『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ 作:文才の無い本の虫
「やあ、アトラ君。コレで合法的な露出が可能となるわけだが・・・・・どうかな?」
「痴女にしか見えんな。服を着ろ」
「――訂正。マスター、ウタハは下着を着用しています。光学迷彩で裸体のように見えているだけです。理解不能です」
「何を言っているんだいアロナ君。発明品のテストは大切だろう?」
「ウタハ、お前は恥じらいを何処かに置いてきたのか?」
「うん?ちゃんと恥ずかしいとも。ポーカーフェイスだよポーカーフェイス。ほら、私の耳が赤くなっているだろう?」
「・・・・・取り敢えずこれでも羽織ってろ。風邪を引くぞ」
「あ、そうそう。アトラ君の『巨大兵器破壊のすゝめ』、一通り読ませて貰ったけど・・・・・此処までしっかりと作るならもっと色々なケースに対応できる様にした方が良いんじゃないかな?」
「む、確かに」
「いっそ鈍器としての機能を持たせてみるのもありだね」
「・・・・・考えておく」
◇◇◇◇◇
セミナーの昼休み。
ミレニアムプライスの受付が締め切ったので、俺はノアがミレニアムプライスで発表するという詩集を読ませてもらっていた。
「・・・・・なあ、ノア」
「どうしましたか?」
「コレ、ミレニアムプライスに発表するって本当か??」
俺は手元の本――『思い出の詩集〜朝食を添えて〜』――を閉じて言う。
――内容は朝食や日々の些細な事を綴った詩集だった
「はい。何かいけなかったでしょうか?」
ノアは可愛らしいきょとんとした表情で言った。
昨年ノアがミレニアムプライスに発表した『思い出の詩集』は優勝を果たした。
――そう、『ミレニアム最高の不眠治療法』として
今読んだ『思い出の詩集〜朝食を添えて〜』の読んでいる最中に襲ってきた圧倒的眠気はそれを彷彿とさせる。
アロナが寝てしまう程だ。
「・・・・・いや、いけない事は無い。多分」
そう、多分。
――またミレニアムプライス中に審査員達が寝落ちする事態になるだろうな・・・・・
ノアが言う。
「マスターは何を発表されるのですか?」
「俺はコレだ」
鞄から辞書の様な物を取り出してノアに渡す。
ノアはその背表紙を読み上げる。
「『巨大構造物解体のすゝめ』・・・・・随分と分厚いですね」
「ああ。最初はアロナと次にビナーが出てきても楽に壊せる様に『巨大兵器破壊のすゝめ』を作っていたんだが、ウタハから作るならいっそ他にも対応できる様にするべきだとアドバイスをもらってな。仕事の合間を縫ってアロナと作り上げたよ」
ノアは『巨大構造物解体のすゝめ』を開いて目を通す。
暫くして、彼女はそれを閉じて言う。
「ふむ、かなりしっかりとしていますね。建築学や機械工学、ロボット工学や更には材料工学など多角的な視点を用いて様々なケースに対応できる様に纏められています・・・・・コレは建物の耐久性の再評価にも使えそうですね」
「むふー。マスターと頑張りました。力作です」
何時の間にか起きていたアロナの事を撫でながら言う。
「まあ、一番苦労したのは製本作業な気がするがな」
あらゆるケースに対応できる様にしたため、かなり分厚い本になってしまった。
勿論カバーは銃弾を弾ける。
・・・・・深夜テンションというやつだ。
「鈍器としての使用も想定されている様ですし、評価を付けるのに時間がかかりそうですね」
俺は前にウタハが自慢してきた――あの露出狂じみた行動を自慢といって良いのだろうか?というか今考え直すとかなり不味くないか??――発明品を思い出して言う。
「ウタハのアレに比べれば千倍マシだ」
「同意。ウタハのアレはヤバいです。狂気を感じました。頭の良い馬鹿と言うやつです」
「そんなに言われるなんてウタハ先輩は何を発表するんですか?」
「・・・・・・・・・・『光学迷彩下着』だ」
「はい?」
「え、えーっと・・・・・・・・・・結果発表が楽しみですね」
「・・・・・・・・・・そうだな」
◇◇◇◇◇
ミレニアムプライス当日。
俺達――俺とノア、アロナにユウカを加えた4人――はセミナーの部室でミレニアムプライスを見ていた。
今回のミレニアムプライスは前年度と比べて独創的な――頭のネジが何本か外れている様な――作品が多かった。
尚、まともな――良い意味で常識的なものは少なかった――作品もちゃんとあったし、新素材研究部などの上位入賞が狙える程のものもあった。
――正に天才とアレは紙一重と言うやつだな
そう言えばアロナとウタハが
アロナ曰く「さぷらいず、です」とのこと。
仮面をつけただけだったから直ぐにウタハが言い当てられていたのは笑ったが、僅か数分で内蔵の損傷を治療した医療用ナノマシンの性能――といきなり腹にナイフを刺して治療効果を実演したウタハ――には驚かされた。
――流石に麻酔は打ってたらしいが止めてくれ、心臓に悪い・・・・・そんなんだからマッドサイエンティストと言われるんだぞ
そんなミレニアムプライスもとうとう結果発表の時間がやってきた。
『昨年の優勝作品である生塩ノアさん著の思い出の詩集は、本来の意図とは少し違った様ですが・・・・・・・・・・その形而上的な言葉の羅列がミレニアム最高の不眠症に対する治療法として評価されました』
あれは悲しい事故だったな・・・・・。
『今回も、「歯磨き粉と見せかけてブルーチーズが出る持ち歩きチーズ入れ」「ガトリングガン内蔵の護身用の傘」「シュールストレミングランチャー」「ネクタイ型形状記憶合金ナイフ」「光学迷彩下着」「小指をタンスの角にぶつけやすくなるメガネ」・・・・・・・・・・今キヴォトスのインターネット上でセンセーションを巻き起こしているレトロ風スマホゲーム「テイルズサガクロニクル2」に、前回優勝作品の「思い出の詩集」のマイナーチェンジ版である「思い出の詩集〜朝食を添えて〜」などなど!』
いや、何個かニッチ過ぎるのが混ざってなかったか?
『今回出品された三桁の応募作品の中で、栄光を手にするのはたったの7作品!』
『それでは!!まず7位から受賞作品を発表で・・・・・えっ?やっぱり誤記載じゃないんですかこれ?ジョークじゃなくて??・・・・・あ、はい。では、気を取り直して!!7位はエンジニア部、ウタハさんの「光学迷彩下着」です!!』
『えー、これは身に付けてもその下の素肌が見えてしまうため、着ているのかそうでないのか分からないというエキセントリックな作品ですが・・・・・コメントによると「露出症の患者さんが合法的に趣味生活を営めるようになるという点で大変高い評価」となっています・・・・・その評価をした審査員が誰なのか大変気になりますが・・・・・とにかく7位!!』
???
ちょっと待ってくれ。
「審査員大丈夫か??」
「変態さんでもいたのでしょうか?」
「ちょっとわからないわね・・・・・計算外よ」
「――混乱。理解不能です」
『そして6位はセミナー、不知火アトラさんの「巨大構造物解体のすゝめ」!!コメントによると「読んで照らし合わせるだけで大体の発明品や建造物の構造的欠陥を発見することが可能な点とその場で鈍器として使用することで強度まで確認できるという点で大変高い評価」となっています!!やっぱり辞書は鈍器ですね!!』
「マスター、おめでとうございます♪」
「アトラ、おめでとう」
「二人共、ありがとう。アロナが手伝ってくれたことも大きいな。ありがとうな、アロナ」
「マスターが頑張っていたので頑張りました。入賞は当たり前です」
「いや、
するとセミナーの扉がいきなり開いた。
ミレニアムプライス中に誰だろうか?
扉から現れたのは連邦生徒会の制服を着たピンク色の髪の――って姉さん?!
「アトラ!!入賞したんですって?!おめでとうございます!!今日は家でパーティーですよ!!」
「姉さんなんで居るの仕事は?!」
「弟よりも大切なことなどありません!!重要なものは終わらせておいたので部下に投げてきました!!」
「駄目だろ?!というか発表から数分も経ってないんだけどサンクトゥムタワーから此処までどうやって来たの?!」
「お姉ちゃんパワーです!!」
「――理解不能」
「カヤさん、アトラの事が絡むと相変わらずデタラメね」
「パーティーですか、少し楽しみですね」
◇◇◇◇◇
『さあ、ここからはベスト3です!!3位はセミナー、生塩ノアさんの「思い出の詩集〜朝食を添えて〜」!!コメントによると「日向ぼっこで昼寝しているかのような心地よい眠りに誘われる。短時間で効率的な睡眠が取れる。疲れた日の寝る前に読みたくなる」とのことです!!私も読ませて頂きましたが、温かさが伝わってくる大変素晴らしい詩集でした!!3位です!!拍手!!』
『僅差で2位を受賞したのは新素材開発部、「相転移装甲」です!!コメントによると「軽く、電力さえあれば一定の強度が期待出来る。軽量化が必要な宇宙船等、夢が実現可能なものへと一歩近づく発明品だ」とのことです!!すごいですね!!これが実用化されれば私達はもっと様々なことが出来るようになるかもしれません!!これが2位!!拍手です!!』
『最後に!!今回のミレニアムプライスで最高の栄誉を受賞した作品です!!その1位は・・・・・・・・・・CMの後で!!』
「おい」
「早くしなさいよ!!」
「まあまあ、二人共落ち着いて下さい」
『さあ!!それでは発表します!!待望の1位は・・・・・エンジニア部の白石ウタハさんと、不知火アロナさんの合同作品!!「医療用ナノマシン「愛してるんだ君達を!!」」です!!正しい発音は「あぁぁいしてるんだぁぁぁぁ君たちをぉぉぉぉ!!」とのことです!!人類愛を感じるネーミングですね!!』
「アロナちゃん、素晴らしい名前ですね」
「はい。ウタハと徹夜して考えました。発音もバッチリです。ふんす」
「あの発音必要か?」
「はい」
『コメントによると「いきなり実演した事には驚いたが、素晴らしい治療性能だった。先天性疾患の治療等に大きく貢献する発明品だ。安全性や耐久性テストをしっかりと行っている点も大変高い評価。持ち運びが容易で、緊急事態等でも活躍できるポテンシャルを秘めている」等々!!他にも沢山コメントがされていますが割愛させていただきます!!私からは、人類愛を感じる大変素晴らしい作品だと思いました!!』
「・・・・・可愛そうですが、ゲーム開発部はこれで廃部ですね」
「そうね・・・・・「テイルズサガクロニクル2」、結構面白かったのだけど・・・・・仕方無いわね。廃部通告にいかなきゃ」
「・・・・・そうかもな。だが、俺は最後まで彼女達の可能性を信じたい」
「マスター、何かを話しています」
「うん?」
俺達はテレビを注視する。
『な、なんと!!ここで、審査員の方からとびっきりのお話があります!!どうぞ!!』
すると画面が変わり、オートマタの審査員の一人が映し出された。
『・・・・・ミレニアムプライスはこれまで、生徒達の才能と能力で作られた作品に対し、「実用性」を軸に据えて授賞を行ってきました。これはより良い未来を求め、実践していくという趣旨に基づいています・・・・・しかし今回の作品の中には、新しい角度から「実用性」を感じさせてくれるものがありました。とある「ゲーム」が実際に、懐かしい過去をありありと思い出させ、未来への可能性を感じさせてくれたのです』
『よって私達はこの度、異例の選択をすることにしました。今回は「特別賞」を設けます。その受賞作品は・・・・・ゲーム開発部の「テイルズ・サガ・クロニクル2」です』
「あら」
「驚愕」
「彼奴等、やったな」
「私、ちょっとあの子達の所まで行ってくる!!」
ユウカは走り出した。
『レトロ風という時代を超えたコンセプト、常識に縛られず次々と想像を超えていく展開。一見してそれらとマッチしそうにない不可思議な世界観。最初は困惑の連続でしたが・・・・・新しい世界を旅して、一つ一つ新たな絆を結びながら、魔王を倒しに行く。そういったRPGの根本的な楽しさが、しっかり込められた作品だと思います。プレイしながら、かつて初めてゲームに夢中になった幼年期の頃を鮮明に思い出す事ができました』
『そういった点を評価して、この作品に・・・・・今回、ミレニアムプライスの「特別賞」を授与します!』
「大番狂わせだな」
「でも、良いものですね」
「ああ」
――白石 ウタハ
『ミレニアムサイエンススクール3年生』『エンジニア部部長』『マッドサイエンティスト』
他の世界線よりもマッドサイエンティスト気味。ちゃんと乙女はしている模様。本人曰く「頭が可笑しいと言われるのは心外だね」とのこと。日々の行いが悪いのでは無いだろうか?偶に人道的に見える。今のところアトラは研究対象として大好き。普通に信頼している。この先どうなるかはアトラ次第。
――医療用ナノマシン「愛してるんだ君達を!!」
正しい発音は「あぁぁいしてるんだぁぁぁぁ君たちをぉぉぉぉ!!」。分かる人には分かる主任のアレ。アトラの『舵輪』を元にアロナとウタハがキヴォトスの技術で作り上げた。正しく現代のオーパーツ。尚、耐久試験及び安全性試験はウタハが体を張った模様。そんなんだからマッドサイエンティストって言われるのでは??