【旧版・TS版】聖剣の守護乙女   作:きなかぼちゃん

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6.後悔

 そいつは、どこにでもいるような普通の女だった。

 ただ伸ばしただけの長い黒髪と、ラピスラズリではよく見る青い瞳。

 そこら辺にいる田舎臭い娘と何も変わらない。

 すれ違っても印象にすら残らないであろう女。

 

 そんな奴が、素知らぬ顔をして、私を地獄から引き上げてくれた人の心の大半を占めている。

 ただの八つ当たりなのかもしれない。でも、それが私にはどうしようもなく許せなかった。

 

 

 

 

 その日の夕方から、村の中央にある広場でアドルの帰郷を祝ったお祭りに似た宴会が始まった。

 

 主役であるアドルはグラスを片手に、嬉々とした様子の村長の長そうな会話に付き合っていた。

 わたしを押し倒してショックを受けていたまま放置してきてしまったので心配だったけれど、見た感じ愛想笑いできる程度には復活しているらしい。

 

 そう思ってほっとしそうになる。違う。何様のつもりだ、わたしにアドルを心配する権利などない。

 全てはわたしが招いたことだ。原因はわたし自身の行動にある。

 

 ……わたしは、どうすればいいのだろう。

 

 責任を取ってアドルの言う通り結婚すればいいのだろうか。でも、ヤケクソ気味にそうしたところでいい結果にはならないような気がした。

 

 結婚ムードになっていた村の大人たちの誤解はお母さんが説得したらしく、すれ違うたびに村の大人たちに丁寧に謝られた。

 

 布を1枚だけ張ったテントを立てて屋台のようなことをしていた近所の猟師のおじさんからお詫び代わりに持たされた、焼きたての鹿肉の串焼きが両手にある。

 

「ポプラいる? これ片方」

「なんでよ。あなたが渡されたんだからあなたが食べなさいよ」

「え~? 両手塞がっちゃうから食べてよ。それになんか食い意地張ってるみたいで嫌じゃん。友達らしく半分こしようよ。その方がお祭りっぽくて良い感じじゃない?」

「……ふん。素直に友達だって言っておけば何でもしてもらえると思わないことね」

 

 どこか落ち込んでいる内心を隠すために、できるだけ明るくふるまう。

 ポプラはそっぽを向いて口を尖らせながら呟いた。

 

 さっきまで大人に結婚はいつだと詰められるのを恐れていたわたしを「もう大丈夫だから」と宴会に誘ってくれたのはポプラである。

 

 ただ、その優しさがあまり人に理解されていないのは少し悲しい。嫌われているわけではないが、ポプラは昔から言いたいことを言うタイプなので、16歳になった今でもどこか近寄りがたく孤立している雰囲気があった。

 

 この村を出ようとしているのも、昔から村の小さな人間関係に馴染めていないことをポプラ自身どこか理解しているからなのかもしれない。

 

「逆にポプラは素直じゃないからねえ」

「ああそう。じゃあ仰るとおり素直じゃない私は放っておいてその串焼きは1人で食べることね」

「ごめんて」

 

 腕を組んでふんっと鼻を鳴らしているポプラにむりやり串焼きを押し付けた。

 

「それにしても……あんなに怒ってたマザーは初めて見たわね」

 

 仕方なさそうに鹿肉を頬張ったあと、ポプラがぼそりと呟いた。

 

「……お母さん、そんなに怒ってたの?」

「ええ、あんまりにも収まらなさそうだったからね……。ユーリアは貴方たち大人が気持ちよくなるための都合の良い道具ではない。将来この村を担う者たちの模範となるべき大人たちが、揃って子の意思を軽視するなど恥を知りなさい。って、大声で怒鳴ってたわ。そうしたら一気にシーンって皆黙っちゃってね。あれは痛快だったわ」

 

 その光景を思い出しているのか、くすりとポプラは愉快そうに笑う。そして、

 

「愛されてるわね、あなた」

「……そうなのかな」

 

 薄い笑みで向けられるその視線に、わたしはどこか気後れしてしまう。

 正直、お母さんに愛されているかと言われると、もはや分からない。

 

 昔ならば頷けただろうけど、聖女と孤児という壁を作った関係のまま費やした5年という歳月はあまりにも長い。

 

 お母さんが戒律を大切にしていることは分かっているつもりだ。

 心の中では、変わらずわたしを愛してくれているのかもしれない、だが、確信はない。

 

 村の大人たちをたしなめたのも、単に子供の意思を尊重しろと怒っただけなのかもしれないし。

 

「信じられない?」

「正直、自信ないかな」

「ふうん。じゃあ、自分が信じられないのなら、私の言うことくらい信じてみなさいよ」

 

 わたしははっとした。そう言うポプラはいつも通り勝ち気に、挑戦的な笑みを浮かべていた。

 

「私はあなたの友達なんでしょう? マザーは今もあなたを愛しているんだと信じてあげるわよ。たった今、落ち込んでいるあなたの代わりにね」

「……気づいてたの? 落ち込んでたこと」

「隠してるつもりだったなんて笑えるわね。何年あなたの顔見てると思ってんだか」

 

 それはあけすけに言いたいことを言う、ポプラらしい思いやりだった。

 そうだ、と思い出す。わたしはこの子のこういう所が好きだったのだと。

 

 

 

 

 あらかた色んなものを食べた。空もいつの間にか暗くなっている。手が汚れてしまったので、宴会を抜けて手を洗いに広場の裏手にある井戸に向かう。

 

 誰もいない中、そばにある木桶で水をくみ上げて手を洗う。遠くで聞こえる賑やかな声は相変わらずだ。宴会はまだまだ終わりそうにない。

 

 そろそろこっそり帰ろうかな? とりあえず戻ってポプラと話してから考えるか。と立ち上がる。

 

 そして、振り向く。

 

「えっ」

 

 音も無く、自分より頭ひとつ分くらい背の高い人影がいた。見上げた瞬間、ものすごい力で胸ぐらを掴み上げられる。そしてそのまま後ずさるようにむりやり建物の壁に背中を押し付けられた。

 

 左手には黒い石を削り出したようなナイフがある。それをわたしの首を掻き切りかねないくらいにぴたりと突きつけられた。

 

「お前、どういうつもりですか」

 

 見開かれた黄金色の双眸が獣のごとくわたしを睨みつけていた。

 殺意に等しい憎悪を叩き付けられて、身が竦み上がり震えが止まらない。

 それがついさっき見た、アドルの仲間である美しいエルフの女性だということも信じられなかった。

 

「どういう、って」

 

 震える口元から、なんとか声を絞り出す。するとエルフの女性はひどく馬鹿にするように嘲笑った。

 

「それすらも分かりませんか? なるほど、よく理解できました。のうのうと何も知らず生きてるお前のような愚鈍な馬鹿女はアドルに相応しくないってことが」

 

 そこでようやく気づいた。この人は、きっとアドルのことを大切に思っているのだろう。

 

 仲間なんだろうし、当たり前だ。

 だからこそ、アドルの求婚をあっさり断ったわたしに怒っているのか。

 

「迷惑なんですよ……幼馴染だかなんだか知りませんが、思わせぶりな態度でこれ以上アドルを振り回すな! お前のせいで、あの人は本当に傷ついている。あの人がッ、アドルがお前なんかのためにどれほどの努力を重ねてきたかすら知らないくせに!」

 

 本当にその通りだと思ってしまう。

 きっとわたしなんかよりこの人の方が、ずっとアドルのことを思っている。

 

「わたしは……」

「黙れ。お前の言葉なんて聞きたくない。金輪際あの人に近づくな! これ以上苦しませるな! さもなくばこの黒曜の刃はすぐにでもお前の喉を貫くぞ!」

 

 その金色の瞳は憎悪を湛えながらも、どこか辛さを押し殺すように揺れていた。

 そして何となく気づいた。きっとこの人は……。

 

 一方的にまくし立てると、エルフの女の人は乱暴にわたしを投げ捨てる。

 襟で首が絞められてげほげほと咳き込んでいるわたしを置いて、そのまま建物の合間を縫って宴会とは逆の夜闇へ消えていった。

 

 理不尽な怒りだとは、思わなかった。

 

 わたしを守るというその誓いをもとに、アドルはきっと5年間ずっと努力してきたのだ。その間、わたしは何をしていた? のうのうと村で暮らしながら、アドルがどういう思いでそんな誓いをしたのか1度でも考えたことがあったのか?

 

 わたしは何もしていない。アドルのそばにいる資格などない。

 

 ならば、わたしはあいつの前から消えよう。

 この村を離れて、いずれ、探しても見つかりもしない場所へと行こう。

 

 その日、わたしは宴会へと戻らずにまだ真っ暗な教会に戻ると、寝室で掛け布団を被り現実から逃れるようにただ目を瞑って人知れず泣いた。

 

「ごめんなさい……」

 

 愚かなユーリア。前世の記憶など、無ければよかったのに。

 そうすればきっと、こんなことにはならなかった。

 

 

 

 

 それからアドル達3人は数日間村に滞在した。そして村民の皆に見送られて出立していった。

 わたしはあれからアドルとは1度も話さず、見送りに行くことも、なかった。

 

 気を遣ってくれたのか、お母さんにそれをたしなめられることはなかった。

 

 そしてその日の夕方、早い夕食を食べた後にお母さんはわたしを連れ立って教会の外に出た。

 夕日に照らされたその横顔は相変わらず、5年前のあの日と同じ感情の読めない表情をしていた。

 

「ユーリア」

「うん」

 

 生暖かい夜風が吹きはじめ、裏手に広がる森を揺らす音が聞こえる。

 

「アドル君の思いに対して、貴女が責任を感じる必要はありません。貴女のしたことはけして間違いではない」

「でも……わたしはあいつを傷つけた」

「ユーリア、きっと貴女の心中には過ちを犯したという悔恨があるのでしょう。今、私はその思いを推し測ることは出来ません」

 

 お母さんは屈んでわたしと目線を合わせると、その浅黄色の瞳でまっすぐにわたしを見つめた。

 そして聖女の証である、首から下げた銀色の聖印を片手で握る。

 

「ですが、お忘れですか? 私は聖女です。貴女が懺悔を望むならいつであろうとそれを受け入れる用意があります。そして女神マルグレーテの名の下に説法を行うのも私の役目。それに、貴女は───」

 

 そこから言い淀むように瞳を閉じると、小さく息を吐いた。

 

「……とにかく、1人で抱え込むのはおやめなさい。今、私が言いたいのはそれだけです」

 

 そして「戻りますよ」と柔らかく言うと、お母さんはわたしの手を取り、昔のように薄い笑みを浮かべた。

 

 繋がれた手は、つるりと心地よい冷たさがあった。

 かつて、わたしが幼い時もそうだったように。

 

『マザーは今もあなたを愛しているんだと信じてあげるわよ。たった今、落ち込んでいるあなたの代わりにね』

 

 ポプラに言われたことを思い出す。

 何となく、それを信じて良いのかもしれないと思えた。

 

 勝手口から教会に戻ろうとした、その時だった。

 お母さんの動きがぴたりと止まる。

 

「待って」

「えっ?」

「何かが、おかしい。この気配は」

 

 相変わらず、ぬるい風が吹いているだけだ。

 

「マザー? どうかしたの?」 

「ユーリア、今から貴女は教会から出てはいけません。勝手口は全て施錠すること。そして村の方々が正面玄関から礼拝堂へお越しになったら、必ず迎え入れて差し上げるのです」

 

 お母さんは表情を硬くして、有無を言わさぬ調子で言う。理由がまるで分からない。

 

「どういうこと?」

「聖女を目指すのでしょう? では、貴女の聖女見習いとしての最初の仕事です。分かりましたね」

 

 それだけ言うと、お母さんは裏手にある厳重に施錠された納屋の前に立った。

 その先には、ひっそりと深夜に鍛錬していた時にのみ持ち出していた長柄の鎌がある。けしてわたしには見せようとしなかったもの。

 

「魔物の臭いがします。私の勘違いならば良いのですが」

 

 

 

 

 獣であって獣にあらず。

 女神の敵にして、神聖と相反するもの。

 世の虚より生まれし人狩りの魔性。

 

 エル=ラピスの聖書において、女神マルグレーテはうそぶく。

 

 魔物とは、生物にあらず。ただ現象によって形作られた怪物である。

 ゆえに慈悲など要らぬ。手足を詰め、頭を潰し、ただ殺せばよい。

 

 

 

 

 それからお母さんは鎌を持って村へと向かい、わたしは言われたとおりに正面玄関以外をすべて施錠して礼拝堂に灯りを付けた。

 

 すると血相を変えて村民の皆が家族を連れて次から次へと駆け込んできた。

 

 やがて、遠くから爆発音のような、建物が倒壊するような、不吉な音が断続的に聞こえはじめる。

 そのたびに礼拝堂に集まる皆が身を寄せ合って恐ろしげに身震いした。

 

「あんな、あんな生き物……見たことねえ……身体じゅう燃えてるのに生きてやがった。あの燃える針が突き立ったと思ったら、一気にわあって家が燃えちまって……魔物ってのは、あんな化物だっていうのかよう……」

「やっぱり魔物が、襲ってきたんですか……?」

 

 尋ねると、逃げてきた大人の1人が呟きながらぶるぶると震えながらこくりと頷いた。

 

「でもマザーが教会に行けって逃がしてくれてよう。なあユーリア、マザーはあんな恐ろしい化物と戦えるってのか……?」

 

 わたしは何も言えなかった。お母さんが過去戦いを生業にしていたであろうことは察していたけれど、それについて踏み込んで聞いたことは無い。

 

 お母さんは、魔物と戦っている。

 

 実感して、背筋がぞわりとする。ただでさえお母さんは片足が義足でうまく走れないんだぞ。

 もし、万が一、お母さんが死んでしまったら。

 

 それだけじゃない。村の皆の命が危ない。ポプラだって、まだ来てない。

 

 最悪の想像をしそうになる。その瞬間、勢いよく正面扉が開け放たれた。

 

 這う這うの体で入ってきたのはポプラの両親だった。血まみれの足を引きずって呻く旦那さんに肩を貸したポプラのお母さんが必死の形相で叫んだ。

 

「ポプラ! ポプラ! いないの!? 返事をして!」

「ポプラはまだ来てません! もしかして、一緒では」

「そ、んな……」

 

 急いでポプラのお母さんの元に駆け寄ると、彼女は呆然とした様子でその場に崩れ落ちた。

 お腹の底に氷を落としたような冷たさが身体を襲った。

 

「ポプラがどこに行ったかわかりますか」

「分からない。でも行かないと、私が行かないと」

 

 あなたはここにいて、と痛みに呻く旦那さんに囁き、どこか心ここにあらずというふうにポプラのお母さんがゆらりと扉の外へ出て行こうとする。

 

 こんな様子で今外に出たらまずい。わたしはその手を思わず掴んだ。

 

「待ってください!」

「止めないで! こうしてる間にもあの子が」

「わたしが、わたしが行きます! あの子が行く場所なら大抵は知ってます! わたしの方が見つけやすいはずです!」

 

 お母さん、ごめんなさい。やっぱりわたしは聖女にはなれないかもしれない。

 

 ポプラのお母さんを詭弁でむりやり押しとどめ、村に繋がる下り坂を走る。

 むせ返るような、鼻をつく野焼きにも近い臭い。黒い煙、燃えさかる家屋。

 

 どこを見ても、景色そのものが燃えていた。

 

「ポプラ、どこ! いるなら返事をして!」

 

 夕方に散歩に行ったとポプラのお母さんから聞いた。

 それならあらかた見当はつく。向かいそうな場所を探しつづける。

 

 ポプラは見つからない。だが、不思議と魔物らしきものには出会わなかった。途中でこちら側に逃げてきた人たちに教会に向かうよう言って走る。

 

 そこら中で、矢のように長い黒い針に貫かれて斃れた人間だったものがバチバチと音を立てて燃えていた。人が焼ける臭いに胃液がこみ上げる。

 

 口を押さえて吐き気に耐えながら、村はずれの草原に繋がる道まで走った。そして、見つけた。

 

「ポプラ!」

「ユーリア!? どうして!?」

 

 数メートル先、尻餅をついたポプラにちょうど襲いかかろうとしていたのは、森にいる野犬をさらに一回り大きくしたような獣だった。背中には山嵐のように大量の棘を背負い、全身は炎のように燃え上がっている。その体表は燃え切った炭のごとく黒い。

 

 見ただけで、この目の前の存在が魔物と呼ばれるのも分かるのを理解した。

 普通の生物とは存在から異なるのだと、危機感が本能に訴えかける。

 

 わたしは足下にあった大きな石を思いっきり投げた。果たして、奇跡的にその石は魔物の顔に直撃し呻く。

 

「ポプラ、逃げるよ!」

 

 腰を抜かさなかったのが奇跡だと思った。有無を言わさずポプラの手を引き全力で走る。

 

「追ってきてるわっ!」

「いいから走って!」

 

 ひゅん、と風を切る音がして顔の横を何か矢のようなものが通り過ぎたのを見た。

 それが村の皆を殺したあの針だとわかった。

 

「建物に隠れながら走るよ!」

 

 ポプラが青ざめた顔で頷く。炎上する建物がひしめくエリアを縫って走る。そして、延焼していない建物の陰にわたしたちは息を潜めて隠れた。

 

 口元を抑えて陰から様子を伺う。建物を1つ1つ丁寧に確認するように、口から吐く炎で焼き焦しているさっきの魔物の姿が見えた。

 

 ぞっとした。明らかにわたしたちがこの周辺に隠れていることを理解して、隅々まで探しているような動きだったのだから。

 魔物にはそれほど高度な知能があるというのか?

 

 2つ隣の家屋が炎に包まれたのを見た。徐々に魔物が近づいてくる。わたしは覚悟を決めた。

 

「ポプラ、このままじゃ見つかる。だから」

「……わかってる。だから、2人、別々の方向に、逃げるわよ」

 

 顔は青ざめたまま、ポプラが半ば過呼吸になってわたしに言った。

 

「どっちが、あいつに狙われても、恨みっこなし。それで、いきましょう」

「……わかった。逃げられた方は、教会まで無事たどり着くこと。いい?」

「わかったわ」

 

 わたしたちは死への恐ろしさを張り付けたまま顔を見合わせた。

 きっとわたしもポプラと同じような顔をしているのだろう。

 そして、数を数える。

 

「さん」

 

「にい」

 

「いち!」

 

 ゼロ、の合図を待たずにポプラが走りだそうとするのを見た。

 

 そしてわたしはそのことを知っていた。

 ポプラなら、この提案をした時点できっと自分が犠牲になろうとするだろうと。

 

 だからわたしは、ポプラより先に建物の陰から飛び出した。そしてあらかじめ拾っていた石を魔物の背に投げつけた。そして教会のある場所とは逆方向へ走る。

 

 背後からポプラが悲鳴をあげてわたしの名を呼んだ。

 魔物がわたしに向かってくるのを感じて、わたしは叫ぶ。

 

「振り向かずに走れ! そのまま逃げろ! ポプラ!」

 

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