TS転生奴隷ちゃんの剣闘生活   作:御魚天国

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はじめての戦闘

 広く続く地下のジャングル。

 あっちこっちで蔓がぶら下がり、木にはよくわからない木の実が生え揃う。

 そして光源は一切ないというのに視界は良好。

 

 少し蒸し蒸ししているが、自然に囲まれていてそう悪い場所でないと感じてしまう。

 猫だからだろうか。

 

 ……多分、関係ないな。

 

 

「しかしなぁ……まさか生き残り戦とは」

 

 

 エレナは同じ買い主同士の奴隷が戦うことはない、みたいなことを言っていた。

 だがこうなるとそれが発生してしまう。

 

 まぁ……そもそも、エレナの情報がどこのものかわからない以上、信憑性も微妙なんだが。

 いつも百発百中の情報を持ってくるから、信じないわけがないという。

 

 とは言え、思い当たる節はある。

 それは多分、この戦いで勝ち残った者たちで戦う、ということだ。

 

 いくつかに分けて、適当にトーナメントでも組んで戦わせる。

 そしてそのトーナメントでチャンピオンになった数人が勝者、自由杯への参加切符を手にする。

 と言うのが俺の予想だが。

 

 所詮は予想だ、当たるとは限らない。

 

 なんなら会場がエリアごとに区分けされていて、それで当たらないようになってる、とかの可能性もあるわけだしな。

 ……そうなると、俺はぼっちになって……まずいな。

 

 

「とっとと急いで、武器の獲得と現状の把握するしかないか……」

 

 

 一先ずこの地下がどうなっているのか、それを把握するために走り出す。

 

 長い労働生活で体はある程度なら鍛えられている。

 しかもそこに獣人の能力、猫であるためちょっとパワー不足ではあるが、俊敏で言えばそんじょそこらの大人よりも速い。

 

 だから行動と言う点では俺には利がある。

 

 

 

 ──……そのはずだったんだが。

 

 ふと、俺の猫耳が何かの音を捉える。

 激しい衝突音……それに加えて、金属音だろうか。

 

 と、言うことは。

 

 

「誰か戦っている?」

 

 

 足を止めて周囲をキョロキョロ。

 本能的なもので気配はある程度感じ取れる、だがどこにいるかまではイマイチ。

 

 ここは静かに離れるべきだろうか、そんなことを考えていた時だった。

 

 一瞬、音が消えた。

 

 

「……嫌な予感がッ……!」

 

 

 する、と言い切る前に、それは起こった。

 

 轟音が辺りに響き渡り、衝撃波と共に大地の裂けたことによる土が俺に覆い被さる。

 俺はその強大な衝撃波による、少し遠くに吹き飛ばされる。

 

 

「うわあぁあああッ!!?」

 

 

 思わず声を出しながら吹き飛ばされるも、近くに生えていた木に全身をぶつけたことでなんとか止まる。

 そのままずるずると落ちて倒れるも、急いで起き上がり何が起きたか確認しに行く。

 

 

「これ、は……」

 

 

 吹き飛ばされた地点に行くと、そこには床に刻まれた大きな一線。

 そしてその先端で倒れ、青白い光と共に消滅する男。

 

 あれが転移、と言う奴だろうか。

 

 で、その消滅する男の反対方向には、剣を手にした別の男が立っていた。

 

 ……何が起きたのか、完全に把握できていない。

 

 戦いの跡にはしては大きすぎる気がするが、そもそもこの世界の平均というものを知らない。

 エレナとの訓練でしか戦いを知らないからな。

 

 周りの奴隷たちも軽く振っているような奴らばっかだったし。

 

 だからこれはどう考えるべきか──

 

 

「そこにいる獣人の娘、出てこい」

 

 

 ここから考えようとしたのも束の間、剣を持つ男が剣でこちらを指してそう言い放った。

 獣人の娘……俺、だよな。俺しかいないよな、うん。

 

 

「っ……」

 

 

 仕方なく木の陰から表に出て、剣を持つ男の前に立った。

 

 

「覗き見か? 悪い趣味だな」

「これ、おじさんがやったの?」

「……ん? ああ、この跡か。確かに俺がやったが?」

 

 

 どうやったらこうなるんだよ。

 一撃……ってわけじゃないよな、そうであってくれ。

 

 と言うか、俺が剣を持ったところで、まともに対応できるのか少し怪しくなってきたぞ。

 

 

「まぁ、そんなことはどうでもいいだろう。兎にも角にも、 ここで出会った以上は殺し合いだ、獣人の娘」

 

 

 そう言うと男は、剣を両手に天に向けて掲げた。

 ただ真っ直ぐ、振り下ろせる構え方だ。

 

 俺はその構えを見て、本能的に危機感を感じ取る。

 今すぐこの場を離れて逃げないとまずいことになる、と。

 

 だが……どこに逃げると言うのか。

 

 俺があたふたしている合間に、やつは力強く剣を握って小さく言葉を呟いた。

 

 

天剛(てんごう)流『斬打(ざんだ)』」

 

 

 猫耳が微かに捉えたその言葉。

 その言葉に俺は酷い悪寒を感じて、急いで横方向へと駆け出す。

 

 それとほぼ同時に撃ち放たれる、真っ直ぐ一直線の振り下ろし。

 

 その一撃はその直線上にあるもの、その全てを飲み込み破壊した。

 

 

「間違い、ないッ……!! さっきのやつ、これだぁッ!!」

 

 

 俺はギリギリ、当たる寸前のところでなんとか近くの木の陰に着地。

 靴裏が少し掠ったのか、一部分が削れて無くなっていった。

 

 いや……おかしくね? 

 

 剣術ってなんだよ、ビーム撃つのが剣術かよ。

 

 飛距離はそこまでないし、幅もそこまで大きいわけじゃない。

 ただ不可視の真空波のようなものが一直線に飛んで行く。

 

 ……うん、無茶苦茶だな。

 

 

「避けたか。やはりこの技では上手くいかんな」

「上手くいかないって……」

「構えから見破られやすく、放つまでに時間がある。通用しても素人の奴隷程度だ。所詮は初級の技、と言ったところか」

 

 

 マジかよ。

 初級ってことは、天剛流ってやつを齧ってれば誰でも使える、ってことだろ。

 

 一奴隷がこれだとしたら……剣闘士の戦闘は一体どうなってるんだ? 

 しっかり見たことがないからわからないが、こんなド派手な技をバンバン撃ち合っているのだろうか。

 だとすれば人気なのも納得しかない。

 

 

「それで終わり……ってことにしてほしいなー……なんちゃって」

「まさか。天剛流はこれからだぞ」

 

 

 男はそう言い放つと剣を再度、天に向けて掲げた。

 次はどんな攻撃だ……どんな攻撃にしろ、当たれば終了、負け。

 ならば今は、とにかく、何が何でも! 避ける!! 

 

 

「行くぞ」

「くっ……こ、来いッ!」

 

 

 奴が剣を振り下ろす。

 それと同時に俺も奴の隙を見出すべく、走り出すのだった。

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