鈍感な彼と自意識過剰な彼女の学園物語   作:沙希

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「……………」

 

 あの後、ショッピングモールから電車に乗って3駅ほど離れた場所に俺とシロナ、そしてシロナのお父さんもとい、ジョシュア・O(オブライエン)・白鳥さんの3人で訪れている。

 そして3人が着いた場所はなんと大きな和風の屋敷がある場所だった。

 ドラマや映画で見る様な大きな敷地があり、下手をすると昔の日本貴族が住んでいた様な家である。

 

「百合香が待っている。行くとしよう」

 

「ほら、行くわよ織斑君」

 

「は、はい!」

 

 二人の後についていく、敷地内に入ると何やら使用人らしき人が庭の掃除や手入れをしており、使用人達が二人に気づくと丁寧にお辞儀をする。

 

「おかえりなさいませ、旦那様、白雫様」

 

『おかえりなさいませ』

 

(スゲェ…………シロナって結構金持ちだったんだな)

 

 かなり広い庭に大きな屋敷、それを管理する使用人達を雇うほどだ。

 興味津々になりながらも、あたりを見まして居たら二人が立ち止まっていた。

 家の玄関らしき所に、何やら着物を着た小柄な女の子が立っているのだ。

 

「おかえりなさい、二人とも」

 

「あぁ、戻ったぞ」

 

「ただいま」

 

 そういって二人は軽く頭を下げる。

 えっと、いったいこの子はシロナ達とどういう関係なのだろうか?

 シロナの妹かな、身長差的に考えて。

 

「おい、小僧。貴様は挨拶もろくにできないのか?」

 

「小僧言うな。………………えっと、はじめまして。織斑一夏です」

 

「はい、こちらこそはじめまして。わたくし、白鳥 百合香と申します」

 

 そう言って丁寧に頭を下げ、挨拶をする百合香さん。

 物腰や口調がかなり柔らかいし、礼儀作法が整っている。

 やっぱりこの家に住むくらいだから、礼儀作法とか厳しいのだろう。

 

「えっと、一ついいでしょうか?」

 

「はい、なんなりと存じ上げます」

 

「百合香さんって…………白鳥先生の妹とかですか?」

 

  ピシッ!!

 

 ………………………

 

 ……………………

 

 …………………

 

 ………………

 

 ……………

 

 …………

 

 何やら空気が凍った。

 誰もが口を閉ざし、シロナは顔を背けている。

 そして質問した相手である百合香さんは涙目になっており、ジョシュアさんは横から指の関節をボキボキと鳴らしてこちらを睨み付けてくる。

 

「や、やっぱりわたくしって…………そういう風に見られているのですね………」

 

「な、泣かないでお母さん!大丈夫よ!お母さんは小さくても、十分母親らしいところがあるから!!」

 

「そうですぞ奥方様!身長など気にすることありません!世間では年齢と見た目が不釣り合いな女性、合法ロリという言葉が存在するのですから!」

 

「合法ロリ!?わたくし、やっぱり子供なのですねぇ…………」

 

「ちょっ、落ち込ませてどうするのよ爺!?」

 

 使用人達と白鳥先生が、必死な表情で百合香さんを慰めている。

 え?なに?お母さん?見るからに、鈴よりも少し小さいのに―――――――

 

 

 その時、俺は胸ぐらをつかまれ、持ち上げられる。

 眼前にジョシュアさんが拳を構え、『覚悟はいいか?』と目で訴えている。

 

「おい小僧。ウチの妻を泣かせるとはいい度胸だな。シロナの時といい百合香の時といい、貴様どうやら死にたいらしいな?」

 

「うそ、妻!?どう見ても小学生にしか見えないけど!?」

 

「小学生!?」

 

 すると百合香さんが過剰に反応し、さっき以上に落ち込んでしまった。

 あ、ついやっちまった………。

 

「織斑君!貴方は黙ってなさい!」

 

「す、すいません!」

 

「小僧ォォ?十秒だけ遺言を聞いてやる。十秒の間に思い残したことを言え」

 

「す、すいません!そんなつもりじゃなかったんです!」

 

「ハ~~イ、1」

 

「ちょっ!?え、えっと、そのマジで許してくださ――――」

 

 刹那、俺の顔に固い何かが直撃するのであった。

 それが何なのか確認さえすることが出来ず、俺の意識はブラックアウトする。

 ま、まだ10秒経って……………ない………………。

 

「バカ野郎。男は1だけ覚えてりゃぁ生きていけるんだよぉ」

 

 そんな理不尽な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、白鳥家の居間。

 俺は腫れた頬を手でさすりながら、差し出されたお茶を飲む。

 やべ、血の味がする。口切れてるな間違いなく。

 

「大丈夫、織斑君?お父さんが手加減なく殴ったみたいだけど?」

 

「大丈夫です。幸い歯とか折れてませんし、口を切った程度でしたから」

 

「………………チッ。ならもう少し本気でやればよかったか」

 

 おいこら、隣だから良く聞こえてるぞ。

 一応俺は客人なんだから舌打ちをするか普通?

 なんかこのオッサンとは絶対に意見が合わない気がする。

 

「ジョシュアさん、お客様の前ですよ。そんな態度ではお客さまに失礼です」

 

「ふん、百合香を泣かせる男などに態度も糞もない。この小僧にはこれが丁度良い」

 

 言い返したいが、言い返せない。

 百合子さんを泣かせた原因は俺にあるんだし、一番無礼なのは俺だからな。

 

「それよりもお父さん、お母さん。そろそろ本題に入りますが、私のお見合いの件ですが――――――――」

 

「え!?白鳥先生、お見合いするんですか!?」

 

「まだしないわよ。とりあえず座りなさい」

 

 まだしない?じゃあ、近いうちにするって事なのだろうか?

 とりあえず俺はシロナの話を聞くべく、いったん落ち着いて座る。

 

「それでお見合いの件ですが、今回は何件ですか?」

 

「5件よ。はい、これが写真ね。みんなイケメンよぉ」

 

「まぁ、俺より劣るがな」

 

 いや、アンタよりも劣るってなんだよ、おい。

 シロナはお見合い写真を手に取り、中身を開く。

 

 

 百合香さんの言う通り、写真に写る男たちは皆顔立ちが整っておりイケメンだった。

 5人のうちの一人、ダンディな外国人も含まれている。

 なんてグローバルなんだろうか。

 

「確かに、お父さんよりも劣るわね」

 

「だろ!流石私の娘だな!見る目が違う!」

 

「………………あの、百合香さん。ここは、ツッコむところでしょうか?」

 

「何がでしょうか?」

 

 くっ、この場に味方はいないと言うのか!

 前に本で、『同じ物体や写真を見ても人それぞれの感性が違う為、同じ物に見えているとは限らない』という文面を目にした覚えがある。

 

 

 シロナの目には写真に写る男たちが隣の大男以下にしか見えていないと言う事だろう。

 そしてシロナが写真の他にも男達の経歴などが書かれた紙を黙読し、1拍置く。

 

「この男たちに言っておいてちょうだい。『二度と面を見せるな』って」

 

「し、辛辣っすね白鳥先生。そんなに気に入らなかったんですか?」

 

「5人の経歴を見てみたけど、嘘臭さ漂う文面ばかり。明らかにこちらの趣味や趣向を合わせているかのようにしか思えない趣味と特技。それに惚れた理由があまりにもクサいセリフが混じってて逆に怪しすぎる。どうせ体や金目当てのバカよ」

 

 そういってビリビリと紙を破り捨て、見合い写真をいつの間にかシロナの横にいた使用人に渡すと使用人はそのままゴミ箱にぶち込んだ。

 その光景を見ていた百合香さんはため息を漏らす。

 

「はぁ…………もうシロナ、ダメじゃない。せっかくのお見合いなのよ?もっとこう、会ってみたいとか思わないの?」

 

「思いません。それに、会いたいのならそっちから会いに来ればいいじゃない。写真や経歴を送り付けてくる程私と結婚したいのなら、自ら出向いてデートでも誘う根性を見せるくらいの度胸はないのかしらね。まぁ、仮に誘われても断るけど」

 

「うむ。さすが我が娘だ。…………しかし、いい加減に結婚を考えるべきじゃないかシロナ?お前はもう結婚できる年齢。今まで恋人など浮いた話が無いから少し心配だ」

 

「別に結婚しないって言ってるわけじゃないわ。ただ私の御眼鏡に叶う男がいないだけよ」

 

「意識してる人とかいないの?」

 

「…………いないわね」

 

 ………………はぁ、やっぱりまだ意識されてないか。

 少なくとも少しは意識してもらえるように食事に誘ったり、さり気なくデートに誘ったりしたつもりだけどなぁ。

 はぁ、やっぱりまだまだ時間と触れ合いが足りないのだろうか。

 

「ふ~~んっ、そうなの…………」

 

「??」

 

 何やら百合香さんが俺とシロナを交互に見て、ニヤニヤと笑みを浮かべている。

 なんだ? 俺の顔に何かついているのだろうか?

 いまだ腫れあがっている頬しか目立つものなんてないけど…………。

 

「まぁ、とりあえずお見合いの件は無しって事にしておいて。あと、また写真とか来たら送り返すか燃やしていいから。好きな男くらい、自分で見つけたいし」

 

「シロナがそういうなら、止めはしないが」

 

「御爺ちゃんや御婆ちゃんが『曾孫はまだかい?』ってまた言うでしょうねぇ」

 

「もう、御婆様も御爺様も何を考えているのやら」

 

「それよりも、ごめんなさいね織斑君。せっかく来てくれたのに蚊帳の外にしちゃって」

 

「いえ、構いませんよ」

 

 むしろいい話が聞けたんだしな。

 見合いという言葉を聞いて少し焦ったけど、やはりシロナはシロナだった。

 顔や経歴だけで判断しないし、ハッキリと物を言う性格だからこそ俺が好きになった要因の一つである。

 

「あ、そうですわ。織斑君、なんなら織斑君がシロナを貰ってくれないかしら?」

 

「「ぶっ!?」」

 

 百合子さんの言葉に、シロナと俺の隣にいるジョシュアさんがお茶を噴いた。

 あまりに唐突な言葉だった為、俺は思わず聞き返してしまう。

 

「お、俺がですか?」

 

「そう。確か織斑君って、前にドイツのISの大会で優勝した子でしょ?見るからにシッカリしてて、誠実で優しそうだしシロナにピッタリと思ったのよ」

 

「お、おお、お母さん!?急に何を言ってるのよ!!」

 

「そ、そうだぞ百合香!こんな小僧に、シロナを嫁がせるなど!」

 

「あらあら、シロナったら照れちゃって。顔が真っ赤よ?もしかして、実は本命がこの子だからお見合いを断ったのかしら?」

 

「え?」

 

 百合子さんの言葉に俺は思わず、百合子さんの隣に座るシロナに目を向ける。

 シロナの顔はトマトの様に真っ赤になっており、あたふたと手で顔を隠す。

 

「そ、そうなのかシロナ!?この小僧の事が好きなのか!?」

 

「ち、違う!別にそんなつもり見合いを断ったわけじゃないし、それに織斑君はただの生徒であって、そういう目で見ている訳じゃないから!」

 

 シロナは弁解するのだが、いまだ顔が真っ赤なため説得力が無い。

 でも流石に、シロナの反応には予想外であった。

 今迄積極的にアプローチしてもこれと言った反応が無かったので相手にされていないのだろうかと思っていたのだが、こんな反応をされるとは。

 もしかしてシロナは―――――――――――

 

「あら、もうこんな時間。二人とも今日は泊まっていきなさい。IS学園には、わたくしの方から電話をするから。織斑君、シロナの事をよろしくね?」

 

「は、はい!もちろんです!!」

 

「それじゃあジョシュアさん。邪魔者は速やかに出て行きましょうね」

 

「ま、待て百合子!俺は認めんぞ!あの小僧がシロナと―――――――――」

 

 パタンと襖が閉じ、俺とシロナは居間に取り残されてしまう。

 いまだ顔を赤くさせ、顔を俯かせているシロナ。

 百合子さんの好意は嬉しいのだが、シロナと何を話したらいいのか少し困ってしまう。

 

「と、とりあえず部屋に案内するわ。つ、ついて来なさい」

 

「は、はい……………」

 

 シロナが部屋に案内すると言って、居間からでる。

 俺はシロナと逸れない様に、後を追うのであった。

 部屋に到着するまでの間、俺たちは終始無言のままだった。

 

 

 

 

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