C.E.で最もフリーダムなアスラン   作:アマシロ

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モルゲンレーテにて

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――俺は、一般コーディネーターのアスラン・ザラ!

 

 

 幼馴染で親友のキラ・ヤマトと月の幼年学校で別れてからザフトに入った俺だったが、ユニウスセブンに近づく怪しげな黒づくめの機影を目撃してしまう。

 

 地球軍との会戦に夢中になっていたザフト軍は、背後を抜けていく核ミサイルに気づかなかった!

 

 

 

 そこでジンを奪いとり――――核ミサイルを撃墜して調子に乗っていた俺は――――味方のジンを撃墜され―――――気が付けば、ラスティを失ってしまっていた!

 

 

 核攻撃に対する報復としてNジャマーが地球全土にばら撒かれれば、更なる悲しみと怒りが地球を覆い、プラントの平和にも危険が及ぶ――――

 

 ラクスの助言でプラント評議会に働きかけることにした俺は、そこで再会したザフトの仲間たちに咄嗟に『俺たちにもできることがあるはずだ』と名乗りを上げて、皆の親父が議員をやっているプラント評議会に転がり込んだ。

 

 

 

 

 

 たった一つの平和を目指す!

 見た目はアスラン、中身はヅラ。その名は――――名探偵アスラン!

 

 真実は、いつもひと――――。

 

 

 

 

 

 

「何してるのさ、アスラン」

「ん、なんだキラ。今ハロに吹き込む新しいネタを考えてたんだが……」

 

 

 

 

 

 いつも奇抜な服を着ている印象があるキラだが、今日は妙に可愛らしい服だな、と思っていたら座っていたソファの隣に腰かけてくる。内なるアスランが「今日はいつもの変な服はどうした」と言いたくなるが流石にデリカシーが無いのでやめておく。

 

 ……なんか距離が近くないか? とも思ったが、それだけ心配をかけたということだろう。逆の立場だったら暫く世話を焼いていただろうし。

 

 

 

 

「確かにラクスの周りの不審者対策には役立つけど。それよりジャスティス改だよ」

「ああ、そういえばシミュレーターで試してほしいんだったか……」

 

 

 

「そう! ストライク、返しちゃうんでしょ? アスランのために私とラクスで用意してるんだし……せっかくなら、ちゃんとアスランに合わせなきゃ」

「車なら廃車レベルのボロボロ具合みたいなんだが……あれで返していいのか? ストライク」

 

 

 

 

 ところで俺たちは今、オーブにあるオノゴロ島……モルゲンレーテの施設にいる。

 本当であればザフト特務隊を名乗った(父さんとシーゲルさんがオルフェをゴリ押しされた時にゴリ押し返ししてMS開発の功績で通したらしいが)キラがいるのはおかしいのだが、そこは正規の外交ルートから申し込んだらしい。

 

 

 

 

「フリーダム改のウイングパックを無理やり使ったからね。……アスランの操縦が無茶苦茶なのもあると思うケド」

「そりゃ、戦う相手があれだけ厄介だったらキラだってああなるさ」

 

 

 

「そうかな?」

「そうだろ」

 

 

 

 というか、それが「本来の結果」だし。

 オーバーホールが必要なレベルでモルゲンレーテに担ぎ込まれたストライクを見て技術者たちはドン引きしていたが、多分もともとあんなんだったハズ。自爆したイージスの残骸も回収され、データだけは抜いてるがナチュラル用OSの開発には大いに役に立つのではないかとのこと。フラガ家はナチュラルの中でも外れ値ではと思うが。

 

 

 

 

「じゃあやっぱりそれだけ頑張ってくれたわけだし……お礼をしないと、だよね……」

「え。いやまあ、キラを戦わせたくないのは俺の都合だし別に――――」

 

 

 

 

 

 と、言うが早いかずいっと抱き着いてくるキラに――――締め落されないか心配したが杞憂だった。

 

 なんとなく自然で優しい香りとともにぴったりと寄りそう熱。

 緊張しているのか、真っ赤になった顔でプルプルと震えているのはなんとなく可愛らしい。

 

 

 

「……ど、どうっ!?」

「どうと言われても……(締め落されないか)ドキドキするな」

 

 

 

「……なんかアスランが変なこと考えてる時の顔な気がする!」

「そうか?」

 

 

 

 むー! と面倒くさい宿題を出された時みたいな声を出しながらべったり凭れ掛かってくるキラ。さすがにそれはちょっと無防備すぎやしないかと思ったものの、それはそれとして可愛らしくてコズミック・イラに似合わない性格よしな幼馴染の少女と密着できるのは役得なので黙っておく。

 

 

 

「ところでジャスティスのテストって何すればいいんだ?」

「あ、うん。フリーダムにシミュレーターのデータを入れて来たからそれで試してもらって、オーブにいるっていうプラントの関係者の人から送ってもらう感じかな」

 

 

 

「そうか。……キラのお眼鏡に適うといいんだが」

「いや、純粋な戦闘能力なら私がアスランに敵うわけないでしょ?」

 

 

 

 

 嘘だ! 突然盾を捨てて二刀流になりダルマにしてくる気でしょ!? セイバーガンダムみたいに! セイバーみたいに!

 

 それかプログラム書き換えたり、プラウドディフェンダーしてきたり……意味不明な戦闘するのがアスラン・ザラなら、意味不明なものを創り出すのがキラ・ヤマトだ。ナチュラル用OSとか、地味にかなり大きな仕事してると思う。

 

 

 

 

 まあ、さすがにキラちゃんに刃を向けられたら「あれ、俺どこで間違えたんだろうな……」とか思いながらボコボコにされるしかない。

 殺し合いにならない唯一の方法は無条件降伏なのだ……。キラ相手なら無条件降伏でもそう酷いことにはなるまい。

 

 

 

 

「まあキラと本気で戦うくらいなら大人しく降伏するから話し合いにしてくれ」

「そう? ふふ、じゃあ情状酌量の余地はあるかなー」

 

 

 

 

 にっこり笑うキラは可愛いんだけど、なぜだろう。ちょっと怖いような気もしないでもない。

 

 でもあれだな、キラのことだし優しさからカガリのオーブ代表首長としてのやらかしに巻き込まれて連合とザフトの間でアークエンジェルと大立ち回りとかして袋叩きに遭うとかなりかねないというか、実際なるはずというか……。

 

 

 

 

 

「なあキラ、もし今後戦いを止めるために両者鎮圧とかしようとするなら俺にも相談してくれよ? 頼むから」

「え? しないよ流石に……」

 

 

 

 そう言って色々あったせいとはいえオーブを連合と同盟させてしまったカガリのために連合にもザフトにも喧嘩を売って、なまじ議長が視聴者にも正しく見えたせいでネットでも袋叩きにあわなかったっけ?

 

 

 

「キラなら大切な人のためとかならしそうだしな……」

「……え、アスランの?」

 

 

 

「ん?」

「え? ………ちょ、ちょっと待って! 今のなし!」

 

 

 

 

 なんかさらっと大切な人宣言されたような気がするが…。

 

 

 

 

「まあ確かに俺としてもキラは大切な人だしな……」

「えっ!?」

 

 

 

「なんでそこで驚くんだお前は」

「だ、だってほら、アスランって普段何考えてるのかよく分かんないし……」

 

 

 

「そうか?」

「そうだよ!」

 

 

 

 

「だからなるべく言うようにしてるだろ、キラは良いヤツだって。優しくて、人のために頑張れる凄いヤツだ」

「………それ、アスランもだよね?」

 

 

 

「俺は身内しか守る気が無いからな」

「………そっか、私も身内なんだ?」

 

 

 

 満足気なのはいいんだが、凭れ掛かった状態で顔を埋めてくるのはどうなのだろう。

 

 しかし家族ぐるみの付き合いがある、幼年学校時代からの親友が身内じゃないわけがないだろうに。伊達にキラのために色々無茶をやらかしてるわけじゃないんだぞ、アスラン・ザラは。

 むしろ母さんが死んで父さんがああなったらキラが一番の身内まである。ラクスとは……うん、かなりアレだったし。

 

 

 

 

 

「ところでキラ、そろそろジャスティスのシミュレーションを――――」

「……もうちょっと待って」

 

 

 

 

 はい。ところで無防備に凭れ掛かるのみならず、ぎゅっと抱き着いて甘えてくるのはそれもう恋人か何かでは? キラとフレイだってそんなことしないだろうし、キラとラクスだってしてたかな…? 

 

 そろそろ俺の理性がフェイズシフト・ダウンしてアーマーシュナイダー突撃するしかなくなりそうなんだが。

 

 脳内で例の警告音を鳴らしつつ遠い目をする。

 もしかして劇場版アスランの種割れは賢者モードだった…?

 

 

 

 

「キラ」

「………ん。じゃあしよっか」

 

 

 

 

 シミュレーターをな!

 絶対このへん意識してないけど、こいつ一回襲われて痛い目見た方がいいんじゃなかろうか。いやいや俺が守護るが。

 

 

 

 何故かキラに脛を蹴られた。解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「――――…一体どうなっているのだ! 何が『連合に協力したオーブへの正当な報復』だ! 子どもの戦争ごっこではないのだぞ、あれで本当にプラント評議会議員か!? いや、明らかにおかしい……まるでせん妄状態か何かだ」

 

「………むぅ。元々穏健派だった者たちが冷静なのは幸いだが……これでは本当に全滅戦争になりかねん」

 

 

 

 パトリック・ザラは最早恒例になりつつあるシーゲルとの極秘会談で、集まると同時に机に拳を叩きつけた。

 

 あのオーブへの攻撃で使われたMSがオーブと連合の共同開発だと流してオーブ世論を揺さぶるのはまだいい。そのくらいの嫌がらせをされても仕方のないことを中立を名乗るオーブはしていた。

 

 が。国境近くでふらふらしていただけでオーブ軍が先制攻撃するのもおかしいし、それで反撃してオーブ艦隊を沈めるのは更におかしい。そしてそれを罰する動きどころか賞賛しようとするのは異常だ。

 

 

 

 

「あー、そういえば君の息子……アスラン君は無事だったようだね」

「……オーブ本国にいるがな! ヤマト家のご息女が救援してくれたから良かったようなものを、フリーダムとやり合うなど……死んでいないのが不思議なくらいだ!」

 

 

 

 

 

 

 話によればフリーダム改とXナンバーでフリーダムをボコボコ(中破)にしたとか。

 いや、Xナンバーの可変機は自爆することになったというし、かなりギリギリの戦いだったと聞く。アークエンジェルも航行不能でオーブに係留されているくらいだ。オーブの公式声明ではいないことになっているが。

 

 

 

 

「あの馬鹿がいればさっさとジャスティスを受領させたものを……」

「しかし凄いものだな、あのフリーダム改の性能は。パイロットの問題なのか?」

 

 

 

 なんとか話題を逸らそうというのを察したのか、疲れ果てた顔でソファに深く腰掛けたパトリックは天を仰いで言った。

 

 

 

 

「どちらもだ。天性のセンスに、それを十分発揮できるMS。どうやらあれでもまだ不十分らしいが……」

「あれでか!?」

 

 

 

「まだ高機動でも問題ないらしい。現状では機体が追い付かないと、ハインライン設計局が大喜びしていた」

「………」

 

 

 

 

 

 技術屋というのはどこでも変わらないな、とちょっと遠い目になったシーゲルであった。

 まあそれを連合製、バッテリー駆動の機体でなんとかやり合うあたり一番おかしいのはお前の息子では、と思ったが口には出さなかった。

 

 謎のカリスマを発揮して穏健派をまとめ上げて、過激派になりつつある急進派をなんとか抑え込もうとしている自分の娘にも言及されそうなので棚上げしたとも言う。

 

 

 

 

「お前の娘のお陰でなんとか過激派を抑え込めてはいるが、これでは時間の問題だ」

「……」

 

 

 

 こいつ息子と同じで人が触れられたくないところを容赦なく指摘してくるな、とシーゲルは思ったが黙った。彼は大人だった。

 

 

 

 

「まあ、プラントの民にも平和を求める心はあったということだろう」

「……そういうことにしておくか。ウズミはなんとしても中立を保つと突っ張っているが、中立のためならある程度の泥を被る覚悟はあるらしい。アスランの馬鹿がNジャマーキャンセラーを取引材料に何やらよく分からん技術を仕入れたいと言ってきた」

 

 

 

「あれをか? ………Nジャマーキャンセラーを?」

 

 

 

 あれがあるということは核兵器を解禁するということなのだが……本気か?

 正気か、と思わないあたり未来でも見えてそうなあの傑物……怪物……異物……アスラン・ザラというよく分からないものを、よく分からないなりに理解してきたと言えるのだろうか。

 

 

 

 

「そうだ。アイツ曰く『4年後でも間違いなく通用するオーパーツ』だそうだが」

「オーブが核兵器を……まあ、ウズミなら問題ないとも思うが……」

 

 

 

 ウズミ・ナラ・アスハの頑固っぷりは少しでもオーブと関わったことのある政治家なら自明だ。だからこそ中立を保てているのだろうが……しかしその周囲というか、死後どうなるかは未知数。

 

 

 

 

「まあNジャマーキャンセラーも誰かが連合などに流す可能性も否定できん。どうもこのまま我らが勝つのは不都合と考えている者たちもいるようだ」

 

 

 

 

 コーディネーターが生きるか滅ぶかの瀬戸際だというのに、と愚痴るパトリックだが、憎しみというより疲れ切った表情なのが印象的だった。

 

 

 

 

「む、何やら騒がしいな」

「………確かに」

 

 

 

 何か表の方からもめるような声が聞こえてくる。

 そしてそこに銃声が混じり、二人で顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

「まさかそこまで愚かではあるまい、と思っていたが」

「……こういう時、頼りになる娘がいるというのは良いものだな」

 

 

 

「そんなことを言っている場合ではあるまい」

「打つ手は?」

 

 

 

「ない」

「私もだ」

 

 

 

 

 クーデターか、あるいは過激派の仕業に見せかけた暗殺か――――通信も妨害されているらしく、奥の扉を開けて脱出用の通路を目指すが、その前に何者かが部屋に飛び込んできて――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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