「なぁにが後方の補給拠点だ!コロニーレーザーで艦隊吹っ飛ばされちゃあ無理もないけどよォ!」
「敵機来ます!」
「右舷対空砲…はもう死んでるんだったな、左舷!」
手練れのザクが弾幕を掻い潜って放った攻撃によりサラミス級ナガノⅡは右舷に大きな損害を受けており、空いた穴を埋めるようにボールやジムが張り付いていた。
連邦軍は二つ目の要塞を前にして大きな痛手を負っていた。コロニーを丸ごと兵器に転用するというジオンの策により艦隊の幾分かと総司令を失い、そして講和の足掛かりも失った。
「要救助者及び損傷機の回収は?」
「粗方終わりました、どうにか下がれます」
「この場で我が艦隊が出来ることはない!手薄なフィールドに回り込んで艦のダメージコントロール及び艦載機への補給と修理を急げ!」
船を陣形の後方に下がらせ、ボール達が回収したジムをコロンブス級に収容する。相手もベテランから学徒兵まで様々で、周囲に居た艦船で無事なものは存在しなかった。
「艦載機が頑張ってくれたお陰でなんとかなってるな、MAが飛んできた時なんかは流石に沈むかと思ったぞ」
「スナイパーの腕に感謝ですね、これを」
「…水か、確かに喉が渇いていたことも忘れていたな」
「手薄なフィールドに回ったところで敵は居ます、補給拠点としての役割はもはや果たせるものではないと考えますが」
「ルウムと同じだ、今生き残っていて比較的後方で動いても許される俺達以外に誰が要塞付近で沈んだ船を助けてやれる。誰が要塞に擱座した機体を回収してやれる…」
曲がりなりにも補給拠点としては稼働しており、足りなくなった物はボールによるピストン輸送で無理矢理サラミスへと運び込んでいた。新鋭機を抱えた部隊ということで前線近くに出されてしまい、ご覧の有り様というわけだ。
「あの鏡が蒸発してなけりゃここまで死なずに済んだんだがな」
「艦長」
「…すまない、艦の状態は?」
「右舷の被害は大きいですが隔壁の閉鎖と最低限の補修は完了しました、機関は尚も全力発揮可能とのことです」
「回収した要救助者とMSはどうだ」
「コロンブス級内の医療区画を埋め尽くす勢いですが、対応はなんとか出来ています。MSに関しては元々の艦載機に対して最優先で補給を行っていますが、被弾によりデッキが損傷しているのもありまだ時間が必要です」
「…投降したジオン軍兵士に関しては?」
「学徒兵が殆どです、ゲルググと思われるMSに搭乗していたのは些か不思議ではありますが」
「向こうは機種転換の時間も惜しいらしい、まさしく地獄だな」
ジオン軍版ボールとでも言うべきモビルポッドも確認されているらしく、末期戦の様相を呈しているのは間違いない。対するこちらも急増品による数の暴力をぶつけており、艦隊司令部もソーラ・システムも失った今では二度目のコロニーレーザーが放たれる前に決着を付けるために無茶をしていた。
「というか我々は本当にしぶといな、モガミは艦首に直撃を受けたんじゃあなかったか?」
「側面に大穴が空きましたがミサイルを撃ち尽くしていたために誘爆を免れたようです、内部構造に致命的な損傷があったために主砲が撃てないそうですが」
「その程度で済んでるだけマシだろ…沈んでないのが不思議でならない損傷だからな…」
向かっている先のEフィールドは手薄な筈だ、大型空母二隻は別のフィールドへの配備が確認されている。それに他の艦隊も居ないわけではないだろう、場合によっては支援を見込めるかもしれない。
「修理の目処が立たない機体はパイロットごと後方に移送したい、出来るか?」
「えぇ、可能です」
「一応の処置が終われば激戦区に戻らなければならない、今のうちに休息を…」
ミノフスキー粒子が濃かったからだろうか、Eフィールドに展開していた艦隊の砲撃によって敵が近くに居たことを知る。
「なんだぁ!」
『モビルポッド多数及び赤いMAを確認!本艦隊旗艦であるマゼランが沈められた!』
「赤…赤だと!?」
赤の代名詞ことシャアは足がなくて赤くないMAに乗っているのではなかったのか、アムロの駆るガンダムとの戦闘はどうしたのだろうか。しかしこの世界がうろ覚えの原作通りに動くとは思えない、確認が必要だろう。
「敵機の特徴は?」
『巨大なモビルアーマーですが巨大な下半身を持ち、腕はありますが足がありません!』
ジオングの特徴に大体合致している気がして来た。多少見た目が違っても自分が知らないリメイク版だとか別世界線だとかで、一気にデザインが変わっている可能性も大いにあるというのが大いに困る。
「…そうか。そちらの被害が大きいのは見て分かる、下がって部隊の再編成を」
『ではこの場は』
「我々が引き継ぐ」
エース機を止めなければ他のフィールドほどの戦力を持たないEフィールドは全滅する、もしシャアではなかったとしても赤いMAを任されてマゼランを仕留める程の手練れが弱い筈がない。
「艦長、よろしいのですか」
「戦局は決しつつある、ここで相手に局地的な勝利を収めさせるわけにはいかん。砲撃用意!敵との距離を保ちつつMSの準備が終わるまでこの場を持たせるぞ!」
敵に対して放ったビームは何故か当たる直前に減衰、拡散して有効打にならない。ビームを撹乱する何かを散布しているのだ、その証拠に最大望遠の光学センサには何か煌めく物が敵機周辺に舞っているのが捉えられている。
「ソロモンのMAと同じくビームを弾くか、厄介な」
「この距離での砲撃を続行しますか?」
「近接戦でボールとジムの部隊を跳ね除けてサラミスとマゼランを纏めて沈めた相手だぞ、近寄れるか」
友軍は戦力の再編成で忙しいが、これは時間が経てば済む話だ。もしアレと本気で戦うのなら数を揃えてひたすら押す他に手がない、残念ながら一騎当千のエースは我が部隊に居ないのだ。
「補給を済ませて攻撃に備えろと味方艦隊に通達してくれ、このまま時間を稼ぐ」
「了解致しました、我々の艦載機はどうされますか」
「纏めて沈められるわけにはいかん、直掩として宇宙に上げておけ」
出力の高いビーム砲の前では艦船の装甲はバター同然、盾にすらなりはしないのが現状だ。出鱈目な敵MAの方がビームを弾けるので頑丈というのはこの世の不条理を恨まざるを得ない。
「ミノフスキー粒子の影響で詳細は不明ですが、どうにも敵空母の撃破に成功したとの報告が相次いで飛び上がっています」
「どうにも敵は精彩を欠く動きが目立つようになったと思ったが、その影響か?」
確か総司令が内ゲバで死んで、なんか色々あってシャアが更に引っ掻き回すのだったか。詳しく覚えていないのが悔やまれる、本当になんなんだあの赤いMAは。
「沈んだ船の乗員を退避させたい、出来そうか?」
「何をするおつもりで?」
「実弾兵器までは防げないという前提で作戦を立てる、ミサイルの補充と装填が終わる前に被害予測範囲から無防備な脱出艇を逃す」
ボールの砲も使えるだろう、だが纏まった数を敵に投射するためには補給と再編成が必要だ。このまま時間を稼ぎつつ、準備を整える。
「艦載機は第一小隊が支援機と共に投入可能です、やれるかと」
「周囲の残骸に紛れて接近してもらう。こんなところで死ぬ奴をこれ以上見る気も、仲間入りをする気もない!」