『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ 作:文才の無い本の虫
――讃えよ、祝福せよ、王の復活を
「“どうにかなったみたいだね・・・・・。皆、お疲れ様。”」
《あれが・・・・・》
「うへ〜。おじさん疲れちゃったよ〜」
「そうですね~。皆、怪我はありませんか?」
「ん、大丈夫」
「あの方達も帰ったようですし、帰りましょうか☆」
「先生、書類仕事が溜まってますからね?」
「“うっ・・・・・ユウカ、手伝ってくれる?”」
「はぁ、仕方無いですね」
「というか、本当に誰だったのかしら?・・・・・まあ、今度聞いてみれば良いか」
◇◇◇◇◇
俺は、アロナの手に神秘を流す。
「・・・・・どうだ?」
「リソース量を観測・・・・・はい、適正量です。充分な質です」
「それならわざわざ記憶を漁った甲斐があったな」
――供物の種類
――場所の条件
――神秘の特性
まだ頭痛がする。
あの膨大な記憶を閲覧するのは代償が大きかった。
偶におかしな記憶もあったが。
――だが、ピースは揃った
「疲れました」
「済まん」
「いいえ、大丈夫です」
「それにしても・・・・・便利な身体だな」
俺は、膝の上に座っているアロナを見る。
その大きさは小さい少女程で、先程までの連邦生徒会長程の身長は見る影も無い。
「省エネです」
「確かその身体のエネルギー源って俺だったよな?」
「はい。マスターにあまり負担を掛けるわけには行きません。この状態でも、マスターよりもスペックは高いですから」
「・・・・・自信を無くしそうだ」
『ミレニアム最強』、ネル先輩に返すべきだろうか・・・・・。
多分クロスレンジなら俺よりも強いだろうし。
「安心して下さい、マスター。私はマスターの一部です。飽くまでこの『器』のスペックがマスターの現時点でのスペックよりも高いというだけです。保証します。マスターには伸びしろがあります。才能マンです」
――『てめえには、伸びしろがある。もう少し成長してみろ。私が保証してやんよ。お前は強くなる』
昔、言われた言葉を思い出した。
「・・・・・ありがとう、アロナ」
「どういたしまして?」
俺はアロナを撫でる。
ビナーを倒してから1日が経過した。
姉さんはアロナとすぐ仲良く喋っていたのが印象的だった。
ノアは『スーパーノヴァMk-Ⅱ』の調整に行っているため、此処には居ない。
今此処、セミナーの部屋には俺とアロナの二人だけだ。
――
そして、変わった事と言えば、■■■が表に出てくるようになった事だ。
『・・・・・すごいですね、アトラは。私では、そんな事、思い付きませんでした』
「ふんす、自慢のマスターです」
「まあ、立場が違うからな。今の俺はそこまで偉く無いから自由に動けてるってのも理由の一つだろう。此方の連邦生徒会長が『先生』を呼んだのも、自由に動ける人手が欲しかったという所か」
暫くそうしてアロナを撫でながら、雑談に興じていると、不意に■■■が言った。
『私は迷惑を掛けていませんか?・・・・・私は、死者です。アトラを拠り所とした魂だけの存在。アロナちゃんの様に貴方を守ることも、ノアさんの様に貴方の隣に立つ事もできません』
――すこし下向きなのは変わらないな
「愚問だな、■■■。俺はお前に側に居て欲しいんだ。魂だけだろうと、大切な人と一緒に居たいと願うのは間違っているか?」
すると、■■■は目を見開いてから、笑った。
『・・・・・ふふっ、あはははは!!そうでした。アトラはそういう人でしたね。そこまで言うなら、ずっと一緒に居ますよ。それが『責任』というものでしょう?アトラ、何時か後ろから刺されないようにして下さいね?』
「同意見です。この人誑しマスター」
「酷く無いか?・・・・・いや、残当ではあるか。胃が痛くなってきたなあ・・・・・」
脳裏をハルナやヒフミ、ウタハの顔が過る。
ハルナは一直線だから大丈夫だが、ヒフミはあの情熱が此方へ向いたら大惨事が起きそうだ・・・・・。
というかウタハは姉さんの目が無くなった瞬間、研究資料として誘拐されそうな気がある。
「アレは不味いな・・・・・」
『自覚症状あったんですか??』
「私のお蔭です、ぶい」
「いや、どちらかというとユメのお蔭・・・・・っ?!」
――『女の子の事をちゃんとわかってあげないと君、何時か刺されちゃうよ?』
――『勘弁してくれ・・・・・僕には君だけで充分だよ』
――『じゃあ、離さないでね?』
――
――頭痛がする
記憶の混濁か。
「マスター?」
『アトラ、記憶の混濁ですか』
「・・・・・ああ」
色々と影響が出ている。
転生という無茶な行動をすると、人として色々とがたが来るんだろう。
暫くするとセミナーの扉が開いて、レールガンを背負ったノアが現れた。
「マスター、ただいま帰りました」
「お帰り、ノア・・・・・じゃあ、行くか」
「はい」
――そうして俺達は行動を開始した
「ふふふっ、やっぱりマスターはお人好しですね♪」
「・・・・・飽くまで俺がするのは手助けだけだ」
「人の命をサルベージするのは手助けの範疇に収まらないと思います。マスターは『つんでれ』です」
『ふふふ・・・・・あはははは!!アトラが、ツンデレ!!言い得て妙ですねえ!!あははは!!』
「・・・・・何か悪いか」
「照れてるマスターも可愛いですよ?はい、チーズ・・・・・うん、上手に撮れました♪」
「ノア、後で一枚下さい」
「おいやめろ」
◇◇◇◇◇
「此処だな」
「はい。此処から、微弱な神秘を感知しました」
「アビドス砂漠の中心とはな・・・・・始めるか。ノアは離れて周囲の警戒を頼む」
「了解しました・・・・・マスター、警戒を」
――気配
ノアがレールガンを虚空に向ける。
俺は腰のホルスターから拳銃を抜く。
その虚空が捻じれ、
「クックック・・・・・随分と興味深い事を成されようとしていますね、不知火アトラさん?」
「・・・・・その不可解な技術。ゲマトリアか」
「その名を何故?貴方が知り得る筈が無いのですが」
「
「ほう?」
「生憎、今は忙しい。貴様の相手をしている暇は無い。出直せ、黒服」
「クックック・・・・・出直したい所ですが、貴方の成そうとしている神秘の復元には大変興味が惹かれます。対価は払いましょう。見学しても宜しいですか?」
・・・・・ゲマトリアか。
貸しを作っておくのもありだな。
「・・・・・貸し一つ。見ていくならそれ以上近付くな。不安要素はできるだけ少ないほうが良い」
「随分と高い買い物ですが・・・・・いまから貴方が成そうとしている奇跡を観測できる事に比べれは安いものです。クックック・・・・・」
「じゃあ、始めようか」
「はい、マスター」
俺は随分前にアロナに頼んで取り寄せたユメの情報が載っている書類を取り出す。
――情報とは即ち、名であり、体を表す
その書類を砂の地面に置き、俺はナイフで手のひらを切る。
そして掌に浮かんだ血に神秘を籠めて、書類に垂らした。
――血とは、魂の通貨
「宣告。『器』は此処に」
アロナが『
俺は、血で書いたカバーストーリーを取り出す。
――神秘は、良くも悪くも認識とテキストに依って左右される
足り無いと云うのなら、付け足せば良い。
カバーストーリーには、
――神話、伝承というのは、あり得たかもしれない事実として強い
カバーストーリーを綴った紙を放る。
紙は、風に飛ばされることも無く、不自然にユメの残滓の上に浮いた。
口が、勝手に動く。
「・・・・・砂漠の王よ、復活の時だ」
――ごっそりと、力が奪われる感覚
「神秘の復元を確認しました。第二フェーズ、『器』の修復に移行します・・・・・完了しました。第三フェーズ、『器』への神秘の紐づけを開始・・・・・成功しました」
あの声が聞こえたということは、魂は此処に在る。
――名や役職を呼ぶことには、重要な意味を持つ
俺は、
「小難しい事は後だ。戻って来い!!『アビドス高等学校三年生』『アビドス生徒会長』の『砂上 ユメ』!!」
瞬間、周囲に光が溢れる。
その光は傷一つ無くなった『器』に集まっていき、織り込まれていく。
ドクン、と周囲に鼓動音が響く。
その音は段々と間隔が狭まり、人の鼓動と同じリズムを刻み始めた。
そして『器』――ユメの身体は息を、生命活動を始めた。
――頼む、目を開けてくれ
暫くして、彼女が身動ぎする。
「・・・・・うぅ〜ん・・・・・ふぁあ・・・・・あれ?あれれ?私は確か・・・・・」
そう言い、彼女は起き上がる。
そして、俺達を――いや、俺を見た。
「あ、思い出した!!全部、全部!!」
彼女は飛び起きて、俺に言った。
「君が起こしてくれたんだね?!
――砂上 ユメ(すながみ ゆめ)
『(元)アビドス高等学校生徒会会長』
備考:彼女は、