※ 劇場版のネタバレが増えます
この二次が僅かでも楽しめるなら絶対劇場版見た方が良いので見てきて♡
「――――オペレーション・スピットブレイクか。厄介なことになったものだ」
「………全く、放蕩している馬鹿息子のせいで頭が痛いと言うのに!」
穏健派の筆頭と目されるシーゲル・クライン。そしてNo.2の国防委員長パトリック・ザラは急進派によって提出されたスピットブレイクの資料を見て頭を抱えていた。
言ってしまえば現在進行中のオペレーション・ウロボロスの強化版であり、地球軍が保有する宇宙港を占拠することで封じ込めることに主眼を置いている。故に、目標はパナマ。
目標は間違っていないのだが、せっかく大西洋連邦を狙い撃ちにすることで連合に亀裂を生じさせているのに、無駄に危機感を煽りかねないという本末転倒な問題がある。
婚姻統制を行ったプラントにおいて、息子と娘が婚約者になるというある意味腐れ縁、ある意味政治的な関わりの強い二人ではあったが。関係が深まった切っ掛けはやはり子ども二人が協力してオペレーション・ウロボロスの軌道修正を働きかけたことだろう。
そもそも、もしユニウスセブンへの核攻撃が阻止できていなかったらこうして肩を並べることもなかっただろうが。
「あー、その。友人の友人をオーブまで送り届けに行ったのだったか…?」
「そうだ! あの馬鹿はなんでザフトと戦闘までしている…!? 連合MSを奪取したパイロットが怪しい? そんなことは言われずとも分かっている!」
「ふむ。確かメンデル研究場所属のアウラ・マハ・ハイバルの推薦だったか……」
「以前噂になったスーパーコーディネーターの完成形だと言うが、眉唾だな。より優れた人類の形? それならばまず出生率の低さをなんとかするべきだろうに!」
ギルバート・デュランダルの提唱するデスティニープランもそうだが、手段がカッ飛びすぎているのだ。真面目にプラントの政治を考えている人間からすれば、そんな夢みたいな目標を持って過激なことをやるくらいなら目先の出生率をなんとかしないとその前にコーディネーターは滅びるというのに! 夢を語る暇があればヤることヤれ!
アスランが連れ帰った(ラクスに連れてこさせた)のが以前から付き合いがあるヤマト家のご息女だというのが余計に話をややこしくしている。妻のレノアはあそこの奥様と大の仲良しだし、実際にパトリックも認めるしかないナチュラルと思えぬ人格者であるし、レノアに至ってはあちらの息女を実の娘のように思っているから婚姻統制推進側であるパトリックは肩身が狭い。
アスランは恐らく生きている、とは思うのだが。
迂闊な事を言うわけにもいかないパトリックとしては胃を痛めながらも急進派のゴリ押しと過熱する民意をなんとか宥めなくてはならない。
「最悪は私を蹴落としてでも君の発言力を保つ他あるまい」
「私に厄介事を押し付けないで貰いたいな。ただでさえストレスが多すぎるのだ!」
幸いなのは、穏健派に特に失態があるわけではないことだろう。
しかし一年前の核攻撃阻止のために息子が死んだとはいえ、急進派であるジュレミー・マクスウェルなどはここ数週間で急激に過激な論調になっている。何かがおかしい―――辻褄が合わないのだ。
以前から多少目を掛けていたクルーゼからの警告を思い出し、眉間にしわを寄せつつも一応言葉にしておく。
「そういえば、ラウ・ル・クルーゼだが――――あの男曰く、急に味方艦の艦長が暴走を始めたと言っていたな。不自然に攻撃的な言動になった、と」
「ふむ…? まあ確かにログにも残されてはいたが……信じられるのか?」
「分からんさ。あまりにも眉唾すぎる―――だが、妙にあの馬鹿息子が警戒していた。思い出さないか、ユニウスセブンの奇跡を」
「………」
ユニウスセブンの奇跡―――“たまたま居合わせた善意の学生が”核ミサイルを迎撃したということになり、アスランの命令無視などなかったことになったがあの時のアスランの行動は明らかにおかしかった。遂に未来予知できるコーディネーターが現れた、などの噴飯ものの噂もあったが―――なんとなく、アウラ・マハ・ハイバルの言う選ばれたコーディネーターとやらは嫌な予感がする。
「割を食わされたクルーゼは信用できる、と…?」
「そこまでは言わん。あ奴は言動が胡散臭すぎる」
正直すぎるパトリックに噴き出しそうになったシーゲルだが、それでも確かにアウラ一派に対する警戒心は芽生えた。――――結局のところ、それは無駄にはならなかったが。
急進派の唱えるパナマ制圧が、連合がNジャマーキャンセラーを手に入れた際にプラントが即座に攻撃されるのを防ぐ意味合いもあることもあり――――オペレーション・スピットブレイクはまだ承認こそされなかったものの、徐々に実行する方向に傾いていくこととなるのだった。
―――――――――――――――――
「全く、ナチュラルの不甲斐なさも困ったものじゃ。妾の出番がこうも早くきてしまうとはのぅ……ギルバートも人遣いが荒い」
穏健派は想像以上の手腕だった。
このままでは特に何事もなくプラント側の勝利で終わってしまう――――そうなれば戦略を主導してきた穏健派がそのままプラント上層部に残ることになるだろう。地球でも求めていたような混乱は(今のところ)少なく、せいぜい大西洋連邦の加盟国に綻びがある程度。だが大西洋連邦で元々狙っていた独立・建国運動をしたところで今の大西洋連邦はユーラシア連邦、東アジア共和国などと比べて明らかに劣ったボロボロの状態。だからこそアコードの性能がより輝くとしても……限度がある! それに思ったより被害も少ないし! ブルーコスモスがボロボロなのも責任を押し付けにくくて逆に不都合!
穏健派からうまい事最新MSを流してくれるというギルバートの口車に乗せられてやったアウラは、残った三人の子どもたち、アコードも戦場に出す決意をした。第八艦隊壊滅により自分の発言力が一気に高まり気分が良かったとも言う。
急進派なんてアコードの能力であっさりと過激派とでも言うべき存在になる単純さだし、やはり世界を統べるのはアコードしかいない。そして崇められるのはその母である妾!
「ふふふ……さあ子どもたち、貴方たちの力を見せつけてあげなさい。世界に」
―――――――――――――――――――
着々と完成しつつある新型フリーダムとジャスティス。
アスランが生死不明であること、そして探しに行きたいキラの都合が合わさって先にフリーダムを完成させることとなり。
微調整の終わらないドラグーン機動兵装ウイング(仮称)はそのままに、とにかく使えるものをということでフリーダムのウイングバインダーを微調整し、ハインラインさんが独自の改良を加えたそれを装着。
もう少しで完成、というところだった。
「………キラも、もう少しご自愛いただけると良いのですが」
『アカンデー!』
『ごめんね、ラクス。でも今なら―――まるで思考がクリアになったみたいな今なら、きっとアスランを守れる最高のMSができる気がするんだ』
『キラ……』
無理に止めれば、壊れてしまうかもしれない―――涙の痕も色濃いキラの、力にも支えにもなってあげられない。せめて気が紛れるように、体調を崩さないようにと気遣うのが今のラクスの限界だった。
「何に致しましょうか。キラも、好きな物ならきっと――――」
――――不意に、妙な感覚があった。
通路の先に立っているのは、同じ年ごろだろう金髪の青年で。
ザフト兵にして妙なことに、どこかの貴族服のようなものを纏っていた。
なんとなく関わり合いになりたくなかったので、ハロを追いかけるフリをして自然に避けようとしたのだが――――。
「―――失礼。初めまして、ですね。姫」
「…………貴方は?」
不思議なことに、あまりに不躾だったのに嫌悪感は湧かなかった。そのことに強い違和感を覚えて、手に持ちなおしたハロに意識を集中させ――――。
「私はオルフェ・ラム・タオ。貴女と同じ―――……この世界を導く者です」
「何を―――」
手を取られる。それでもまだ嫌悪感が無かったことに、ラクス自身が一番驚いていた。
こう無遠慮に触れられたことなんて、無かったのに。
「この世界は公平じゃない。誰もが正しく能力に見合った仕事を、責務を、報酬を与えられていないから争いが尽きない。僕はそれを変えたいのです」
「……それは、とてもご立派なことだと思いますわ」
「そうでしょう! 僕たちアコードは、世界を導くために造られた――――貴女もそうだ」
「………わたくし、も?」
『ミトメタクナーイ! ミトメタクナーイ! ミトメタクナーイ!』
不意に叫んだハロに正気に戻ると、唇が触れ合いそうなくらいに近くにいたオルフェと名乗る青年から慌てて距離を取る。いつの間にかぴかぴかと赤く光り出したハロは、防犯ブザーの如く爆音を響かせながらアスランの声で叫び出す。
『シン、この……ッ、馬鹿野郎! トゥッ! ヘアー! トゥッ! ヘアー! モウヤメルンダッ! 此処で終わらせる――――! キラキラバシューン! ヌ゛オオオオオッ!? シン! この……ッ、馬鹿野郎!』
「……っ!?」
「………くっ。アスラン・ザラはもういない――――そんなものはもう必要ないでしょう」
「……必要だから、持っているのではありません」
『トゥ! トゥ! ヘアーツ! ――――お前が欲しかったのは、本当にこんな力か!? 未来か!? トゥ! トゥ! ヘアーッ!』
「わたくしに『ヌ゛オオオオオッ!?』――――大切なものだから―――
『トゥ! トゥ! ヘアーッ! トゥ! トゥ! ヘアーッ!』
――――のです!」
「そんな『モウヤメルンダッ!』
―――のような――――『キラキラバシューン!』
――――ええい、五月蠅い!」
ガシャン、とオルフェの手で吹き飛ばされたハロに思わずラクスが手を伸ばし。
「ああっ、ピンクちゃんが!?」
『ミトメタクナーイ! ――――俺が、お前を討つ!』
「くっ、このガラクタが――――!」
謎のスラスター噴射でオルフェの顔面に襲い掛かったハロに、反撃しようとし。
――――その瞬間、赤服を着た小柄な少女がラクスの前を横切り。
そのまま容赦なくオルフェの喉を狙って抜き手を繰り出した。
「――――チィッ!?」
「……何を、してるのさ」
辛うじて抜き手を躱した、その隙にオルフェの股間を狙って放たれた蹴りを、ギリギリ腿で受ける。読心がなければ喉を潰されていたか、あるいは股間を潰されていたと冷や汗を流すオルフェも手加減など考えずに反撃。
返しで放たれた掌底をキラは腕で受けつつ、更に自分から後方に飛んで衝撃を殺し。そこにオルフェは更に追撃をかけようと―――――『もう倒すしかないじゃないか! アスランファイヤーッ!』読心が効かないハロが口から噴射した催涙スプレーをモロに食らいそうになり慌てて距離を取った。
「貴方はそんな奴らといるべきじゃない――――僕と共に来るべきだ」
「――――お断りいたします。わたくしは、アスランの帰りを信じております」
「――――あなたの望む争いのない世界も実現できないヤツをか!?」
「わたくしの望みは、彼と共に歩むことです」
「あんな――――くっ」
ついに銃を構えたキラ、あるいはハロの爆音に駆け付けて来た他のスタッフたちの音に流石に不味いと思ったのか、逃げ出したオルフェの背中を見ながらキラはラクスをそっと抱き寄せた。
「大丈夫、ラクス?」
「……ええ。ありがとうございます、キラ」
『ミトメタクナーイ!』
本当に防犯ブザー機能だったらしく、すっかり元通りの音量と色に戻ったハロに、ラクスはちょっとだけ安心した。
きっとアスランの声で慌てて駆け付けてくれたのだろうキラの負担になりはしないかと、不安だったから。
「ふふっ。ピンクちゃんも、ありがとう」
「なんでこんなところに不審者が……」
不審者扱いするキラに思わず笑ってしまいそうになりながらも、それでもなお彼に嫌悪感を持てない自分に少しだけ失望しつつ。
――――あの日、Nジャマーを限定散布に変えるためにアスランが押してくれた背中はもっと温かくて。心強かったことを思い出す。
(………やはり、わたくしも――――アスランのことが)
もういないかもしれない想い人に、二人で向き合って少しだけ涙をこぼした。
――――――――――――――
「――――水が高いです。ついでに買えるコネもない……」
「いやー、すまん。流石にちょっと地球軍に流すわけにもいかんしなぁ…」
バルトフェルドの屋敷で、ラクスとキラ宛のビデオレターを用意。クライン派であるダコスタ君に預けたところ「なんで知ってるんですか!?」とめちゃくちゃ驚かれたが……すまん情報の出所は言えないんだ。
と思っていたらバルトフェルドさんが何食わぬ顔で言ってくれた。
「え、ダコスタ君がクライン派なのは前から知ってるが……」
「隊長ぉ!? 隠してたわけじゃないですけど! でもなんかこう……もうちょっとないんですか!?」
「そりゃ、自分の副官くらい意見の合う相手を取り立てるだろう? ザフトに階級はないとはいえ、実質の上司の特権だよ、ダコスタ君」
「それは、そうですね」
普通に丸め込んでる……普通に頼りなる大人ってなんて有難いんだろうか。
「いやぁ、にしてもクライン嬢も行方不明扱いの婚約者からビデオレターが来れば喜ぶだろうな!」
「俺なんて行方不明扱いなの知らなかったですが。まあ一応送っておいたほうがいいですよね」
HAHAHA! と二人で肩を組んでいるとダコスタ君がちょっと微妙な顔で言った。
「いえその、聞いた話だとラクス様がかなり落ち込まれているとか……新しく婚約者に名乗りを上げた相手に大層お怒りだったとか聞きましたが」
「え。いやー、行方不明になってすぐはちょっとなぁ……僕でもどうかと思うよ?」
「……俺相手でも怒らないのに」
イラッとくるとハロを嗾けて来たり、地味に毒を吐いたり、キラの話ばかりすると拗ねるところは見たことあるが。俺相手でも怒らないラクスを怒らせるとかある意味天才では。
「俺の知ってるラクスはそんなことを言わなかった」とか訳知り顔でドヤって見ていいだろうか。一度言ってみたいものである。ネタ的な意味で。
「いやぁ、アスラン君。君もうちょっと自信を持っていいと思うぞ」
「そうですか? バルトフェルドさんが言うなら調子に乗ってみようかと」
「「HAHAHA!」」
「えーと、ともかくラクス様に届くよう手配しますね。内容は大丈夫ですか?」
そう言われると少しばかり不安だが……もうちょっと申し訳なさそうにした方がいいか?
「なんだったらアイシャに見てもらうか? 女性の監修ならちょうどいいんじゃないかい?」
「有難いですが……でも、早く送ってあげたいですし。こういうのは自分らしいほうが良いかと思うので」
「うーん、確かにアイシャへの贈り物もそうだよなぁ」
「悩ましいですけどねー」
「何かプレゼントでもつけるかい?」
「いいですね」
そうして、ラクスには綺麗なブローチを、キラには髪飾りをプレゼントすることにして。……肝心の内容は、そのまま特に変更なく送るのだった。
…………
………
……
「――――これは、一体……」
「色々あって虎と一緒にブルーコスモスに襲われて、一緒に居た女の子がオーブの関係者で、オーブまで運ぶ代わりに水を買ってくれると……」
そんなわけで戻ってきたアークエンジェル。
目が飛び出そうなくらい高い補給物資の伝票にマリューさんが遠い目になるが、洗濯が終わって元の服装に戻ったカガリと、伝票を受け取った褐色肌のたくましい男性が敬礼とともに挨拶する。
「ふんっ。カガリ・ユラ・アスハだ」
「オーブ軍のレドニル・キサカ一佐です。よろしくお願いいたします」
「アスハって……オーブの代表首長の苗字じゃなかったっけ?」
「………そうだな」
むっすー、という擬音が似合うくらいには拗ねているカガリだがオーブとしてもアークエンジェルにいるヘリオポリスの避難民は受け取りたい……ついでにMSのデータ頂戴、というところだろうか。
国益になる、人道救助、見捨てるわけにいかない、お父様の被害者。
でも地球軍に肩入れするのは……ザフトもダメだが! と色々と悶々としているのが顔に出ている。ちょっと面白……もとい、可愛らしい。
結局のところ、アークエンジェルが出て行かないと戦わざるを得なくなり――――真っ先に犠牲になるのはレジスタンスだという現実をバルトフェルドから告げられたカガリは苦渋の表情でこれを受け入れた。
『まあ、正直バクゥが一機いればレジスタンスの物資を焼き払うくらいはできるね。関係ない市民を巻き込むのは本意じゃないけど、レジスタンスを受け入れるな、という意味ではやるしかないし』
『そんなことをしたら市民はどうなるんだ!?』
その場合、巻き込んだのはこっちじゃなくてレジスタンスの方なんだけどなぁ、とちょっと遠い目になるバルトフェルドである。
カガリは正義感が強いが、いかんせん視野がまだ狭すぎる。
『それを覚悟しているべきなんだよ、レジスタンスを受け入れるって言うのは』
『知らぬ間に地球軍を受け入れてたヘリオポリスと一緒だな。まあ、レジスタンスはある程度知ってるだろうけど』
『逆の立場になってみたまえ、穏当に治めているが相手はこちらに攻撃してくる。反撃しなかったら更に過激になるだろう、つまりお仕置きするしかないわけだ』
『………ぐぬぬ』
『殺せばまた恨みが募る。だから殺さず、物資だけ焼き払う。少なくとも一度はね。それでも死んだ方がマシという口なら――――』
『もういいっ! ………分かった、アークエンジェルが出ていけるように協力する』
そんなやり取りがあったこともあって、カガリは不機嫌だった。
アークエンジェルが虎の目を惹きつける、というまあ嘘ではないし本当のことを理由にレジスタンスが少しだけ有利な状況を作る、という苦い結果でカガリのレジスタンス経験は幕を閉じて。
レジスタンスのコネもあって、高いがオーブのバックアップがあれば買える程度の値段で補給物資を入手。ラミアス艦長たちが二人を受け入れるしかない状況にしたわけで。
なし崩しだったこともあり、ラミアス艦長とフラガ少佐は受け入れてくれたがバジルール少尉はまあまあ不機嫌だった。