C.E.で最もフリーダムなアスラン   作:アマシロ

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SEEDFREEDOMの劇場で、ズゴックと握手!


申し訳ないですがSEEDは15年前くらいからずっとにわか
だからにわかじゃない人、書いて♡


ちなみに無軌道と書いて「フリーダム」なアスランです。


 


血のバレンタインだったもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこまでも続く暗闇。

 上下左右、全方位に広がる底なしの宇宙(ソラ)。点在する星明りは目印になりそうもなく、気を抜けばどこまでも落ちていくように思えるそれは原始的な恐怖を煽る。

 

 コーディネイターとして強化されている体でもそれなのだから、つくづく自分はニュータイプには向いていないらしい。

 

 それでも背後に見える、特徴的な砂時計型のコロニー……プラントを心の支えに、レーダーを見据える。

 

 

 

 狭苦しいコクピット、ゴテゴテした練習用のパイロットスーツは心なしか汗と油の臭いが染みついていて浪漫も夢もない。

 ついでにモニターに強制的に表示された厳めしい教官の顔につい渋い顔になる。

 

 

 

 

 

『―――――貴様ら、一体何をやっている!? 今どんな状況か知らんのか! すぐに持ち場に戻れ! 放校処分になりたいのか!?』

 

 

 

 

 

 

 知っているさ、痛いほどに。

 

 今はC.E.70、2月14日――――のちに血のバレンタインと呼ばれる日だ。そしてまさにこの瞬間、つい数日前に宣戦布告してきた地球連合軍と、ザフトの部隊が会戦を行っていることも。そこを抜けて、メビウスがやってくることも。

 

 

 

 

 

 が、そんなことは誰もまだ知らないわけで。

 さすがに良識派のニコル、そしてちょっと冷静になってしまったらしいイザークも通信越しに苦言を呈する。

 

 

 

『……アスラン! これ以上は流石に――――』

『貴様本当に何を考えて――――』

 

 

 

 

 

 けたたましい警告音(アラート)が鳴り響く。

 嫌な予感―――もとい、知識が当たってしまった悲しみ。そして僅かに感じる『これで放校処分は免れそうだ』という安堵。どこまでも器が小さい自分を諫めるように小さく息を吐いた。

 

 

 

 

 

『緊急事態発生! 地球連合のものと思われるMAが防衛ラインを突破!』

『即応できる部隊は!?』

『進路アプリリウスからは離れています! ……即応できる部隊がいません!』

『直掩を回せ! 早く!』

『ミサイルと思われる熱源―――――これは、いや、そんなまさか』

 

 

 

『核ミサイルと推定!』

『目標は!?』

『――――目標、ユニウスセブン!? ダメです、間に合いません!』

 

 

 

『馬鹿な、農業用プラントだぞ!?』

『避難指示は!』

『やってますが、間に合いません!』

 

 

 

 通信から響くヒューッ、とどこか間の抜けた口笛。

 

 

 

 

 

『やるねぇ。で、どこまで計算ずくなわけ?』

「ここまでだ。敵はメビウス――――核武装している以外は特別な脅威じゃないが……相手は正規軍。しかも逃せば何万人死ぬか分からないからな」

 

 

 

 

 

 そしてこちらは、プロトジン―――それも、Z.A.F.T.士官学校に置かれたオンボロ。武装はパクってきた突撃銃のみ。

 パイロットはまだ士官学校に入ってすぐの、新米というのも生ぬるいヒヨコ5名。乗せられやすいイザーク、俺たちを見捨てられないお人よしなニコルが居たお陰で人数だけは揃えられたが―――。

 

 

 

 

 

 放った銃弾が核ミサイルを見事に撃墜。

 何もない虚空に閃く巨大な爆風に寒気を感じつつ、なんとなくパイロットスーツに触れる。……このオンボロ、間違いなく放射線から守ってくれるだろうか? まあ、宇宙線のことを考えればそこは問題ないのだろうが。

 

 

 

 

 

『か、核ミサイル、撃墜されました!』

『まだだ! 第二波来るぞ! 援軍急がせろ!』

『他に核らしき熱源ないか!? 哨戒とレーダーは何やってる!?』

 

 

 

 

 ともかく第一段階はクリア。

 後は諦め悪く撤退の気配のないメビウス部隊をなんとかするだけだ。

 

 

 

 

 

 

「イザーク、最初のひと当てはお前の勇猛さが頼りだ。ラスティ、イザークの背中を頼む。続けて俺が穴を広げる。ニコル、俺の背中を頼む。ディアッカ、一番視野の広いお前が最後の砦だ」

 

『俺に命令するなぁ!』

『はいはい、まさかこんなことになるとはね』

『……じ、実戦? こんないきなり―――』

『オイオイオイ、冗談キツイぜアスラン!』

 

 

 

 

 

 手が震える。

 実戦だ。命を奪うか、奪われるか。

 

 ユニウスセブンには母さんがいる。

 ここで悲劇を食い止めれば、きっと少しくらいはマシな未来をアイツに渡せる。父さんだって、母さんさえ生きていてくれればあんな結末にはならないハズ。

 

 

 

 

『――――守りたい世界があるんだ!』

 

 

 

 

 

 実際に共に過ごせばよく分かる。

 アスラン・ザラはキラのことを『仕方のないヤツ』というが、どこまでも優しくて、穏やかで、どこか無防備な――――キラ・ヤマトは、コズミック・イラに一番似合わないイイヤツだ。

 

 

 だからアスラン・ザラはキラを守ろうとしたのだろう。

 まあ生真面目で世話焼きな性格と、割と興味のないところに自堕落なキラがベストマッチしてしまったのかもしれないが。

 

 

 その優しさから戦争に巻き込まれて、感謝してくれた女の子も、初恋の相手も、大切な友人も、色々なものを取りこぼして、ボロボロになって、それでも戦い続けるのなんてあんまりだ。

 ラクスと二人で、仲良く穏やかに過ごすのがよく似合う。

 

 

 

 

 

――――大丈夫だ。俺は、C.E.で最強の男――――。

 

 

 

 

 俺にも、守りたい世界がある。

 

 

 

 

 

「――――アスラン・ザラ、プロトジン―――行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユニウスセブンに放たれる核ミサイルは一発――――“知識”に基づいて教習用のプロトジンでもなんとかなると踏んでいたが――――Nジャマーが無い状況下では長距離の誘導ミサイルなどが万全に使えるわけで。メビウスも十分すぎるくらいには脅威だと忘れていた。

 

 

 レーダーがミサイルと思われる光点で染められ、顔が引きつる。

 メビウスなら雑魚? いや、こんなのを平然と相手にできるコーディネイターはやっぱりおかしいのだろう。実際、ギリギリなんとかなりそうだし。

 

 

 

 

『ミサイル、来ます! 数多数!』

『ええぃ、撃ち落とすぞ!』

『数が多すぎるっての!』

『なんとかなんないのかよアスラン!』

 

 

「すまん、もう品切れだ」

 

 

 

 

 

 教習用とはいえプロトジンを5機も持ち出し、武装も盗み出し、無断で出撃していることだけでも普通の軍隊なら銃殺の数え役満と言っていいレベル。

 

 

 

 顔が引きつるレベルでセンサーに映るミサイルの群れへの対抗策なんてこのヘボいプロトジンにはない。フリーダムでも貸してもらえないだろうか。助けてくれキラ。

 

 

 

 

『仕方ないなぁ、アスランは……』

 

 

 

 

 なんか生ぬるい顔でこちらを見守っているキラの顔が脳裏を過る。走馬灯だろうか…。

 ちょっとウホッな感じの友情は嫌だし、可愛い女の子の走馬灯の方が嬉しいんだが。

 

 

 

 

『アスランって……そういうところだよね』

『そういうところですわ、アスラン』

 

 

 

 なんでか想像上のキラとラクスに責め立てられたところで、仕方なく戦意を振り絞る。俺はアスラン・ザラ。アスラン・ザラ。俺が――――コイツらを討つ!

 

 

 

 

「核はもう防いだ! もうやめるんだ! この、馬鹿野郎!」

 

 

 

 

 

 

――――視野が広がる。極限まで研ぎ澄まされた集中力によって、全ての動きがゆっくりと見える。

 

 

 

 誘導ミサイルが多数あろうと、その全てに的確に弾をばら撒けば殆どを無力化することも不可能ではない。

 

 

 キラにできた。アスラン・ザラにもできる。なら、俺もやらねばならない。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 急に叫んだアスラン機が急加速し、無秩序にばら撒かれたかに思える弾によって次々とミサイルが爆発していく。その獅子奮迅といえる活躍に触発されたかのようにイザークが突貫。ラスティが続いて、僕も必死になってアスランを追いかける。

 

 いくらMAの動きが単純とはいえ、追尾誘導してくるミサイルの飽和攻撃はあまりにも辛い。アスランが多数を撃ち落としてくれているおかげでなんとか対処できているようなものだ。

 

 

 それでもなんとか一機のメビウスを撃破して僅かに息を吐く。

 

 

 

 

『敵部隊とプロトジンが交戦中。これは――――士官学校のものだと!?』

『プロトジンのパイロット、何をやっている!?』

『いや、いい! まだ核ミサイルを搭載していると思われるメビウスがいる! なんとかして落とすんだ!』

 

『乗っているのは入校したばかりの素人ですよ!?』

『防衛部隊が来るまでなんとか持たせろ!』

『非武装の、農業プラント周囲に部隊なんていませんよ!』

 

 

 

 

 阿鼻叫喚になっている通信を聞き流し、視界の端でプロトジンが爆発したのを捉える。

 レーダーからラスティの機体を示す信号が途絶し――――え?

 

 

 

 

「ラスティ…?」

『脱出は!? おいディアッカ、救助は―――!?』

 

『……、無理だ。爆発しちまった。跡形もねぇよ!』

『――――』

 

 

 

 

 

 

 あっけなかった。

 アスランがザフトに入隊するために士官学校に入ると言って、親の繋がりで面識のあった僕たちは地球連合の強硬な態度に対する反発もあって皆で入校して。

 

 

 

 

『くっそおお! ナチュラルどもがぁああ!』

 

 

 

 

 怒りに任せて突進するイザークの叫び。

 その裏で。小さく『そうか、本当にバカだったのは俺か』とアスランが呟いた声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

『現在バレンタイン会戦と呼ばれている、地球連合軍とザフト軍の衝突では、一部の核武装した部隊がユニウスセブンに対して攻撃を企てたとしてプラントは非難声明を発表しています。「勇敢な若者たちによって未然に防がれこそしたものの非武装の農業用コロニーに対する核攻撃は許されるものではない」として――――また、核攻撃を阻止した国防委員長パトリック・ザラの息子を表彰する動きが――――』

 

 

 

「……アスラン?」

 

 

 

 

 

 

 

 中立国オーブのコロニー、ヘリオポリス。

 そこに住む学生――――ダークブラウンの髪を伸ばした、小柄な“少女”はなんとなく聞き流していたニュースから聞こえて来た思わぬ言葉に顔を上げた。

 

 

 

 

 手元にあるのはゼミの課題。

 簡単ではあるが、アスランから散々「やりすぎるな」「やるなら趣味として自分だけで楽しめ」と念を押されていたこともあり無理はしてない、はず。ゼミの友人のレベルを参考にしているし。

 

 代わりに、トリィほかアスランに貰ったメカの改善には余念がなかった。

 

 

 

 

『トリィ! キラ、この馬鹿野郎! いい加減にしろ! どうして休まないんだ、お前は! 飯を抜いてまで没頭する気か!?』

「はいはい、分かったよアス……トリィ。ちょっと待って、今ニュースにアスランが出てたから」

 

 

 

 

 その集大成のひとつがこのアスランの声で叫ぶ『うるさいトリィ』もとい『トリィMK-Ⅴ』である。なんでかアスランがMK-〇〇に拘っていただけで、キラからは内心『アスラントリィ』か『うるさいトリィ』としか呼ばれてないが。

 

 アスランが変な声を収録し始めて、それから始まった二人の悪ノリの集大成とも言えるうるさいトリィだが、キラはそれなりに気に入っていた。AIでけっこうしゃべりもバリエーションがあるし、お節介なところがよく似ている。

 

 本物のアスランもけっこううるさいから、ちょうどいいと思っていたのである。それに、少しは寂しさが紛れる気もする。一応、アスランよりは空気を読んでくれるし。

 

 

 

 

『トリィ! お前はいつもそうやって先送りにして……もうやめるんだ!』

「アスランうるさい」

 

 

 

『トリィ……』

 

 

 

 

 で、片手間にニュースを漁ってみたところどうやらアスランがモビルスーツを盗んで戦闘して核ミサイル攻撃を阻止したらしい。………? しかも一緒に参加した学生のうち一人は亡くなっているって。

 

 

 調べ間違いであってほしいのだが、どういうわけかザフトの公式声明らしい。

 義勇軍とはいえ独断専行すぎじゃないかとか、それは本当にアスランなのかとか、色々と思うところはあるけれど―――。

 

 

 

 

「……アスランだからなぁ」

 

 

 

 

 コーディネイターだから、あるいはキラが性別を偽ってたからか、あるいは単純に性格の問題か。孤立していたところにしつこいくらいにお節介を焼いてきた顔を思い浮かべて小さく笑みを浮かべて。それからやっぱり流れる戦争のニュースに顔をしかめる。

 

 

 

 

 

「戦争に、なってるんだよね」

 

 

『いいか、キラ。本当に戦争になったらそれは“ナチュラルとコーディネイターの戦争”になる。無関係だから、中立だから、なんて考えずにしっかりと身を護ること。……頼むからうっかり機密区画に入り込んだりするなよ?』

『僕のこと、なんだと思ってるのさ……』

 

 

 

 

『だってキラだし』

『アスランにだけは言われたくないよ』

 

 

 

 

『お前な、プログラミングと着替えと風呂以外は俺がいないとてんでダメだしやりたくないことは絶対にしないし完全に自分が困らないと動こうとしないだろう』

『だってアスランがいるし……』

 

 

 

『俺はお前のお母さんじゃない。将来恋人(ラクス)に呆れられるぞ』

『恋人とか……そういうの、まだよくわかんないし』

 

 

 

 

 アスランなら、別に気にしないでしょ?

 目線で問いかけても朴念仁(アスラン)が気づいてくれるはずもなく。結局自分が女だと言い出せないまま別れてしまって。

 

 

 

 

 

 

「……会いたいなぁ」

『トリィ!』

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、手紙でも送ってみようか。

 

 

 

 

 

 

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