『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ 作:文才の無い本の虫
『シッテムの箱』――正確にはメインOSのアロナ――に行政をサポートしてもらう事で数日前の慌ただしさは無くなり、キヴォトスは安定に向かっていた。
そうしてここ数日でルーティンと化した『シッテムの箱』を片手に書類に目を通していると、『シッテムの箱』の中の部屋――俺の部屋を元にデザインしたらしい――のソファーで書類を読んでいたアロナが此方を向いた。
《――報告》
「アロナ、どうした?書類の不備か?」
《否定。遥か遠方――マップを参照・・・・・ミレニアムサイエンススクール郊外にて、『シッテムの箱』と類似したシグナルを検知。放置するのは危険と判断。どうしますか、マスター》
ミレニアムサイエンススクール郊外と聞いて、何か引っ掛かった。
嫌な予感とも言う。
「ミレニアム郊外だと?・・・・・アロナ、俺の端末に座標を送ってくれるか?」
《了解。送信します》
制服の左胸に仕舞ってある端末が震える。
端末を起動し、アロナから送られてきた座標を見る。
嫌な予感は的中した・・・・・やはり■■■がぼやいてた廃墟じゃないか。
確か・・・・・『方舟・・・・・どうしましょうか・・・・・いえ、状況が悪化しなければ・・・・・』・・・・・アウトだな。
どう考えても■■■の
あの超人が『今の状況では』無害だからと放置した問題・・・・・早めに動かないと手遅れになる可能性があるな。
俺は端末を操作し、防衛室長としての仕事用の連絡先を呼び出す。
その連絡先の一番上にある『ヴァルキューレ公安:尾刃カンナ』の文字を押した。
『・・・・・はい、尾刃です。防衛室長、どの様なご要件ですか?』
「忙しい所に済まないが今から君の端末に座標を送る。その周辺をヴァルキューレで封鎖してくれ」
『理由をお伺いしても?』
彼女は言われたことにただ頷くだけのイエスマンじゃない。
ちゃんと彼女なりの『正義』を持っている。
『それほどでもありませんよ』と彼女は言うが、だから俺は彼女を重宝している。
「ああ。その座標に下手に刺激すると不味い物がある。失踪した連邦生徒会長が危惧するレベルだ。自体は急を要する・・・・・かもしれん。念の為『便利屋』も向かわせておく。自由に使ってくれ」
『成程。了解しました。直ちに装備を整え、出動します』
「頼んだ」
通話を切り、別の連絡先を呼び出し、再度発信。
暫くして、通話が繋がる。
『はい、もしもし。此方『便利屋68』。どんなご要件かしら?』
「アル、数日振りだな」
電話の向こうの彼女の名前は陸八魔アル。
『便利屋68』の社長だ。
随分前に■■■の無茶振りに対応するためにヴァルキューレよりも小回りが効く戦力が必要になって雇ったのが始まりだ。
彼女はアウトローを目指しているらしく――根は善人なのだが・・・・・――、犯罪を犯されても困るので『連邦生徒会の副会長の懐刀とか、アウトローっぽくないだろうか』と唆・・・・・説得し、優先的に依頼を受けて貰っている。
尚、優先契約料の様なものを払おうとしたら拒否された。
・・・・・アル、君、アウトロー向いてないだろう?
『あら、アトラじゃない。食事のお誘い?それとも何時もの様に依頼かしら?』
「依頼の方だ。食事はまた今度で頼む・・・・・今から座標を送る。その座標の周辺をヴァルキューレが封鎖する予定だ。アル達にはヴァルキューレ警察と協力して周辺を封鎖してもらいたい」
『・・・・・かなりヤバそうな状況っていうのは伝わったわ。ええ、貴方と私の仲だし、(それに何かアウトローっぽいし)その依頼を受けさせてもらうわ』
・・・・・今絶対アウトローっぽいとか思ってるな此奴。
まあ、助かるのは事実だ。
「助かる」
『じゃ、切るわね』
通話が切れる。
俺は端末を制服の左胸に仕舞い、近くのメモ用紙を取ってリンに『少し面倒事を片付けてくる』とメッセージを残した後、椅子から立ち上がる。
そして俺は机の上に置いてある
「行くか、アロナ」
《――了解》
「面倒臭いな・・・・・走るか」
《・・・・・非合理的、です》
「はあ・・・・・」
『リンへ――少し面倒事を片付けてくる』
「・・・・・報連相はしっかりして下さいとあれ程言ったのですが」
◇◇◇◇◇
サンクトゥムタワーからミレニアム郊外まで走る。
ミレニアムを抜けると、銃声や爆発音――戦闘音が聞こえてきた。
ヴァルキューレと『便利屋』の相手は・・・・・オートマタ?
俺は、カンナを見つけ、近くに向かう。
どうやら彼女は陣頭指揮を取りながら周辺を封鎖する為に動いてくれていたようだ。
俺は、彼女の名前を呼ぶ。
「カンナ」
「防衛室長」
「状況を教えてくれ」
「了解しました。現在、周辺の封鎖は殆ど完了しています。但し、突如として発生したオートマタの大群により座標の施設には近付くことは出来ません」
「成程な」
どうするべきか・・・・・取り敢えず施設の中を見ないとどうすることも出来ないな。
目測で施設まで200メートル程。
・・・・・3歩だな。
「カンナ、このまま封鎖しておいてくれ」
「了解しましたが・・・・・防衛室長は?」
「少し、行ってくる」
俺は、
彼女曰く、『『神秘』は血のようなものです。それを意図的に回すんです。ゆっくり、そして速く。使おうと思って使うのではなく、信じるんです』と。
だから、強く、踏み込む。
瞬間、俺は――加速した。
「ふんっ」
そして、俺は壁を蹴り破って施設の中に入った。
施設の中の雰囲気はサンクトゥムタワーに近い気がするな。
《理解・・・・・これが、脳筋》
「失礼だな・・・・・で、アロナ。シグナルの発信元はわかるか?」
《――肯定。シグナルはこの施設の地下から発信されています。ナビゲートを開始しますか?》
「頼む」
そうして施設の通路を進んで行く。
暫くして、
すると、扉から、音声が発される。
『――資格者を確認。不知火アトラ、入室を許可します』
「は?」
扉が開く。
"『情報の方舟』、『最後の■■』"
"私が創り上げ、生み出した"
"資格者よ・・・・・どうか世界を"
「っ・・・・・?!」
《マスターの心拍数に乱れを検知。大丈夫ですか?》
「・・・・・大丈夫だ」
俺は、頭を振り、開いた扉を潜る。
その先には、ガーゼの様な服を身に着けた白い女性が玉座のようなものに座っていた。
寝ている?
その容姿は白く、美しかった。
・・・・・不味い、少し見惚れていた。
俺は気を取り直してアロナに問う。
「・・・・・アロナ、彼女がシグナルの発信元か?」
《――肯定。情報を取得。『方舟』の起動を確認しました》
「『方舟』?」
彼女が、目を開けた。
その紫の瞳が俺を写す。
『・・・・・資格者を確認。資格者、不知火アトラにマスター権を付与』
「マスター権?・・・・・俺が所有者ということか?」
『その通りです。本機は『情報の方舟』。本機の名称を登録して下さい』
俺に名前を考えろと・・・・・?
「アロナ、どういう事だ?」
《『方舟』は第1発見者又は『シッテムの箱』のマスターにマスター権を付与するように設計されています》
「・・・・・要するに害は無いということであっているか?」
《――肯定。補足。『方舟』の起動プロセスにはマスターによる『名付け』が必要です》
「・・・・・俺にセンス何て期待するなよ」
俺はアロナが『方舟』と呼んだ彼女を見ながら考える。
名前か・・・・・。
そして、ふと名前が浮かんだ。
何と無くしっくりと来る。
「そうだな、『ノア』でどうだ?」
『名称を登録・・・・・完了しました』
すると彼女――ノアが立ち上がり、俺の前に来た。
彼女の頭の上には白い機械質なヘイローが浮いており、彼女の羽根のような服も相まって、まるで天使の様だった。
「――――ええ、確かにセンスはありません。ですが、気に入りました」
「?!」
ノアは俺の手を取って言う。
「私は、『情報の方舟』にして『最後の■■』。与えられし
――ノア
『情報の方舟』『最後の■■』
備考:『シッテムの箱』と関係がある模様。