機動戦士ガンダムSEED-アネモネの花言葉-   作:ピーチフィズ

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episode:04 敵軍の歌姫②

 

「手当を終えたコーディネーターの民間人1名、連れて参りました」

 

「中へ入れて、あなたは下がっていいわ」

 

「はっ!」

 

医務室からラクスのいる居住区の一室の前。

地球軍の兵士がタッチパネルで中のマリューと通信後、シュンっと部屋のドアが開かれた。

 

ここまで送ってくれた兵士に軽く一礼した後で、ラクスの部屋に入ったカシスは異様な雰囲気を察して中を見渡した。

 

(···地球軍の方々、何だか疲れてらっしゃる?)

 

「この度は手当をしてくださいまして、ありがとうございました」

 

異様な雰囲気ではあるが、手当してもらった身としてはお礼は伝えるべきたと、カシスは深く頭を下げた。

 

「いえ。頭を上げてちょうだい。それよりも怪我の具合は?」

 

カシスはマリューに言われた通りに頭をあげた。

 

「傷はそんなに深くありません。安静にしていれば直ぐに治るとの事でしたから」

 

本当は数針縫った事を隠し、さらっと嘘をついたカシス。

 

「そう、それは良かったわ。所であなたは?ラクスさんの護衛、と言う事を先程彼女から聞いたのだけれど」

 

「そうですか。はい、私はラクス様の護衛を務めさせて頂いております。カシス・()()()といいます。この度はポッドを拾ってくださいまして、ありがとうございました」

 

カシスはラクスの座る椅子の隣に移動した。

カシス・クラインと言う名は伏せて。

ザフト軍の兵士だと悟られぬように、嘘をつくのも身を守る為だ。

今、牢に投獄される訳にはいかないのだから。

 

「···ラクス様からは、お話は何処までお聞きになりましたか?」

 

「ユニウスセブンの追悼慰霊の調査に訪れた所で、私達の軍と些細な諍いから揉め事になってしまったと言う所までは」

 

「···、はい。それが全てです」

 

「あなた方の乗っていた艦は、···その」

 

「大破いたしました」

 

「······なんて事」

 

ここにいるマリュー、ナタル、ムゥが息を呑み悲痛な表情を浮かべた。

きっと、生き残っているのはポッドで脱出させられたラクスとカシスくらいなのだろう。

 

ラクスのハロを包む指先に力が入っていた。

 

「·····、ありがとうございます。()()の為に、心を痛めてくださって」

 

 

 

 

「ここの人達は、皆優しい人ばかりですね。···お姉様」

 

優し過ぎる。

と、カシスは胸がきゅっと締め付けられる感覚を胸に感じた。

皆があんな人達のようであるなら、話し合いで戦争は終結するのではと思うくらいに。

 

「えぇ、とても。それにあなたも」

 

「···私ですか?」

 

「傷は何とも無いと、嘘をついたでしょう?」

 

「それは···」

 

ラクスの水色の瞳にジッと射抜かれて、カシスは言葉を濁した。

 

(だって、心配させたくないから···)

 

「カシス、怒らなからきちんと話しなさいな」

 

オレンジ色のカシスの瞳が、ラクスの視線から逸れてボソボソと口を開いた。

 

「ちょっと縫いました。でも、安静にしていれば直ぐに治るとの事だったので。だから大丈夫です!」

 

「···あらあら、それは困りましたわ」

 

ラクスはカシスの手を引いてベッドの縁に腰掛けた。

 

「え、···お姉様···?」

 

「寝てください」

 

「え、···寝る?」

 

突拍子も無いラクスの行動に、カシスは目を丸くした。

 

「はい。安静になさらなければ。それに、帰って来た時にカシスがそんな状態では、ジュール様が何と仰るか···」

 

そこでイザークの名前を出すのは卑怯だと思う、と内心突っ込むも心配して怒るイザークの姿が簡単に想像で来てしまった。

 

それはそれで困った物だが、今は護衛と言う立場上ラクスから目を離す訳にはいかない。

 

鍵は掛けられてはいるが、このハロが何をしでかすか。

 

ラクスの婚約者であるアスラン・ザラからもらったと言うハロは、色んなオプション付きのとんでもないロボットだった。

 

いつなんどき、ラクスのピンチを救うべく取り付けられたオプションの数々には、時には護衛も要らないんじゃ?と言う物まで搭載してあった。

 

さすがと言うべきか何と言うべきか···。

 

「お姉様、私が眠った後も手を握っていてくださいますか?」

 

カシスはラクスの手を握り問いかけると、ラクスは笑みを浮かべて「もちろん」と頷いた。

 

 

 

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