『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ 作:文才の無い本の虫
――『色彩』が落ちてきた事によって、空が赤く染まっている
上空には、『色彩』と共に降ってきた箱舟があった。
「・・・・・うん、滅ぼすよ」
その箱舟の中で、傷付いた黒いヘイローを頭に浮かべ、黒いドレスを身に纏った女性――シロコ*テラーが、厳かに、悲しそうに、宣言する。
「・・・・・
その宣言を聞いていたのは、
――そうして、この世界に破滅が訪れた
崩壊した家の上で、ユメと黒いドレスの女性――シロコ*テラーが相対していた。
「貴女は誰?!一体何をしたいの?!」
「私は・・・・・いや、貴女は知らなくて良い。今から死ぬのだから」
そう言って、シロコ*テラーはユメへアサルトライフルを向け、引き金を引く――瞬間、アトラが駆け出した。
「ユメ!!」
アトラはユメを庇い、腹部に銃弾を受ける。
「・・・・・邪魔」
シロコ*テラーがさらにアサルトライフルを発砲し、アトラの体に鉛玉を打ち込む。
ユメは血を流して倒れたアトラの身体を抱きとめた。
「そんな?!」
「ははは・・・・・人って結構頑丈なんだなぁ」
「笑ってる場合じゃないよ!!血が!!」
ゴロゴロと、肺に血液が入った事による異音が聞こえる。
出血からも、弾痕の量からも、明らかに致命傷だとわかる。
それでも、アトラは立ち上がった。
「逃げろ・・・・・僕は、君と過ごせて幸せだった」
何故か困惑しているシロコ*テラーに向かって立ち、ユメを隠すように、通せんぼをする様に、手を広げた。
「・・・・・先生?・・・・・いや、並行世界の別人か。じゃあ、大人しく死ね」
銃口を前に、アトラは言う。
「ユメ、愛してる」
――引き金が、引かれた
◆◆◆◆◆
ガタンゴトンと、電車が揺れる。
社内には、血塗れのアトラを抱きかかえた、血塗れのユメが居た。
「アトラ君・・・・・」
ユメはアトラの事を愛おしそうに優しく撫でる。
――ユメの姿が振れ、頭上にヘイローが浮かぶ
「私も君と・・・・・貴方と一緒に居れて幸せでしたよ、アトラ」
何時の間にか、ユメの姿は水色と桃色の長髪に変わっており、白い制服のような物を身に着けていた。
「ですが・・・・・こんな結末、あんまりです」
ユメは――
「私の幸せはどうでもいいんです・・・・・もう沢山貰いましたから。ですが、アトラが不幸になるなんて認められません。アトラは、もっともっと幸せになって良いはずなんです。『生徒』としてキヴォトスを救い、別のキヴォトスの為に『先生』になり、ループして傷付いて・・・・・・・・・・何故ですか?!何故こうもキヴォトスはアトラを苦しめるんですか?!救いも、幸福も、勿論ありました・・・・・ですが、不幸が多過ぎます!!」
「物語では、幸せの為に数多の不幸を経験します。ですが、アトラの
――■■■のヘイローが明滅し、アトラが光に包まれる
「だから――私の全てを以て、貴方を送り届けてみせます」
――アトラを包む光が強まり、比例して■■■は薄くなっていく
「・・・・・・・・・・さようなら、アトラ。私の愛した人」
◆◆◆◆◆
「――アーカイブの参照を終了。成程・・・・・マスターの記録が欠けていたのは、そう云うことでしたか」
『恨みますか?アトラに地獄を強いた私を』
「否定。■■■、貴女はマスターを守りました。廃人になってしまえば、数える程しかない幸せを掴む事すら出来なかったかもしれません。それに、その記憶を貴女が消していなければ、あの時私は間に合わず、マスターの脳は焼き切れていたでしょう・・・・・すごーく感謝です」
『・・・・・ぷ、あははは!!』
「?
「疑問。アーカイブが正しいのなら、存在の大部分を失った筈です。何故貴女は存在しているのですか?」
『うーん・・・・・愛の力、ですかね?』
「・・・・・理解。理屈ではない、ということですね」
『ふふふ』
◇◇◇◇◇
ソファーの柔らかさと人の温かさを感じながら、目を覚ました。
相変わらず、天井は半分しか見えない。
「おはようございます、マスター」
「ああ。おはよう、ノア」
――懐かしい、夢を見ていた気がする
確か、アビドスから帰ってきた後にミレニアムプライスの為の書類仕事を終わらせて、休憩していたんだったな。
「お疲れの様でしたが、私の膝枕で良く眠れましたか?」
「ああ、良く眠れたよ。ありがとう」
「それは良かったです♪」
――もう少し、このままでゆっくりとしたい気分だ
すると、ニコニコとした表情でノアが言った。
「ふふふ。急ぎの仕事も無いですし、もう少しこのままでも良いですよ?」
「・・・・・じゃあ、そうさせてもらうよ」
――それから暫く、俺とノアはソファーで過ごした
◇◇◇◇◇
「・・・・・此処に来るのは久し振りだな」
『ええ。此処はもう必要ありませんでしたから』
俺は動いていない電車の中を見回す。
彼女は俺の対面に座っている。
『アトラ・・・・・・・・・・貴方は今、幸せですか?』
そう、彼女は言う。
――そんなの、決まっている
「幸せだよ。ノアが居て、アロナが居て、姉さんが居て、
『・・・・・そう、ですか』
■■■の表情は曇っていた。
俺は、言う。
「ああ・・・・・だからお前が気に病む事は無いよ。全部、
『そうですね・・・・・
噛みしめる様に、■■■は言った。
それから少しの時間が経った。
俺は、ずっと言おうと思っていた事を言う為に、彼女に声をかけた。
「・・・・・なあ、■■■」
『はい?なんですか?』
「お前も、少しでいいから此方に来ないか?お前の身体はアロナと俺がどうにか出来る筈だ」
『それは・・・・・私は死者です』
「そんな事を言ったら俺はもう何十と死んでいる」
『ですが』
「ですが、じゃない。飯を食べるぐらい良いだろう?大切な奴と食卓を囲む事ぐらいは許されて然るべきだ。なあ、アロナもそう思うだろ?」
俺は空中に投げ掛ける。
――だが、聞いているだろう
瞬間、空中に罅が入り、アロナが現れた。
「肯定。それにマスターの意向を妨げるルールなど、捻じ曲げてしまえば良いのです。その為に私が居るのです」
俺は■■■に言う。
「■■■・・・・・お前はどうしたいんだ?」
「素直になるべきです、■■■」
暫くして、■■■は言う。
『・・・・・・・・・・私だって、アトラともっと色んな事をしたいです。
そうして、俺は夢から醒めた。
横にはアロナが立っている。
「アロナ、やるぞ」
ユメの時で、大体の要領は掴んだ。
諸々の問題は後で考えれば良い。
「了解。私とマスターに不可能はありません」
――それから、数時間が経った
「マスター、器は完成しました・・・・・ですが、良いのですか?」
「勿論だ。俺の負担なんて微々たるものさ・・・・・アイツの笑顔に代えられるものなんてないよ」
「――了解。マスターへのパスを繋ぎます。後は、名前を呼んで下さい」
「ああ・・・・・■■■、いや」
「――
そして目蓋が開き、水色の瞳が俺を見た。
「・・・・・こほん。おはようございます、アトラ」
「ああ。おはよう、レイナ。うん・・・・・姉さんにどう言い訳しようか・・・・・」
――レイナ
アトラが落ちてきた世界線の連邦生徒会長の名前。もしくは符号。容姿はこの世界線の連邦生徒会長と同じ。
命名:トレイン(もしくはレイン) + アロナ
――アトラの記録
・『生徒』、ノア√
・『先生』、シロコ√
・『大人』、泡沫の夢√(ユメ/レイナ√)
etc…(百件以上が省略されています)
・『生徒』、???√