『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ 作:文才の無い本の虫
Vanity:因果
「おや?・・・・・クックック・・・・・これはこれは、随分と珍しい掘り出し物ですね」
「少女の形をした『方舟』・・・・・どうやら彼への“借り”も直ぐに返せそうですね」
◇◇◇◇◇
「・・・・・」
「おや・・・・・随分と不機嫌ですね、不知火アトラさん」
「休日に呼び出されたからだ。だが、あの時の貸しを返すと言われたら来ない訳にもいかんだろう」
「クックック・・・・・それはそれは申し訳ありません。まさか今日が休日だったとは。研究に忙しく、少々時間感覚が狂っておりました」
「お前は社畜か何かか??」
俺は黒服からの電話により、アビドス近郊の廃墟に来ていた。
ノアが「休日なので・・・・・
――ユウカ・・・・・頑張れよ
「・・・・・ったく。で、何を以って対価とするつもりだ?」
「クックック・・・・・貴方なら確実に満足されることでしょう。これです」
黒服は横にある寝台の上の布を取った――瞬間、俺は拳銃を黒服に突き付けた。
「答えろ、黒服。何処でコレを・・・・・
寝台に横たえられていたのは、連邦生徒会の制服を身に着けた――『方舟』であるノアの駆体だった。
あり得ない・・・・・が、コレが修復されているということは『方舟』の本体が何処かに在るのかもしれない。
「アビドス砂漠の砂丘に埋まっておりましてね。座標をお送りしましょう・・・・・ああ、ご安心を。運ぶときもドローンを使いましたし、指一本たりとも触れていませんよ。ですからその銃を下ろして貰えると助かるのですが」
「・・・・・済まない、少し取り乱した」
「クックック。お気持ちはわかりますとも。それで、対価に関しては拾い物を届けた、ということで十分でしょうか?」
「ああ。十分だ」
――アロナ、コレを仕舞えたりするか?
『(――回答。可能です。収納しますか?)』
――頼む
『(了解です。『方舟』の駆体に手を触れてください。空き容量に収納します)』
俺は寝台に横たえられている冷たい駆体に触れた。
次の瞬間、最初から何も無かったかのように駆体は消えた。
「では、また会いましょう、不知火アトラさん」
「黒服、俺は貴様と二度と会わないことを願ってる」
◇◇◇◇◇
――赤い空、黒い塔
――『虚妄のサンクトゥム』
――『方舟』の駆体
――『アトラハシースの方舟』
――『冠』は此処に
――『舵輪』『機械仕掛けの神』
赤く染まっていく空の色が、『向こう』での出来事を想起させる。
「・・・・・空が赤い」
『肯定。まるであの時の様です』
「アロナ、『虚妄のサンクトゥム』は?」
『確認。あの時と同様の配置です。同時に、『アトラハシス』も確認しました』
「・・・・・噂をすれば、だな」
――何か来る
俺は拳銃を構えた。
次の瞬間、空間に罅が入り、補われた様な紫色のヘイローを浮かべ、ライオットシールドを持った生徒――黒い制服に身を包んだ蒼森ミネが現れた。
「こんな所で再会することになるとは思いもしませんでした・・・・・
「!!」
一瞬、銃口がブレるが、銃を下ろすわけにはいかない。
「ええ、警戒は解かないで下さると・・・・・何故なら私は、貴方の敵なのですから」
彼女は少し悲しそうに言う。
「ですが、同時に先生の味方でもあります。一つアドバイスを」
「アドバイス?」
「はい・・・・・此方には、
黒いシロコ?
――まさか
「では、私はこれで。また逢いましょう、先生」
「まて、ミネ!!」
呼ぶ声も虚しく、彼女は空間の罅に消えて行った。
「・・・・・先生、お気を付けて。私達は手強いですよ。
「今更ですが・・・・・約束を果たせなくて、申し訳有りません」
◇◇◇◇◇
「懐かしいな、ノア」
「はい・・・・・ですが私は、マスターにここに来て欲しくありませんでした」
「これは・・・・・
『『ウピナトシュテム』、エンジン始動。上昇開始・・・・・100m・・・・・200m・・・・・300m・・・・・』
ゆっくりと浮上していく『ウピナトシュテム』の上で、『アトラハシス』を見据えながら言う。
「だから、
『マスター、『ウピナトシュテム』起動シーケンス完了しました。突入準備を開始します』
手に持つ、修復した『シッテムの箱』からアロナの声がする。
俺は今、レイナの力を借りて『先生』に戻っていた。
まあ、戻ったと言っても俺の神秘に擦り切れた『
――『紛い物の先生』だとしても、今だけは
ポケットに忍ばせた『カード』を握り締める。
――その為ならば、奇跡でも何でも手繰り寄せてやる
『高度調節・・・・・『アトラハシス』と同高度に到達。角度調整、ワープドライブ、反転。演算開始・・・・・』
インカムから、ユウカからの通信が聞こえる。
『もしもし?!アトラにノア、聞こえてるかしら?『虚栄のサンクトゥム』とか言うのは全部破壊を確認したわ!!後は頼んだわよ!!それと・・・・・絶対に帰ってきなさい!!』
「ああ」
「はい」
そして、アロナが言った。
『演算完了。突入開始』
――そうして、俺達を乗せた『ウピナトシュテム』は『アトラハシス』に衝突した
――蒼森ミネ / ミネ*テラー
何処かでアトラが先生をした蒼森ミネが反転した存在。仮称:プレナパテスによって呼び出された。黒い制服に身を包み、羽は黒く染まっている。
備考:彼女はアトラの敵であるが、同時に何処まで行っても彼の味方である。彼女が彼女である為に。
――不知火アトラ / 紛い物の『先生』
レイナによって擦り切れた『先生』のテキストを神秘に貼り付け、一時的に『先生』としての役割を担える様になった。奇しくも仮称:プレナパテスと同じ様にシロコの為に無理を通して立ち上がった。
備考:奇跡とは有限であり、彼の■■を代償としている。しかし、■■が擦り切れ、■すらも継ぎ接ぎの彼は、一体何を支払うというのだろうか。