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「…青いザク?」
ナガノⅡから発艦したジム一個小隊はHLVの上から攻撃を仕掛けていたが、接近してくる一機のMSを迎撃するべく武器を構え直した。
「ザクより速い、新型か!」
『艦載機に伝達。敵MSはジム以上の機動性を有する、格闘戦は避け艦隊の直掩に戻れ。繰り返す…』
「…だそうだ、奴に付き合ってやる必要は無い!後退するぞ!」
敵機の動きは単純な機体性能だけでは片付けられない巧みさがあった、訓練を受けたとはいえ実戦経験に乏しい今の部隊では太刀打ち出来ない。
「敵機追ってきます!」
「船とボール部隊に支援を要請、砲撃で気を散らす」
通信を受けたボールはHLVの破壊に弾薬の殆どを使っていたが、隊列を組み直して迫るヅダへと砲撃を行った。当たることは無かったが、回避を行なわせたことで距離が離れる。
「弾幕を張れ、あと8秒」
「敵機発ぽ…うわッ!?」
盾への攻撃は有効打にならないと踏んだ敵機は隠し切れない脚部へ武器を向け、バズーカを装備していた一機を損傷させた。そして被弾した所に接近し、腕を前に向けた。
「ファウストッ!」
「不味い回避を…三番機!ペダルを踏み込め!」
ジオン軍の使い捨てロケットランチャーが放たれ、損傷した機体へと迫る。盾があろうとも防ぎ切れるか分からないが、前提としてMSというのは機動兵器だ。敵機の攻撃は避けるものである。
「上昇ォ!」
一気に背面のノズルを噴かせ、機体を上にズラす。その結果上半身には当たらず、元々損傷していた脚部へと命中した。
「ぁあ゛っ!?」
爆発の勢いにより回転しながら機体は飛んでいくが、動力炉が爆発する様子はない。運の良い奴が乗っていたようだ。
「吹っ飛んだか?」
「下半身を丸ごとやられましたね、ボールが回収に向かいました」
「出撃早々一機喪失とは…ままならんな」
ルウムから生還したパイロット達ということもあり、大きな混乱もなく空いた穴を埋めるように移動する。その動きは固く、横に並ぶ姿は戦列歩兵を彷彿とさせた。とすると対するヅダは騎兵だろうか、突っ込んで来れば掻き回されるのは間違いない。
「だが時間は稼げた」
『敵MSに対する対空戦闘を実施する、MSは射線上から退避せよ』
HLVへの砲撃を行っていた筈のサラミス級がジム達の背後に現れ、対空機銃を一斉に放った。随伴していた機関砲装備型のボールも同時に攻撃を行なっており、正に鉄の暴風と表現出来る有様だ。
「そろそろジオンのパトロール艦隊が来る、撤退の準備を始めるぞ」
『艦載機は艦底部整備デッキに着艦して下さい、機体搭載後にはこの軌道から離脱します』
「着艦後すぐに離脱か、予定より早いな」
『敵MSが先行して来る可能性があります。それに目標であるHLVは艦砲射撃とボールの働きにより攻撃可能な範囲の物は粗方破壊しました、撤退に足る戦果は既に挙げています』
ヅダは対空砲から逃れ、他の艦隊から放たれたジムとボールに目標を切り替えた。先行していた艦隊の艦載機はどうなることやら、少々不安が勝る。
「損傷機の回収はどうなっている」
『モガミの搭載機が回収しました、パイロットは無事だそうです』
「アレで無事か…」
光学センサでヅダを見れば、残っていた別部隊のジムを蹂躙していた。核融合炉が爆発する際の閃光は凄まじく、撃墜されたのがよくわかる。
「普通はああなるぞ?」
「ありゃ助かりませんね」
「艦長の援護と判断力に感謝だ、まだアレには勝てん」
ルウムで救われた彼らからすればオデッサ上空での有様に少々思う所があったが、敵と自分達を重ねても仕方がないと割り切った。
「地上の戦況が好転した以上これから忙しくなる、死んでいる暇は無い」
この後連邦軍は地上にて戦闘を有利に進め、ジャブローへの攻撃をも跳ね除け戦場を宇宙へと押し返す。ビンソン計画によって建造された大量の艦艇が宇宙へと打ち上げられ、宇宙艦隊は過去の規模を彷彿とさせるまでの規模に回復し始めていた。
またジムも艦隊と共に宇宙へと飛び立ち、戦力の中核を成すことになる。これにより経験豊富かつオデッサ上空にて戦果も挙げたナガノⅡの艦長は昇進が決定、サラミス級三隻とコロンブス級二隻を有する艦隊の長となるのだった。