『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ 作:文才の無い本の虫
「ふう・・・・・ごちそうさまでしたわ」
そう言ってハルナは小さな取り皿の前に箸をおいて口元を拭いた。
一方、俺の前には空になった丼が二つ。
「なあ、ハルナ・・・・・いい感じに完食した風に言ってるが八割方俺が食べたんだが??」
そうやって話していると、横から食器を置く音が聞こえる。
どうやらノアとアロナも食べ終わった様だ。
「美味しかったですね、マスター♪」
「けふ・・・・・満腹、です」
少食のハルナに対して、ノアは結構大食いなんだよな。
アロナは・・・・・普通だ。
「大将、美味かった」
「おう!嬢ちゃん達も、良い食いっぷりだったぜ。また来な!!」
「ああ」
俺は会計を済ませ、柴関ラーメンを出る。
――相変わらず良い店主だ
すると、タイミングを図ったかの様に、ハルナの携帯が鳴る。
ハルナは携帯を見てから、此方を向いた。
「風紀委員会の仕事の時間になってしまいましたわ・・・・・アトラさん、ノアさん、アロナさん、楽しかったです。では、私はこれで」
「ああ。頑張れよ」
次の瞬間には、ハルナは居なくなっていた。
俺は時計を見た。
――2時か
◇◇◇◇◇
柴関ラーメンでかなり遅めの昼食を済ませた後、俺達はアビドス高等学校に来ていた。
最近聞いた話だと、ユメが復学し、アビドス対策委員会が正式な生徒会としての認可を得たらしい。
校庭で砂を掃いていたユメが此方に気付いて手を振っている。
「アトラ君、久し振りだね!」
「ああ。一週間ぶりだな、ユメ。調子はどうだ?」
「元気だよ〜!」
彼女はものすごく元気そうだった。
俺は少し頬が緩むのを感じた。
「そうか」
「うん!!アトラ君やアビドスの皆のおかげなんだ!!対策委員会も正式な生徒会に認可されてね、今はアビドスの自治区を取り戻すのが目標なんだ〜」
アビドス高等学校の膨大な借金は無くなったが、前に聞いた通りアビドスの土地の所有権の多くはまだカイザーのものだという。
だからアビドスの正式な自治区はまだ小さい。
だが、きっと彼女達が取り戻すだろう。
「ふふふ、良い目標でしょ?」
そうやって彼女は目をキラキラとさせて言う。
――その姿が、アイツと重なる
「そうだ、アトラ君。時間はある?」
「ああ。午後に予定は無いが」
「やった〜!!じゃあこんな所で立ち話も何だし、中に入ろう!!歓迎するよ〜!!ほら、こっちこっち〜」
ユメは俺の手を持って歩き出した。
「まったく・・・・・」
――今日の昼休みは、少し長引きそうだ
「何だか、満更でもなさそうです」
「むう・・・・・少し妬けてしまいますね」
「マスターの妻・・・・・
「どう思いますか、■■■・・・・・いえ、
『・・・・・』
◆◆◆◆◆
――不知火アトラ
彼は砂漠の真ん中で寝ていた私を起こしてくれた男の子。
隠そうとしてたみたいだけど、私の為に怪我をしたりしていたみたい。
私には、彼の記憶があった。
その記憶の中では、私は
そこで、アトラ君に出逢って、恋をして・・・・・け、結婚して。
ものすごーく、幸せな記憶だった。
でも、わかったことがある。
主人格は私・・・・・って言うよりも何かが欠けてる気がするの。
大切な、何かが。
だから、私は
ねえ、
貴女は何処に居るの?
◆◆◆◆◆
『■■■・・・・・マスターの思いは、変わっていません。妬けてしまいます。ですから、貴女にはマスターと生きる権利があります。いえ、生きるべきです』
『貴女は?』
『私はアロナ――いえ、『
――かくして■■■は・・・・・
季節は春。
とある学園都市にある大学の入学式。
新入生の一人である水色の髪の彼女――ユメは、桜の木の下で白髪の青年と出逢った。
ユメは、強い既視感を覚えながら、彼に話し掛ける。
「あーえーっと・・・・・私は
「僕は・・・・・アトラ。
「そっか。君はアトラくんって言うんだね?よろしく!!」
「うん、よろしく」
ユメは、アトラと出逢った。
それは偶然で、ある意味必然だった。
『ふむ・・・・・私の出る幕は無さそうですね』
――彼女達が出逢ってから、数年が経った
ユメはアトラと手を繋いで歩いていた。
この数年で、ユメとアトラの関係は結婚を前提に交際する程までに進展していた。
「ええ?!また告白されたの?!」
アトラの近状報告にユメは驚く。
やれやれ、といった風にユメは首を振る。
「はぁ・・・・・女の子の事をちゃんとわかってあげないと君、何時か刺されちゃうよ?ね?」
そう言って、にしし、と彼女は笑った。
アトラは女性に刺される自身を想像し、ため息をついた。
「勘弁してくれ・・・・・僕には君だけで充分だよ」
「ふふふ・・・・・じゃあ、離さないでね?」
「ああ」
アトラはユメの手をしっかりと握り、ユメはその手を優しく握り返す。
そうして、アトラとユメの二人は寄り添って歩いて行った。
――やがて時は過ぎ、何度目かの春が来た
三上という字が表札に書かれている一軒家の玄関で、ユメはスーツを着たアトラのネクタイを正していた。
本当は正す必要は無いのだが、これが彼女達の朝のルーティンだった。
よし、と頷いてユメが一歩下がって言った。
「アトラ君、行ってらっしゃい」
「ああ。行ってくるよ、ユメ・・・・・愛してる」
やや恥ずかしそうにアトラは言う。
その様子に手を後ろに組んで、ユメは微笑んだ。
「ふふふ、私もだよ。気を付けてね?」
「勿論。できるだけ早く帰って来るよ」
――それが、二人の幸せな朝だった
――そして、そんな温かい季節に『
これは、何時か『あまねく奇跡の始発点』へと辿り着く、遠く長い
――
砂上ユメではない、『ユメ』。未来から来たアロナに因って、ある世界に
――
何処かで死んだ
――『色彩』
アトラの死因。そして、『追憶の物語』が発生した元凶。