大きな水音と共に弾ける飛来物。

 

 ちょうど掠めた部分に触れてみると、切れていたようで血が出てきていている。

 そのぐらいの速さで飛んできた、ということだ。

 

 背後に視線を向けてみると、当たった場所に大きなクレーターと共に濡れていた。

 

 

「な、なんで、水が……」

 

 

 なんて呟くと同時に、更に数発追加の弾が飛んでくる。

 俺は剣を構えて距離が近づいてきたところで集中状態に。

 

 さっきみたいにめちゃくちゃスローとまではいかないにしても、それなりに速度が目視できる程度になる。

 切ろうか迷ったものの、得体の知れないものに触れたくないと思い、なんとか横に飛び避ける。

 

 

「マジでなんなんだ……?」

 

 

 飛んできた方に耳を向ければ、二人分の足音と木が擦れるような音。

 どうやら戦闘の余波らしいが……それでも水が飛んできた理由がわからない。

 

 

「……行ってみるしかないか」

 

 

 動かないよりはマシだ、そう考えて俺は走り出す。

 新たな戦いに身を投じるために。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。