『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ 作:文才の無い本の虫
「ふう・・・・・」
私はコーヒーを飲んで息を吐く。
――もう、一ヶ月ですか
「カンナ防衛室長、此方の書類は・・・・・」
「ああ、その書類は机に置いてくれ」
部下を下がらせ、私は後ろ――一面の窓ガラスの外を見た。
此処からはキヴォトスが良く見える。
「アトラ、貴方の守ろうとしたキヴォトスは何時も通りですよ」
アトラとノアさんが、殆どの人の記憶からも消え、一ヶ月が経った。
彼等の功績は、前連邦生徒会長のものとされ、前連邦生徒会長は一ヶ月前に失踪した事になっている。
彼の言っていた世界の修正力というやつなのだろう。
あの、仮称『虚妄のサンクトゥム』破壊作戦も書類上、前連邦生徒会長が指揮を取った事になっている。
序に、アトラとノアさんが二人――最初は一人だった――で回していた防衛室が機能しなくなり、七神リン現連邦生徒会長に『前連邦生徒会長の猟犬』であった私が防衛室長に任命された。
「・・・・・今は、私が防衛室長ですか」
――あの頃は、貴方にずっとついて行くものだと思っていましたから
「感慨深い、というよりも制服の違和感が凄まじいですね」
私は、缶コーヒーを机に置いて、天井を仰ぎ見る。
「今でも信じられませんが、キヴォトスの『
私は書類仕事に戻る。
ふむ、今日は早めに終わりそうだ。
――帰りは、久し振りに屋台に寄りましょうか
◆◆◆◆◆
「ごめんください」
私は、暖簾を潜り、屋台の席に着く。
すると、横から声がした。
「あら?貴女はアトラさんの」
――先客、それもアトラの友人
「ふむ、美食研究会長でしたか・・・・・店主、焼き鳥のタレももを四本、茹でた枝豆を小皿で。あと烏龍茶をお願いします」
「あいよ」
暫くして、私の前に皿とコップが出される。
――隣に、彼は居ない
私はコップに注がれた烏龍茶を軽く飲み、言った。
「美食研究会長、貴女は良く此処に来るんですか?」
「ハルナ、で良いですわよ。尾刃カンナさん。このお店は偶々見つけましたの」
「そうですか」
暫く、黙々と料理を摘む。
私は、ずっと彼女に聞きたかったことを、問うた。
「それで・・・・・貴女は消えてしまった『
「勿論お慕いしておりますわ」
「アトラは貴女を手紙で振ったと言っていましたが」
すると、彼女は言った。
「うふふっ・・・・・アトラさんが『情熱的で、一本の筋が通ったような生き様』と称した私が、一度振られた程度で諦めるとでも?地の果てだろうと、地獄だろうと追い掛けるだけですわ」
彼女の目は、燃えていた。
――直感する。彼女なら成し遂げてしまうでしょう
頭の中に、ノアさんと、彼女に腕を引かれて困った顔をしている彼が思い浮かぶ。
そして、私はくつくつとした笑いを漏らす。
「どうしたのですかいきなり?!」
「ふふふ、いえ、貴女なら成し遂げてしまうと思いまして。ハルナさん、
「?ええ」
アトラとノアさんに――いえ、ハルナさんにも小さな祝福を。
「――――、と」
「!!うふっ・・・・・承りましたわ。では、乾杯といきましょうか。私と、カンナさんの出会いに」
「ええ、貴女との出会いに」
私と彼女は、カチリとコップを鳴らした。
――私がハルナさんと話したのは、それが最初で最後でした
まあ、彼女ならきっと会いに行けたのでしょう。
何せ・・・・・私以外に彼女の事を覚えていなかったのですから。
◆◆◆◆◆
ガタンゴトンと、電車が走る。
その車内には、血塗れの■■■と対面に座る誰かの人影。
「――アトラ・・・・・貴方は結局、この結果に辿り着いてしまいました。貴方とノアさんの犠牲に依って、キヴォトスの悲劇は回避され、この世界線のキヴォトスは平和になりました。ですが・・・・・貴方は」
「・・・・・こんな結末、あんまりです。世界の修正力から、ノアさんは、救えたのに!!当の貴方は・・・・・私が、間違っていたのですか?全てを救おうとしたのが、間違いだった?その間違いが、貴方を『壊して』しまった」
彼女の涙に対面に座る躯は動かない。
だが、その躯のヘイローの足りない部下を赤紫の線が補い始める。
そして、
『――連邦生徒会長』
「貴女は」
『未だ、手遅れではありません。私が、マスターの足りない部分を補い、ノアの『舵輪』で存在を補強しました。ですが、未だ足りません』
それを見て、連邦生徒会長は覚悟を決めたように、立ち上がった。
「わかりました。アトラの為に私の全てを賭けましょう」
『――承諾を確認。連邦生徒会長、手を。今から私と貴女の力を合わせて、奇跡を起こします』
「ええ、始めましょうか。貴女と私・・・・・いえ、彼等の奇跡を」
連邦生徒会長とアロナが手を合わせた。
瞬間、周囲は光りに包まれる。
「
光が収まる。
――そして車内には誰もいなくなった