IS インフィニット・ストラトス BREAKERS(改訂)   作:raludo

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前回、次は後編と言ったな。あれは嘘だ。


第十四話 お迎え 中編

「やめときなさい。そいつに付いて行っても、委員会の犬に飼いならされるだけよ」

 

――来たか。

 

コツコツと足音を立てながら、こちらに姿を現した少女。豊かな青白い髪の毛、間違いない。彼女は――。

 

紅葉(くれは)……か」

 

「何度も言っているけど、――あなたが私の名前を呼ばないで」

 

紅葉――。亡国機業へとその身を渡してしまったBF sistersの一人だ。

 

こちらの手を握ってふるふると震えている少女を背にかばい、紅葉の視線から隠す。彼女が来ることは分かっていたが、予想よりもかなり早い。本来ならば、この少女を保護した後に遭遇する予定だったのだが、やはりそう簡単にはいかないようだ。

 

(氷華聞こえるか?)

 

(はい、聞こえていますよ兄様)

 

(目標を確保。例のポイントに向かうから待機を頼む)

 

(わかりました)

 

氷華にコアネットワーク経由で少女を確保したことを伝えて、改めて紅葉の姿を捉える。しかし、自分の存在も紅葉にとっても想定外だったらしく、珍しく顔に動揺の跡が見て取れる。

 

「ふう……。これはどういうこと?どうしてあなたがここにいるの?――まったく都合が悪い」

 

そう言いながら紅葉はISの右腕だけを展開。この部屋ではISを展開できるほどの広さはない。だが、その右腕には生身の人間に向けるには不釣り合いな対IS用のアサルトライフルを展開した。

 

「……ッ!!」

 

紅牙はとっさに空いている左手にISの腕を展開。低出力モードでBFSを起動し、可能な限り小さく出力したビームシールドを作りだすと、それを自身の前に掲げる。

 

瞬間、けたたましい発砲音が鳴り響く。

 

「ひゃう!?」

 

後ろに庇った少女からずいぶんと変わった悲鳴が漏れるが、今はそれどころではない。連射される銃撃をビームシールドで的確に弾いていく。辺りにはシールドに阻まれ、融解した銃弾が散乱していた。

 

「……やはり、これでは倒れないのね。まあ、いいわ。回収が無理なら最悪始末しても良いと言われているし。いくらあなたでも、そのお荷物を持ったまま私とやりあおうなんて思っていないでしょ」

 

銃撃をやめた紅葉は左腕も展開する。その手には右手と同じアサルトライフルが握られており、紅葉の顔がにやりと歪んだ。

 

「これなら、どう!!」

 

そして、その二丁のアサルトライフルが火を噴くといったときには紅牙はもう動き出していた。

 

ビームシールドとして展開していた左腕のBFSを解除すると同時に、少女を右腕で抱えてその場を動いた。正確には紅葉の前に飛び出したのである。

 

「なっ!?」

 

「ふわあ!?」

 

まさか正面に来るとは思っていなかった紅葉の驚きの声と、急に抱えられた少女の声が重なるが、紅牙の思考はもうその時点に留まっていなかった。

 

「しっかり捕まってろ!」

 

少女が振り回されないように、注意を喚起する意味で声をかける。しっかり捕まってくれていないと、最悪無理な機動で死んでしまうかもしれない。

 

今の状況は確かに形成は不利だ。相手は好き放題できるのに対し、こちらは非戦闘員を確保しながらこの場を離脱しなければいけないのだ。右腕が埋まっている時点でこの差は歴然だ。だが、ここに一つの条件が加わると話は変わってくる。

 

そう、ここが部屋、そして外に続く廊下もさして広くない点だ。ISを展開しては逆に素早く動けなくなるほどの。

 

「――悪いが」

 

――今の状況は、俺の独壇場だ。

 

紅牙は勢いよく紅葉の前に飛び出すと左手にシュナイダーナイフを展開。その刀身の腹を使って紅葉のアサルトライフルの一つを弾くようにして一瞬無力化。そのまま回るように体を回転させながら足でもう一つも蹴り飛ばす。取り回しがよくない大型の対IS用のアサルトライフルを持っていたのが功を奏した。

 

そうしてできたわずかな瞬間を紅牙は攻撃ではなく離脱をするために使う。ただし紅葉も馬鹿ではない。そこらのIS操縦者よりは格段に強い。それは今しがた蹴り飛ばしたアサルトライフルを捨て、すぐに近接戦闘用のショートナイフを展開して振り下ろす。

 

――この距離ならアサルトライフルは使い物にならない。閉鎖空間での近接戦闘なら、人一人を抱えていようが、負ける気はしない!

 

紅牙はそれこそ彼女たちが見てきた映像のように、閉鎖空間という条件付きではあるが、何度も生身で対IS戦闘を繰り返している。その度に大けがをしていたが、それは決して無駄だったわけではない。まして、今回は相手が腕部分しか展開しておらず、こちらにはあの時にはなかったISの腕部を展開しているのだ。あの時の地獄に比べれば、なんと手ぬるいことか。

 

振り下ろされたショートナイフの腹に合わせる形でシュナイダーナイフを一閃。真横に弾いた紅葉の右腕を素早く足場にし、そのまま宙返りの要領で紅葉の頭上を飛び越える。

 

「しま――」

 

タンッと音を小さな音を鳴らしながら紅葉の後方に着地した紅牙は、そのまま勢いを殺さず部屋の外の廊下に躍り出る。それと同時にシュナイダーナイフをリリース。ハンドランチャーを炸裂弾込みで呼び出した。

 

その銃口を先ほど飛び出した部屋に向けると同時にトリガー。ちょうど紅葉が飛び出そうとしていたにも関わらず、炸裂弾は部屋の中へと発射され――。

 

地を揺るがす振動とともに爆炎が部屋を満たした。

 

それを一瞥するや否や、紅牙はあらかじめ決めておいた離脱ルートを駆ける。

 

「や、ちょ、ふえええ!?」

 

「黙っておかないと口の中を噛むぞ」

 

その道中、そんな素っ頓狂な悲鳴が上がっていた。それも無理はないかもしれない。左手首のアームアンカーを自在に操り、高低のある場所を一直線で進んでいるのだから。少女に新たなトラウマができた瞬間であった。

 

そうして、最短距離でさっさと脱出口に戻る。炸裂弾を紅葉にお見舞いしたが、あの程度で倒れるほどBF sistersはやわじゃない。必ずこちらを追いかけてくるだろう。ここは孤島だ。地下から脱出して本島に帰還するのなら必ず海か空を通らなければならない。それを紅葉が察していないとは思えない。

 

恐らく、向こうは急いで外に脱出するだろう。この島のことなんて気にせず、天井を突き破って。そう考えるととてもじゃないがゆっくりしていられない。相手はIS持ちだ。これぐらい訳もなくやってのけるだろう。

 

「まずは氷華に合流しないと」

 

空中での戦いにこの少女を連れて戦うのはあまりにも無謀すぎる。その前に氷華に回収してもらわなければいけない。

 

引き続きアームアンカーで前方の離れた配管に噛みつかせ、それを高速で巻き取ることでかなりの速度で進む。侵入口にたどり着くのにそう時間はかからなかった。

 

「兄様!」

 

脱出口――地上へとつながる非常出口で氷華が身を隠すように姿勢を低くして待っていた。紅牙が無事であることを確認するとほっと息をつくとともに、にこやかな笑みを浮かべる。

 

「氷華、急ぐぞ。予定よりもだいぶ早く来ている」

 

「ええ、わかっています。大きな振動が起きましたから、そのことについて連絡しようとしていたところです。……やるんですね?」

 

氷華の確認に静かに頷く。相手が来てしまっているのだ。ここまで来たらもう止められない。

 

「――わかりました。それで、その人が例の……?」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

右腕で抱えていた少女を氷華に渡す。このまま氷華に用意しておいたヘリまで運んでもらい、その間に紅牙は亡国機業と相手をする手はずになっている。

 

「この子が……私と年代があまり変わりませんね。ヒトケタですか」

 

「わからない。だが、最近まで被検体だったみたいだし、違うんじゃないか?」

 

ヒトケタとは被検体ナンバーが一桁台のことで、BF sistersの中でも古参であることを意味する。だが、研究員が言っていたように、最近まで実験を受けていたということなら古参というよりも新兵。つまり、被検体ナンバーも二桁のはずである。

 

「あ、あのッ!!」

 

少女を地面に下し、氷華の下へと向かうよう促すと、何かを決心したように声を張り上げた。

 

「あの、私出来損ないって、ずっと言われてきたんです……。さっきも失敗作で処分されるからって男の人たちが寄ってきて……。こんな、こんな何もできない私なのに、助けてくれてありがとうございました!!」

 

瞳に涙を浮かべながら、勢いよく頭を下げる少女。恐怖がそうさせているのか、助かったことに関しての安堵がその瞳を濡らしているのかはわからなかったが、紅牙は一つ訂正をする。

 

「お前が出来損ない?それは違う。確かにあいつらの目的からいえば、結果を残せないのは出来損ないなのかもしれない。だが、〝あれだけ〟の実験を続けてきて、そこまで正気を保っていられているのは間違いなくお前の強さだ。精神力だけでいうのであれば、お前は俺よりもはるかに強い。それは原点の俺が保証するよ」

 

その言葉が少女にどのように伝わったのかはわからない。紅牙はただ心に思ったことを述べただけだ。それが少女をいい方向に成長させるきっかけとなれば、それはそれでよしとも考えていた。

 

「……ありがとうございます。――その、私は雪奈(せつな)って言います。えと、また、あなたと会えますか……?」

 

小さい声ながらもはっきりとこちらの目を見て紡がれたその言葉は紅牙の胸にすっと入っていく。これが純粋な好意だというのが紅牙にもわかった。

 

「――俺は黒咲紅牙。心配しなくてもすぐまた会えるさ」

 

紅牙はそれだけ残して、全身に〝ミスティック・クラッド〟を展開する。青白い光沢が夜の闇の中で輝きを放ちながらその場を後にし、飛翔する。

 

――実は少女、いや、雪奈の後ろの氷華の表情がみるみる怖くなっていったので、さっさと逃げただけというのはここだけの話。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の闇に月明かりだけが照らす海原、そして寂寥さえ感じられるほど静かな孤島。しかし、対照的にその上空では轟音と共に、輝くほどの火花が散らされていた。

 

夜の空で羽ばたいているのは二機のIS。片方は夜の闇に紛れてしまいそうなほどに黒いIS、もう片方は夜でもはっきりとわかるほどの青白い装甲を持ったIS――紅牙だった。

 

「はぁぁあああッ!!」

 

黒いISは両手に展開されたアサルトライフルをトリガーし、ひたすらこちらに対して弾幕を形成している。

 

「紅葉!!」

 

紅牙は黒いISの操縦者――紅葉に対して声を張り上げる。

 

氷華と雪奈と別れて、時間を稼ぐために孤島に残ったのだが、雪奈を乗せたヘリがこの場所を離れるのと同時に、孤島の地下から地表を突き抜けてきたISと遭遇した。何を隠そう紅葉である。

 

回収ヘリには氷華が付いているから問題ない。あいつもISを展開して警戒しているだろう。だが、紅葉に追われると厄介なのだ。故にここで対峙している。

 

「その名前を、あなたが呼ぶなああああ!!」

 

興奮状態にあるのかこちらの呼びかけにも耳を貸さず、ひたすら銃撃を繰り返す。それを錐揉み飛行の要領で躱していく。

 

(ベースがラファール・リヴァイヴならスピードで負けることはない)

 

そう、紅葉が駆る黒いISはフランスから強奪したラファール・リヴァイブ・カスタムなのだ。独自の改装が見受けられるが、基本性能は元とそう変わらないというのは、以前にも戦ったことのある紅牙にはわかっていた。

 

「紅葉、話を聞け!」

 

銃弾を避けながらも、紅牙は呼びかけをやめない。どうしても彼女には確かめたいことがあるから。

 

「あなたの話なんて聞く義理はない。私の敵はあなたよ!」

 

そう叫び返した紅葉はこのままでは埒が明かないと感じたのか、両手のアサルトライフルをリリース。新たな武装を展開する。

 

「これならどうかしら!!」

 

両手に展開されたのはアサルトカノンとIS用の重機関銃だった。どちらも片手で扱えるような代物ではないのだが、ISのパワーアシストとPICがそれを可能にしていた。

 

紅葉の攻撃パターンの変更に紅牙は冷静に対応する。弾幕として重機関銃が乱射され、高火力のアサルトカノンの射程に誘導されるが、左手のBFSでシールドを形成し、弾幕を掻い潜りながらアサルトカノンの一撃を防ぐ。

 

そこで紅牙は右手に武装を展開する。BFS直結可のエネルギーライフル〝イグニス〟。腕部のBFSとエネルギーラインをリンクさせることにより、BFSのエネルギー出力をそのままライフルとして使える一品だ。

 

ラファール・リヴァイヴが積める武装はほとんどが実弾兵器の場合が多い。エネルギー兵器は量子化した時の容量が大きいため、拡張領域を広く取ってしまい多種多様な装備を積むことをコンセプトにしたラファールでは相性が良くないのだ。故にこちらがエネルギー兵器を用いれば、銃弾の嵐に対して有効に働くだろう。

 

左腕のエネルギーシールドを掲げ、銃弾を防ぎながら右手のイグニスをチャージ。右腕のBFSとエネルギーラインを直結させる。

 

(イグニス、BFSとのエネルギーラインのリンクを確認。)

 

零の確認を聞くと共にイグニスの銃口を紅葉に向けてトリガー。銃口から圧縮された青いエネルギー弾が撃ち出され、銃弾の嵐の中を斬り裂いていく。

 

「くッ!!」

 

イグニスから放たれたエネルギー弾に紅葉は回避を余儀なくされる。回避運動のために一瞬銃撃が止んだその隙を紅牙は見逃さない。

 

(零、イグニス最大チャージ)

 

(了解しました。イグニス、最大出力チャージ。完了まで三秒)

 

体を螺旋状に回転させながら、一気に紅葉に向かって加速する。スラスターから噴き出る青いブースター炎がその螺旋の軌道を描く。

 

「話を聞かないなら、聞けるようにするまでだ」

 

紅葉に接近した紅牙は最大までチャージしたイグニスを両手で構えてトリガー。銃口から青い光が迸り、紫電を纏いながら紅葉を飲み込まんと疾駆する。

 

「ま、だまだぁああ!!」

 

すでに回避に移っていた紅葉は両手の武器を捨て、代わりに軽量サブマシンガンとショートブレードを展開して、イグニスの火線の周りをくるくると回りながら紅牙に肉薄する。

 

「ッ!!」

 

咄嗟に左手のBFSをシールドからブレードに形状変化させ、こちらに振りかぶったショートブレードの一撃を防ぐ。バチバチと火花が飛び散り、お互いの顔を照らし出す。

 

「紅葉!!お前は、お前はどうしてそこにいるんだ」

 

「何を……わけのわからないことを……」

 

紅牙は鍔迫り合いながらも、必死に紅葉に呼びかける。

 

「お前は本当にそこにいたいのか!!」

 

「!!」

 

それは紅牙が最も聞きたいことだった。亡国機業へとその身を堕とした紅葉。その真意をまだ彼女から聞いていないのだ。

 

――本当に紅葉が心から亡国機業にいたいと思っているなら、もう容赦はしない。これもけじめの一つだ。だけど、それが彼女の本意でないなら、……俺は助けてやりたい。

 

「い……まさら、そんなこと……」

 

紅葉が体を震わせながら顔を俯ける。わなわなとショートブレードにまでその揺らぎは伝わっていた。

 

――今なら押しきれるか?

 

紅牙は左腕の力を一瞬抜き、そして勢いよく押し出そうとした。だが、それと同時に紅葉は顔を上げる。

 

「今更そんなこと言わないでよッ!!」

 

涙を湛えた瞳でこちら射抜くように睨む紅葉。今まで我慢していたのか、それとも押し寄せる感情の波をぶつける相手がいなかったのか、彼女の口は閉じることなく喚き散らした。がむしゃらのようにショートブレードを力任せに押し出し、こちらのビームブレードを弾く。

 

そのまま追撃でサブマシンガンを連射してくる紅葉に、紅牙は回避軌道を取りながらも、再び紅葉に接近。ブレード同士をぶつける。

 

「あんなところ、いたいわけないでしょう!?私のことを兵器とでも思っているあそこに!!――私は兵器じゃないッ!!」

 

やはりと言う思いを紅牙は抱く。亡国機業では所詮自分たちは兵器に過ぎない。戦争のために生み出された兵器だから、戦うのが当たり前。だが、そんな理屈で戦えるほど目の前の紅葉は心を壊されていない。

 

そして、生きる意味を無くした紅牙も今は必死に前へと進もうとしている。進むことができるのだ。

 

そのまま何度かお互いの得物をぶつけ合うが、ビームブレードの熱量に耐久度の限界が来たのか、紅葉のショートブレードを半ばから斬り裂く。

 

「なんで私がこんな目にあっているのよ!!」

 

使い物にならなくなったショートブレードをこちらに投げつけ、サブマシンガンを連射してくる紅葉。そのショートブレードをイグニスで撃ち落とし、サブマシンガンは左腕のBFSを再びシールドに形状変化させて防ぐ。

 

「あなたが悪いわけじゃないのは知ってる!!でも、じゃあ、私は誰を恨めばいいのよ!?誰にこのどうしようもない気持ちをぶつければいいの!?」

 

紅葉の叫びが、戦闘に際して冷静になっていた紅牙の心に熱を入れていく。

 

「助けてくれるなら……もっと早く来なさいよぉ……!!」

 

個人情報もない研究所上がりの少女たち。かつて自分がそうだったように、自分の足で歩いていくには何もかも足りなすぎた。

 

紅牙は更識に保護されたことによって、一応の身の安全が守られた。だがもし、保護してきたのが亡国機業であったのならば、今頃自分の存在に何の疑問も抱くことなく、亡国機業の手先になっていただろう。

 

ないない尽くしの自分たち。それがわかるからこそ、紅葉の叫びが全身を駆け巡るような熱を生み出したのだ。

 

「――もういい。あなたにこんなこと言っても何も変わらない。私は亡国機業の手先。あなたが何をしようと、私の敵」

 

サブマシンガンでの銃撃を一旦止めた紅葉は紅牙を睨みつける。その瞳には光が宿っておらず、諦観のようにも取れる。その瞳を見た紅牙は一つの思いに駆られていた。

 

――もし、ナノマシンが体内にあるからという理由で抜け出せないのなら、何とかしてやれる。

 

「そこにいたいわけじゃないんだろう」

 

「だからなに。もう、無理なのよ。――これが私の人生なのよ」

 

「諦めるのはまだ早い」

 

紅牙はイグニスをリリースし、BFSのビームシールドをナイフ程の大きさのブレードに形状変化させ、静かに構えを取る。

 

「やめてよ!!いまさら私に希望を見せるな!!」

 

聞きたいことは聞けた。なら後は、この自暴自棄のような状態をまず何とかしなければならない。

 

まずはISのシールドエネルギーを削り取る。

 

(行くぞ、零)

 

(了解です、マスター)

 

――そこにいたくないのなら、そこにいなければいい。それができないなら、俺が何とかしよう。それは俺が決めたことだから。

 

紅牙にできること。それは自分の過去へのけじめの意味合いもあるが、その少女たちが助けを求めているのならやはりそれに応えたい。

 

今の紅葉はまさしく紅牙にとっては助けを求めている様に見えたから――。

 

紅葉を助けようと覚悟を決めた時、紅牙の耳に鎖がパリンと砕けるような、そんな音が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 




あとがき

こんにちは、raludoです。新年あけましておめでとうございます。

遅くなりましたが、十四話をお届けしました。

今回の話、我ながら展開が早すぎて、よくわからないことになっていると思います。恐らく次回は紅葉側の視点で心情の描写をもっと濃くすると思います。

次は後編です。思った以上にまとまらなかったので、今回は中編ということでお願いします。

今回はここまで。

BREAKERSをお読みいただき、ありがとうございました

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