『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ 作:文才の無い本の虫
Contact:砂に沈んだ街
ガタンゴトンという振動で目が覚める。
「――此処は?」
電車、か?
唐突に、声が、聞こえた。
『――■■、私は・・・・・どうして、ここに
周りを見回すが、俺以外に電車の中には誰も居ない。
だが、■■■の『神秘』を感じる。
――何処かの砂漠で、血と包帯に塗れた少女が横たわっている。
その『神秘』からだろうか、ノイズが掛かったイメージが流れ込んできた。
――散弾銃と砕け散る、薄桃色のヘイロー。
――『74日前に行方不明』と記された資料。
――床に落ちた、生命維持装置と誰かの手。
――酷く汚れた、ひび割れた金色のカード。
『・・・・・そっか 私も・・・・・みんなも、苦しむために、生まれてきたんだ』
強い、諦観や、悲しみ、負の感情の濁流。
・・・・・コレは、何だ?
「『苦しむ為に生まれてきた』、だと?そんな事が、あっていい筈が無い!!」
俺は立ち上がり、声を荒らげる。
すると、横から、声が聞こえた。
「――ええ、その通りです、アトラ」
『何故』や『どうして』とは問わない。
多分、
だから俺は、彼女の方を向いて問う。
「・・・・・■■■、コレは、何だ?」
「何処かで、何時か、起こってしまう悲劇。その一つです」
「どうするかは貴方に任せます。アトラ・・・・・大切なのは、結果では無く、過程です。貴方がどう思い、どう考え、どう感じたか。貴方の心に従って下さい」
「ああ、当たり前だ」
「それに、貴方には『方舟』――ノアさんが居ます。彼女はこの世界線における『特異点』。貴方と彼女が揃えば運命をも変えることが出来ます・・・・・もう、あまり時間がないみたいですね」
「・・・・・■■■」
「はい?何ですか?」
「『さようなら』何て言うなよ。言うなら『また今度』だ」
すると、彼女は目を見開いた。
「!!・・・・・ふふっ、そうでしたね、アトラ。――また、会いましょう。私は、此処で見守って居ますから」
――視界が、霞んでいく。
「ああ、またな、■■■」
「・・・・・祈っています。貴方の行く先に、この『捻れた終着点』に、沢山の幸福がありますように」
◇◇◇◇◇
頭の下に温かさを感じて、目が覚めた。
・・・・・天井が半分しか見えん。
「おはようございます、マスター」
「ああ・・・・・おはよう、ノア。で、何で俺に膝枕をしている?」
「ふふ、お気に召しませんでしたか?」
「・・・・・」
正直言って最高だが、
すると、ノアはニコニコとした表情で言った。
「あら、随分お気に召したみたいですね。少し照れます」
「・・・・・起きて良いか??」
羞恥心で死にそう何だが??
――幸運なことに、部屋には誰も来なかった
◇◇◇◇◇
ノアと出会って(彼女に関する諸々の手続きを終わらせて)から、一週間が経った。
彼女がキヴォトスに馴染むのにそう長い時間が掛かることはなかった。
今は連邦生徒会、防衛室所属となっている。
防衛室には俺とノアしか居ないが。
俺は隣に増設した机で書類に目を通しているノアに紙の束を渡す。
「ノア、この書類を頼む」
「わかりました」
《マスター、先程の書類のチェックが終了しました》
「ありがとう、アロナ」
そうやって書類を片付けていく。
まあ、防衛室の書類仕事が忙しいのは
・・・・・目が疲れてきたな。
するとノアが俺の顔を覗き込んで言った。
「・・・・・あら、マスター。お疲れですか?」
俺は彼女に言われて、少し眉間を揉む。
確かに泊まり込みだし、休み無しだからな。
「まあな・・・・・アロナも手伝わせて悪いな」
《――困惑。マスターをサポートするのが私の役割です》
「それでも、だ」
・・・・・休みが欲しいな。(泊まり込み七連勤)
そうだ、気分転換も兼ねてアビドスに行くか。
そこまで急ぐ仕事もない。
――それに、アビドス砂漠にも用があるしな
俺は、立ち上がった。
「マスター?」
「ノア、アロナ。少し気分転換に行くか」
俺がそう言うと、画面の中のアロナが首を傾げて言った。
《疑問。目的地は何処ですか?》
「砂漠・・・・・アビドスだ」
――尚、今回は移動に電車を使うことにした
◇◇◇◇◇
最寄り駅から数十分程歩き、着いた先にはポストアポカリプス・・・・・砂に沈んだ街が広がっていた。
・・・・・ここまで酷いとはな。
土地の『神秘』が枯れている・・・・・企業が引き上げたのも仕方無いか。
そこら辺に遭難者の死体でも転がっていそうだ。
気分転換には向いてないな。
「マスター・・・・・これを見て、気分転換になるのでしょうか」
「言うな。俺も同じ事を考えたが」
《安堵。マスターの正気を疑うところでした》
「辛辣だな・・・・・少し奥まで行くか」
「了解しました」
俺達は砂に沈んだ街を歩いて行く。
「人気が無いな」
《――マスターの周囲200メートルに生体反応無し。周辺の建物の風化から少なくとも五年は整備されていません》
「まさにポストアポカリプス、と言ったところでしょうか・・・・・」
――既視感
俺は足を止め、周囲を見渡す。
この建物の配置、覚えがある。
「・・・・・此処だ」
「マスター、どうされましたか?」
「いや、何でもない・・・・・取り敢えずアビドス高等学校へ。現状を知るにはそれが最善だ」
「・・・・・」
《はぁ・・・・・》
「どうした?」
「気分転換という名目で訪れたのに結局仕事をしているじゃないですか」
《――肯定。今のマスターを、『わーかーほりっく』と言うそうです》
・・・・・。
ぐうの音も出ない。
「休むのも仕事のうちですよ、マスター。ですから今度はちゃんとしたお出かけに連れて行ってくださいね?」
「・・・・・済まんな、ノア。約束するよ」
するとノアは後ろで手を組んで、少し屈み、俺の顔を覗き込んだ。
「ふふっ・・・・・では、期待しています♪」
・・・・・最近思うのだが、ノアはとても感情豊かだ。
俺は、当分彼女に振り回されそうだ。
《――報告。8時方向から、自転車が接近中》
住民だろうか?
俺は少し待ってみることにした。
暫くして、ロードバイクと見覚えのある少女が現れた。
「・・・・・生きてる人?」
「失礼だな・・・・・君には俺が人外に見えるのか?」
――それが、俺と彼女のファーストコンタクトだった
――アロナ
『シッテムの箱』『カドゥケウスの笏杖』
備考:スーパーOS。アトラのサポートをする。
――白波 ノア
『連邦生徒会防衛室所属』
備考:武器はオーパーツを流用したレールガン。
――連邦生徒会防衛室
この世界線では連邦生徒会副会長が兼任する。有事の際に直ぐに動けるようにとの理由から。現在は不知火アトラと白波ノアの二人が所属している。
備考:防衛室の書類仕事は基本的に下部組織の予算確認等だけなので忙しいのは年に一度程。