すまぬ……やっぱりNジャマー投下先はユーラシア連邦→大西洋連邦に変更させていただき申す……。
わかる範囲で修正してますが、直ってなかったら後で直しておくのでこっそり教えて下ると助かります。
「何故だ、何故姫は私に振り向いてくれない」
「………」
ザフト軍の潜水艦、ボスゴロフ級。
オーブ近海での戦闘後、イングリットとグゥルの必死の救援活動が実って無事に帰還することができたアコード達だったが―――フリーダム改という想定外の強敵の出現により、暗い雰囲気が漂っていた。
もちろん、プラントの方では“順調”なので問題はない。ないのだが―――それ故に余計に自分たちの作戦がうまくいっていないところが気になってしまう。
「オルフェ、その……アスラン・ザラが生きているらしいって情報が……」
「――――…なに?」
アスラン・ザラ―――ユニウスセブンへの核攻撃を防いだ“英雄”にしてラクス・クラインの婚約者。どうやら潜入工作中に行方不明になったらしいと聞いてやはりその程度かと思っていたのだが。生きていたというのか。
「くっ……いや、だが姫も私という相手がいるのだ。そんなヤツなど忘れてこちらに来るべきだというのに」
私が姫だったらすぐにオルフェのところに行くのになぁとか考えているイングリットだが、それがラクスからのアスランへの気持ちだと気づかない程度にはまだ情緒が幼かった。
「それで、アスラン・ザラはどこに?」
「えっと、オーブに…?」
「なんだと。一体どこから……フリーダムのパイロットと共謀しているのか?」
「情報によるとそうみたい」
どこから湧いてきたのか全くの不明だが、状況からするとオーブに潜入していたのかもしれない。……まさかアークエンジェルに、ストライクに乗っていたなんてことは流石にないだろうし。それなら元気に暴れまわっているのに死んだなんて誤報も出なかっただろう。
「くっ、やはりブラックナイツの開発を急がせねば……幸いNジャマーキャンセラーは手に入った。PS装甲も、ビーム兵器もある。後はラミネート装甲をMS用に改良できれば……」
イングリットは開発方面はそこまで詳しいわけではないが、プラントの技術の粋を結集したこのフリーダムを超えるMSを即座に完成させろというのはかなりの無茶振りではないかと思った。
もちろんオルフェは『統べる者』としてデザインされたこともあり、またアコードは開発力だって優れている。オマケに配下の者たちを完璧に使いこなしてプラント内で地道に勢力を広げているのだが。それでもプラントの総力を結集したMSに勝つのは容易くはないように思える……。
「プロヴィデンスとやらに搭載されたドラグーンシステムも用意させるか。操作が追い付かないのならそんなもの、空間認識能力に優れたアコードが集中して操作すればいいだけの話」
「……!」
分業制、つまりオルフェと相席できる!?
とちょっとテンションが上がったイングリットだったが、今現在使えるMSが無いという事実にちょっぴり落ち込む。現状ほぼ役に立っていないのがイングリットとダニエルだった。なお実際はオーブ近海で撃墜されたアコードの救助を頑張ったイングリット達がいなければ大変なことになっていたのだが、そのあたり失敗を認めたくないアコードとしては無言である。
「役目を果たせ、イングリット」
「……はい!」
――――――――――――――――――
「――――アスランってさ」
「うん?」
「かなりおかしいよね」
「………あのな、キラ。俺でも傷つかないわけじゃないんだぞ?」
所詮はシミュレーション。されどシミュレーション。
キラとハインラインさんの合作であるらしいジャスティス改だが―――高い機動性と格闘能力に加えてPS装甲を仕込んだ関節部、簡易ドラグーンにより射出・ある程度の制御が可能なシールド。ファトゥムにビームサーベルを仕込んだどっかのズゴックが背負ってそうなバックパック。
これは……なんだろう。インフィニットジャスティスとイモータルジャスティスの今作れる部分を作ってみたみたいな……。
というかハイパーデュートリオンエンジンじゃないだけで、ほぼインフィニットジャスティスみたいな装備した強化ジャスティスでは?
さすがにこの機体に乗ってジンとか初期GATシリーズに負けてしまうようでは大問題。型落ちである通常フリーダムのシミュレーションデータを一方的にセイバーして――――もとい、達磨にして蹴りを入れるくらいには余裕があった。
しかしキラのデータが入ったフリーダム改はやはり強敵だった。
シミュレータなので殺意マシマシで攻撃してくる、正確で的確な射撃(正確だけなら避けやすそうだが、避ける想定で“置かれて”いる)は回避困難なため、そもそも攻撃させない他にない。
最低限の攻撃だけをシールドで防ぎつつ無理やり接近し、片腕を囮にして蹴りで無力化。なんとなくキラの乗ってる想定のコクピットは攻撃したくないので、必死こいて四肢を落としたのだが結果はさっきのキラの反応である。
実際はキラを追い詰めたら種割れして猛反撃してくるだろうけど。
種割れしたキラは何をしてくるのか分からないからな…特に容赦なく殺す時。白刃取りして、そのままビームでぶち抜いてきそうなのがキラちゃん。原作キラこと准将の方がまだ温情がありそうな……いやなんでも。
「で、アスランは何か希望ある?」
にっこり微笑むキラはなんというか……こんな笑顔が見れるほど精神的に余裕があるなんてとちょっと謎の感動があった。「ラクスの愛だ!」してる時くらい元気なんじゃなかろうか。
「……アスラン?」
「ん? ああ、そうだな……うーん」
脚のビームサーベルもなんか既に内蔵されてるし、ビームカッターもあるし、リフターが弐式仕様で殺意マシマシだし、イモータルジャスティスっぽい飛ばせるシールドとか絶対便利だし。なんかもうこれでいいんじゃないだろうか。
「想像以上に欲しいものが既に搭載されてて何も有益な意見が出せそうにないんだが―――」
「そっかあ」
なんか妙に嬉しそうだなキラ…。
謎の敗北感がある。
あ、そうだ。
「盾を増やしてもいいかな?」
「……?」
―――――――――――――――――――
「――――まさか外交官扱いなのがこんな役に立つとは……」
「ミリー達も無事に降りられたし、良かったよ」
オーブ本島、首都ヤラファト。
一応正規の外交官扱い?になったキラと、オーブから依頼を受けたジャンク屋という扱いの俺は行動を制限されておらず。無事にアークエンジェルから降りられた学生たちに会いに行った後、二人で買い物に向かっていた。
ついでにアークエンジェルのクルーに頼まれた品も買うことになっているが、女性の大好きなショッピングでありキラの機嫌もバッチリだ。
いや、もしかして、もしかしてなんだが……デート的な感じになっているので機嫌が直ったという可能性もある…のか?
でもキラはラクスと……いやでも女の子同士だし……そもそも俺はラクスという婚約者が……でもラクスにはキラが……いやでもキラは女の子だし……。
でもアスランだぞ…?
口下手で、それこそ戦うことしかできない男と言われても特に反論は浮かばない。代わりに戦いの才能はぶっちぎってる自信があるが、キラもラクスもそんなところに惹かれる性格はしてないし。
……まあ、キラが嬉しそうだからいいか。
そんなわけでシャンプーとかの生活用品を一通り買いそろえて。モルゲンレーテ宛での配達も注文したところで服屋に来たのだが。
「なあキラ、そのベルトだらけの服、俺が着るのか…?」
「うん」
キラお前……やっぱりセンスとがってるって!
好きなのは分かったけど、俺が着るのはちょっと……いやコズミック・イラでは普通なのか? やっぱりおかしいよコズミック・イラ。
「………俺の服とかいいから、キラの服が見たいな」
「え? ………そ、そう?」
コーディネーターだらけで美醜の感覚が狂っているのか、キラとかかなり美少女なんだがそんなに目立っていない。
キラちゃんなら多分ラクスとかが着てそうなフリフリの服も似合うぞ。
「えっ、いや、アスラン…? 私ちょっとそこまで可愛いのはちょっと………」
「そうか? 似合うと思うが、まあ気乗りしない服は良くないな」
「うっ………アスランは、私にこれ着てほしい?」
「とりあえず試着してみてほしいかな」
お金は俺が出すが、それはそれとして押し付けはよくないし。
上目遣いで窺ってくるという大変あざといキラに可愛い服を押し付けて試着室まで連れていく。「アスランってときどき積極的だよね」と捨て台詞を吐いて試着に行ったキラだったのだが。
「……どう?」
「……………」
ちなみにオーブは東南アジアにあり、赤道に近いため気候も温暖。
つまりキラが肩出しのちょっぴり露出多め(腕と肩くらいしか出てないけど)になるのは必然だったのだ。なんとなくフリーダム改を思わせる白と蒼の色味に、子どもっぽく見えない程度のフリル。キラの細身のスタイルの魅力がうまく引き出されている。
首ほっそ! 肩ちっさ!
どうしてこれであんな戦闘能力が(MS戦闘だけど)あるのか不思議なくらい華奢なキラちゃんを見てるとですね……なんか庇護欲が……。
もしかしてキラが変な服を着てるのは虫よけのためだった!?
くっそ可愛すぎる……!
「………うん、可愛いな」
「なんか雑じゃない?」
「こう、なんだろうな………君は俺が守護る、って言いたくなる感じだな」
「……………へ、へー。そっかぁ」
嬉しさ半分、照れ半分みたいなキラである。可愛い。
今、針千本攻撃を食らったズゴックみたいな気分である。
爆散しそう。
なんとなく乗り気になったらしいキラが値段を見ながら試着室に戻り。
とりあえず支払いはこっちで出す。これを機にキラがもっと可愛らしい服を着てくれると良いんだが。いや、今日着て来た服は可愛かったけど。今日のはたぶんキラが両親に会ってきた影響だろうし。
もっと普段から気を付けていればモテそう――――いやキラの相手とかラクスくらいキラのために動けたり、アスラン・ザラくらい強いキラを守れる男じゃないと認めないがな!
「くっ、その辺の男にキラは渡せないな……」
「………いきなり何言ってるのさ、アスラン……」
キラに告白しようとしたら「本気を出したら、アスランに敵うわけないだろう?」するのもやぶさかではない。むしろする。
――――――――――――――――――――
「それでは第一回オーブ、ザフト外交会談を始めます。通信状況の影響でザフトからは私、特務隊のキラ・ヤマトの参加となりますが――――まずこちらを見てください」
「これは」
持ってきたメモリを差し込んだPCにより、表示されるのは現在のプラントのトップであるシーゲル・クラインとザフトに大きな発言権を持つ国防委員長のパトリック・ザラ。
「ザラおじさ―――こほん。まずザラ国防委員長からのメッセージです」
『このような形で失礼する。現在のそちらの状況が定かではないが――――友好の使者としての重責を課してしまった少女が、我々の望んだように安全な立場にいることを望みたい。そうで無い場合は――――『おほん』――――失礼。我々、プラントの今回の目的は自治の獲得にあり、すなわち侵されることのない主権と独立である。その点においては、オーブの皆様にも今回の戦争の是非はさておいて、ご納得いただけることと思う』
途中でシーゲルさんが咳払いする羽目になってるんだが何してるんだ父さん。
『バレンタイン会戦における核攻撃、地球連合の一部が正常な判断をできていないことは明白だ。故に戦う他にないが、我々としてもオーブを巻き込むことは本意ではない。ないが―――地球連合のみとつながっている現状には深刻な憂慮を抱いている。我々の望みは、オーブの理念たる“中立”を維持してもらいたいということのみだ。そこで、新型MSの共同開発を依頼したい』
「むう」
何Xナンバーとか作ってんの中立のくせに、という至極真っ当なツッコミに(ザフト陣営がキラしかぱっと見でいないこともあり)思わず唸るオーブの偉い人たち。
連合に協力したし、じゃあザフトにも同じような技術協力ならいいよね、という取引に一部の偉い人は渋い顔をしたが、技術面に明るい人は頷きながらウズミ様に視線を送っている。
『我々からは、Nジャマーキャンセラーの提供の用意がある』
「なんと」
「ザフトの戦略兵器ではないか」
「何が望みなのだ―――」
「静かにせよ、ご客人の前だぞ」
大西洋連邦のみへの限定投下とはいえ、ザフトの持つNジャマーの影響は大きい。敵対すればお前のところにも投下するぞ、という無言の圧力は連合の持っていた巨大な軍事力を発揮できなくさせただけでなく、無きにしも非ずだった連帯感を完膚なきまでに破壊した。
戦力で圧倒的に劣るザフト軍がそこまで大きな消耗をせずに立ち回れており、無駄な戦線の拡大もしていないのは間違いなくこのNジャマーのお陰だった。
『理由は二つ。まず第一に、今後大西洋連邦の加盟国の復興にNジャマーキャンセラーが必須であるという点。交渉を用いてブルーコスモスに協調的ではない国を分断し、ブルーコスモスを無力化することで戦争継続の意志を瓦解させる計画である。故に、友好的な中立国に先に提供することに問題はない』
というかウズミ様みたいな脅されても屈しないし自分から仕掛けることもない理念に忠実はオーブなら、むしろ力を持ってくれた方がありがたいまである。
『第二に――――オーブにしかない技術を、守護の力を借りたい』
「――――なぜそれを」
掠れた声で呟いたのが誰だったのか、分からないほどの不気味な沈黙が落ちた。
カンニングしてるアスラン()がいるだけだから誰かが漏らしたわけではないので安心してほしいのだが、そんなこととても言えない空気が。
『国を守る力だ、我々とてそれに見合うものを差し出さねばならんだろう。無論、製法を寄越せとは言わぬ。我が国の宝を――――若い命を守るための盾を欲しているのだ』
長い沈黙が落ちた。
こうなるのも分かっていたのか、しばらく黙り込んだ父さんであったが、そこでこれまで黙っていたシーゲルさんに交代する。
『――――今後の作戦目標として、正直なところ連合のマスドライバーを標的とするのが有効であるという事情もある。オーブが友好的な中立国であった方が、我々としても都合がよいのだ』
まあね。マスドライバーさえ制圧すれば宇宙の連合軍は勝手に干上がる。そうすればプラントの安全はかなり確保されるだろう。バレンタインの時のような、不意打ちでの攻撃を予防する意味もあるのでオーブもそこは文句を言えない。
じゃあオーブもマスドライバー貸せよ、と言ってくるだろうが「そこウチとも友好的な中立ですが?」とプラントがNジャマーをちらつかせれば少なくともまだNジャマーに晒されていない国は手を出すのを嫌がるだろう。
で、既にNジャマーに晒されてるところは借金まみれで発言権が低下しまくっているという。悪辣だな。誰だそんなこと考えたのは…。
ちょっとキラ。なんで俺の方をジト目で見てるんだ?
迷うオーブ首脳陣を前に、ウズミ様は天を仰いだ後に「オーブはあくまでも中立であるが、新たな友好国は歓迎する」とキラに手を差し出し。
キラは笑顔で、なんでか俺の背中を押した。
「ありがとうございます。こちらザラ国防委員長の息子のアスラン・ザラです」
―――――キラぁぁああああっ!?
「よろしく頼むよ、アスラン君」
「……アリガトウゴザイマス」
力つっよ!? ちょっ、俺別にカガリ狙ってないけど!?
ギチギチいってるぅ! アスラン・ザラがパワー負けしている!?
「とりあえずキラ用に盾を用意して欲しいんですが」
「アスラン用で下さい」
あっ、その情報抜いたの君か。
みたいな顔された。鋭いなこの人!
「ふむ、急がせる代わりと言っては何だが―――アークエンジェルの修理もまだ時間がかかる。君の腕を見込んでMS部隊の教導を頼みたいのだが」
「自分にできる範囲であれば構いませんよ」
「(ちょっとアスラン安請け合いしすぎじゃない?)」
「(大丈夫だって、どうせ暇だし)」
「(むぅ)」
「(なんで不満そうなんだよキラ)」
「(知らない。自分の胸に聞いてみてよ)」
ふむ。考えてみよう。
………もしかしてモルゲンレーテ三人娘とイチャつくのが不服だったとか?
でも確かに死んじゃうのか可哀想だし、なんとかしてあげたくはある。できる範囲で、だが。
…………摸擬戦でボコボコにすればいいかな?
まだ読んでくれる人ありがとう!