「15年の嘘」公開目前、その時B小町のMEMちょは、とある悩みを抱えていた・・・。
(まだ連載途中の作品の、飽くまで2次創作SSです。多少の捏造、推測を含む内容になっています。)

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薹のたった、らぷんちぇる

 私の名前はMEMちょ。しぶとく賢く生き残るインフルエンサー。

 

 自称セルフプロモーションとバズらせのプロ。絶賛リモートワークなう。

 

 

 年末のドーム公演が終わり、年が明けて今は2月の頭。映画の初号試写会に向けて、私も欠片程出演させてもらった、作品の編集作業はいよいよ大詰めの様だ。後は殆どやることは残っていない。確認と細かい修正、偉い人のGoサイン待ちくらい。

 

 

 アクたんとルビーは映画の宣伝の番組出演で大わらわ。かなちゃんも番宣のバーター出演だったり、「15年の嘘」の本公演より先に公開される、ちょっとした映像作品の出演であちこち飛び回っている。

 

 2~3年前であったら私と一緒に事務所でたむろして居たのに、今彼女は泣く子も黙る実力派の人気女優だ。泣く演技が凄いと持て囃され、こびり付いた元天才子役のレッテルが、剥がれきるのも時間の問題だろう。

 

 映画公開にあたって過去のイメージの払拭が目的らしいのだけれど、鏑木Pがバックに付いているので、私が心配する様なことは何も無いだろう。

 

 

 一方、取り残された私とB小町と言えば、何もやる事が無いかと言うとそうでも無いのだけれど。あの3人と比べてしまうと見るも無惨とでも言うか、やっている事がどうにも地味に思えてしまう。

 

 年末ライブのアーカイブ配信に向けた細々とした編集や確認。それが出るまでの場繋ぎというか、ファン相手のご機嫌取りの様な個人配信。SNSの更新。

 

 伊達にドームに立ってはいないので、私個人やB小町を箱推ししてくれているファンは追ってくれているけれど。やっぱりルビー推しのファンが大多数であるのは相変わらず、配信も回数を重ねる毎に、心無いコメントと一緒に視聴者の母数も大分寂しくなってしまった。

 

 

 誰でも出来る仕事ではない。それはチャンネルやB小町に着いた数字の維持だったり、映像化に伴うコンプラや各方面への配慮だったり、自分自身のメンタルを保つ事だったり。

 

 私が一番適任だと納得してるし、地味な仕事も別に私は嫌いじゃない。でも今後のB小町の未来への展望とか、とれる選択肢とか、そんな明日を輝かすような燃料を、思いつけ無いのは否定出来ない。

 

 

 ルビーは今後も、個人で呼ばれる仕事が増えるだろうし、かなちゃんが引退した直後で新しいメンバーを加入させるのは見え方が悪い。残された私達B小町が1人2人で出来る事と言えば、ちっちゃいイベントにお呼ばれしたり、動画配信を細々とやるくらいしかないのだ。

 

 チャンネルを使って「15年の嘘」の告知でもしようとかも考えたけれど、製作委員会でついたスポンサーの力はやっぱり大きい。100万人規模のYouTubeチャンネルも、一昔前だったら目立って有り難がたられたけど。

 

 チャンネルの主役不在の其れの影響力なんて微々たるものだ。TVの視聴率と比較したら0.01%にも満たないだろう。

 

 本当に情報が欲しい人に訴求するなら、小さくても大事な事だけれど、メインキャストとのインタビュー動画か何か上がるならば兎も角。やっている事は公式サイトやSNSの下位互換でしかない。

 

 そんなの観て何になるの?この疑問の答えが出るまで、私は動画を撮る気にはなれなかった。

 

 

 正直、自分の力不足を感じる。何か人の役に立てているという感触がない。

 

 事務所に居ても皆各所に散って、てんやわんやのもぬけの殻。私ができる仕事はリモートで十分な物が殆どなので、ここ二週間程は事務所に寄り付きすらしていない。

 

 

 その間の私と言えば、食事は殆どウーバーイーツ。生活リズムは朝寝て夕方に起きる、個人配信者の時に逆戻り。

 

 人と話す機会はアーカイブの編集について意見を求める事位で、それだってLINEで1つメールを遅れぼ済むのが殆どだ。

 

 

 良くない兆候であるのは薄々気付いていた。でも目の前の仕事ばかりに注視して、私は私の事を見ない振りをしていた。

 

 TLで良く見かけるのは仲間の3人の活躍ぶりだ。SNSの通知に入るのは、皆の活動を私がリポストしたものについたいいねだらけ。

 

 何か私に悪い変化があったかと言うと、そうでも無いとは思う。ただ客観性を伴った、正確な評価であるかは自信がなくて、伸びる勢いを失ったインフルエンサーが、どうなっていくかを私は過去に何人も見てきた。

 

 

 大事な事と大事な事が重なる。今はその合間とも言える、ほんの少しの空虚な時間。

 

 ただそのちっぽけな時の隙間に、私の心はぽっかり穴が空いてしまった。

 

 一時期、私が危惧していた様な事は結局起こらなかったけれど。私の居るB小町は何も変わらず、何もかもが変わってしまった。

 

 たまにみんなの様子を知ろうと送るラインの文面。変に上から目線に見えて無いかとか、恩着せがましくなって無いかだとか。

 

 使い慣れた絵文字一つ一つですら神経をすり減らして、それで既読が付いてから返事が来てないかの確認をするのも。そんな毎日にもう私は疲れてしまった。

 

 

 ほんと、みんな変わっちゃったんだね。

 何も変わって無いのは私だけだぁ。

 

 

 別に何も悪いことなんてない。みんなに仕事が増えるのはいい事だ。

 

 そう私は自分に何度も言い聞かすのだけれど、私の悪い心はちっとも、うんと頷いてくれないでいる。

 

 

 前は良かったなんて思ってはいけない。みんなには明るい未来が待ってる筈なのだから。

 

 でもそんな事を考えてしまうのは、私の感情までは嘘がつけないからだ。

 

 

 

 寂しい。

 

 

 何が、何で、誰が、何時まで、どの様に。何一つ答えのない感情が、私の空虚な心に染み付いていく。

 

 静かに耳鳴りがする。鼻の奥が痛くなる。喉が詰まる。目頭が熱くなる。

 

 

 私が日々こなしている仕事の事を、誰かに褒めて貰いたいと思うのは、そんなに悪い事だろうか。

 

 そんな事をしばしば考える、だとして其れが何だと言うのだろう。何か次の仕事に繋がるのか、誰かの役に立つのか、誰が幸せになるのか、私一人ですら幸せになれると思えない。

 

 

 そんな私のつまらない承認欲求を、人に臭わせることすら重荷に感じてしまう。LINEを送るのだって、みんなの仕事を一旦褒めて、その序に私もなんて考えるけれど。

 

 そんな自分の浅ましさに嫌気がさして、もっと無難な文面しか送れないでいる。前はどんな文章を送ってたかなぁ。楽しかった過去を確認して知ろうとするのも、今の私には辛い未来と思えてしまう。

 

 

 唐突も無い事だけど。潮時だなというのを最近考える。

 

 

 実際の私の年齢、体力面、次の仕事の事、欲を言えば結婚だってしたい。あれこれ思い悩む事は多いけど、じゃあもうアイドル辞めればいいじゃんと正論を述べるのは、私との付き合いの長い私の嫌いな私だ。

 

 今後B小町に何か進展があるとは思えない。ドームだってやった、もう充分頑張った。また何か新しい事を始めるとしても、その時は私以外のメンバーがやったらそれで良いだろう。

 

 

 続ける理由なんて一つも思いつかなかった。賢く立ち回る事を考えるなら、早めに損切りを検討するのはビジネスの基本だ。

 

 皆との繋がりを、損と評価するのは度し難い事だと思うけれど。別に縁を切る訳じゃない。ただ関わり方とそれに費やす時間が変わるだけだ。

 

 でもそれを女々しく、勿体無いと思ってしまうのは。ふてぶてしくも私の記憶に居座る、皆との思い出が大切だからだ。

 

 でも、また「でも」と考えてしまう。あれこれ理由を考えるけど結局、私がアイドルを辞める考えに至るのは、ガッチリ轍の踏み固められた、既定路線のようなものに思えてしまう。

 

 

 いつ辞めよう。どう辞めよう。そんな薄いプランばかり塗り重なっていく。

 

 私の皆との思い出より、辞めたい想いに天秤が傾いたのは、私の気持ちが真っ黒になって、光が一切入らなくなってからだ。

 

 

 辞めたい、と一言LINEで言えば、話はとても簡単かもしれない。少しでも引き留めて欲しいと思うのは、皆と繋がっている線を信じたいから。

 

 何をみっともなく迷っているのだろう。どうせ何時かは辞めてしまうんだ。

 

 ならズルズル引っ張って自分が目に耐えなくなるより先に、少しでも鮮度のある内に。何か行動を起こすのは決して悪い判断じゃないだろう。

 

 

 誰かに相談したい。とても大きな決断だ。

 

 

 重い気持ちに引っ張られ、私の心は前みたいに機敏に動けない。気怠い頭を抱えていると、私の耳にLINEの通知が入る。

 

 細い線を辿るように、私の手がスマホを引き寄せる。気がつけば辺りが暗くなってきた、画面の強い光に、私の目は眩むようだ。

 

 

 

(アクたん)

 

 

  お仕事お疲れ様(((o(*゚▽゚*)o)))

 

  大事な仕事が控えてるんだから、

  前みたいにムリしちゃだめだよ 

 

 

少し話がしたいんだけど

今から家にいっていいか?

 

 

 

 通知の相手はアクたんだった。

 

 何の話だろうと思ったけれど、今の私にはお誂えむきだ。目に入る光に軽くなった指で、アクたんに返事を打つのは3秒だってかからなかった。

 

 

 ラプンツェルって名前の花が、存在するって知ってる?私も見た記憶は無いのだけれど。

 

 元々は海外の物だけれど、誰も知らないうちに日本で帰化した、誰も知らない名前の花を、春先に咲かせる食べられる野草。

 

 花が咲いたら誰も食べない。花言葉は『粘り強い性格』と『約束を守る』。

 

 ちょっと陰の薄いキャラを含めて、私と地味に似てると思う。

 

 

 ここは、塔では無く都内のマンション。私には薹が立ちかけ。

 

 

【薹がたった、らぷんちぇる】

 

 

 “つぇる”ではなくて“ちぇる”なのは、その方がひらがなで書いた時に可愛い気がするからだ。誰に聞かれるでもなく言い訳がましい私。

 

 

 

 

 

「珍しいねぇ。アクたんが自分から私の部屋に来るなんてさ?」

 

「珍しいもなにも、初めてじゃないか?誘われて行くことは何度かあったけど」

 

 

 

 あの後直ぐに、見苦しく無い程度におめかしをした。

 

 ただパジャマを着替えて、髪の毛をゴムで括って、簡単に化粧をしたくらいだけれど。

 

 私のこだわりの髪の毛は、ここひと月くらいで黒の割合が多くなって来てしまった。まるでディズニーのお姫様みたい?そんな事を態々SNSで呟いてしまったら、各所に怒られそうだけど。

 

 私に掛けられた魔法は解けかけだ。アイドルを辞めようと考えているのだから、このくらいは許して欲しいと思う。

 

 

 その私の元に来てくれたのは、不倫・友人?泥棒の振りをした、お尋ね者の悪い王子様。アクたんは突然来た女性の部屋だと言うのに、なんとも堂々とした態度を取っている。

 

 まぁ、これでキョドられても、私も気まずいからいいんだけどねぇ。なら重く捉えることは無いかと、私は何時もみたいに、ヘラヘラしながらアクたんに椅子を勧める。

 

 

「何の話かは知らないけど、多分そんな直ぐには帰んないでしょ?お茶でも出すから座っててよ」

 

「まず要件を聞くもんじゃないのか?まぁその通りだけど」

 

「要件〜?ごはんにするぅ?お風呂にするぅ?それとも…ワ・タ・シ?」

 

「用があるのはMEMだけだ。でも取り敢えず飲み物くれよ」

 

 

 ぶっきらぼうながらも私と話を合わせてくれるのは、アクたんのいい所だと思う。つまらない新妻ごっこに何時までも付き合わせるのは悪いので、私はキッチンに引っ込み飲み物の用意をすることにした。

 

 言うて大して料理もしない私の部屋のキッチンは、リビングに入る手前の、廊下の脇に有るだけのちっぽけな物だけど。

 

 

 取手の着いたカップの用意。この手の類の物は、数も揃っているしタイプも豊富だ。

 

 いっぺん、かんわいいプリントのされたゴテゴテのマグを出してやろうかと思ったけれど。アクたんだったら地味な無地の物だとしても、然程リアクションは変わらないだろう、なら別に拘ることもないと思った。

 

 買い置きのインスタントのある、流しの下の戸棚を探る。まだまだいけると思いつつ、それでも腰を労りながら数秒思案。

 

 至ってシンプルな問題に気がついたのは、本当は戸棚を開けて直ぐの事だったのだ。

 

 

 ココア、コーヒー、レモネード。そう言えば全部飲んじゃったじゃん。

 

 

 そもそもここ数日ろくに、買い出しどころか外出すらしていないんだった。何かと口寂しく感じる一人作業。

 

 ちょっと濃い位がうめぇんだよなと、ガバガバと飲んでしまっていた。ガバガバなのは私の計画性だ。

 

 

 どう取り繕うか視線をさ迷わせ、リビングに続く扉の向こうを見詰める。その先に居るアクたんは、そのまま待っていても飲み物が一滴も出てこないとは露知らず、自分のスマホの画面を見つめている。

 

 

 …まぁいいかぁ。このまま黙っていても何もいい事ないよね。

 

 

 そう諦め4割、自分への呆れ6割の決心をつけると。漏れ出るため息を噛み締めつつ、私はアクたんに声をかけた。

 

 

「……あくたん。ごめん」

 

「……どうしたんだ?」

 

「買い置きしてた飲み物、…私が全部飲んじゃった」

 

「…いや別に俺は構わねぇけど。そんな気に病む事じゃないだろ」

 

 と言いつつアクたんはまたスマホに視線を戻す。本当に気にしてない様に見えるけど、ここで退いては私が廃る。

 

 

「うーん。いや!やっぱり今からコンビニ行ってくるよ」

 

「構わないって言っただろうが。それに今は外に出ない方がいいぞ」

 

「え?なんでぇ?私の服装ダサかった?」

 

「いや、服装は何時も通りだな。少し痩せたか?」

 

「あ?わかるぅ?最近少し食事に気をつけてるんだよねぇ」

 

「ちゃんと飯は食ってる様で安心した。ここのところ会えてなかったからな」

 

「あれぇ?私の事心配してくれたのぉ?っじゃないよ!今度出る映画の俳優さんが家に来てるのに、お茶の一つも出せないなんて。今すぐ買ってくるよ!」

 

「その今度出る映画の俳優が、自宅以外のマンションに入って、直ぐ別のタレントが同じ建物から出てきたら。何が起こるかわからないMEMじゃないだろ」

 

「ぱっ!?ぱぱっ!パパラッチ!?やっぱりアクたんはお尋ね者だった!?このっ!不倫!友人!スケコマシ!」

 

「友人以外事実無根だ。だから取り敢えず今は外に出るなよ」

 

「そんな事言ったって…。家に今ある飲める物は、ウーロン割り位しかないのに」

 

「…ならウーロン茶はあるんじゃねぇの」

 

「はうあ!?それに気付くとは、やっぱりアクたんは天才だった!?」

 

「…ちっとも褒められてる気がしないのは何でだろうな。それはいいから早くお茶よこせよ」

 

「はぁい!よろこんで!」

 

 先程までの暗い気はなんのその。折角用意したマグカップも結局今は無駄になって、ガラスのコップにペットボトルから、特保のウーロン茶がたっぽんたっぽん満ちていく。

 

 グラス二つと申し訳程度のお茶請けを、意気揚々トレイに並べてテーブルに運ぶ。空元気かどうかも私にはもうよく分からないけれど、空の飲み物をお出しする羽目にならなくて、心底ホッとしたのは事実である。

 

 

「お待たせぃ!」

 

「…ありがとう」

 

 

 テーブルにトレイを近づけると、アクたんがグラスを自分から取ってくれた。私の威勢が余りに良かったので、溢すかもと危惧して動いてくれたのかもしれない。

 

 口調や態度は飽くまでドライだけれど、やっぱり行動の節々に気遣いが満ちている。ウーロン茶一つで、「ありがとう」なんて言ってくれる高校生がどれだけいるだろう。

 

 しつこくともチョロくとも。私はやっぱりアクたんは、ぶっきらぼうでも優しいなと思ってしまった。

 

 

「…なんだよ?」

 

「…うぅん?なんでも」

 

 

 そんな私に染みるアクたんの態度に、ほっこりしてると彼には怪訝に見えてしまったようだ。浸ってる場合じゃないぞ私?チビりチビりとお茶で唇を湿らすアクたんに、いよいよ今日の要件を聞いてみることにする。

 

 

「それで?はなしってなぁに?」

 

「それか。…そうだな何から話そうか」

 

 

 そう一言溢し、もう一度だけお茶を飲んだアクたんは。グラスをテーブルに静かに置くと、私を見据えて口を開いた。

 

 

「単刀直入に言うと、今度の映画が一段落ついたら、芸能界を引退しようと思ってる」

 

 

 そう何でもないように。それこそ買い物に行くことを思い付いたくらいの気楽さで、私が口が裂けても言えそうになかった事を、アクたんは意図も容易く言い放ってしまった。

 

 

「えっと、…それはテレビをってこと?」

 

「テレビだけじゃない。映画も、ネットも、紙面も。表に出るような活動はもうしないってことだ」

 

「…なんとなく予想はつくけど、理由を聞いてもいいかなぁ」

 

「…もともと俺は、こういった活動は向いてなかった。自分に向いてないことを、無理にやってもしょうがない。それに今思い付いてる訳じゃないけど、何かやりたいことを見つけようと思ってる」

 

「……前も、医学部受験するとか言ってたもんね」

 

「…今回の受験は流石に間に合わなかった。でも選択肢は多いに越した事はないし、来年の受験を検討するのも悪く無いだろうな」

 

「…そっかぁ。やりたいことが見つかった…訳では未だ無いんだろうけど、前向きに考えられるようになったなら良かったね」

 

 

 いまいち腑には落ちないけれど、私にはそう言うしかなかった。今回の映画の撮影や準備をするにあたって、アクたんが色々思い悩んで、自分を犠牲にする形で、それらに取り組んで来たのを私は知っている。

 

 面と向かって伝えられた訳ではないけれど、たまに合った時の彼の仕草や態度。そんな物からでも汲み取れるくらい、私達のこの数年間は濃かったのだと思う。

 

 

 でも、なんで私に言ってくれたのかはわからない。私への信頼だったり、彼なりの誠意だったり、そんな素敵な気持ちが原動力だったら、手放しで喜べる事ではあるけども。

 

 私の今考えている事、思い悩んでいる事。それが気付かず顔に出て、アクたんの目に映ってしまったんじゃ無いかって。私は内心、心臓がばくばくしている。

 

 彼の瞳に映る私の顔は、今どんな表情をしているのか自信がない。テーブルのグラスを見つめてみるけれど、なんとも愉快な歪んだ顔しか見えなかった。

 

 

「……滅多な事は言えないけど。今日アクたんから、その話を聞かせて貰えて良かったと思うよ」

 

「…何が良かったと思うんだ?」

 

「…あまり私。アクたんから将来の話とかって、聞かせて貰えた事なかったからさ。…お父さんとお母さんがあんなことになって、今まで考える暇も無かったのかも知れないけれど。それでもまた、やっと自分の先の事を考えられるようになったなら。他人事なのかもだけど、私は嬉しいと思うよ」

 

「……正直、今俺は。自分が嬉しいとか思っているかもどうか自信がない。でもMEMにそう言って貰えるなら、良かったんだと思う」

 

「…ごめんね?また解ったような口聞いちゃって」

 

「……別に気にすること無い」

 

「…ううん?気にさせて?今日私に話してくれて、ありがとう」

 

 

 そう、アクたんの事は素直に祝福できる。私なんかが褒めたところで、何の足しにはならないかも知れないけれど。

 

 部屋の中にはしんみりしたような、ほっこりしたような、不思議な温度の空気が満ちている。再び光の宿った彼の瞳に、私はどう見えているのだろう。

 

 

 少し静かに時間が流れる。アクたんがまたウーロン茶を一口飲む。

 

 グラスに添えられた彼の筋ばった指一つでさえも、私の視線を奪って止まないのは。私に残った未練だろうか、私も話さなくてはならない事がある筈なのに。

 

 

「MEMは…」

 

 またアクたんから話かけてくれる。

 

 

「……わたし?」

 

「……MEMは、……この先どうするつもりなんだ?」

 

「……どうするって?」

 

 

 何を惚けた事をと自分でも思った。

 

 

「アイドル…まだ続けるのか?」

 

「……たははぁ。今の会話の流れだったら、やっぱりそういう話になるよねぇ」

 

「……今の俺が話した事だけだったら、別にLINEでも済むからな」

 

「なるほどぉ?じゃあ最初からアクたんはぁ、私だけがお目当てだったってわけなんだね?」

 

「……だから最初に言っただろ。用があるのはMEMだけだ」

 

 

 ……これが告白かプロポーズの言葉だったら、女冥利に尽きるとでも言うところなんだろうねぇ。

 

 

「……私はまだ辞めないよ?何時までかは特に決めてないけど、もうちょっと頑張って、程好いタイミングで抜ける事になると思うけど。」

 

 

 そんな、都合の良いことなんて、あるわけない。

 

 私の口からは結局出任せばかりだ。こんな私の事を好きになってくれる人なんている訳がないのに。

 

 

「……やっぱり今日来て、正解だったみたいだな」

 

「あはは、…私も陰ながら応援してるよ。今度の映画の事も、その先の事も」

 

「……MEM」

 

 

 

 

 

 

 

「俺相手にそんな嘘が、本当に通用すると思ってるのか?」

 

 

 アクたんが私の目だけを見つめて、冷静に放ったその一言は。とてつもなく冷たい熱が込められていた。

 

 

 アクたんには私の嘘がばれてる?一度それを認識すると、あぁそうだろうなと妙に納得してしまった。

 

 遅すぎるそれに気付いた瞬間、私の両腕で鳥肌が存在感を主張する。自分の中途半端についた嘘から辿って、私の内心考えている事が、全てアクたんに読み取られたような予感がした。

 

 

 私の目の前にいる彼の様子は、相変わらずな様に見えるけれど。彼の瞳に宿る薄暗い光が、私の心を射ぬいて離さない錯覚をする。

 

 

「MEM…別にお前に怒ってるわけじゃない。でもつまらない嘘はもう終わりにしよう。今日俺はその決着をつけに来たんだ」

 

「け、けっちゃくぅ?なんのことかなぁ、アクたん、顔が怖いよ?」

 

「……この顔は生まれつきだ」

 

 

 やっば!余計なこと言った!

 

 

「…俺はここ数年MEMを見てきて、お前の事は多少なりとも解ってるつもりだ。今お前の置かれてる状況を見るに、辞めることを検討していない筈がない」

 

 

 うっ!正解。アクたんは視線をグラスに向けつつ話を続ける。

 

 

「…MEMは、回りの状況や人間の表情を良く見ているし、人の感情や悩みを読み取って動いてる節がある。…今ガチの時あかねを救えたのも、お前のその洞察力があったからだ」

 

「…そんな事もあったねぇ」

 

「…余計な分析かも知れないが、お前は自分自身より人の気持ちを第一に優先してるような気がする。今日俺が辞めると言ったら、苺プロの事を考えて、自分は辞めないと言うと思ったのも予想通りだった」

 

 

 

「……お前は周りを良くみているが、周りの奴だってお前のことを見ている。……もう嘘なんて付かなくていいんだよ」

 

 

 …大正解。全部アクたんの言う通りだ。

 

 

 アクたんが芸能界を辞めると聞いて、真っ先に私はヤバいと思った。だってあんなセンセーショナルな映画が出た直後に、題材となった事務所のタレントが二人も居なくなるのだ。

 

 厳密に言えば私は苺プロでは無いのだけれど、知らない人はほぼ同一視するであろうし、メディアは無責任にあれこれ煽るだろう。

 

 事務所の問題、映画は捏造。B小町に蔓延るタレント格差。

 

 

 立つ鳥跡を濁すと言うが、泥水どころかセメントで固めて海に沈める様な、惨事になるのは想像に難くない。事務所も辞める私達も、大炎上間違いなしだ。

 

 私は勿論苺プロに恩義を感じているし、所属しているタレントの皆も社員さんも大好きだ。彼らの周りを焼け野はらにして、路頭に迷わせるくらいなら。

 

 

 私が暫く残ればいいだけだ。その決断をすることには何の躊躇もない。

 

 別に誰が悪いってわけではない。タレントをやるってそう言うことだ。

 

 私一人生き残っても意味がない。事務所あってのタレントなんだから。

 

 

「……私は別に、大丈夫だよ?アクたんは進学の為って言う大義名分があるし、何か責任がある訳じゃない。私は……。少し婚期逃しちゃうかも知れないけどさ、アイドルに誘って貰った恩もあるし」

 

 

 嘘をつく時の基本その壱。本当の中に嘘を混ぜること。

 

 思ったことを感情に任せてしまえば、言った本人ですら、どれがほんとで嘘かわからなくなる。

 

 

 嘘をつく時の基本その弍。相手の責任感を煽らないこと。

 

 自分にリスクがないと相手に思わせられたら、大して労せず納得させられる。

 

 

「…そこが一番問題なんだMEM」

 

 

 嘘をつく時の基本その参。……嘘つきに嘘は通用しない。

 

 論理に長けた相手は、必ずその論理の齟齬に気付いてしまう。特にアクたんみたいな、私より頭のいい人が相手だったら。

 

 

「…大丈夫って言うことは、遅かれ早かれ一度は辞めることを考えてたってことだ。俺は今日はまだお前から、辞めようと思ったなんて聞いてないぞ」

 

 

 …そういえば、言ってなかったねぇ。

 

 

「その大丈夫だって、何時か破綻する。その時お前に何が残る?事務所の事を考えてくれるのはありがたいが、タレントありきの事務所なんだぞ」

 

「……私は苺プロじゃないよ?」

 

「だとしてそれが何だって言うんだ。今さら他人面しろってか?苺プロを嘗めるなMEMちょ。所属しているタレントが泣き寝入りしているのを黙って見過ごす程、うちの事務所はお上品じゃないんだよ」

 

 

 ……あったけぇよぅ。

 

 

「そして一番の問題は、……俺がMEMをアイドルに誘ったってことだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それって、どういう意味?」

 

 

 冷や水を浴びせられたような声が、私の喉から出た。

 

 

「……私が、アイドルやらなきゃ良かったってこと?」

 

 

 そう信じたい訳じゃないけど、そんな言葉が口から出てしまった。

 

 

「……私、B小町に邪魔だった?」

 

 

 

「……私、みんなの邪魔してた?」

 

 

 

「……映画の撮影も、私のところ時間押したもんね」

 

 

 

「……最初は私も人気に貢献出来てたけど、年末のライブ前は、ルビーとかなちゃんの人気が二強だったもんなぁ」

 

 

 

「……その癖、プロモーションとかの話になると、偉そうに蘊蓄かたってたもんね」

 

 

 

「……今私がやってることも、御為ごかしのお荷物だ」

 

 

 

「……本当はもっと早めに厄介払いしたかった?」

 

 

 本当は、私に会いたくもなかった?

 

 

「…私、誰の役にも立ってなかった?」

 

 

 私、アクたんの役に立ててなかった?

 

 

「…ごめんね、誘われて調子にのって、アイドルになっちゃって」

 

 

 

「…ごめんね。気付くのこんなに遅くなって」

 

 

 アクたん、私のこと嫌いだったのかなぁ。

 

 

 

 地面に落ちる雨水の様に、一度零れだしたら弱音は一瞬だった。

 

 後から次々に止まる目処もなく、濡れる私は俯いてしまう。

 

 気付いたらテーブルの上に小さな水溜まりができていた。

 

 私が心の雨を漸く止められたのは、水溜まりに写るアクたんの顔が見えたからだ。

 

 

「…あく…たん?」

 

 

 ……アクたんも、泣いてるの?

 

 

「…別に泣いてなんかない」

 

 

 別に誰もそんな事は聞いてないのに。アクたんには私のことはお見通しみたいだ。

 

 

 控えめに私が一度俯かせた顔をあげると、正面に見えるのは、何時ものアクたんの顔だった。

 

 

「MEM…話はちゃんと最後まで聞け」

 

 

 だけれどその言葉は、何時もより重く、温かく感じた。

 

 

「………うん」

 

「……俺が、俺達が。MEMの事を邪険にしているような態度をとったか?」

 

「……ううん」

 

 

 そんな素振りは今の今まで、私が事務所に初めて行った日から感じたことはなかった。

 

 

「…普段のお前だったら、そんなこと簡単に汲み取れていた筈だ。今それが出来ないのは、俺がお前を追い詰めてしまったからだ」

 

「そんな!私はアクたんに追い詰められてなんかないよ!」

 

「…だからそこが俺の責任なんだ。俺がMEMをアイドルに誘ってしまった。俺が誘わなければアイドルにはならなかった。アイドルにならなかったら、今こうしてお前が苦しんでる未来はなかっただろ」

 

 

 そんなことない!と言葉が口を突こうとしたけれど、果たしてそれはどうか解らず、踏みとどまった。

 

 今私が勢いで言ったところで、その言葉は私の本心の乗らない、意味のないただの嘘だ。

 

 

 アクたんが言っているのは結果論でしかない。今議論してもどうしようの無い事だし、其れが話したい事だとは思えない。

 

 選択の権利は私にあった訳だし、一方的にアクたんの責任である筈はない。意志がある以上お互いに責任はあるし、私がアイドルの夢を叶えられたのは、アクたんのお陰であるのも間違いない事実だ。

 

 

 今となっては色々思うところはあるけれど。それでもB小町になって過ごした日々は、私の大切な宝物だ。

 

 

 この気持ちはきっと、嘘じゃない。

 

 

 今ガチから出会って、隠し事ありきで始まった私達の関係だけれど。お互いを思っての気持ちを嘘にするのは、私にとっては許せないことだ。

 

 

 私の心の中で解釈は一致した。

 

 今、私に言えることがあるならば。

 

「……きっと、幸せの数だけ辛いことがあるんだよ。アクたんにアイドルに誘われたのが私にとって、とても幸せな事だったから、今それの反動が来てるだけ」

 

 

 

「……私は、幸せだから」

 

 

 

「……私は、大丈夫だから」

 

 

 

 

 

「…飽くまでも、お前は大丈夫って言うんだな」

 

「…うん。…嘘は言ってないから」

 

 

 そう、嘘は言ってない。B小町にこのまま居続けることは、きっとこの先も辛いことはあるだろうけど。

 

 別に辞めたって辞めなくたって、良いこと悪いことあるのは変わらない。なら少しでもみんなの為に、それが出来ることが私の幸せだ。

 

 

 

「……じゃあ、場合に寄っては、今辞めた方が良い場合はどうだ?」

 

 

 

 

 

「……ふぁ?」

 

 

 これは完全に予想外の展開だ。思わず気の抜けた様な声が出てしまった。

 

 

「…こんな言い方をするのはどうかと思う、だけど今度は最後まで話をちゃんと聞いてくれ」

 

 

 話の要点はまだ見えて来ないけれど、一旦アクたんの話を聞いてみる事にした。

 

 

「…まず、今回の映画だが。苺プロダクションに過去所属していたアイドルに関して暴露する、とてつもなくセンセーショナルな内容だ。その映画の公開直後に同じ事務所のタレントが相継いで辞めるのは、どうしたって謂れのない憶測が飛ぶし、良い意味でも悪い意味でも話題になるだろう」

 

「……うん。そうだと思う」

 

「…だから、そこを逆に利用する」

 

「……うん。……うん?」

 

 

 …どこかで聞き覚えのあるような論調な気がするけれど、取り敢えず続きの話を聞かせて欲しい。

 

「…そもそも題材となった出来事が、ある種芸能界の闇に迫ったもの。タレントのイメージ戦略、グループ内の不和、自由な情報発信の制限。このままMEMをB小町に無理矢理残して、お前を束縛すること事態、映画にとって、ディスブランディングに繋がる」

 

「……私、そんな情報出さないよ?」

 

「メディアの奴等は重箱の隅をつついて話をでっち上げるだろ?自宅や事務所に大挙して長々押し掛けて、こちらが何も言わなきゃ「タレントに情報統制」だの、「やっぱり闇の深い事務所」だの、なんだかんだ騒ぎ立ててくる。お前が辞めても辞めなくてもだ」

 

「……うんうん。そうなると思うよ」

 

「……アイはある種、そんな芸能界やファンによって殺された。実際物理的な凶器を使われなかったとしても、言葉とイメージの刃物によって、アイの心は殺された」

 

「……じゃあ、アクたんにとって、タレントに本来の意味で自由にさせることが、ある種本当の復讐になる……みたいなこと?」

 

「……そんな物の為に人を巻き込むのは、今更ながらどうかと思う。でも時代は変わった。人もタレントも、もっと自由であるべきだし。多少メディアがつつこうとも、お前は自由に自分の想いを発信できる能力とツールがある、その実績がある。別に辞めても仲違いするわけじゃない。ルビーや有馬と仲良い様子のshortsの一本でも出せば、一気に世論は俺達の味方になる。新生B小町は皆仲が良い。バラバラになっても、それぞれ向いてる進路に舵を切っただけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……勘所は悪くないねぇ?」

 

 

 呆気なく私は納得させられてしまった。何か色々粗削りな部分には多少目を瞑るけれど、私が今のタイミングでB小町を辞めることは、皆にとってwinwinであることには変わり無さそうだ。

 

 え?まじ??そんなことある??この頃私の抱えていた悩みや不安が、欠けたピースにピタピタに嵌まる。一気に肩の荷が降りた思いだ。

 

 暗くなってた視界に光が差して、アクたんの瞳に私が映る。そうだ、私はこんな顔をしていた。

 

 

 …けれど、だとしても一点腑に落ちない事がある。面と向かって話して貰えた事は、とても誠意ある事だとは思えるけれど。

 

 別にこれだってLINEや電話で済む事な気がする、今態々話題のアクたんが忙しい時間を縫って。それも自分がパパラッチされるリスクを負って、伝えに来てくれる必要のある事だとは思えない。

 

 これだけ頭が回るのだ、そんな事には端から気付いてる筈。なら何故来てくれたのだろう。

 

 

 

 解らないので聞いてみる事にした。

 

 

「……結局今日は、なんで来てくれたの?」

 

「……さっきも言っただろ。……お前に会いに来たんだ」

 

 

 ……女冥利に尽きるパート2。

 

 

「……前に言ったよね?思わせぶるような態度は良くないよ?」

 

「……ちゃんと憶えてるよ。逆に、思わせられる様でなければ、今日俺がここに来た甲斐がない」

 

「……どういう意味?」

 

 

 ……何となくは察したけれど、阿呆なフリして聞いてみよう。

 

 

「……これ以上言わなきゃわからないかよ?」

 

「……ちょっとぉ?私は馬鹿だからわからないかなぁ?」

 

 

 取り敢えず今私が思うことは。

 

 今のアクたんの様子を動画で撮ったら、とんでもなくバズりそうだと言う事だ。

 

 

「……俺の過去いた推しアイドルは、自分以外の為を思って、周りに嘘をつき続けていたと俺は解釈している」

 

「……うん」

 

「……嘘をつき続けた結果、無理が祟った。だんだん自分の居場所がなくなっていった。それでセンセーショナルな事を代償に自由を求めようしたが、ファンがそれを許さずこの世を去った。「そんなアイドルは間違っている」と言われて。アイドルのイメージを決めたのは彼女じゃないのに」

 

「……アクたん、それってもしかして」

 

「………俺は彼女の自由の代償だ。それでも彼女はこの世を去った。……結果周りは皆不幸になった」

 

 

 アクたんは、私の今の状況を、アイに重ねているんだろうか。憶測に憶測を塗り重ねた嘘の産物。

 

 そんな嘘の化け物みたいな塊に、今もアクたんは囚われたままなんだ。

 

 

「……自分でも言うのも変な話だと思うが、俺は十分不幸になった」

 

「……傍で見てた私もそう思うよ?」

 

「…そうか、それは良かった」

 

「…どう言うこと?」

 

「……さっきお前は言ったなMEMちょ。幸せの数だけ辛いことがある。その考えには同意したい。なら俺はこの先幸せになれる、自由が与えられると希望が持てる。でもその代償は払わなければならない」

 

 

 

「……しゃらくさい理屈はもういいだろう。今度こそ俺の推しアイドルを最後まで守らせてくれ。」

 

 

 

「……一緒に幸せにならないか?」

 

 

 今度こそ、一本の線で全て繋がってしまった。

 

 突然の訪問、スキャンダルのリスク、芸能界の引退、過去との決別、未来への展望、炎上商法、思わせ振りな態度、減りの早いウーロン茶。

 

 

 でもこれは全部嘘かも知れない。

 

 でもアクたんはさっき言っていた。「つまらない嘘はもう終わりにしよう」って。

 

 

 私の名前はMEMちょ。しぶとく賢く生き残るインフルエンサー。

 

 自称セルフプロモーションとバズらせのプロ。そんな私の嗅覚が囁いている。

 

 

「……取り敢えず、その話の続きはさぁ」

 

 

 こんな優しい王子様の嘘なら、騙されても損はしないって。

 

 

「……今から一緒にコンビニ行って、帰って来てから話さない?」

 

 

 ……魔法にはまだかかったままだ。

 

 

 

END




普段Pixivにて、別でシリーズ作品の投稿をしています。
この度久々に単発の作品を書いたので、いい機会と思ってこちらにも投稿してみました。

各種記載情報について、勝手がわからないので、お手柔らかに指摘していただければ幸いです。

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