機動戦士ガンダムSEED-アネモネの花言葉-   作:ピーチフィズ

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お久しぶりです。


episode:08 分かれた道②

 

サイ、ミリアリアとの作戦を考えた後、搭乗員が待機する一室に、キラはラクスとカシスを連れてやって来た。

 

室内にはモスグリーンのソファが並んでいて、小さくはめ殺しにされた窓からは銀河の空が見えていた。

 

「こっちへ」

 

キラは人気の居ない事を確認すると、2人を中へと導いた。

ラクスが先へ進むのを確認したカシスは、背中を追うように中へと入る。

 

続いてキラは壁に収納されている予備の白いスーツを漁り、取り出すと2二人へ差し出した。

 

「これ着て、それからで···」

 

と、取り出したのは良いものの、キラはラクスのドレス姿に上から下へと目線を下ろした。

 

「お姉様」

 

キラの視線に気がついたカシスは、ラクスへと首を振る。

 

白と紫色を基調としたドレスはスカートがふわりと無重力の中で広がり、とてもじゃないが、スーツを着られるような状態ではなかった。

 

「あぁ!そうですわね」

 

(···!お姉様!!)

 

気がついたラクスはセパレートタイプになっているドレスのノースリーブ部分を外し、下に付けているドレスを脱いだ。

今は緊急事態、気にしている時間は無いと言っても、果たしてラクスは気にしてはいないのか、意識してないにも程がある···と、カシスは頭が痛くなるような気がした。

 

「···、キラ様。スーツをお貸しください」

 

(ごめんなさい。キラ様···)

 

いきなりの事に目を白黒させて驚いたキラは、頬を赤くしている。

男子がいる前で気にせず脱ぎ始めるラクスの前に出たカシスは、心の中で謝罪をしながらキラに手を差し出した。

 

「お姉様、失礼します」

 

ラクスの着替えを手伝い、ヘルメットを被せて安全面の確認。

···スーツの中に詰め込んだドレスのスカートが、臨月を迎える妊産婦のように膨らんでいるが、若干気にならないでもないが致し方が無い。

良く詰め込んだ物だ。

 

「君も、これ着て」

 

「ですが」

 

渡されたスーツに、カシスは難色を示した。

スーツを着たからと言っても、果たしてMSのコックピット内に3人乗るのは些かキツイ物がある、と。

 

「カシス」

 

2人一緒で無ければ、とラクスの表情が訴えかけている。

 

「大丈夫ですよ、何とかしますから」

 

「分かりました」

 

正直ラクスだけでも助かれば良いと思っていたカシス。

だが、その考えはお見通しのラクスはカシスの手を力強く握った。

折れたのはカシスだった。

 

それに、キラの命懸けの好意を無下にする事も出来ない。

 

カシスは渡されたスーツに、身を包んだ。

 

待機室から外へ出ると、辺りを見張っていたサイとミリアリアが待っていた。

 

が、サイはラクスの膨れたスーツにギョッと目を丸くした。

 

「···いや、いきなり何ヶ月って···」

 

「はぁ···」

 

サイに対してミリアリアは呆れた様子だ。

 

 

 

 

辺りを警戒しながらも、順調に格納庫へ来た4人。

キラはまず先にストライクへ飛んだ。

 

続いて、カシスはラクスの手を取ると手すりを蹴ってストライクへと飛んだ。

 

流れるようにキラに手を掴まれて、ストライクのハッチへ。

 

「ありがとう。またお会いしましょうね」

 

キラはラクスの手を取り、コックピットへ入れた。

ここまで連れて来てくれたサイとミリアリアへお礼を告げて、にこやかに微笑んだラクスに、2人は厳しい表情を否めない。

 

「···それはどうかな」

 

サイは重い口を開いた。

ナチュラルとコーディネーター、双方が敵対している中で、生きて再会出来るのは奇跡に近いだろう。

 

サイの言葉に、ラクスの笑みは消えて瞳を揺らした。

 

「キラ、お前は帰ってくるよな?」

 

サイの問に、キラは「はっ」と息を飲んだ。

キラはコーディネーターだ。

地球軍の艦にいる理由は無い。

 

と、その時···間が悪く、マードックがやって来た。

 

「おい!何してる!?」

 

焦燥が混じった声が響いた。

 

「お前はちゃんと帰って来るよな!?俺達の所に!」

 

このままザフトへと行ってしまうのではないか、と不安が過ぎるサイに対して、キラは穏やかな笑みを浮かべて「必ずね」と答えた。

 

その声は落ち着いていて、紫色の瞳は真っ直ぐに友人である2人へ向けられていた。

 

「約束する!」

 

必ず戻る、とキラは強い意志を見せる。

ナチュラルでもない、コーディネーターでもない、そんな事は抜きでキラは友人である彼らに約束をする。

 

「君も早く中へ」

 

「···」

 

カシスは頷いてコックピット内へ。

 

外からは「必ずだぞ!、約束だぞ!」と友を気にかけるサイの声が響いた。

 

キラはストライクを起動し、格納庫のハッチを解放した。

艦内にはアラートが鳴り響き、空かさずにナタルから通信が入る。

 

「行きます。掴まっていてください」

 

通信を無視したキラは、レバーを操縦してアークエンジェルから宇宙へと飛び出した。

 

 

 

 

アークエンジェルから飛び出したキラは、全チャンネルで通信回線を開いた。

 

「こちら地球連合軍、アークエンジェル所属のMS、ストライク。ラクス・クラインとその護衛を同行、引き渡す。ただし、ナスカ級は艦を停止、イージスのパイロットが単独で来る事が条件だ。この条件が破られた場合、彼女達の命は保証しない」

 

「···キラ様」

 

緊張の面持ちで発した声音は、先程までの和やかな彼からの言葉とは思えないくらいの声に、カシスは本当にキラはラクスを戻したいのだと、強い意志を感じた。

 

双方の緊張感が高まる中、ベサリウスからはイージスに乗ったアスランがストライクの元へ。

 

キラはビームライフルをイージスへ向けた。

 

「アスラン・ザラ···か?」

 

「そうだ」

 

アスランの声がストライクに響き、キラはかつての親友である事を確認したが、声は硬いまま、アスランに命じた。

 

「コックピットを開け」

 

双方のコックピットが開かれる。

 

「話して、顔が見えないでしょ?本当に貴女だって事、わからせないと」

 

キラの問いかけに「え?」と疑問を示したラクスだったが、意志を読み取り片手にハロを抱えたまま、ラクスは笑みを浮かべて手を振った。

 

「こんにちは、アスラン。お久しぶりですですわ」

 

「···、確認した」

 

婚約者であるラクスの安否を確認したアスランは、ホッとしたように緊張感僅かに抜けて小さく笑みを作った。

 

「なら彼女(達)を連れて行け」

 

アスランはベルトを外し、コックピット内から姿を表した。

 

キラは「さぁ、行って」とラクスの背中をぽん、と押した。

 

「キラ様、ありがとうございました」

 

カシスは丁寧に礼を述べ、ラクスの後を追う。

 

先にイージスへ着いたラクスはアスランに手を掴まれてハッチへ足を乗せた。

 

「色々とありがとう、キラ。アスラン、あなたも」

 

カシスもラクスに手を差し伸べられてイージスに着くと、涼やかな声音でラクスは礼を述べた。

 

2人を見届けたキラは安心としたように、笑みを向けていたが···。

 

「キラ!お前も一緒に来い!」

 

(···アスラン)

 

2人の思いに、カシスは胸を締め付けられて瞳を揺らした。

思い出すのはつい先程の格納庫での事が、脳裏にチラついた。

 

「お前が地球軍にいる理由がどこにある!」

 

「僕だって、君と戦いたくは無い!でも、···あの艦には、守りたい人達が···友達がいるんだ!!」

 

アスランも掛け替えの無い友達であり、それはサイやミリアリア、カズイやフレイも一緒だ。

 

キラの心情を思えば、この言葉の意味がどれだけ辛い物か···。

 

「···ならば仕方がない。次に戦う時は、俺がお前を撃つ!」

 

アスランの翡翠色の瞳が泣きそうに揺れる。

敵として友を撃たねばならない選択に、アスランは震える声を大にして告げた。

 

「···僕もだ」

 

悲しく震えるキラの声。

ストライクはコックピットのハッチを閉めて静かに距離を取った。

3人が見守る中で···。

 

しかし、その瞬間にベサリウスからはラウ・ル・クルーゼが乗るジンが発進した。

 

アークエンジェルからも、ムウ・ラ・フラガがメビウスゼロを発進させて、再び緊張感が走る。

 

ラウが搭乗するジンはイージスの横を猛スピードですり抜け、ストライクへと接近する中、ラクスはイージス内の通信回線用のボタンを押した。

 

「ラウ・ル・クルーゼ隊長、止めてください。追悼慰霊団代表のいるわたくしのいる場所を、戦場にするおつもりですか。そんな事は許しません。すぐに戦闘行動を中止してください」

 

全域に凛としたラクス・クラインの声が響き渡る。

ラクス意外な一面に唖然とするアスランに、ラクスは笑みを浮かべた。

 

 

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