C.E.で最もフリーダムなアスラン   作:アマシロ

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それぞれの孤独

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――そう、ですか』

 

 

 

 第八艦隊から、ヘリオポリスの避難民とオーブのジャンク屋を乗せたシャトルが出る―――地球軍内の協力者から得た情報に反して、シャトルは出ず。第八艦隊が壊滅状態になった影響で続報も無し。

 

 キラには伝えない方が良いのでは、とも思った。

 けれど、キラが関わると決めた理由であるアスランがもういないかもしれないのに。それでもなおそれを隠して協力してもらうことは、ラクスにはできなくて。

 

 

 

 

 ただ、キラはより熱心にMS開発に協力するようになった。なってしまった。

 ひとまずフレームが完成しており抜本的な改修は逆に手間になるX10Aフリーダムと、ジャスティスの素体部分はとりあえず組んどけという軽いノリで完成されて放置されているが。

 

 むしろ量産機の試作という名目だったはずの機体が好き放題に改造されていて。

 

 

 

 

 

 より繊細な操縦が可能になるようフレーム部分にフェイズシフト装甲を組み込むアイデアをキラが出し、即座にハインラインさんが実現。細かい調整をキラが済ませたことで、多分数年分の技術革新が起きてしまった……らしい。

 

 更に主にシステム面で難渋していて開発の遅れていたドラグーンシステムも積み込める、推進システムさえ改良できればキラの操縦センスを余すところなく発揮できる、とハインラインさんは生き生きしていた。

 

 

 

 

 キラは不安を抱えながらも、アスランを信じて前に進もうとしていた。

 それは、あるいはアスランを失った悲しみからくる新たな憎しみの連鎖かもしれなくて――――綺麗ごとでは割り切れない想いを強く感じる。

 

 

 

 

(……それは、わたくしもですけれど)

 

 

 

 

 

 なんとなく好意を抱いている自覚はあった。

 けれど、もういないかもしれないという不安で、こうまで胸が空虚に感じるなんて。

 

 

 

 

 せめて私にできることを、と第八艦隊を壊滅させるという暴挙―――戦禍を招く暴挙のはずなのに、戦果だともてはやすプラント市民に悲しさを感じながらも、歌を通して平和を祈ることしかできない歯がゆさを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、これは……このようなところでお会いしようとはね、ラクス嬢」

「貴方は―――」

 

 

 

「ラウ・ル・クルーゼ。主戦派に持ち上げられただけの男ですよ」

「………」

 

 

 

 

 彼が特に“何か”をしたわけではない。けれど、底知れない冷たい感覚を受ける男―――第八艦隊との戦いで暴走したザフト艦の艦長たちを制止するも応じず、仕方なく追従した彼の部下が大戦果を挙げた―――その経緯から穏健派、主戦派が妥協的に祭り上げたのが彼の部隊で。

 

 『やはりコーディネーターはナチュラルなどには負けない』『このまま一気に制圧してしまえばいい』と過激な意見が目立つようになり―――彼がストライク、イージスとの戦闘で乗機を中破していたこともあり、新しくMSを与えられるのではという話はあった。

 

 

 

 

 

「しかしタイミングが悪かったかな。これでは責任者に会うのも難しそうだ」

「……ご案内いたしますわ」

 

 

 

 

 そう返すより他にない。

 無視してもいい。けれど、それでもキラに負担を掛けているのだから、とせめて探りを入れられないかという想いがあって。

 

 

 

 

 

「クルーゼ隊長は、何をお望みですか」

「ふむ」

 

 

 

 話の流れから言えば、MSのことだ。

 けれど、あえてぼかして問いかけた。底を見せない相手だけれど、それで通じるという確信はあった。同時に、役職についているわけでもない自分など警戒されていないだろうという目算もあって。

 

 

 

 

「今の望みは……そうですね、結末を見届けることでしょうか」

「………結末、ですか?」

 

 

 

 

「この戦争の行く末――――コーディネーターの輝かしい未来、というものかな」

「……そう、ですか」

 

 

 

 

 

 皮肉るような口調に、ナチュラルを滅ぼしたいというような欲はないと感じる。それと同時に、言葉通りの生易しい男でもないとも。

 そんな油断のならない男が、ふと部屋の隅に座るキラを見遣り――――立ち止まった。

 

 

 

 

「………まさか」

 

 

 

 

 それは、これまでの印象を全て裏切るような、劇的な反応で。

 止める暇もなくキラに近づいたクルーゼは、言葉を選ぶように、僅かに間を置きつつも言った。

 

 

 

 

 

「君は……何故此処に?」

「………」

 

 

 

 

 キラは少し面倒くさそうにしつつも、チラリと目をやり。

 わたくしと、そしてクルーゼの白服を見ると呟くように言った。

 

 

 

 

「それが、私のやりたいことだから」

「………復讐かね?」

 

 

 

 

 それは、偶然にしてはあまりにも的確すぎた。

 きっとキラの様子を見て言ったのだろうけれど、恐らくさっきの話はキラにも聞こえていて。この男の部隊が、アスランが乗っていたかもしれない艦艇を沈めたのかもしれないと、キラにも分かっていた。

 

 

 

 

 

 

「――――…」

「……」

 

 

 

 

 濁った眼だった。

 アスランと居た時とは比べるべくもない、疲労と、不安と、やりきれない憎しみと。

 

 それでも、キラの目の奥にはまだ光があった。

 

 

 

 

 

「――――信じて、いるから。……私はまだ、信じているから」

「……………そうか。失礼した」

 

 

 

 

 

 

 

 その日、ラウ・ル・クルーゼは突貫作業でドラグーンシステムを装着されたプロヴィデンスを受領。プラントにて暫くの待機と慣熟訓練を命じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「不味いことになったわね……」

 

 

 

 

――――アークエンジェルが降下した先は、親プラントを表明しているアフリカ共同体の領土内であり。つまりはザフトの勢力圏内で。

 

 

 頼みのイージスはG3機との戦いで大破し予備パーツを全てかき集める勢いで修理中。

 ハルバートン提督から受け取ったスカイグラスパーこそあるが、間違ってもアークエンジェル単艦でザフト勢力圏を突破できる戦力はない。

 

 フラガ大尉……もとい少佐も、ストライクでの大気圏内の戦闘は無理だと断言している。重力下は論外だと。

 

 

 

 

 頭を悩ませるマリューだが、結局のところ答えは出ている。

 この結果を予期していたかのようにアークエンジェルに乗ったままのアレックスに頼むより他にない。

 

 

 

 

 

 

「レーザー照射を受けています! 第二戦闘配備発令!」

「ミサイルと思われる熱源、接近!」

「イーゲルシュテルン起動! アンチビーム爆雷用意―――機関始動、アークエンジェル浮上させて!」

 

 

 

 

 早い、と思う。

 砂漠の虎、という勇名だけは聞いたことがあるが、どちらにしても大西洋連邦以外とは積極的な戦闘は行っていないザフトである。そこまでの練度ではない、と思いたいが……望み薄かもしれない。

 

 

 

「フラガ少佐、マードック曹長、スカイグラスパーの出撃準備いいですか?」

『スカイグラスパーの調整が終わってないんだ、無茶言わんといて下さい!』

 

 

 

「………艦長」

「分かっているわ。……ごめんなさい、アレックス君。お願いできる?」

 

 

『あくまで専守防衛であれば。すみませんがそれが限界です』

「構わないわ、お願い」

 

 

 

 

『了解。ランチャーストライカーを頼みます』

『ストライカーパックは、ランチャーを! ランチャーストライク、発進どうぞ!』

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「砂漠か、嫌になるな……本当に」

 

 

 

 夜間、砂漠、そして相手は恐らくバクゥ――――指揮官はバルトフェルド。おまけにまだアークエンジェルは離床もできていない。

 キラに砂漠用のOSも用意してもらっていなければこう悠長にはしていられなかっただろう。……やっぱりキラを扱き使いすぎたので何かお礼を用意しておくべきかもしれない。

 

 

 

 

 とはいえ、砂地に適応できているという情報をわざわざ相手に与える必要はない。

 ストライクをアークエンジェルの甲板に陣取らせ、給電ケーブルを繋いで、攻撃を仕掛けてくる戦闘ヘリに対して無造作にアグニを放った。

 

 

 

 

「俺はキラほど射撃が上手くない――――死にたくなければ下がれ!」

 

 

 

 

 

 戦闘ヘリがアグニを掠めたことで乱流に揉まれて墜落していくのを視界の端に留めつつ、砂丘を盾にミサイルで攻撃してくるバクゥを砂丘ごとアグニで吹き飛ばす。

 

 

 

 

 

「コロニーを壊せる射撃を甘く見すぎだな」

 

 

 

 

 あのとんでもない強さのGに手加減する余裕はなかったが、まあできれば殺したくない。

 自分だけなら逃げればいいが、アークエンジェルの乗組員たちには思い入れもあるし、キラの友人たちがいる。本当ならキラが自分と敵対してでも守りたかった彼らを見捨てることはできない。

 

 

 

 

「―――さて、どうする。砂漠の虎」

 

 

 

 

 

 もう一撃。今度はもう一機のバクゥの後脚を吹き飛ばし、パイロットが脱出するのは見過ごす。

 慎重派のバルトフェルドはまだ敵艦―――レセップスの位置を明らかにしていない。

 仕留められそうであれば仕留めるつもりなのだろうが、恐らくは威力偵察。

 

 それを示すかのように、砂漠に一時静けさが戻った。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「うーん、こりゃ参ったな」

「……如何なさいますか、隊長」

 

 

 

 

 

 バルトフェルドは敵艦の甲板で巨大なビーム兵器を構えて仁王立ちするストライクを双眼鏡で眺めていた。

 迂闊に砂漠に足を踏み入れない慎重さ、砂丘ごと吹き飛ばす大胆さ。射撃の正確性、回避も淀みない。間違いなくエースパイロットだ。

 

 

 

 

「強力な兵器に、いいモビルスーツ。そしてエースパイロット……斃すのなら、こちらも全滅を覚悟しないとだろうな」

「それほどですか」

 

 

 

 

 ダコスタの言には砂漠におけるバクゥ、あとラゴゥへの信頼がある。

 が、それくらいは容易くひっくり返しそうな予感をひしひしと感じていた。

 

 

 

 

 

「あとはまあ、レジスタンスか? 大して脅威とは思えんが、まああのMSと同時に相手はしたくないな」

「では、撤退を?」

 

 

 

 

「ああ。ひとまず撤収だ。一筋縄ではいかん相手だ―――だが本来砂漠に降りる予定でなかったのなら、街には寄るだろうな」

「……なるほど」

 

 

 

 

 

 

 そこで少しパイロットに会ってみたい、などと考えていたバルトフェルドと、その隙を突くのかと感心していたダコスタの間にはそこそこの溝があったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――なんだ、アレは」

 

 

 

 

 カガリは激怒した。必ずやあの邪知暴虐のお父さまに一泡吹かせてやらねばならぬと決意したのはつい先日のこと。

 

 ヘリオポリスに殴り込みをかけ、見てしまった事実にお父様のところに怒鳴り込み。世界を知ってこいと放り込まれたのはアフリカのレジスタンス。

 キサカはいるが、砂漠の中では自分の力なんて大したものでもない。砂に塗れ、砂嵐が過ぎ去るのを待ち、時折砂漠の虎の部隊に嫌がらせをする。そんな生活だった――――アークエンジェルが、お父さまが関わったあの新造戦艦と、MSが来るまでは。

 

 

 

 

 しかし、だからこそ驚愕した。

 あの砂漠の虎の部隊を、一方的に叩きのめすだけの性能。そしてパイロット。

 

 皮肉にも、お父さまがあれに関わった理由が分かってしまい―――だからこそ激怒した。

 

 

 

 

「あんな……あんなものを作って! オーブをどうしようと言うんだ!」

 

 

 

 

 力があれば叩きのめせる――――けれど、オーブの理念、戦いには関与しないというのはもっと尊いものだと思っていたカガリにとってはとんでもない裏切りにしか思えなくて。

 

 

 

 

「カガリ様……地球軍とオーブの関係は極めて微妙なものです。それを維持するためには……」

「―――分かっている! 私だって分かっているさ、そんなことは! けどそんなのはオーブが勝ち馬に乗ろうとして失敗したってだけの話だろう!」

 

 

 

 

 地球軍があっさりと勝つと思った。だから立場が悪くなるだろうコーディネーターを守るために手柄が必要だった。

 けれど実際はザフトが膠着状態に持ち込んだ。残ったのは地球軍と裏で取引をしていたという弱みのみ。

 

 

 

 

 分かっている。オーブを守ろうとしたのだということくらいは!

 けど! それを娘に説明もせず、黙って一人で抱え込んで、全てを分かった気になっているような顔をしているのが一番腹が立つ!

 

 

 

 

 

 

「――――やっぱり殴っておけば良かった!」

「………」

 

 

 

 

 キサカは何も言わなかった。

 『明けの砂漠』もストライクの圧倒的な戦力には何も言えず。バルトフェルドがあっさりと敗走したことから期待はしつつも、介入の隙を見つけられずにいた――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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