決戦はバレンタインデイ☆   作:クリリ☆

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いたずら心

 

今日は2月14日、バレインタインデイ。それは女の子が、好きな男の子にチョコレートをプレゼントして愛を告白する日である。そんな誰もが知っている風習を、知らない者が約2名いた。この物語は、そんな常識外れな少年の騒動を描いたものである。

 

その前日の2月13日の夜、ふと表遊戯が呟いた。

 

「あ~あ、明日はバレンタインデイかあ。今年は誰かチョコくれないかなぁ」

 

すると闇遊戯が表遊戯の心の内に言った。

 

『相棒、なんだバレンタインデイってのは?』

 

「えっ、もう一人のボク、バレンタインデイを知らないの!?」

 

『ああ。そんなモン聞いた事もないぜ』

 

「それはそうだよね。確かキミは、古代エジプトの(ファラオ)だったんだっけ。いい、バレンタインデイっていうのは…」

 

遊戯は闇遊戯にバレンタインデイの説明しようとしたが、ふと悪戯心が湧いた。

 

(そうだ。もう一人のボクをちょっとからかっちゃえ♪)

 

「…バレンタインデイっていうのは、しもべから主人に、命の象徴であるチョコレートを差し出して、忠誠を誓う特別な日なんだ」

 

『忠誠を誓う特別な日? なるほど、初めて知ったぜ。それにしても日本にはそんな儀式があるなんてな』

 

「うん。チョコレートには心臓(命)の象徴であるハート形の物が多いんだよ」

 

『なるほど。自分の心臓を(あるじ)に奉げる訳か』

 

「うん♪」

 

闇遊戯の遊戯に対する信頼感は絶対のものがあった。こうして遊戯の冗談を全く疑いもせず、すっかり信じてしまった。しかしこの遊戯のちょっとした悪戯心が、後に大騒動を引き起こしてしまうのだった。

 

そして翌日の14日。バレンタインデイの意味を知らないもう一人の人物が童実野高校にいつものように通学してくる。その人物がいつものように昇降口で自分の下駄箱を開けると、中から大量のラッピングされた包みが転がりだしてきた。

 

「な、なんだこれは!? 一体何が起きたというのだ…」

 

その人物とは海馬だった。海馬は自分の下駄箱から出てきたおびただしい量の包みを見て、ただただ呆然とするばかり。しかもその量は、明らかに下駄箱の容積を越えた莫大な量であった。

 

(オレの下駄箱は異次元にでも繋がっているのか。そんな、非ィ物理的な…)

 

そう思いながらも海馬は包みを幾つか剥いでみる。するとそれらの中からチョコレートが出てきた。

 

「なんだこれは。どれもチョコレートばかりではないか!? 確か昨年の今頃もこのような怪現象があったような。う~む…」

 

(それにしてもチョコレートなど油脂分と糖分の固まりに過ぎない。過剰な摂取は健康を損なう危険がある、いや、むしろ毒同然の物体だ。もしやこれはライバル会社の陰謀か!?)

 

海馬が思いを巡らせていると、そこに城之内が駆け込んできた。

 

「ヤベえ、遅刻ギリギリだぜー!」

 

その城之内の顔を見て、海馬はふと思った。

 

(そうだ、凡骨ならこの世からいなくなってもさしたる問題は無いだろう。このチョコは城之内にくれてやるか!)

 

「おい城之内、貴様に良い物をくれてやる」

 

「ん、何だよ?」

 

「チョコレートだ」

 

「はぁ!?」

 

「だからチョコレートだ!」

 

すると城之内は顔を引きつらせる。

 

「馬鹿野郎! ンなモン受け取れっか」

 

「何だと貴様、オレの気持ちが受け取れんと言うのか!」

 

「分かったぞ。もしやモテないオレへの当て付けか。どうせオレは誰からもチョコなんかもらえないぜ~(ToT)」

 

すると城之内は猛ダッシュでその場を走り去ってしまった。

 

「チッ、訳が分からん。こうなったらこいつを誰にやるか」

 

(遊戯はオレのライバルだ。いなくなったらつまらん。しかし、もう一人の遊戯ならいなくなってもかまわんな。よし、決定だ)

 

恐らく100個以上はあるであろうチョコレートを、海馬は両手いっぱいに抱え、教室へ向かった。その姿は何とも異様だった。途中、擦れ違った生徒達が海馬を見てヒソヒソ話を始める。しかし海馬は、そんな事は全く気にせず、何とか教室に着くと、すぐに遊戯の席に向かった。

 

「遊戯、いるか…」

 

「あ、海馬くんおはよう。どうしたのそれ?」

 

すると海馬はチョコレートの山を遊戯の机の上に降ろした。

 

「ふぅ、やれやれだ…」

 

「あのう、海馬くん?」

 

「ん、ああ。遊戯、こいつはチョコレートだ、受け取れ」

 

「え、ええ!?」

 

「あのう海馬君、意味がよく分からないんだけど」

 

「ああ、気にするな。オレの気持ちだ」

 

「でも、ボクたちは男同士だし、コレはマズイよ…」

 

「なんだと? 別に性別など関係なかろう」

 

「ええー! 海馬君駄目だよ~」

 

遊戯は必死に受け取るのを拒否する。しかし、ふと闇遊戯が遊戯の心の中に話し掛けてきた。

 

『相棒、チョコレートを差し出すのはしもべが主人に忠誠を誓う証しなんだろ? せっかく海馬がオレ達に忠誠を誓おうって言ってるんだ。こいつを受け取らない手はないぜ!』

 

「え、ええー?!」

 

『相棒、ここはオレが替わるぜ~vV』

 

「え、ちょっと待ってよもう一人のボク~」

 

しかし遊戯の返事を待たず、闇遊戯の人格に替わってしまった。

 

「フフフ海馬、こいつはありがたくいただくぜ」

 

海馬は一瞬困惑したが、すぐに遊戯の人格が入れ替わった事を理解する。

 

「遊戯か」

 

「ああ。しかしまさか貴様がオレに忠誠を誓うとは思わなかったぜ」

 

「なんだと?」

 

「なにって、今日はバレンタインデイだぜ」

 

「バレンタインデイだと!?」

 

(う~む、聞いた事はあるような気がするが、一体何の日だったっけ…)

 

すると遊戯は怪訝そうな顔つきで海馬に尋ねた。

 

「どうしたんだよ海馬。まさかお前、バレンタインデイを知らないんじゃないだろうな?」

 

「な、何を馬鹿な!? オレがバレンタインデイを知らぬ筈がなかろう…」

 

海馬はとっさにそれを否定してしまう。すると遊戯は無邪気なカオでニッコリと微笑む。

 

「そうだよな。しもべから主人に、忠誠の証しであるチョコレートを差し出す特別な日を、知らない筈ないよな」

 

それを聞いて海馬は愕然とする。

 

(なんだと。チョコレートは忠誠を誓う証しだとォ!?)

 

海馬は半分涙目になってしまった。

 

「どうしたんだよ海馬? まさか本当はバレンタインを知らなかったんじゃないだろうな?」

 

遊戯は疑い深く海馬の顔を覗き込む。しかし海馬は意地っ張りな性格が邪魔をして本当の事が言えない。

 

「ば、馬鹿を言え…。オ、オレは貴様に…、ち、忠誠を誓ったんだ…」

 

「でも何か涙目だぜ。本当は無理してないか?」

 

「そんな事はない! オレは貴様に忠誠を誓ったんだー(ToT)」

 

もはや後には引けない海馬は、遊戯の“しもべ”になる事を高らかに宣言してしまった。そして、これが海馬の苦難の始まりだった。

 

 

 

続く☆

 

 

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