「――――お父様の裏切り者ぉ!」
「冗談じゃない、走って!」
ヘリオポリスが、ザフトの襲撃を受けている―――そしてその原因が、どうやら地球軍によるMS開発だった――――新型のMSらしきものを見て全てを察してしまったキラは、連合の士官……? と思われる女性の銃撃を躱しつつ女の子を連れてシェルターへ。
シェルターが満員で、二人は入れないと言われたけれどそれでもそう簡単に諦めるつもりも、死ぬつもりもない。
「ほら、入って! 私は向こうに行くから!」
「ちょっと待て、お前は――――!?」
ちょっと活発すぎる女の子は、まだ何か言い足り無さそうだったけれど緊急事態なので、コーディネイターとしての腕力でシェルターに押し込む。男に勝てるかは怪しいけれど、ナチュラルの、それも自分と同じ年ごろの少女には負けようがない。
行きがけに、襲撃からMSを守ろうと銃撃戦を繰り広げているらしき先ほどの女性士官?が背後から撃たれそうになっているのに声を上げる。
「危ない、後ろ!」
「っ!?」
「こっちへ来なさい!」
今回はまあ、襲撃する側の方が悪いだろう。たぶん。
銃で撃たれて崩れ落ちる姿は遠目に見ると何か悪い冗談のようで――――人が死んだという現実を考えないように、努めて明るい声を出す。
「向こうのシェルターに行きます、お構いなく!」
「――――あそこにはもうドアしかない!」
「………」
―――――ああ、本当に。
連合も、ザフトも。
どちらも“そのほか”にまで気を回す余裕なんてない。そんなこと、アスランに言われてうすうす分かっていただろうに。
飛び降りて直接向かえば早いけれど、いきなり怪しまれるわけにもいかない。
階段をギリギリナチュラルに見えなくもない速度で降りて、何か考えがあるらしき女性の下に行き――――その女性に、ザフト兵の放った銃弾が命中した。
「―――うっ!?」
右腕だ。浅い、けど銃が撃てないか――――。
女性にトドメをさそうと即座にナイフを構えて接近するザフト兵に迷いはない。
このままでは、自分も何の展望もなく戦場に取り残されることになる。
なんとか撃退だけでも――――そんな想いでザフト兵の前に立って、まるでこちらの動きを完全に見切ったかのようにこちらの掴みは回避され。そのまま腹を蹴り飛ばされてあっけなくMSの上を転がる。
「ぁぐっ!?」
――――痛い。痛い、痛い!?
蹴とばされた腹の、車に跳ね飛ばされたかのようにも思える強烈な衝撃が重く残っている。硬いMSの装甲に打ち付けられた全身が痛い。頭も打ち付けたのかずきずきと痛む。
自分もコーディネイターだし、そう簡単には負けないハズ―――そんな甘えはあっさりと打ち砕かれて、今更ながらに心が凍えるような恐怖がせり上がってくる。
ぐらぐらと揺れる視界で、自分にナイフを突き刺そうとする、銀髪の青年の顔が見えて――――。
このまま死ぬのかな、とぼんやりと思った。
父さんと母さん、ミリーにトール、サイにフレイ、カズイ………アスラン。
無性にアスランに会いたかった。怖いことがあったって話して、「全く仕方ないな」と微笑んで、でもなんとかしてくれるアスランに。
「………ぁ。ゃだ………アス…ラン……たすけ―――っ」
そのまま、無情にナイフが突き立てられ―――。
「キラァ! ―――――ぉぉおおおおおッ!」
上空から軽業師のように舞い降りた、“オーブ軍の”パイロットスーツを着た青年によって防がれた。その“誰か”は、いつも聞いていたトリィと同じ声で―――。
「民間人に手を出すとは、見下げ果てた奴だな!」
「こんな場所にいるのだ、それも仕方なかろう。力が無ければ何をされても文句は言えまい!」
「黙れ、民間人暴行の現行犯だ。大人しくしてもらうぞ!」
「チッ、何だ貴様――――」
闖入者の青年の目にも留まらぬ足さばき、意識の間隙を縫うように致命的な部位を狙って放たれる貫手。数発の殴り合いでザフト兵の持っていたナイフは弾き飛ばされ、更に援護するように連合の女性士官が放った銃が掠めてザフト兵は舌打ちしつつ、もう一つのMSの方に向かおうとして――――。
「――――この、馬鹿野郎!」
「ぐぉぁ!?」
が、その隙を逃すアスランではない。
思い切り顔面を殴られたザフト兵は向かおうとした反対側から転落し―――しかし驚異的な反射で受け身を取ると、よろめきながらも格納庫から逃げ出す。
「キラ! 大丈夫か――――あ?」
「………ぇぐ、アスラ゛ン…っ……あり、がと……っ」
安心したことで浮かんできた涙とともにアスランに抱き着き――――。
数瞬フリーズしたアスランだったが、爆音が響いたことでMSのハッチ横に立つ連合の士官に向かって叫ぶ。
「緊急事態だ、悪いが向こうのXナンバーを使う!」
「っ、分かりました! その子は!?」
「おい、キラ! ……っ、こちらでなんとかする!」
もうやだこんな場所。
とりあえず安心と思われるアスランにがっちり組み付くと、アスランは器用にこちらを抱きかかえ――――お姫様抱っこだった――――MSから飛び降りて、隣のMSに駆け寄ると、そのまま驚異的な身体能力で跳び上がった。
「オォ゛ッ――――くっ、間に合えよ!」
ふわりと宙に浮かぶ感覚の後、アスランに庇われた状態でMSのコクピットに飛びこみ――――どこか遠くから響く爆音とともに、ハッチが閉じた。
――――――――――――――――――――――――
「このOS―――本当にめちゃくちゃだな! ええぃ、やっていられるか! キラ、悪いが書き換え頼む!」
「……―――(こくり)」
あまりのポンコツぶりに頭痛を堪えるような顔になりながら、アスランはOS書き換えのためのキーボードを取り出す。操縦のために動けないし、書き換えのためには仕方ないのでそのままアスランの膝の上に座って。
「キャリブレーション取りつつゼロモーメントポイントおよびCPGを再設定―――なら疑似皮質の分子イオンに制御モジュールを直結。ニューラルリンケージネットワーク再構築、メタ運動野パラメータ更新、フィードフォワード制御再起動、伝達関数――――コリオリ偏差修正、運動ルーチン接続、システムオンライン、ブートストラップ起動」
ともかく燃えている格納庫から出さなければならない。
よろよろと歩き出して、一歩ごとに最適化。なんとか外に出たところで目に映ったのはまた別の地獄で。
「ジンが入り込んでいる――――くっ、市街戦か!」
よどみのない操作で跳び上がった―――ガンダム? はまだ反応が鈍い。逐次アスランが動かしやすいように横でOSを調整しつつ、逃げ遅れているミリアリアたちが視界に入った。
「ミリー!? アスラン、私の友達がまだ逃げ遅れてる!」
「―――ああ、任せろ! キラ、舌を噛むなよ!」
「えっ――――ぅっ」
アスランが何かを操作してフットペダルを踏み込むと―――凄まじい推力で機体が前進する。後で知ったけれど、アスランは機体――――イージスを変形させ、そのまま暴れるジンに突っ込んだらしかった。
もちろんそんなことは分からないので、必死にアスランにしがみついていたのだけれど。流石と言うべきか、それでも全くアスランの操縦はよどみなかった。
「―――――ここから出ていけぇぇッ!」
衝撃と共にモニターに大写しになったジンが逃げようともがくが、構わず一気に離れた隔壁まで叩き込んだアスランは、そのまま再度変形しつつ、ジンの両腕とメインカメラをビームサーベルで破壊して飛び去る。
「すまない、操縦が荒くなった――――ひとまず他の敵はいないな」
「アスランは、どうしてここに…?」
目まぐるしく変わっていた視界もいったん落ち着いて、ヨタヨタと今にも転びそうなもう一機の地球軍MS――――ガンダム?の傍に着陸する。
「あー。まあ、色々あってヘリオポリスでオーブが地球軍とMS開発をしてるという情報をザフトが掴んだ、とタレコミがあってだな――――悪いが今の俺はアスランじゃない、オーブと契約してMS整備の手伝いをしているジャンク屋のアレックス・ディノだ」
「………」
で、結局理由は?
と目線で尋ねると、アスランは気まずそうに目線を逸らして。
「だってお前……キラなら巻き込まれそうだな、と。心配だったんだ」
「心配だからって、わざわざそんな身分まで用意して乗り込んできたの!?」
「仕方ないだろう! ザフトも地球軍もどちらの身分でも問題だし―――ジャンク屋だと弱い。オーブ代表首長を脅――――説得してなんとか殴り込んだんだぞ、こっちは」
「……そんなに、心配してくれたの?」
なんかとんでもないことをしでかしているみたいなんだけど、この幼馴染。
でもそれはそれとして、来てくれたのは凄く嬉しくて。
「……ところでキラ。お前………性転換したのか…? 確かにお前は女々し……あー、可愛いところもあったがそんなに悩むなら一声掛け―――」
「―――…ふんっ」
「ぐわぁっ!?」
なんでそんな発想になるのかなぁ!?
ゲシゲシとアスランの脇腹にパンチを数発入れ。
「もともと! 女の子なの! ブルーコスモスが心配だからって、父さん母さんに言われて男装してたの!」
「そう…だったのか……じゃあ前に一緒に風呂に入った時も―――――ぐはっ」
「そんなこと、あったっけ?」
「無かったかもしれない」
よし。
思い出すだけでも頬が熱くなってくるけれど、あれはまだお互いに子どもだったしノーカウント!
―――――――――――――――――――
「――――ふむ、地球軍のMSか。どうやら想定以上のようだな」
「クルーゼ隊長、すぐに追撃すべきです」
「あんな雑魚ども、俺らの相手じゃないぜ!」
「キャハハッ、ヨユーだってば!」
デュエル、バスター、ブリッツ。
持ち帰られた三機から分かったのは地球軍の「MSが携行できるビーム兵装」「実弾兵器を無効化するPS装甲」「今までにないステルス迷彩であるミラージュコロイド」の主に三つ。
が、クルーゼは全く言う事を聞きそうにないが優秀ではある部下に胃痛と頭痛を堪えつつ言った。
「まあ待ちたまえ。ここで追撃する利点はなんだと思う?」
「………」
「あん? ムカつく奴を速攻でぶっ殺す」
「待つなんて面倒じゃん?」
いつからザフトはチンピラの集まりになったのだろうか。
仮面の下で遠い目になったクルーゼだが、残る一人――――銀髪の青年シュラ・サーペンタインは言った。
「相手に備えさせないことでは?」
「それはある。では待つメリットは何だね?」
「………迎え撃つ形になるので、敵に地の利を与えない」
「そうだ。仮にも敵のコロニーだからな。その上わざわざコロニー内での戦闘を仕掛け、弱みを見せる必要はない。せっかくあちらが違反してくれているのだ。相手に仕掛けさせ、思う存分非難してやるのが正しい――――無論、力で上回らなければ不可能だがね」
「データは取った。既に機体は必要ではない――――連合の新兵器、ここで落とすぞ」
「了解」
「ぶち殺してやるぜ」
「アタシらに勝てる奴なんているもんか!」
(さて、問題は此処からだが――――ムウ、お前はどう出る?)
そんなわけでニコル達は忙しいので代わりに劇場版の敵に参戦してもらってます。
ゆかりん帝国建国前に分離
シュラ・サーペンタイン
劇場版の強敵。色々あってクルーゼが招聘したというか押し付けられたというか。年齢不詳だけどまあラクスと同じくらいの年齢ということにしておく。
グリフィン・アルバレスト
同じく劇場版の強敵。口調は良く分からないが資料が足りないから許して。つよい。
リデラード・トラドール
きょうだいらしいけど、なんでか苗字が違う劇場版の敵の一人。たぶんつよい。