本日2話目の更新です
長かったから分割したとも言います。
「……あのふざけたオーブのパイロットめ」
ヴェサリウスのハンガーにて、シュラは自分の機体となったデュエルを見ながら、自分たち3人を翻弄したモビルスーツを思い出していた。
「我々アコードこそが、人類を導くべき存在……そうでなくてはならない」
「……あんなふざけた奴に! 二度と同じ手は食わねぇ」
「………許さない! あたしをあんな目に遭わせてくれちゃってさあ!」
PS装甲のデータは本国に送っているが、まだ試作中であり中破……大破?しているバスターは手足の欠損部分をジンのパーツで補ったバスターリペアとでも言うべき状態。それらしく修理できたほぼ無傷のデュエル、ブリッツがいるためリデラードは余計に怒り心頭だった。
「しかしなんだあの強さは」
「俺たちの知らないアコードがいる、とかじゃねぇよな……」
「そんなの! 母様が知らないわけないでしょ」
「いや、聞いたことがある。ユーレン・ヒビキが作り出したスーパーコーディネーターとやら……“能力”を持たない、戦闘能力に特化した出来損ないという話だが。コーディネーターが多いオーブに隠れていた可能性はある」
「そんなのがオーブにいたってのか……」
「やっぱあの国滅ぼしといたほうがいいんじゃない?」
そう言いつつも、分かってはいた。
『3対1で勝てないアコードが本当に優れていると言えるのか』という、自分たちの存在意義を根本から揺るがしている疑問。
読心も、精神操作も、どちらも効果が見られなかった。
まだ前回の戦闘では奪取したばかりのMSに慣れていなかった。だが、もし次も敗北するようなことがあれば――――。
「………勝つさ、我々は」
『地球軍の艦艇3隻を捕捉! コンディション・レッド発令! 総員、戦闘配備!』
―――――そして、この時。真の意味でGが地球軍に牙を剥いた。
―――――――――――――――――
『――――バーナード、被弾!』
『先遣隊のMA損耗率30、いえ40%を突破!』
『モントゴメリィからアークエンジェルに撤退指示!』
『俺がイージスで先行する! 坊主、付いてこい!』
『了解。ストライカーパックはエールで頼みます』
――――第八艦隊。
アークエンジェルの本来の所属であるそこに合流するべく、暗礁宙域を隠れ潜みながらゆっくりと進んでいたアークエンジェルは遂にその先遣隊に出会うことができた、のだが―――。
同じくアークエンジェルを探していたのだろうヴェサリウスと、第八艦隊の先遣隊が先に遭遇してしまうという不運。
その結果が出るのは瞬く間、というべき早さだった。
3隻いる地球軍の艦艇に対して相手はヴェサリウス1隻のみ。
それでもデュエル、バスターは次々とMAを撃ち落とし。
ミラージュコロイドによって突然現れたブリッツによって護衛艦バーナードは大きな損傷を受けて脱落していく。
『―――ムウ・ラ・フラガ! イージス、出るぞ!』
『アレックス・ディノ、エールストライク。行きます!』
――――間に合わない。
アークエンジェルのブリッジに、誰が言うでもないその考えが浮かぶ。
あまりにも強すぎるのだ、Gが。
MAでは対抗策のないPS装甲、強力なビーム兵器、そしてミラージュコロイド。
それこそラミネート装甲によってビームに耐性があり、PS装甲に対して有効なビーム、ミラージュコロイド相手に空間攻撃ができる対空榴散弾頭ミサイルなどの対抗策を積んでいるアークエンジェルでもなければ相手にならないだろう。
アレックスとフラガ大尉が数的不利を覆して圧勝していたために感覚がマヒしていた。
コーディネーターの扱う、地球軍の技術の粋を結集したGはあまりにも凶悪な組み合わせで。通常兵器では相手にならないと。
『ハハハハ! 弱い、弱いなぁ!』
『あたし達に敵うわけないんだよ、鬱陶しい! 死んどきな!』
『――――来たか、アークエンジェル』
故に、もうモントゴメリィらは既に友軍ではなく。
アークエンジェルが逃げ出せないようにするための生餌でしかなかった。
『これ以上やらせるかよ!』
イージスの放ったスキュラは味方を巻き込まないために逸れていたが、やはり当たれば一撃で沈められるだろう唯一の攻撃は意識せざるを得ない――――ハズなのだが。
まるで“分かっていたかのように”回避すらせずゆっくりと振り返る3機に、フラガは嫌な感覚を覚える。
『こいつ等……なんだ、妙な感じが――――うおっ!?』
敵の動きを見てビームライフルを回避しようとしたフラガをあざ笑うように、回避先に“置かれた”ビームを間一髪で躱す。
『さあ――――ここで死ね』
『キャハハッ! そう、これだよこれ!』
『オラァ、落ちとけ!』
『くっそおおお! ――――気を付けろ坊主、こいつ等尋常じゃねぇ!』
三機が散開し、バスターの放った弾丸を、イージスは変形することで間一髪で回避。続けてブリッツの放ったランサーダートがイージスの盾を直撃。すぐに距離を取ろうとしたイージスを、デュエルのサーベルが貫く――――その寸前で、スキュラを半壊した盾に当てることで視界を眩ませ、再変形。
ビームサーベルが掠めつつもなんとか離脱したイージスは、完全に動きを読んでいるとしか思えない射撃に追いかけられながらも無茶な曲芸飛行でなんとか回避。
そんな『自分でも考える余裕のない』変態すぎる離脱に舌打ちしつつ、シュラはストライクから放たれるビームを油断なく回避する。
『油断するな。奴も妙に勘が良い。クルーゼ…隊長の同類だろう』
『ハッ、あのクソムカつく隊長だろうと実戦なら負けないっての』
『身の程を教えてあげる!』
「フラガ大尉、どれでもいいので一機頼みます!」
『そりゃ不可能、とは言えないよなぁ!』
味方に二機引き受ける、と言わせておいて無理ですとは口が裂けてもいいたくない。軍人として、大人としてカッコつけたいフラガにとっては特に。
『悪いが付き合ってもらうぞ!』
『チッ!』
そうしてフラガが選んだのは、前回の戦闘でストライクが引き撃ちに徹したデュエル。せめて最も危険な相手を引き受けたいというところだろう。
ストライクに近づきにくいようビームを放ち―――やはり“読んでいた”ように回避し、無視してストライクに接近するデュエルにフラガは目を剝いた。
『うっそだろ、おい! すまん坊主、牽制が効かねぇ!』
「それは厄介ですね!」
三機でほぼ同時に飛び掛かってくる相手、バスターとブリッツには蹴りとシールドをブチ当てることでなんとか防ぎ――――斬りかかってきたデュエルは、イージスによって差し込まれたスキュラを回避するための一瞬の隙ができ。その間にストライクが距離を取ろうとする。
が、即座に三機が連携を取り戻し再度同時にストライクに急接近してくるという人間業とは思えない機動を描く。
『――――終わりだ!』
『チィ―――ッ!』
このままでは落とされる――――極限まで圧縮されたように感じる時間の中、脳裏で“何か”が弾ける。
瞬間、背後から接近していたデュエルに分離したエールストライカーが激突。ストライクはアーマーシュナイダーを取り出すと、バスターの脚―――ジンのパーツで代用したところにイーゲルシュテルンを放ち、僅かに機動が乱れたバスターを蹴り飛ばすと、ブリッツのコクピット付近にアーマーシュナイダーを突き立てる。
「う、ぉおおおおお――――ッ!」
『ぐわああああっ!? 痛い、痛い、痛いっ!?』
『グリフィン!? くっ、リデラード! 撤退するぞ!』
『けど! チッ、これでも喰らっときな!』
『悪いがこっちも余裕がないんでね、狙わせてもらうぞ!』
フラガがスキュラでブリッツを狙って攻撃することでブリッツを抱えて回避せざるを得なくなったデュエル。しかしバスターがモントゴメリィのブリッジにビームを叩き込み―――。置き土産とばかりにデュエルの放ったビームが既に満身創痍だったバーナード、ローに突き刺さる。
エールストライカーを装備しなおしたストライクの追撃はデュエルの盾こそ破壊したものの。イージスのバッテリーが尽きたことでアークエンジェルとG三機の戦闘は痛み分けで――――そして第八艦隊の先遣隊は全滅という結果で終わった。