『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ   作:文才の無い本の虫

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Vol.7 最終章「たった一つの祈りの終着点」
Vanity:因果


 

 

 

 

 

「おや?・・・・・クックック・・・・・これはこれは、随分と珍しい掘り出し物ですね」

 

 

「少女の形をした『方舟』・・・・・どうやら彼への“借り”も直ぐに返せそうですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

 

「おや・・・・・随分と不機嫌ですね、不知火アトラさん」

 

 

「休日に呼び出されたからだ。だが、あの時の貸しを返すと言われたら来ない訳にもいかんだろう」

 

 

「クックック・・・・・それはそれは申し訳ありません。まさか今日が休日だったとは。研究に忙しく、少々時間感覚が狂っておりました」

 

 

「お前は社畜か何かか??」

 

 

俺は黒服からの電話により、アビドス近郊の廃墟に来ていた。

 

ノアが「休日なので・・・・・ユウカちゃんと遊んで来ます(ユウカちゃんを誂って来ます)♪」と出かけている為、今は一人だ。

 

――ユウカ・・・・・頑張れよ

 

 

「・・・・・ったく。で、何を以って対価とするつもりだ?」

 

 

「クックック・・・・・貴方なら確実に満足されることでしょう。これです」

 

 

黒服は横にある寝台の上の布を取った――瞬間、俺は拳銃を黒服に突き付けた。

 

 

「答えろ、黒服。何処でコレを・・・・・ノアの駆体(・・・・・)を見つけた?」

 

 

寝台に横たえられていたのは、連邦生徒会の制服を身に着けた――『方舟』であるノアの駆体だった。

 

あり得ない・・・・・が、コレが修復されているということは『方舟』の本体が何処かに在るのかもしれない。

 

 

「アビドス砂漠の砂丘に埋まっておりましてね。座標をお送りしましょう・・・・・ああ、ご安心を。運ぶときもドローンを使いましたし、指一本たりとも触れていませんよ。ですからその銃を下ろして貰えると助かるのですが」

 

 

「・・・・・済まない、少し取り乱した」

 

 

「クックック。お気持ちはわかりますとも。それで、対価に関しては拾い物を届けた、ということで十分でしょうか?」

 

 

「ああ。十分だ」

 

 

――アロナ、コレを仕舞えたりするか?

 

 

『(――回答。可能です。収納しますか?)』

 

 

――頼む

 

 

『(了解です。『方舟』の駆体に手を触れてください。空き容量に収納します)』

 

 

俺は寝台に横たえられている冷たい駆体に触れた。

 

次の瞬間、最初から何も無かったかのように駆体は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、また会いましょう、不知火アトラさん」

 

 

「黒服、俺は貴様と二度と会わないことを願ってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

――赤い空、黒い塔

 

 

――『虚妄のサンクトゥム』

 

 

――『方舟』の駆体

 

 

――『アトラハシースの方舟』

 

 

――『冠』は此処に

 

 

――『舵輪』『機械仕掛けの神』

 

 

赤く染まっていく空の色が、『向こう』での出来事を想起させる。

 

 

「・・・・・空が赤い」

 

 

『肯定。まるであの時の様です』

 

 

「アロナ、『虚妄のサンクトゥム』は?」

 

 

『確認。あの時と同様の配置です。同時に、『アトラハシス』も確認しました』

 

 

「・・・・・噂をすれば、だな」

 

 

――何か来る

 

俺は拳銃を構えた。

 

次の瞬間、空間に罅が入り、補われた様な紫色のヘイローを浮かべ、ライオットシールドを持った生徒――黒い制服に身を包んだ蒼森ミネが現れた。

 

 

「こんな所で再会することになるとは思いもしませんでした・・・・・お久しぶりですね、先生(・・・・・・・・・・・)

 

 

「!!」

 

 

一瞬、銃口がブレるが、銃を下ろすわけにはいかない。

 

 

「ええ、警戒は解かないで下さると・・・・・何故なら私は、貴方の敵なのですから」

 

 

彼女は少し悲しそうに言う。

 

 

「ですが、同時に先生の味方でもあります。一つアドバイスを」

 

 

「アドバイス?」

 

 

「はい・・・・・此方には、黒いシロコが居ます(・・・・・・・・・)。彼女の精神状態はよろしくありません。私の救護では、時間稼ぎにしかなりません。急いだほうが宜しいかと」

 

 

黒いシロコ?

 

――まさか

 

 

「では、私はこれで。また逢いましょう、先生」

 

 

「まて、ミネ!!」

 

 

呼ぶ声も虚しく、彼女は空間の罅に消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・先生、お気を付けて。私達は手強いですよ。今直ぐ救護が必要な状態(・・・・・・・・・・・)の貴方には些か重すぎるでしょう」

 

「今更ですが・・・・・約束を果たせなくて、申し訳有りません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「懐かしいな、ノア」

 

 

「はい・・・・・ですが私は、マスターにここに来て欲しくありませんでした」

 

 

「これは・・・・・()が持ち込んでしまった因縁だからな」

 

 

『『ウピナトシュテム』、エンジン始動。上昇開始・・・・・100m・・・・・200m・・・・・300m・・・・・』

 

 

ゆっくりと浮上していく『ウピナトシュテム』の上で、『アトラハシス』を見据えながら言う。

 

 

「だから、俺が(先生として)精算するべきなんだ」

 

 

『マスター、『ウピナトシュテム』起動シーケンス完了しました。突入準備を開始します』

 

 

手に持つ、修復した『シッテムの箱』からアロナの声がする。

 

俺は今、レイナの力を借りて『先生』に戻っていた。

 

まあ、戻ったと言っても俺の神秘に擦り切れた『先生()』のテキストを貼っただけだが。

 

――『紛い物の先生』だとしても、今だけは生徒(シロコ)を救わなければいけない

 

ポケットに忍ばせた『カード』を握り締める。

 

――その為ならば、奇跡でも何でも手繰り寄せてやる

 

 

『高度調節・・・・・『アトラハシス』と同高度に到達。角度調整、ワープドライブ、反転。演算開始・・・・・』

 

 

インカムから、ユウカからの通信が聞こえる。

 

 

『もしもし?!アトラにノア、聞こえてるかしら?『虚栄のサンクトゥム』とか言うのは全部破壊を確認したわ!!後は頼んだわよ!!それと・・・・・絶対に帰ってきなさい!!』

 

「ああ」

 

「はい」

 

 

そして、アロナが言った。

 

 

『演算完了。突入開始』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そうして、俺達を乗せた『ウピナトシュテム』は『アトラハシス』に衝突した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









――蒼森ミネ / ミネ*テラー

何処かでアトラが先生をした蒼森ミネが反転した存在。仮称:プレナパテスによって呼び出された。黒い制服に身を包み、羽は黒く染まっている。

備考:彼女はアトラの敵であるが、同時に何処まで行っても彼の味方である。彼女が彼女である為に。



――不知火アトラ / 紛い物の『先生』

レイナによって擦り切れた『先生』のテキストを神秘に貼り付け、一時的に『先生』としての役割を担える様になった。奇しくも仮称:プレナパテスと同じ様にシロコの為に無理を通して立ち上がった。

備考:奇跡とは有限であり、彼の■■を代償としている。しかし、■■が擦り切れ、■すらも継ぎ接ぎの彼は、一体何を支払うというのだろうか。





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