鈍感な彼と自意識過剰な彼女の学園物語   作:沙希

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エンディング
やさしい両手


 

 

 光射す方角へと飛ぶと、俺は海から上空へと飛び出て来た。

 どうやら海の底だったらしく、どうりで暗いわけだと思った。

 

「一夏!?一夏なのか!?」

 

「あぁ、俺だよ箒。それよりも、福音は?」

 

「そ、それよりも早く!撃ち落とされたのだから、早く旅館に!」

 

 どうやら教えてくれそうになったので、自分で探すことにした。

 辺りを見回しても見当たらなかったので、どこか遠くへ飛んでいったのだろう。

 そしてあたりを見回していると、福音を発見した。

 まだそう遠くまで行ってないけど、どういうことだろうか?

 深海に長い時間、シロナの過去を見たり、会話したりしたのにそこまで時間が経っていないのだろうか?だが、遠くへ行っていないのが好都合だ。

 

「箒、お前は旅館に戻れ。エネルギーが少ないだろ?」

 

「お前を置いていけるわけないだろ!いいから、直ぐに―――――」

 

「とりあえず、福音は俺に任せな」

 

「なっ、一夏待てって、紅椿よりも速いだとっ!?」

 

 有無も言わず、俺は箒の元から離れ福音の元へと向かう。

 ハイパーセンサーが福音を捉え、アップして表示される。

 すると俺に気づいたのか福音は一旦立ち止まり、俺の方へと振り返る。

 俺は瞬時に『白鵠』の武装『白雫』を展開し、鞘から抜き取る。

 

 

 機体の形状も変わっているだけでなく武器の形も変わっており、前の白雫よりも刃が薄く、透明さが増しており、鞘まで付いている。

 俺は『白雫』を強く握りしめ、福音へと突撃する。

 

「La…………♪」

 

「当たるかよ、そんなもん!」

 

 36砲口のエネルギー弾を全て回避する。

 白式の時とは違い、圧倒的にスピードが上がっているようだ。

 それに箒の元を去る時、後ろから紅椿よりも速いと聞こえた気がする。

 だとすれば俺のISは、とんでもない進化を遂げたようだ。

 

「でも、これで俺は守る力を手に入れた!」

 

「!?」

 

 一瞬で間合いを詰め、福音を斬り裂く。

 しかし、装甲が固く大きな傷は付けられなかったが何やら破片が飛んできた。

 どうやら福音の装甲だった。

 切れ味重視の様な透明さなのに、強度はまるで鋼そのもの。

 俺は攻撃を休むことなく、福音に叩き込んでいく。

 

 

 しかし、福音も易々と攻撃を受けるばかりではない。

 このまま防御したままでは危険だと判断したのか、更に速度を上げて距離を取る。

 追いかけるにしても、速度は少し俺の方が遅く、福音は速度を最大にしたのだろう。

 操縦者の意思で動いていない以上、このまま動き続けてしまえば死んでしまう。

 

 

 なら、これを使うまでだ!!

 

 

「駆け抜けろ、雷!!」

 

  ズガァアアアアアアンッ!!

 

 次の瞬間、轟音が鳴り響き金色の雷が福音を襲う。

 福音は何をされたのか分からなかった様にあたりを見回し、俺がいつの間にか『前方』に要る事に気づいたようである。

 くっ、やっぱり外してしまったか。でも、ダメージはしっかり受けたようだ。

 

「次は逃がさねぇよ。次で終わりにしてやる」

 

「――――――――」

 

 福音は背後にたじろいて、俺の様子を観察しはじめた。

 バチバチバチッと白鵠の装甲から電気が走っているのは、『轟雷転輪』という単一使用能力とは違った特殊能力である。

 初めて使うのだが、頭の中に使い方と能力が頭に流れ込んできたのは驚いたけどな。

 

 

 『轟雷転輪』。その能力は『雷化』する能力である。

 文字通り、白鵠を纏った俺が雷となることが出来るのだ。

 何らかのデメリットが伴うはずなのだが、体調が悪くなる訳でも無いしエネルギーなど減っている訳でも無い。

 というより、むしろエネルギーが有り得ない数値を出しているのだ。

 そう――――無限、∞という文字が表示されている。

 

 

 だが、今はそんな些細な事はどうでもいい。

 今はただ、福音の暴走を止めるのみである。

 このまま長時間戦えば、操縦者に更なる被害が及ぶ。

 そして早く終わらせて、シロナとの約束を果たす。

 

 

 

 

 

 

「いざ尋常に―――――」

 

 

 

 

 

 

 白雫を鞘に戻し、構える。

 抜刀術の構えであり、シロナに見せたあの時の技の構え。

 疾風よりも速く、音速を超えた光にも等しい雷光の抜刀技。

 その名も―――――――――

 

 

 

 

 

 

「勝負!!」

 

 

 

 

 

 

 俺はそのまま、福音の懐へと飛んだ。

 音速を超えた神速でもあり、雷光の様な刹那。

 福音は俺が消えたと同時に動き出したが、既に遅い。

 お前がもう動き出そうとした少し前から、既に()()()()()()()()()のだからな。

 

 

 機械だろうが人間だろうが黙視できない圧倒的なまでの速度で踏み込み、一瞬にして無数の斬撃を叩き込む回避不可能の剣技。

 シロナに見せたあの時の技を改良し、強化した技。

 

 

 

 

 

「 武 御 雷  」

 

  ピシッ……………パキィィイイインッ!!

 

 

 

 

 

 福音の装甲が砕かれ、操縦者の女性の身体が露わになる。

 機能が停止したのか、そのまま海へと落下するが俺はすぐさま能力を閉じて操縦者を拾いに行った。

 福音の操縦者の身体や骨に異常はなく、少し息が荒かっただけだった。

 

 

 でも、正直安心した。武御雷を使った時、『あ、これ死ぬんじゃないだろうか?』って思っていたりしたんだよな。

 でも、思いのほか傷つけなくて良かったぜ。

 因みに、福音を追いかけるときに轟雷転輪を発動して際に使った技は『疾風迅雷』というタダの突きである。

 こっちでも倒せたんじゃないか?と思うんだよな。

 

 

 でも、これで福音は暴走することもないだろう。

 後はこの人を旅館にまで運んでいけば、ミッション完了だな。

 あと、シロナは見てくれていただろうか、俺の勇士を。

 かなりカッコつけたけど、好感度は上がるだろうか?

 いや、もう名前で呼び合っている程だから最高値なんじゃないか?

 

(『シロナ、見てくれたか?俺、福音に勝ったぜ!シロナ、聞こえてるか?』)

 

 ……………………

 

 …………………

 

 ………………

 

 ……………

 

 …………

 

 ………

 

 あれ?反応が無い?寝ているのかな?

 それとも過去を見られて恥ずかしいから、出て来れないだけだろうか。

 まぁ、前みたいに直ぐに話しかけてくるかもな。

 

 

 などと思っていると、何やら白鵠からウィンドが表示された。

 ウィンドには音声レターというものが現れ、開きますか?と映し出されてある。

 とりあえず何なのか気になったので、音声レターという手紙のマークをタッチした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 貴方がこれを聞いている頃には、私はこの世界に居なくなっていると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 旅館にある風花の間では千冬や専用機持ち達、束などの作戦に関わる関係者が唖然としてモニターを見ていた。

 箒の突然の同様により、一夏が箒を庇って福音の攻撃を受けて海へと落とされた時はこの場に居た殆どの者達の顔が青ざめたが、物の数十秒で海から現れたのだ。

 しかも、二次移行した状態である。

 

「あ、圧倒的すぎる……………」

 

「箒さん、別にいりませんでしたね……………」

 

「第四世代を上回ってなかった?」

 

「なによ、あれは………………」

 

 誰もがそう口から漏らした。

 圧倒的なまでの戦闘能力と機体性能により一夏一人で福音を倒した。

 流石にその光景を見ていた束や千冬ですら目が点になっている。

 その中で一番驚いているのは束の方だろう。

 何せ、本来白式が二次移行する姿と名前、武器等が全く異なっているからだ。

 

 

 なんなんだ、白鵠とは。なんなんだ、白雫という武器は。

 なぜ――――――『零落白夜』が消えているのか。

 束が設定して組み込んだはずの武装も能力も何もかもが上書きされ、きれいさっぱりなくなっていたのだ。

 すると千冬がハッと意識を戻し、オープンチャンネルで帰還命令を下す。

 

「作戦は終了だ。篠ノ之、織斑。福音のパイロットを連れて速やかに『一夏、どこに行こうとしているのだ!!』っ、何があった篠ノ之!」

 

『そ、それが!何やら一夏が慌てた表情で福音のパイロットを私に任せて、どこへ!』

 

「っ、織斑はどこへ行こうとしている!」

 

「た、ただいま北西に向かっています。向かう先は――――IS学園の方角です!」

 

 画面には白式のマーカーが映し出され、IS学園の方角へと向かっている。

 千冬は一夏に声を掛けるが、チャンネルを拒否されているのか、もしくは気づいていないのか一夏は出なかった。

 

「……………どうしたと言うのだ、一夏……………お前は………」

 

 

 

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 貴方がこれを聞いている頃には、私はこの世界に居なくなっていると思います。

 本当はもう少し前に直接言いたかったのだけれど、怖くて言えませんでした。

 私が消えてしまうって気づいたのは、学年別トーナメントの時でしたから。ほんと、唐突よね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「速く、もっと速く動いてくれ!!」

 

 どうして、どうしてなんだよ。

 なんで、なんでシロナなんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私がこの世界に転生させられたのは、きっと神様が誰かを導けと思ったからなんじゃないかと思っています。

 私は多くの人間を破滅の道へと追いやってしまったのだから、その罪を償えと言っているのかもしれません。

 白式に転生したのは、貴方を正しい道へと教え導き、強くすることが役目だったのでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた!!」

 

『止まりなさい、織斑君!すぐに旅館へと戻りなさい!』

 

「くっ、退けてください!」

 

『きゃっ!?』

 

 俺は寮へと走り、邪魔する生徒や教師を避ける。

 寮へ入ると、すぐさま俺は自分の部屋へと向かった。

 カギを開けて、扉を開けるがシロナはいなかった。

 俺はそのままベランダの窓を開けて、ベランダから飛び降りて校舎へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 貴方と過ごす時間は、とても心地よく楽しい刹那だったと私はそう感じています。

 からかわれて拗ねる貴方を見るのが微笑ましくて、私の悪口を嫌な顔を一つせずに受け止めてくれて、必死になって頑張ろうとする行動が愛おしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「音楽室も美術室もいないっ…………あそこだ!」

 

「見つけたわ!織斑一夏君、止まり―――――――って、ぇええええ!?」

 

 何やら水色髪の上級生が立ちふさがったが、4階建ての建物の窓から飛び降りる。

 白鵠を展開して着地し、直ぐに解除して隠し部屋があるビルへと走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みに貴方が私に好意を抱いていたのは知っていたけど、知らないふりをしていました。

 だって、いつか消えてしまうのだから本当は諦めてほしかった。

 でも、貴方と一緒に居るたびに私も貴方の事を好きになってしまった。

 ずっと貴方と一緒にいたいと、思うようになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺とシロナだけのしか知らない隠し部屋があるビルに入る。

 階段を駆け上がり、隠し部屋の扉を押して中に入る。

 

「はぁはぁはぁ……………いない………………くっ!」

 

 部屋を出て、ビルの階段を降りてビルから出る。

 もしかすると――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏君、私は貴方が好きです。

 誰よりも、私は貴方が好きです。

 でも、だからこそ貴方は―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の事は忘れて、幸せになってください。

 私が教えてきた事を無駄にしない様に、強く生きてください。

 そして最後にもう一度言います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シロナぁぁああああああああ!」

 

 シロナを案内した、白い花が見える公園で叫んだ。

 シロナが背を向けて花を見ており、叫び声に反応しこちらを振り向く。

 振り向こうとした直後、シロナに近づき抱きしめようとした。

 しかし、シロナを抱きしめる事は出来ずそのまま空を切り、地面に倒れる。

 

「なんでだよ……………なんで、なんで、なんで!!」

 

 地面の土を掴み、俺はシロナを見上げる。

 泣きそうな表情で俺を見つめているシロナに手を伸ばすのだが、シロナは手を差し出してくれなかった。

 

「これからなのに………これから、シロナと一緒に幸せになるっていうのに!」

 

 なんで、なんで現実はこうも残酷なんだよ!

 シロナはもう、幸せになってもいいだろ!

 なんで神様は、シロナを救ってやれないだよ!

 神様なら何でも出来るんだろ!?

 シロナは、シロナは俺が感謝できないくらいの事をしてくれたんだぞ!

 なんで許してやれないだよ!

 

「シロナ、俺は――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ―――――――大好きよ、一夏君。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ――――――――」

 

 声にならないくても、シロナがそう言った気がした。

 次の瞬間シロナの身体から小さな光の球が現れ、何処かへ飛んでいく。

 それと同時にシロナの身体がさっき以上に薄れていくのであった。

 

「やめろ……………もう、やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……………!!!」

 

 必死になってシロナから溢れ出てくる光の球を掴もうとする。

 しかし、光の球は手をすり抜け消えて行ってしまう。

 そしてもう、シロナが日の光で見えにくくなりかけたその時――――シロナは笑みを浮かべ、消えていった。

 

「うわあああああああああああああああ!!!」

 

 公園に慟哭が響き渡るのであった。

 後から駆けつけてきた専用機持ちや教師たちから腕を掴まれるが、俺はそれを振り払いその場を一歩も動こうとはしなかった。

 

 

 何が、守ってみせるだ!

 何が、強くなってみせるだ!

 俺は、俺は何一つ守れていないじゃないか!

 俺は、俺は何のために力を手に入れたんだ!!

 

 

 冷たいけど、柔らかくて力強かった手を握る事も出来なかった。

 俺は結局、彼女に何もしてやれなかった。

 俺は彼女の全てを、守る事さえできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ――――――――― 一夏君 ―――――――――

 

 

 

 

 

  ―――――――― ごめんね ――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日……………

 

 

 俺は……………

 

 

 掛け替えのない人を――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ――――――失った。

 

 

 

 

 

 

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