「貴様、謀りおったな!」
「悪かったな海馬。そんなつもりじゃなかったんだけどな」
「ふざけるな! 何がチョコレートは忠誠の証しだ!」
「ま、オレもさっきまで本当の事を知らなくてさ」
「知らんで済んだら警察はいらんわ!」
すると遊戯が逆ギレしてしまう。
「何だよ。そもそもお前がバレンタインデイを知らなかったのがいけないんだぜ! 知らないんだったら最初から知らないって言えよな!」
「黙れ! オレは世間の慣習に関心がないだけだ! 貴様はオレを怒らせた。ここを貴様の墓場にしてくれるわ!」
「海馬、どうやらオレと貴様は永遠に闘う運命にあるようだな」
「遊戯、デッキは持っているな。
海馬は自分の席に戻って、デッキを持ってこようとする。しかし闇遊戯がそれを呼び止める。
「なあ待てよ海馬。いつも
「ほう面白い、いいだろう。で、そのゲームとは何だ?」
「フフ、チョコレートを使ったゲームだ。幸いチョコレートは山の様にあるからな。今回のゲームにはこのチョコレートを使用する事にするぜ」
「チョコレートを使ったゲームだと?」
「ああ、ルールは簡単。チョコレートを互いに積み重ねていき、積めなくて崩してしまったプレイヤーの敗北とする。これでどうだ?」
「ふむ、随分と単純なルールだな。少々面白みに欠けるのではないか?」
「フフ、シンプルなゲームほど人間性が表れるものさ。このゲーム、お前が思ってるほど簡単には終わらないぜ。覚悟をするんだな」
「いいだろう。ただしオレがこのゲームに勝った場合、貴様にはしかるべき報いを受けてもらう事になるぞ」
「フフフ、そのセリフはオレに勝ってから言いな!」
「ふん、ならばゲームを始めようか」
「ああ。じゃ、まずは邪魔な包装紙を取り除くぜ」
「うむ」
闇遊戯と海馬は、大量のチョコレートの包装紙を剥がし始めた。
二人はバリバリと無造作に包装紙を剥ぎ取っていく。その光景の異様さに、いつの間にか周囲にギャラリーが集まりだした。
「チッ、これは見世物ではないのだがな」
「気にするなよ海馬。これはオレと貴様の真剣勝負だからな」
そうして包装紙を剥いでいると、闇遊戯がふと歪んだ形のチョコレートに出くわした。
「なんだコレは、自作した物か? ずいぶん不格好だな。これじゃゲームに使えないぜ」
「ならばそいつはゲームから除外だ。端の方にでも放っておけ」
「ああ」
闇遊戯はチョコレートを、破り捨てた包装紙の山の中に投げ入れる。しかし狙いが定まらず、その手作りチョコレートは床をコロコロと転がり出してしまう。
「あっといけない。チョコレートが転がっちゃったぜ」
遊戯がチョコを拾おうと、転がった方向を振り向く。するとチョコは、ギャラリーの足に当たって止まっていた。そしてそれは杏子の足であった。
「あ、杏子。すまないがそのチョコを拾ってくれないか?」
「……」
しかし杏子は何も答えない。
「ん、どうしたんだよ杏子?」
すると杏子は、今まで闇遊戯が見た事もない程恐い顔で怒鳴り始めた。
「……遊戯、あなた最低よ!!」
「えっ、一体どうしたんだよ杏子?」
「どうしたじゃないわよ。信じらんない!」
「なんだよ? だから何がだよ?」
「何がじゃないわ! あなた達がゲームに使おうとしてるそのチョコレート、その一つ一つに女の子のどんな想いが込められているか分からないの!」
「杏子……」
「それに遊戯だけじゃなく、海馬君まで一緒になって。女の子から男の子に告白するって事が、どれだけ勇気がいるか分からないの!」
「真崎……」
闇遊戯と海馬は何も言葉が出て来ない。ただ、自分達のやろうとしている事の軽率さを思い知らされた。すると杏子はそのままの勢いで遊戯に言った。
「わたし、遊戯にチョコレートあげようと思ってたけど、止めるわ!」
「えっ!?」
すると杏子は、自分の鞄からチョコレートを取り出すと、そのまま窓まで駆けていき、思いっ切りそれを窓から投げ捨てた。
「遊戯のバカ!」
「杏子…」
すると杏子はそのまま教室を飛び出してしまった。しかし闇遊戯はそれを追う事ができず、ただ呆然と立ちつくす。
「杏子、すまない…」
そして海馬の方に振り向いて言った。
「海馬、すまないがこのゲームは…」
「ああ、何も言うな遊戯。この勝負はひとまずお預けだな…」
「すまない海馬…」
「いいや、オレも少し軽率過ぎたようだ。このチョコはオレが責任を持って、全てありがたくいただくとしよう…」
「食べ切れるのか?」
「まあな。それにモクバは甘い物が好きだ。二人で食べれば何とかなるだろう」
「そうか、健闘を祈ってるぜ…」
「フン、貴様もな…」
そうして二人は包装紙とチョコレートを片付け始めた。
続く☆