『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ 作:文才の無い本の虫
「・・・・・取り敢えず戻るか」
「ん、着いていく」
シロコが左側に並ぶ。
・・・・・危機感が無さ過ぎだ。
「シロコ、君と俺は初対面なはずだが?『知らない人にはついて行っちゃいけません』って言われて無いのか?」
すると彼女は首を傾げて言う。
「?自己紹介した。アトラ先輩は知らない人じゃない。それにそっちはアビドス高等学校。私の目的地。だから問題ない」
「はぁ・・・・・」
そうやって喋っているうちにアビドスの校門が見えて来た。
先生とユウカにこうなった経緯を聞かないとな。
すると、シロコに左手が握られた。
「アトラ先輩の手」
「おい、何してる??」
「ん、手を繋げば仲良しってホシノ先輩が言ってた」
――『向こう』のシロコが重なる
まあ、無理に解く必要もないか。
「・・・・・ったく」
――悪寒
「あら、マスター・・・・・随分と仲が良さそうですね?浮気ですか?」
いつの間にか、ノアが俺の右側でニコニコと微笑んで居る・・・・・が、目は笑っていない。
独占欲は嬉しいが、タイミングが最悪だ。
――シロコの手を解け無かった、というのは言い訳にならんな
「浮気ではないが・・・・・言い訳が思いつかん。アロナ、助けてくれ」
『無理です。頑張って下さい。マスターの修羅場・・・・・愉悦です』
『ふふふ、あははは!!アトラは懲り無いですね!!あははは!!』
「お前ら後で覚えておけよ」
「マスター・・・・・デート、してくれますよね?」
「ん、先輩。どうしたの?」
――拝啓、姉さん・・・・・今日の夕飯は姉さんの
「・・・・・リン行政官。私の可愛くて格好良い弟が砂漠で立ち尽くしながら私の麻婆豆腐を食べたがっている予感がしましたので買い出しのために早めに帰って良いですか??」
「何ですかその妙に具体的な予感は・・・・・」
◇◇◇◇◇
その後、ノアにデートの約束を取り付ける事でどうにか許してもらえたのだが、どうにもデートの約束を取り付ける様に誘導された気がしてならない。
言ってくれればデートぐらい行ったのだが。
「ふふふ、どうしたんですかマスター♪」
――まあ、この笑顔になら騙されても良いか
「いや、何でも無い」
「成程、何時も通り私の事を考えていたんですね。嬉しいです♪」
「何か悪いか?」
「ふふふ、いいえ。私もマスターの事を考えていましたから。相思相愛ですね、マスター♪」
「・・・・・あーもうっ!!ノアとアトラ!!貴方達がいちゃついてると話が進まないでしょ!!」
ユウカが机を叩いて言った。
此処は、アビドス高等学校の一室。
――既視感、懐かしく感じるな
中には先生とユウカ、俺達の他にシロコやホシノ達アビドス生が勢ぞろいだ。
この短時間で先生はアビドスのメンバー(一人を除く)と仲良くなった様で、アビドスの問題について話しているようだ。
「話?俺達に関係あるか?」
「無いけど!!ちょっと静かにしてて!!」
「む・・・・・済まん」
「マスター、私達はユウカちゃん達の話が終わるまで外で待っていましょう」
「そうだな」
俺とノアはユウカ達の話し合いの邪魔をしないように教室を出た。
・・・・・今、銀行強盗やスクールアイドルと聞こえたんだが大丈夫だろうか?
借金返済について話しているはずだが。
――少し聞かせてもらうか
◆◆◆◆◆
「・・・・・まったく」
「うへー、アトラくんとノアちゃんはラブラブなんだね〜」
「少女漫画みたいで少し憧れちゃいますね☆」
「“悪い子達じゃないんだけどね・・・・・。”」
「ん、アトラ先輩は良い人」
「“それにしてもユウカ、さっき言ってたことは本当?”」
「はい。借金の総額が約10億だとしても幾らなんでも利子が多すぎます。というかカイザーローン自体あまり良い噂は聞きませんね」
「“そっか・・・・・ちょっと許せないね。”」
「・・・・・最悪、アトラに協力を仰ぎましょう。彼はそう云う方面にはめっぽう強いですから。何時もは脳筋でノアの事しか考えてませんけど」
「“あ、うん。”」
◇◇◇◇◇
カイザーローン、法外な利子、ヘルメット団による襲撃。
・・・・・ヘルメット団は雇われか?
「・・・・・また面倒な」
考えていると、ノアが微笑んで言う。
「でも助けるんでしょう?」
「いや、俺がするのは手助けだけだ。後は彼女達と先生がどうにかするだろ」
シロコやホシノなら尚更だ。
「ふふふっ、マスターはお人好しですね」
『自慢のマスターです』
「・・・・・」
「照れてるマスターも可愛いですね♪」
俺は話題を変えるためにアロナに言う。
借金を使った手口なら、土地を先ず担保にするはずだ。
「・・・・・アロナ、アビドスの土地について調べてくれ。特に所有権を」
『了解』
――最悪、カイザーローンから債権を買い取るか
アロナとヒマリのお陰で金だけはあるから、それを使えば良い。
・・・・・
すると、教室の中から先生達が出て来た。
「“今から食事に行くんだけど、アトラ達もどう?”」
「ふむ、ではご相伴に預からせていただきます。ノアも良いか?」
「はい」
・・・・・アビドスで食事処といえば、柴関だな。
◇◇◇◇◇
柴大将の作ったラーメンを啜る。
俺とノアは先生達とは別の席で、食べている。
――俺には、あの光景に入る資格は無いから
「うん、旨い」
「ええ、美味しいですね」
――懐かしい味だ
懐かしい声も聞こえた。
聞こえてしまった。
「あ・・・・・その・・・・・こ、ここで一番安いメニューっておいくらですか?」
俺は、振り向かない。
この声の持ち主が居るということは、彼女がいるということだ。
彼女の顔を見たら、虚しくなってしまうから。
――Vanitas vanitatum et omnia vanitas.
ふと、そんな一節を思い出した。
「ふふふ、ほら見なさい。何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ」
ああ、泣きたくなる。
すると、手が添えられた。
「マスター、大丈夫ですよ。私はマスターの側に居ますから」
「・・・・・ありがとう、ノア」
――それから、俺とノアは黙々とラーメンを食べた
――小鳥遊 ホシノ
『アビドス高等学校3年生』『対策委員会委員長』『暁のホルス』
――砂狼 シロコ
『アビドス高等学校2年生』『対策委員会所属』『アヌビス』
備考:彼女はアトラに不思議な既視感を感じている