機動戦士ガンダムSEED-アネモネの花言葉- 作:ピーチフィズ
静かな部屋には、カシスの寝息だけが規則正しく聞こえる。
ラクスはカシスに言われるがままに手を握り、穏やかなに眠るカシスの表情を見つめていた。
が、脳裏に浮かぶのはシルバーウインドの事だった。
誰か一人でも助かっていれば、と安否が気になっていた時、ハロが耳をパタパタさせて転がって来た。
『ハロハロ!てやんでぃ!』
「シー···、ハロ。おいで」
『ハロハロ!ラクス〜オマエゲンキカ?』
カシスが起きてしまう、とラクスは唇に人差し指を立ててハロにやんわりと注意を促したが、元気よく周り跳ねるハロは、ラクスを元気付けでいるようだった。
「祈りましょう。どの人の魂も、安らぐ事の出来るようにと」
カシスの手から伝わる温かな温もりに、ラクスは自分の手を重ねた。
*
───ポコポコ。
────ポコポコポコポコ···。
生温い水の中で、ポコポコと空気が上に上がる音だけが耳に届いていた。
(あったかい···)
カシスは夢を見ていた。
(···ここは、どこ?)
酷く懐かし感覚が、胸に流れ混んで来た。
目を開ければ水中にいる為か視界が悪く、伸ばしっぱなしにされた桃色の髪が水の中を自由に流れていた。
体中には細いコードが取り付けられていた。
水の中なのに苦しくなくて、やけに瞼が重い。
不思議な感覚だった。
ふと、気になった隣を見れば自分と同じようなヒトがいた。
(わたしと···同じ···?)
顔までは確認出来ない。
けれど、あの姿はどう見てもヒトであった。
(あのこは···だあれ?)
何故かとても気になって、手を伸ばした。
───そして。
「おはようございます。カシス」
夢の中で伸ばした手は、いつの間にかラクスにより指先を絡められていた。
カシスがパチパチと瞬きをすれば、ラクスは悪戯した時のように「ふふふ」とえ笑みを浮かべた。
「カシスが手を伸ばして来たので、つい···」
「ありがとうございます。お姉様···私はどのくらい寝ていたので···しょう···!!」
(しまった!!!)
寝起きで油断していたとは言え、どうしてこうも気配に気が付かなったのだろうか。
「···お姉、様?」
茶髪の短髪に、紫色の瞳が印象的な少年がいたのだ。
「···あらあら」
青い地球軍の制服を着たキラ・ヤマトが、驚いた顔で呟いた。ラクスは「どうしましょう」と頬に手をあてているが···。
カシスは頭をフル回転させ、どう対処すべきか考えていたのだが。
「···カシス。彼なら、大丈夫ですわ」
ラクスが笑みを浮かべた。
直感だろうが、ラクスはキラに対して「大丈夫」と察したのだろう。
「えっ···?」
「彼、···キラもコーディネーターですから」
「コーディネーター···?」
ラクスがそう言った瞬間に、一瞬だけキラは悲しそうな表情を浮かべた。
しかしそのおかげで、どうしてこの艦の人達がこんなにも柔らかな空気を纏っているのかが、カシスの中で腑に落ちた。
「はい。僕はキラ・ヤマトと言います」
「私は···、カシスです。姉の護衛の為に付いて来ましたが、他の方には秘密にして頂きたいのです。私が、お姉様の妹である事を。今ここで牢に入れられては困るのです」
「牢に?何故」
「···敵対している軍の人間だから、と仰っれば伝わりますか?」
「!そんな、君みたいな女の子が···!?」
「あら、女の子扱いして下さるのですか?ふふ、ありがとうございます」
と、ただただ笑う姿は、キラから見れば普通の女の子だった。