機動戦士ガンダムSEED-アネモネの花言葉-   作:ピーチフィズ

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episode:03 敵軍の歌姫

 

助かった、そう思ったのもつかの間の出来事だった。

 

カシスもラクスに手を引かれたまま無重力の中を進んでいると、どこか違和感を感じ取ったのだろうラクスが体勢を崩した。

 

「···あら?あらあら···?」

 

()()()()

 

つられる様にして体勢を崩さぬようにラクスの手を握ったまま床の方へと手を下げれば、自然と足をつけたラクスが「ありがとう」とカシスに礼を言った。

 

···が、問題はここからである。

 

ラクス達を助けたのが地球軍の艦で、ラクス達がコーディネーターである事が最大のピンチだ。

 

しかし、この異様な静けさは何だろう?

地球軍の視線は皆ラクスとカシスに注目しているも、敵意が全く見られなければ殺意もないのだから。

 

そうして違和感に気がついたラクスの言葉に、カシスは頭を抱えるはめになった。

 

「···まぁ、ここはザフトの艦ではありませんのね?」

 

ラクスは困ったように頬に手をあてて、ぽかんと周りを見渡した。

 

(おねーさまぁ─────っ!!!!!)

 

カシスは顔には出さないものの、内心ヒヤヒヤ物である。

 

「どうしましょう。どなたか、()()()の手当をお願いしたいのですけれど···」

 

と、ラクスがカシスに視線を向ければ、自ずとカシスに視線が行くわけで。

 

「無理を承知でも、お願いしたいのです···ダメでしょうか?」

 

「···えぇ、はい。手当くらいなら」

 

「まぁ!良かったですわ。ありがとうございます」

 

「いえ」

 

セミロングの地球軍の女性、マリューはことの経緯に躊躇しながらもラクスに答え、ナタルとカシスと言えば額に手を当て深いため息をついていた。

 

(···、お姉様········)

 

 

 

 

 

 

アークエンジェル内居住区、一室にて。

 

「ポッドを拾って頂いて、ありがとうございました。わたくしはラクス・クラインですわ」

 

椅子に腰掛け、ピンクのハロを膝に乗せたラクスがマリュー、ナタル、ムゥに自己紹介を始めた。

 

ハロに至っては『ハロ、ラクス〜』などと場違いなラクスに甘える声を出して耳をパタパタさせていた。

 

もちろん、ハロについても自己紹介済である。

 

一方その頃、カシスは医務室にて手当を受けていた。

鉄の破片で切った頭の皮膚は麻酔をしてから丁寧に縫われ、消毒されてガーゼ包帯と、丁寧な処置が施された。

 

「いいですか、護衛だからとあまり無理をなさらないように。いくらコーディネーターと言えど、無理をすれば傷が開きます。安静に、いいですね?」

 

と、椅子に座ったままのカシスは面食らっていた。

コーディネーターだからと、もっと雑な扱いをされる物だと思っていたのに。

 

何故、こんなにもよくしてくれるのだろうか。

 

地球軍であれば、コーディネーターが憎くてたまらないだろうに、と、そこまで考えてカシスは首を振った。

 

いけない、これはただの偏見だと。

地球軍の兵士だからといって全ての人がコーディネーターを憎いわけじゃなくて、平和を望むから武器をとる人もいるのだと言う事を、忘れてはいけないと。

 

「この度は丁寧な手当をして頂きまして、ありがとうございました」

 

椅子から立ち上がったカシスは、お腹の前で手を重ねて深々と頭を下げた。

 

「いえいえ、お大事なさい」

 

笑みを浮かべ頷いた後で、部屋の前で待機していた地球軍の兵士と目が合った。

 

「ラクス様のお部屋までよろしくお願いいたします」

 

ライフルを持った兵士は一瞬目を丸くしたが、手当を終えたカシスの背後に周りラクスの部屋へと足を進めた。

 

 

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