「ナガノⅡか、今度は長生きさせてやりたいが」
「初代ナガノも結構な艦齢でしたけどね」
「じゃあ今度もだ」
ジャブローの地下ドックで艤装を行われているのは、MS運用のために改修が行われたサラミス級だ。艦底部に補給や整備のための設備が用意され、MSを固定して作業を行うことが出来る。
「艦首を丸ごと格納庫とカタパルトにするのはいつからだったか、ZZ…というか見たのが昔のことだから記憶が曖昧だな…」
「どうされました?」
「気にするな、独り言だ」
かなり量産を前倒しにしてMSも準備を始めており、あのジムが実戦投入を待っているというのは心強い。またボールに関しては既に完成しているようで、艦首にボール用の露天ハンガーを装備している船もある。
「ビンソン計画万歳だな、この数の艦隊がここまで短期間に用意されるとは思わなかった」
「今度はMSも交えての戦闘が可能です、前みたいな無茶はせずに済むかもしれません」
「どうだか…」
初代ガンダムの出来事なんて細かく覚えていない、でも08小隊は何度か見返していたっけか。そんなことを思いつつ、そういえば初代ガンダムにて物語の主軸となる母艦ホワイトベースはどうしているんだろうかと想いを馳せる。
「なんか変な形の船があるだろ、アレどうした?」
「いつのまにかドックから一隻いなくなってましたね、残された方が寂しそうにしてました」
「…二隻あるのか」
よくよく考えるとペガサス級の一隻目はネームシップとしてペガサス級強襲揚陸艦ペガサスになるはずだ、ホワイトベースと名が付く時点で一隻目ではない。
「スフィンクスみたいで可愛いんですよ」
「お、おう」
相変わらず少し変な感性の副官の言葉に戸惑いつつも、物語が動いていたことを知る。大損害に次ぐ大損害で消耗し切った連邦軍残存艦隊は英雄を失うわけにはいかないらしく、暫く宇宙には上げてもらっていない。
「忘れていましたが艦長、こちらを」
「なんだ急に」
そう言って手渡されたのはナガノⅡに着任予定のMSパイロット達のリストだった、殆どがこの船への配属を望んでいると追記されている。そんなに人気なのかと苦笑したが、彼らの経歴を見てハッとした。
「…ルウムの時に回収した戦闘機パイロット達か」
「以前ナガノにてボールを操縦していた者達も訓練を終えて復帰するそうです、見知った顔が戻って来ますね」
「はは、贅沢なドリームチームだな」
ここまでされるとなればMSの配備は確実だ、どうにも気に入られたらしい。広報の仕事も引き受けた甲斐があった、派閥に引き込もうとしてくるのは勘弁してほしかったが。
「だが暫くの間は待機か、地上の戦況が動けば仕事だな」
「こうも膠着している間は難しいですね」
「船がドックの中に居る間に船内での訓練を行っておきたいが、重力下では良い訓練にならんだろうな。それにMSの整備班が実機で訓練を積めていないのも問題か」
この数ヶ月後に戦況は瞬く間に変わり続け、地上には連邦軍のMSすら現れるようになっていく。そしてついに始まった一大拠点攻略作戦の標的はオデッサとなり、大きな被害を出しつつも連邦軍は勝利を収めることとなる。
ー
ーー
ーーー
オデッサの攻略戦が成功を収めたのとほぼ同時刻、ルナ2からサラミス級2隻の小規模艦隊が衛星軌道に向かっていた。
「打ち上げられてから初めての任務がこれとはな、ルナ2勤務も悪くなかったが…」
「オデッサから打ち上げられたHLVは先行した艦隊が捉えています」
「回収される前に撃ち落とせとは酷な話だが、助けてやれる余裕も何も無いからな。MSを発艦させろ、僚艦にもボールを出せと伝えてくれ」
「全機発艦!繰り返す、全機発艦!」
なだらかな円錐形のカプセルには地上から脱出して来たジオン軍の兵士と兵器が収まっており、一網打尽にするにはまたとない機会と言えた。既にボール二個小隊が交戦を開始しており、反撃もままならない相手に対して一方的な戦いを展開しているようだ。
「敵パトロール艦隊の到着は?」
「およそ10分と見込まれています」
「出来る限り敵の戦力を削げとのお達しだが…」
到着した宙域には大量のHLVが漂っており、その全てがオデッサから逃げるべく宇宙へと飛び上がって来た物だということがすぐにわかった。既に事故による爆発も幾らか見受けられるが、その凄惨さを超える虐殺が今から始まろうとしていた。
「…やる他ないか、艦載機全機発艦!」
「はっ!」
艦底部の露天ハンガーから発艦したジム一個小隊並びに、随伴艦であるサラミス級モガミからボール二個小隊が切り離される。射線を区切るため、艦載機は上方から砲撃を避けつつ攻撃を行う作戦となっていた。
「対空機銃も敵HLVに向け射撃を行え、外装は脆い」
「観測装備型ボールからのレーザー通信開通、弾着観測射撃の用意完了しました!」
「主砲、撃ち方始め。全くもって悪趣味なピンボールの幕開けだ」
爆発に流されたHLVが他のHLVと衝突し爆散、中に居た兵士やMSが例外なく投げ出される。陸戦用のザクは宇宙で必要な姿勢制御用の推進器が足りておらず、抵抗という抵抗も出来ずにただもがくだけに終わっていた。
「敵艦来ます!艦種不明…艦影から見て恐らく輸送艦と思われます!」
「回収に来たか、思ったよりも早かったな」
「どうされますか、艦長」
「あのサイズならMSを抱えていても不思議ではないか。艦を敵に向ける、警戒を続けてくれ」
船を動かす直前に行き掛けの駄賃とでも言わんばかりのミサイル斉射、漂うHLV群のど真ん中で爆発させる。非人道的に思えるが、コロニー落としのお陰でその手のハードルは下がりに下がっていた。
「…肝が据わった船だな、パプア級とは毛色が違うが」
「敵艦MSを出しました、数2…いや3機!ザクではありません!」
「ザクじゃない、ということは新型か?」
「光学センサで捉えました、モニタに出します」
表示されたのはザクとは違う青とも紫とも取れる塗装に身を包み、背中に大きな単発の推進器を載せたMSだった。これには見覚えがある、何故この状況になってまで思い出せなかったのだろうか。
「…ヅダだ、先日の放送にもあった通りザクとのコンペで負けた開戦よりも前の機体だよ」
「敵はそんな旧式を引っ張り出して来て何をする気なのでしょうか」
「アレを舐めるな、加速性能で言えばジムすら負ける。艦載機に至急連絡だ、敵MSとの格闘戦には付き合うなと伝えろ!」
確か前世にて動画サイトで無料公開が行われた際に見たことがある、ジムを手玉に取って自分を犠牲にジム一個小隊が爆散するのだ。初陣でパイロットとMSを失いたくはない、ここは下がらせるべきだろう。
「あんな機体を使う以上相手は手練れだ、MSは下がって艦隊の直掩に付け。HLVの破壊は艦砲とボールにて続行する」
「至急伝達します!」
「初陣で未帰還機を出させるわけにはいかん、それにこの船も完成早々沈められたくは無いだろうしな」
発艦したヅダは三機だが、積極的に攻撃を仕掛けるべく動いているのは一機のみだ。残りの二機は救助を進めているためすぐさま加勢することは出来ないだろう、この状況ならば数で押せる…と思いたい。
「陣形を組んで盾を構えろ、弾幕を張って追い返す」
皆様のお気に入り登録と評価付与のお陰で日刊ランキングに載ってました、ありがとうございます。感想も何度も目を通してます、意外と評判良いなぁ…びっくりだぁ…