『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ   作:文才の無い本の虫

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Teacher:偽りと紛い物

 

 

 

 

 

「ちっ・・・・・セキュリティボットが多い!!」

 

 

「後方は私がカバーします!!マスターは前方を!!」

 

 

『――報告。敵増援です。突っ切って下さい』

 

 

「無茶を言う!!」

 

 

俺達はセキュリティボットを破壊しながら、『アトラハシス』の中枢に向かって走っていた。

 

『ウピナトシュテム』に仕込んでおいたファイアウォールが耐えているうちに辿り着かなければならない。

 

そうして暫く戦闘を繰り返し、開けた場所に着く。

 

 

『――確認。此処が『アトラハシス』の中枢です。前方に生徒を二名確認。砂狼シロコと蒼森ミネです』

 

 

その後ろに、仮面を付けた大きな影。

 

――ああ、そういう事か

 

 

『その後方に微弱な生命反応。仮称:プレナパテス(偽りの先生)

 

 

その影――プレナパテスは佇んでいるだけだが・・・・・なにかを訴えていると確信する(・・・・)

 

それと同時に向こうのミネとシロコが武器を構える。

 

ミネが言う。

 

 

「お覚悟を」

 

 

俺達も武器を構え、戦闘が始まる。

 

 

「・・・・・戦闘、開始」

 

 

「シロコ・・・・・」

 

 

「私の相手は・・・・・貴女ですか」

 

 

「ええ。どうやら貴女にも救護が必要な様ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「貴女は・・・・・トリニティ救護騎士団団長の蒼森ミネさんですね」

 

 

「ええ、「元」と付きますが」

 

 

「そんな貴女が何故そちら側についているんですか?」

 

 

レールガンとライオットシールドで殴り合いながらミネとノアは言葉を交わす。

 

 

「それは、私が蒼森ミネであるが故です。貴女にもわかるのではないでしょうか?」

 

 

「何を?」

 

 

「『これ以上傷ついて欲しくない』・・・・・いえ、『私を置いて行かないで』でしょうか?」

 

 

「・・・・・っ」

 

 

「ノアさん、今の貴女の表情は先生を喪った時の私と同じです」

 

 

「貴女に・・・・・私とマスターの(・・・・)何がわかるというのですか?!」

 

 

「ちっともわかりません。ですが、貴女のその姿勢には救護が必要です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノアさん・・・・・貴女は、先生の――アトラ先生の隣に立っているのですか?(名前を呼んだことがありますか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

戦闘が始まってから、数分。

 

俺は苦境に立たされていた。

 

素の能力が違いすぎる・・・・・それに、彼女は戦闘(殺し)に慣れ過ぎている。

 

――死に慣れ過ぎた俺の様に、何処かが擦り切れている

 

神秘で素の能力を誤魔化している俺では役不足。

 

 

「無駄・・・・・もう諦めて」

 

 

「はっ・・・・・そんなに簡単に諦められるなら、俺は此処に立っていない」

 

 

大人気ないかもしれない・・・・・俺は『紛い物』かもしれない・・・・・だけど。

 

――頼む、もう一度だけ力を貸してくれ

 

俺は『カード』を掲げる。

 

虚空に手を伸ばすように、縁を手繰るように。

 

――根本が揺らぐ痛みを無視する

 

『カード』が微かに輝く。

 

 

「一体何を・・・・・っ?!」

 

 

瞬間、銃声が鳴り響き、シロコがその場を飛び退いた。

 

ヴァルキューレ公安局の制服の上に、連邦生徒会の上着(・・・・・・・・)を羽織った彼女は、近付いてきて俺に言った。

 

 

「お久しぶりです、アトラ」

 

 

彼女――ヴァルキューレ警察学校公安局局長、尾刃カンナ――の実力を俺は誰よりも知っていた(・・)

 

 

「済まん、話は省く。力を貸してくれ――カンナ」

 

 

「ええ、喜んで」

 

 

「一人増えた所で・・・・・」

 

 

カンナは言う。

 

 

「さっさと終わらせましょう」

 

 

「ああ」

 

 

あの時の様に俺達は左右に分かれて駆け出す。

 

シロコはショットガンと盾を構え――瞬時に俺の方へ発砲。

 

 

「無駄」

 

 

「いいや・・・・・無駄じゃないさ」

 

 

――神秘を前面に、攻撃を受け流す様に(軽装備)・・・・・突っ切るっ!!

 

 

「くっ・・・・・」

 

 

「逃がしませんよ」

 

 

横からカンナの援護が入る。

 

――今

 

 

「せーのっ」

 

 

「うっ」

 

 

シロコを盾ごと殴り飛ばす。

 

瞬間、後ろから飛んできた神秘を纏った弾丸によって盾が砕ける。

 

 

「アトラ、決めて下さい」

 

 

――殴るのは勘弁してやる

 

 

「シロコ――舌を噛むなよ!!」

 

 

俺は素早く近付いてシロコの右腕を掴み――捻り上げて強く踏み込む。

 

ヴァルキューレ式背負投げ。

 

 

「がはっ」

 

 

地面に体勢を崩した状態で叩き付けられたシロコが息を吐く。

 

 

「右手は使えない筈だ・・・・・これで終わりだ、シロコ」

 

 

「ま、だ・・・・・っ」

 

 

息が整っていないシロコはそれでも立ち上がろうとする。

 

いつの間にか、その横にプレナパテスがあった(・・・)

 

 

――――――、―――――――(・・・・・シロコ、もう良い■だよ)

 

 

「私は・・・・・っ」

 

 

彼女には、プレナパテスの声が届いていない?

 

いや、俺だから聴こえるのか?

 

――・・・・・ノアとアロナに怒られてしまうな

 

俺は、ヒビ割れた『カード』を握る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――プレナパテス、もう一人の俺(先生としての私)よ・・・・・きっと擦り切れた俺(本質的に生徒である俺)では言えない、『先生』にしか言えない言葉があるのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

ああ、声が出る。

 

目の前の()が力を使ってくれたのか。

 

感謝は後だ。

 

シロコに、伝えなければ。

 

――『偽り』でも、『先生』として・・・・・最後に(・・・)彼女に伝えなければ

 

 

『ァぁ゙・・・・・・・・・・シ、ロコ』

 

 

「えっ・・・・・・・・・・せん、せい・・・・・?」

 

 

私は包帯に包まれた手を、彼女の顔を支えるように頬に添える。

 

 

『そばに、居てあげられなくて・・・・・ごめんね』

 

 

「・・・・・あ、い、嫌だ。また、喋れたのにっ・・・・・そんな、お別れみたいな言葉を・・・・・言わないでよ先生・・・・・私は、こんな結末望んでなかったのに・・・・・先生を、殺したくなかったのに・・・・・・・・・・私がいけないのに・・・・・」

 

 

『貴女のせいじゃないよ、シロコ。自分の生を悔やんだり、責めないで。幸せになりたいと願う気持ちを、否定しないで』

 

 

「でもっ・・・・・」

 

 

『全ては、私が持っていくよ』

 

 

負債も、色彩も、全て此処で精算する。

 

この偽りの身でも、それぐらいの対価なら払う事ができる。

 

――ふざけるなァ!!此処まで来て、その死の神が幸せになれると思っ――五月蠅いッ!!私の生徒に手を出した貴様らは引っ込んでいろ!!

 

 

『だから、シロコは幸せになってくれると嬉しいな。何時か、会えるから・・・・・その時に、シロコが紡いだ思い出を話してほしいんだ』

 

 

「そんな・・・・・先生・・・・・」

 

 

私は、涙を流す彼女の目元を拭う。

 

シロコは、強い子だ。

 

彼女なら大丈夫。

 

永く、短い時間を置いて、彼女は昔の様な真っ直ぐな瞳を此方に向けた。

 

 

()・・・・・・・・・・・・・・・わかった・・・・・先生(せんせぇ)に゛、いっぱい゛・・・・・話せる様に・・・・・思い出を沢山、作るよ」

 

 

『うん、待ってるから・・・・・ゆっくりおいで』

 

 

「ゔん・・・・・」

 

 

私は、彼女の首に、赤いマフラーを巻いた。

 

このマフラーは、昔彼女が「ん、先生とおそろいの物が欲しい」と言った時に勉強して自分で作ったシロコのマフラーと同じ柄の色違いのマフラーだ。

 

――少し、自分には似合わなかったけれど

 

 

「これ・・・・・は」

 

 

『シロコ、には・・・・・やっ、ぱりマフラー・・・・・似合う、ね』

 

 

――ああ、そろそろ時間切れか。

 

私は『アトラハシス』本体に存在する脱出シーケンスを彼女に使う。

 

後は、彼が取りなしてくれるだろう。

 

 

『じゃ、あ・・・・・ね』

 

 

「先、生・・・・・っ」

 

 

違う。

 

 

『い、や・・・・・・・・・・また、ね、シ、ロコ・・・・・』

 

 

「ゔんっ・・・・・先生」

 

 

そして、彼女は青い輝きと一緒に、消えて行った。

 

もう、声は出ない。

 

私は身体を引きずって、彼に向き合う。

 

 

――――・・・・・(済まない・・・・・)―――――――――?(後は任せていいかな?)

 

 

「済まんが俺も長く無い(・・・・・・)。出来ることは限られているが・・・・・力を尽くそう」

 

 

――――(十分だよ)

 

 

私はミネの方を向く。

 

彼女には悪い事をしてしまった。

 

――彼女にも、少しだけ奇跡を・・・・・

 

 

――、――――――――――(ミネ、付き合わせてしまってごめんね)

 

 

「いいえ。私も、先生と再会できましたので・・・・・不謹慎ではありますが、死んだ事に感謝すらしています。もうやり直せない事は、悲しいですけれど」

 

 

―――――――(本当に不謹慎だね)・・・・・――、――――――、―――(でも、やり直せるよ、きっと)

 

 

私は動かない身体に鞭を打って(意地と根性で)立ち上がる。

 

→『カード』を掲げる

 

 

―――、――――――(君達は、脱出するんだ)・・・・・全部、私が持っていくから」

 

 

「ああ、じゃあな・・・・・プレナパテス(もう一人の俺)

 

 

「さようなら、先生」

 

 

彼らにも脱出シーケンスを使う。

 

そうして、私は『アトラハシス』の中に一人になった。

 

周囲に、仮面を付けた巫山戯た集団が現れる。

 

 

【ふざけるなァ!!『偽りの先生(被造物)』如きがァ!!我々(造物主)に逆らうのか!!驕るな―――――!!】

 

 

「何を言っているのかな、無名の司祭・・・・・『偽り』だろうと、被造物だろうと・・・・・私はッ!!『先生』なんだよッ!!」

 

 

→色彩を呼び出す

 

そして、私は『カード』を使って『アトラハシス』を――・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そうして、『アトラハシス』は消失した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









――プレナパテス / 偽りの先生

彼は、脳死したアトラの身体を使って無名の司祭によって造られた。だが、その身体には『先生』としての矜持・・・・・魂の様なものが残っていた。それが、無名の司祭達の誤算だった。そうして、彼は『先生』として・・・・・。




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