サラミスと行く一年戦争   作:明田川

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ソロモンと閃光と

「…酷い光景だ、上手く行ったらしいな」

 

「敷設された反射板で構成されたソーラ・システムは問題なく稼働に成功、敵艦隊に打撃を与えたようです」

 

ソロモン攻略戦は連邦軍が有利に進めている、流石新兵器というべきだろうか。大量に配置された鏡によって集められた光はその矛先に膨大な熱エネルギーを生み、宇宙船程度簡単に蒸発させた。

 

「前線のMS部隊は?」

 

「既に接敵、艦載機が動力炉の爆発を観測しています」

 

「始まったな、どうなることやら…」

 

補給部隊の中でも一番前線に近い位置に配置された本艦隊は大きな危険が伴うが、急を要する案件に対応することに関しては非常に有利な位置に居る。特により後方まで自力で離脱出来ないほどの機体への対応や、前線近くで沈んだ船への救助活動などが挙げられる。

 

「だがまあ、それで仕事がなくなるわけではないか」

 

宇宙で漂流して死ぬことの恐怖は地球で生きて来た者にとって非常に大きく、前線のすぐ背後にて待機している人員の存在は士気の維持に不可欠だ。特にそれがルウムで幾多の人員を助け、MSと何度も交戦していながら生き延びた大ベテランというのは文字に出来ない影響力がある。

 

「敵機三!前線を突破、急速に近づく!」

 

「速度は?」

 

「MSの速度ではありません、MAと思われます!」

 

「対空戦闘用意、MS部隊を迎撃位置に」

 

早速のお出ましだ、この手の対艦攻撃にはMAの方が都合がいいのだろう。だがこれだけの戦力を預かっておいて即退場となれば部下が困る、エースが居ないことを祈りつつ船の向きを整えた。

 

「主砲は敵が射程距離に入り次第撃て、速度が乗る前に回避を行わせろ」

 

「了解!」

 

「スナイパーⅡへの冷却剤供給は?」

 

「既に完了しています」

 

「発射タイミングはパイロットに一任する、当ててみせろと伝えておけ」

 

コロンブス級の甲板には膝を突いた状態で巨大なビーム砲を構えるMSが待機しており、接近してくるMAの噴射光を頼りに照準を合わせている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「敵MAの識別出ました、ビグロです!」

 

「射角は狭い、MS隊は慎重に死角を取って戦え」

 

サラミス級の対空砲配置は上側に集中しているため船の向きを変えてやる必要こそあるが、三隻が纏まって同じ目標に攻撃すればそれなりの弾幕になる。それでも掻い潜ってくるのがMSやMAといった兵器だが、それならばこちらにも迎撃機が存在する。

 

「MS三個小隊に新鋭機まで用意されているんでな、ちょっとした活躍程度させてもらおうか」

 

練度の高さを見せつけるような対空砲火に少し怯んだ敵MA部隊に向けMS部隊が接近、前には立たず側面からの攻撃で撃破を狙う。

 

「敵MA一機撃破!」

 

新兵器の一つ、ビームスプレーガンは名前に反してかなりの威力があるようだ。敵の装甲を簡単に破り、動力炉を誘爆させて吹き飛ばした。

 

「先頭をやったか、これなら…」

 

コロンブス級からビームが伸び、動きが鈍った残りの2機を薙ぎ払うように数秒照射される。そうして輪切りにされたMAは爆発四散、艦隊の脅威は難なく去った。

 

「敵機撃滅、部隊を警戒シフトに戻せ」

 

「了解!」

 

「前線部隊が要塞内部への侵入に成功、制圧を試みるそうです」

 

「回収用のボールと護衛に第三小隊を付ける。敵が内部に注目しているうちに宇宙の奴らを回収するぞ、それも仕事の内なんでな」

 

内部にMS部隊が入り込んだということはそろそろ化け物のお出ましだろう、ビグザムとかいう名前だったはずだ。

 

「艦隊を要塞に近付ける、ビーム撹乱幕出せるか?」

 

「予備のパブリクが出せます!」

 

「前方に張ってくれ、要塞からの攻撃に備えつつ全力で職務を全うする」

 

全方位にビームをばら撒いてくる筈なので、ビーム撹乱幕で難を逃れるための準備をしておく。物理攻撃がどこまで効くかは不明だが、ミサイルだけが頼りになる。

 

「…と、突入部隊との通信途絶!」

 

「要塞内部に高熱源反応、何か来ます!」

 

「隠し玉でも用意していたらしいな、ビーム撹乱幕の発射は?」

 

「たった今完了しました、後少し広がるのに時間がかかりますが…」

 

「出来るだけ撹乱幕の背後に隠れられるよう他の艦を動かせるか、何か出て来るのならメガ粒子砲が怖い。対空砲を有するサラミス級は対空戦闘用意、ミサイルの接近に備えろ」

 

これで出て来るのが知らないMAであることが一番怖いのだが、そんなことは無いようだ。緑色の化け物は周囲のMSを纏めて吹き飛ばし、艦隊に吶喊した。そして記憶通りにビームを弾き、次々と第二連合艦隊の艦艇を沈めていく。

 

「なんですかアレは!?」

 

「呆けている場合か。急いで撹乱幕を盾にしろ、他の船も動けるな?」

 

「指示出します!」

 

流れ弾を撹乱幕が弾いたが、一際大きな爆発が視界に入る。第二連合艦隊旗艦であるマゼラン級タイタンが沈んだのだ、周囲には応戦していたサラミスだったものも漂っている。

 

「…れ、連合艦隊司令部との通信途絶です、まさか」

 

「旗艦タイタンが沈められたらしいな、砲撃戦用意」

 

「か、艦長!?」

 

「先程の砲撃が弾かれるのが見えただろう、奴にビームは効かない。ミサイルによる飽和攻撃で後退するための時間を稼ぐぞ」

 

「この距離でビームの光跡を…いえ、分かりました!」

 

ガンダムがなんとかしてくれるまで時間を稼ぐしかない、Iフィールドとか言うビーム兵器を無効化する装備がある以上お手上げだ。しかし相手もまたビーム兵器で武装している、撹乱幕を用意していたお陰で状況はまだマシだ。

 

「敵機から砲撃来ます!」

 

「光学センサの望遠で奴の姿を出せるか」

 

「やってみますがビームの光で…」

 

「頼む」

 

艦橋内のモニタに冗談だと思いたくなるようなデザインのMAが映し出されたが、下に向かって伸びた二本の足がどうにもシュールだ。

 

「…向こうの設計者は酸素欠乏症にでも罹ったのか」

 

「サラミス級全艦回頭完了、艦首ミサイルランチャーの指向終わりました!」

 

当たれば船が溶けて無くなるような攻撃が周囲に降り注ぐが、撹乱幕がそれを辛うじて受け止める。撹乱幕はアレが最後だ、これ以上は正面から撃ち合えない。

 

「敵MAに接近する機体が居ます!」

 

「懐に潜り込む気だな…ミサイル斉射、突入する機体を援護しろ」

 

放たれたミサイルは半数ほどがビグザムの上半身側面に命中し、粒子砲の幾つかを潰した。その隙を突いて大型の宇宙戦闘機とそれに乗ったMSが吶喊したが、敵が薙ぎ払うように動かした足が戦闘機に当たってしまう。

 

「敵MAに命中!」

 

「突入した味方機が攻撃を受け…いや、アレは」

 

MSは難を逃れたらしく、ビームサーベルを相手に突き立てる。しかし大きな図体では致命打にならなかったのか爆発する気配はないかに思われたが、少し経ってから動力炉がその力を解放した。

 

「デカブツに蹴られた機体は?」

 

「分かりません、爆発で流されたようで…」

 

「もはや敵に組織的な抵抗が出来る余力は無い、後始末にかかるぞ」

 

艦隊への被害は大きい上に、要塞内部に突入した部隊はビグザムに掻き回されてズタボロだ。ひとまず立て直す必要があるだろう、まだ要塞はもう一つ残っている。

 

「いつも通りの仕事だ、補給と整備以外でも忙しくなる」

 

「コロンブス級の医療区画は全力発揮可能とのことです」

 

「捕虜も出るだろうが…下手なトラブルは避けたい、馬鹿がやらかす前に武器を捨てさせて連れて来い。固定武装のある機体は放棄させるんだ、いいな」

 

ビグザムに乗っていたのがなんとジオン指導者一家であるザビ家の人間だったらしく、徹底抗戦を選ぶ者や潔く降伏する者など様々だ。

 

「どいつもこいつもジークジオン、ジークジオンと飽きないもんだ」

 

投降するために機体を捨てるジオン軍パイロットを見て、なんとも言えない気持ちになりつつ回収するように指示を出す。ジオン憎しで皆殺しにするような部隊で無くてよかった、そうすれば追い詰められた敵は死力を尽くした抵抗を見せていただろう。

 

「捕虜に関しては南極条約に則った扱いを保証する、降伏してくれ。こちら第201補給艦隊所属、サラミス級ナガノⅡ。繰り返す…」

 

戦争というのは碌でも無いものだ。

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