白鳥さんと俺は敵ISを考察する様に話し合っていると、急に敵ISが地面に手を付けて態勢を低くし、動き出した。
カサカサと動くそれはまるで蜘蛛の様だったが、関係ない。まさかそんな隠し玉があったとは予想外だったけど、別に強くなったわけじゃない。
(『@olk‘*><is8ri@qlec!?』)
(『って、白鳥さんどうかしたんですか!?めっちゃ何を言ってるのか分からないんですけど!?大丈夫ですか!?』)
(『なにあれ気持ち悪っ!?あんな風になるって聞いてないわよ!?キモッ!キモすぎるわよ!なんでカサカサと動くのよ!?まるでG、もしくは8本脚のあれじゃない!なんてISを作ってるのよ製作者は!?美的センスの欠片もないし、うわっ気持ち悪っ!?』)
こんな動揺しまくった白鳥さん、初めて見た気がする。
少し前までは冷静沈着で毒舌で少し表情を変えない所があるけれども。
あと、キモッとか気持ち悪いって言いすぎですよ。何回言ってるんですか。
でも、また一つ白鳥さんの知らない顔を見れたのが嬉しいなぁ。
(『とりあえず迎え撃ちますから!落ち着いてください白鳥さん!』)
(『私の視界に入らない様にぶっ壊しなさい!ぶっ殺せ!!』)
ヤバい、これは重傷だ。
口調が乱れまくってるよ、白鳥さん。
「鈴、頼んだぞ!」
「OK!任せなさい!消えなさい害虫!」
鈴が衝撃砲を放つ。
しかし、敵ISは素早く回避、こちらに近づいて来る。
どうやら動きは前の二足歩行よりも早くなっている。
そして敵ISは走ってくる勢いを付けて、高く飛び上がってきた。
(『きゃぁああああああああああ!こっちに来たぁああ!』)
「うぉっ!?」
蜘蛛が俺の方へ飛んできた瞬間に、白鳥さんが操作して後方へと飛んだ。
敵ISの手首からブレードが生えていたので、回避して正解だったのだがいきなり動かされるとビックリする。
(『し、白鳥さん落ち着いて!そうだ、目を瞑ればいいんですよ!目を瞑っていれば、敵を見なくて済むんですし!』)
(『そ、そうね!と、とと、とりあえず早くあの虫野郎を倒しなさい!』)
(『分かってます』)
白鳥さんが目を瞑り、何やら小言で消えなさい消えなさいと言い始める。
うん、そこまで虫が嫌いなんですね白鳥さん。
いくら完璧超人でも、嫌いなものがあるって分かりました。
「とりあえず、さっさと終わらせるか!」
白雫を強く握りしめ、敵ISをにらむ。
こちらを窺いながら、慎重に動いている。
敵ISの背後に鈴がおり、まさに前門の虎後門の狼だがあのISの回避力なら間違いなく俺たちの攻撃を避けられる。なら、攻撃を当てるのにどうすればいいか。
それは圧倒的なスピードと、鈴との連携力!
「いくぞ!!」
「いくわよ!」
鈴と同時に動き出し、敵ISはその場を動かなかった。
動いたのは一番早く敵ISの近くにいた鈴が青竜刀を振り上げた時だった。
「なっ!?」
本来、敵ISの肩には前方だけにしかビーム兵器はついていないはずなのに鈴が迫ってくる後ろ向きの状態からレーザーが放たれたのだ。
「鈴、無事か!」
「なんとかっ!でも、エネルギーが……………」
「くっ、ここは任せろ!」
まさか後ろ向きの状態から撃ってくるとは思わないだろう。
俺でも予想できなかったのだから。鈴の表情から察するに、ビームを受けたさいにエネルギーをかなり持っていかれたのだろう。俺は一度も攻撃を受けていないので、シールドエネルギーは未だ三〇〇以上も残っている。
エネルギーに余裕のある俺は敵ISに向かい、鈴が衝撃砲で応戦できる隙を作り出す。
「っ………まだだ!」
敵ISは蜘蛛の様になってから動きが早くなったのは言うまでもないが、面倒な攻撃ばかりしてくる。接近戦を持ち込めば素手、そして空中で蹴りを放ち、スラスターでバランスを取って手首にブレードで攻撃する三段活用。
おまけにビーム兵器までついてくるから四段活用になるんだがな。
「つうかなんで動きが見えてる様に動いてんだ、此奴!頭ぶっ飛ばしたのに、俺たちの居場所を的確に!」
「知らないわよそんなの!って、きゃぁあああああ!?」
「鈴!?」
鈴が敵ISの素手による攻撃をまともに受け、吹き飛ばされる。
シールドエネルギーは健在でも、いま鈴の所に向かわれたら拙いっ!
相手の砲撃をうけてしまったら、鈴が。
『………………』
(あれ?)
「と、止まった?」
何故か敵ISの動きが止まり、何やら右往左往としている。
鈴が僅か数十メートル先にいると言うのに、攻撃することなく鈴を探している様に見える。どういうことだ?なんで、攻撃しない?
しかし、俺の視線がある物を取られると頭の中に衝撃が走った。
「―――――――なるほど。そういう事だったのか!」
「一夏、どこに行くの!?」
「鈴、少し待ってろ!」
敵ISから距離を取り、別方へと飛んでいく。
向かう先は敵ISでもなく、鈴が居る場所でも無い。
そう、向かう場所はただ一つ。
――――――――――――敵ISの頭がある場所だ!
「俺が両断した時、頭が丁度俺と鈴、アリーナの殆どを視界に入る位置に飛んだ。もしも敵ISの頭が未だ機能しているなら、頭が無いのに俺たちの居場所を特定したのは頷ける。鈴が攻撃されなかったのは、敵ISの視線の外に居たからなんだ」
「そ、そうだったんだ………………」
「つうわけで、さっきのお返しだ!頭(ボール)を相手の敵IS(ゴール)にシュゥゥウウウウウ―――――――ッ!!」
俺は勢いよく助走を付けて、敵ISの頭目掛けて蹴りを放つ。
敵IS頭は勢いよく回転しながら胴体の方へと飛んでいき、勢いよくぶつかり敵ISは仰け反ってしまう。
「超!エキサイティン!」
「鈴?」
「いや、なんか言わなきゃならないかなぁって思って。それよりも今よ!」
「おう!零落白夜、起動!」
白雫が蒼白い光を纏い、俺は敵ISへと瞬時加速を使い、突撃した。
瞬時加速………空間にエネルギーの流れを溜めてからそれを一気に点火させ、急加速を行う技能である。
白鳥さんが色々な外部のデータを集めてきてくれたお蔭で習得することが出来た。
何故か千冬姉に驚かれたのが分からなかったけど。
そして瞬時加速により、敵との間合いは5メートルもなかった。
俺は白雫を大きく振り上げ、そのまま敵ISを真っ二つにするように剣を胴体に突き立て、そのまま前方に加速する。
「俺の―――――――勝ちだァァアっ!」
ズドオオオオオオオオオオオオンッ!!
背後にいる敵ISが爆発し、白式が敵ISは活動停止したとの報告が届く。
少し苦労したが、白鳥さんの指示なしで勝つ事が出来た。
しかし、これは俺一人の勝利ではない。
鈴がいなかったら、ここまで戦えないかもしれない。鈴が居てくれて良かった。
「か、カッコいい……………」
「鈴?何か言ったか?」
「ふぇ!?あ、え、えっと、その…………よくやったわね、一夏!まぁ、私の援護のお蔭ってのもあるけど、よくやった方じゃない!」
「そうだな。鈴が居なかったら、たぶんかなり苦戦してと思う。サンキュー、鈴」
「ちょ、ちょっといきなり何すんのよ!人の頭に気安く触るんじゃないわよ!」
「っと、悪い。思わずな」
なんだかついつい鈴の頭に手を置いてしまった。
鈴本人は嫌がっていたようだから、これから気を付けないと。
もし他の人も鈴みたいに頭を撫でられるのは嫌だろうし。
「…………そ、そういうのは、ちゃんと本人の許可を取りなさいよね」
「なんか言ったか?」
「なんでもない!それよりも、早くピットに戻って―――――」
『一夏ぁ!男なら、男ならそのくらいの敵に………あれ?』
「………………何やってるの、あれ?」
「さぁ?箒ぃ~!とりあえず終わったぞ!」
『~~~~~~~っ!』
ブツンとマイクを切り、顔を真っ赤にさせた箒は何処かへ行ってしまった。
何やってんだ、アイツ?態々中継室まで来て、何がしたかったんだろうか?
とりあえず敵ISは倒したんだし、白鳥さんに教えてやらないと。
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敵ISを仕留めた織斑一夏達は、その後保健室へと直行し怪我がないのか検査されるのであった。外傷はどこまなく、健康そのものだったためスムーズに終わった。
そして現在、アリーナの外にある人気の少ない場所のベンチに座っている。
(『酷く屈辱だわ』)
(『はぁ………』)
(『二度もこの私、冷静沈着、文武両道、容姿端麗である完璧美少女のこの私が貴方の前で恥辱な姿を晒したのが屈辱ですわ』)
(『もう忘れましょうよ、あの事は。白鳥さんだってあのISのことなんか思い出したくないでしょ?』)
(『当り前よ。誰が好き好んであんな美的センスの欠片の無い害虫ISを思い出さなきゃならないのよ。私が抹消したいのは恥辱の姿が脳裏に焼き付いているであろう貴方の頭よ』)
(『あのぉぉ………それって記憶の方なんでしょうか?それとも頭自体の方なんでしょうか……………?』)
(『勿論頭自体よ』)
(『そんなに俺にあんな姿を見せたくなかったんですか!?』)
当たり前よ。というか、貴方じゃなくても誰にも見せたくないわよ。
この完璧な私が蜘蛛、もしくは虫如きでビビるなんて恥ずかしくて死にたくなってくるわよ。死ねないけどね。
(『で、でも!俺は別に気にしませんよ!白鳥さんにも苦手なものがあるって知れたんだし、それに……………あんな白鳥さん、可愛いかったですし』)
(『貴方、明日の実習訓練覚悟しておきなさいよ。案山子にしてやるんだから』)
(『マジですいません失言でした!だから許してください白鳥さん!』)
全く、この男は考えなしに可愛いなんて言うじゃないわよ。
それに私は可愛いは卒業しているし、美しいと言いなさい美しいと。
可愛いは大抵高校から卒業するものなのよ。
(『あの、それで白鳥さん………………約束の件なんですが』)
(『無しよ。そもそも相手に勝ってないし、優勝すらしていないじゃない』)
(『敵が乱入してきたんだから仕方ありません!?』)
(『煩いわね。兎も角何を言っても無しは無しよ。私は自分の意見は覆さない。そんな女なのよ』)
(『そんにゃ………………………』)
『にゃ』とか、可愛いく言うんじゃないわよ気持ち悪い。
少しは自分の見た目と性格を考えなさいよね。腐った女は豚の様に歓喜するでしょうけど、私は別にそういう属性は持ち合わせていないから。
(『まぁ、私の助言無しで、ほぼ一人で敵ISを仕留めたことは褒めてあげるわ。だから次は、諦めないで頑張る事ね『織斑君』』)
(『あ……………………はい!』)
全く、嬉しそうな顔をしちゃって。
そういう顔は好きな子に見せるものよ。
ホント、天然が此処まで行くと神の域よね。
この男に惚れている世の女たちはさぞ苦労しているでしょう。
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襲撃者との戦いを経て、IS学園の空は暗くなり星が浮かんでいた。
今日は色々あって大変だった。
襲撃者が襲ってきて、大会が滅茶苦茶にされて結局大会は今日で終了との事。
鈴との約束もパァーになったのだが、鈴はそれほど気にしていない様子だった。
(でも気になるな。あの時、どういう意味を込めてあんな約束したのか)
白鳥さんの言う通り告白の意味を込めての約束だったのだろうか?
それとも他意はなく、ただ食べてほしいという約束だったのだろうか?
考えるだけで分からなくなってくる。謎は深まるばかりか。
しかし、今はそれよりも―――――――――――――
(『すぅ…………………すぅ……………………』)
(寝てれば普通に可愛いなぁ、白鳥さん……………)
普段はツリ目で高飛車なのに、寝ている姿はまるで小さい天使そのものでる。
服装はパジャマでなく私服姿なのが残念だが、やっぱりパジャマ姿を見てみたい。
(………………白鳥さんに、少しだけ認められたとき嬉しかったな)
白鳥さんとの約束、白鳥さんの心に残る戦いを見せれば名前で呼んでもらえる約束だった。けど、襲撃者のせいで大会はうやむやになり、それが無しになってしまった。
おのれ許せぬ、襲撃者。せっかく白鳥さんに名前を呼んでもらえるチャンスだったのにっ、クソっ。
この虫野郎!(某デュエルキング)
とりあえず落ち着いた。
あの虫野郎のせいで大会が有耶無耶になったのは事実だが、少なくとも悪い事ばかりではなかった。
白鳥さんに苗字で呼ばれるようになった時は、凄く嬉しかった。
(…………………あれ?俺って白鳥さんのこと、好きなんじゃね?)
俺の理想、まぁタイプの女性は年上だし、性格は少し厳し目でしっかりしている人。
正しく白鳥さんと当てはまる俺の理想像。
それに考えてみれば、白鳥さんと出会った時から少し意識し始めていた気がする。
稀に見せる笑顔や言葉にドキッとしたり、白鳥さんが急に離れだすと言い始めた時は俺、かなり動揺したし、完璧超人でも苦手なものがあると知ったときは可愛いと思ってしまった。
(『ううぅんっ……………んっ…………………』)
(や、やっぱり俺って白鳥さんのことが………………好きなのかな)
だとすれば、この胸の高鳴りの理由に繋がる。
俺は…………白鳥さんのことが好き。
「白鳥さん………………」
天使の様な寝顔。
身長は鈴より少し高めで、箒よりもある大きな胸が強調されている。
寝る態勢が体を丸める様に蹲っているので本当に可愛らしい。
(『んっ、んんんぅぅっ…………………しになさい………織斑君』)
(なんか、先が長そうだな……………)
絶対に俺のこと、異性として見てないもん。
恥ずかしい姿を見られて赤面していたけど、絶対に俺の事を異性として見ていない。
なら、俺がやる事は簡単である。
白鳥さんに異性として見てもらえるように男らしくなり、強くなる事。
何度も助けてくれた白鳥さんを、今度は俺が助けられるように。
「好きです。白鳥さん」
(『んっ……………くぅぅ………………』)
絶対に白鳥さんを落としてみせます。
結婚していた、年齢が離れている、幽霊だからなんて関係ありませんからね?
とりあえず少し早いが、俺はこれからどうやって白鳥さんにアプローチしていくかを自然と眠りに付くまで考えるのであった。