『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ   作:文才の無い本の虫

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Vol.0「捻れた始発点」
Prologue:Atra-Hasis


 

 

 

 

 

 

名前を呼ばれた気がして、部屋の入口の方を向く。

 

そこから現れたのは、血塗れの連邦生徒会長だった。

 

 

「――アトラ、すみません」

 

 

■■■(連邦生徒会長)?!その傷は?!一体何があった?!」

 

 

倒れて込んで来た彼女を受け止める。

 

何時もの超人じみた彼女の影はなく、■■■は弱々しく息をしていた。

 

・・・・・この出血量では、助からない。

 

 

「えへへ・・・・・少しヘマをしちゃいました。今思えば、私は貴方に迷惑をかけてばかりでしたね・・・・・」

 

 

彼女は俺に儚く微笑む。

 

それはまるで、死にゆく者が生者を励ます様で。

 

 

「っ・・・・・まったくだ。何故、俺に何も話さなかった?」

 

 

「・・・・・ごめんなさい。貴方は・・・・・優しすぎた。影法師でしか無い(・・・・・・・・)私には、眩しすぎたんです」

 

 

「■■■?影法師だと?・・・・・一体何を言っている?」

 

 

「――結局のところ、この世界線(・・・・・)に『先生』は現れず、『私』の影法師である私には『色彩』に対抗することもできず、ただ、選択を間違えてしまった・・・・・此処は、いえ、このキヴォトスも、『捻れた終着点』になりかけています」

 

 

「『捻れた終着点』?」

 

 

「ええ・・・・・ゴホッ――もう、あまり時間がないみたいです。アトラ、これを」

 

 

■■■は、咳き込みながらも、白いタブレットを何処からともなく取り出した。

 

 

「タブレット?・・・・・いや、オーパーツか」

 

 

「はい・・・・・使い方は、彼女(・・)が教えてくれます。貴方になら、使える筈です・・・・・大切なのは、結果ではなく、過程。貴方に『運命』なんて大層なものを背負わせてしまうのは、私の責任です・・・・・ゴホッ」

 

 

彼女は血を吐く。

 

耳を澄ますと、肺から異音もする。

 

 

「■■■?!死ぬな!!」

 

 

「あら・・・・・ふふ、泣いているんですか?」

 

 

■■■の手が、俺の頬に触れる。

 

その何時もと変わらない手は、冷たかった。

 

もう長くないと、わかってしまう。

 

きっと彼女は俺に、何かを・・・・・いや、キヴォトスを託そうとしている。

 

 

「悪いか?!・・・・・お前は、行く宛のなかった俺に手を差し伸べてくれた。引っ張ってくれた!名前だってお前がくれた!!今の俺が居るのは、お前が居たからだ・・・・・だからさ、■■■。お前が背負ってたもの(『運命』)の一つや二つ。背負ってやる」

 

 

「貴方のそんな所が、私には眩しすぎたんですよ・・・・・――アトラ、後を・・・・・このキヴォトスを、頼んでも良いですか・・・・・?」

 

 

「ああ・・・・・勿論だ」

 

 

「・・・・・アトラ、貴方になら――この『捻れた終着点』を変えることが出来るかもしれません。どうか、このキヴォトス(世界線)を宜しくお願いします・・・・・・・・・・さようなら、アトラ」

 

 

■■■の手が、頬から離れる。

 

俺は、彼女の目蓋をそっと閉じる。

 

彼女の冷たい身体(遺体)を両腕で抱き締めた俺には、流れ出る自身の涙を止める術など持ち合わせていなかった。

 

 

「っ・・・・・・・・・・さようならじゃなくて、また明日ってさ、言ってくれよ、■■■」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その日、連邦生徒会長は失踪した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

あれから、数日が経った。

 

あの後、彼女の痕跡は元から居なかったかの様に光になって消えてしまった。

 

キヴォトスのヘイロー持ちは死んだらそうなってしまうのだろうか。

 

今、俺は――正確には連邦生徒会は――■■■が失踪した事によって引き起こされた行政の停止等の問題を解決するために慌ただしく動いていた。

 

(副会長兼防衛室長)は連邦生徒会長の承認が必要な書類に目を通しながら机の前に立つ眼鏡をかけた黒髪の女性――名前は七神リン。■■■はリンちゃんと呼んでいた――に問う。

 

 

「リン、状況は?」

 

 

「はい、サンクトゥムタワーの制御権の移行は完了。同時にキヴォトス全域での不良生徒達による被害もカンナさん主導のもとヴァルキューレによって鎮圧されつつあります」

 

 

「ふむ、ありがとう・・・・・カンナには後で礼を言わないとな」

 

 

俺は『狂犬』という通称をもつヴァルキューレ警察学校公安局の局長――名前は尾刃カンナ。扱い的には(防衛室長)の部下と言ったところ――を思い浮かべる。

 

そういえば最近会ってないな・・・・・今度ラーメンでも食いに行くか。

 

 

「よし、終わった。リン、これを頼む」

 

 

「はい、不知火副会長」

 

 

「・・・・・そう固くなくて良い。役職は変わってないんだ。それに業務的に言うなら君の方が重要な役職だよ」

 

 

「・・・・・ええ、そうですね。あの人が居なくなって・・・・・少し、疲れているのかもしれません」

 

 

「頼むから働きすぎるなよ」

 

 

「貴方には言われたくないですが・・・・・まあ、わかりました」

 

 

そう言って彼女は部屋から退出していった。

 

今の連邦生徒会は連邦生徒会長が失踪したことで副会長兼防衛室長の俺が代理として承認や管理を、残りの業務をリンに任せている状態だ。

 

大量の業務を熟す連邦生徒会の面々には頭が上がらない。

 

そろそろ■■■から渡されたオーパーツの正体を確かめなければ・・・・・ならないんだが。

 

 

「・・・・・コレ(オーパーツ)、どうやって起動するんだ?」

 

 

■■■は『使い方は、彼女が教えてくれます』と言っていたが・・・・・。

 

 

“……我々は望む、ジェリコの嘆きを。”

 

“……我々は覚えている、七つの古則を。”

 

 

「っ・・・・・?!」

 

 

いつの間にか、タブレット型のオーパーツが起動している。

 

画面には何も表示されていない。

 

だが、何故か先程浮かんだ言葉を言わなければいけないような気がする。

 

 

「・・・・・我々は望む、ジェリコの嘆きを。我々は覚えている、七つの古則を」

 

 

すると、オーパーツの画面に白い髪の少女が映し出され、俺を見ていた。

 

 

「・・・・・君は?」

 

 

《私はこの『シッテムの箱』のメインOS──A.R.O.N.Aです。認証の為、お名前を》

 

 

「・・・・・俺は、不知火 アトラだ」

 

 

《登録完了。よろしくお願いします。マスター》

 

 

「ああ、これからよろしく、アロナ」

 

 

《はい、マスター》

 

 

そうして俺は、頼れる仲間を手に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《混乱。理解できない行動です。つつかないでください。故障します》

 

 

「・・・・・脆くないか?」

 

 

《・・・・・成程。理解しました。これが、カチンと来るという状況。私と『シッテムの箱』が揃えば銃弾を防御可能なバリアを常時展開可能です》

 

 

「思ったよりも高性能だな」

 

 

《・・・・・展開しますか?》

 

 

「アロナ、照れ隠しは下手だな」

 

 

《・・・・・》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









――不知火 アトラ

『連邦生徒会副会長』『連邦生徒会防衛室長』

備考:この世界線に不知火カヤは存在しない。



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